(完結)いつのまにか懐かれました。懐かれたからには私が守ります。

水無月あん

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やめときなさい!

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「今年の新人騎士は勇ましいね」

手をたたきながら、近づいてきた王太子様。

付き従っている側近の方は、王太子様とは真逆の黒色の地味な服を着ている。

「それに、なんか、おもしろそうなことしてるよね。なにしてるのかな?」
と、私に微笑みかけてきた王太子様。

その瞬間、ルドが飛び上がって、私の背後に隠れた。

近くで拝見すると、王太子様の瞳は騎士団長様と同じハシバミ色。
美しい色なのだけれど、何かがちがう。

騎士団長様のすみきった瞳は、まっすぐで嘘偽りがない。
拝見するだけで、こちらの背筋ものびるよう。

が、王太子様は、一見にこやかに微笑まれているのに、瞳は笑っていない。
秘めたものが多そうな瞳で、底が読めない怖さがある。

同じ色なのに、騎士団長様とは真逆の瞳だよね……。

背後で怯えるルドに、警戒する私。
そんななか、なんと、ロザンヌが王太子様の前にすすみでた。

「かわいらしいご令嬢だね。誰なのかな?」
と、全くかわいらしいとも思っていない目で、ロザンヌに話しかける王太子様。

笑顔が怖い……。

私の背中のジャケットを、ルドが更にぎゅーっとつかむ。

私は色が見えないけど、なんとなくわかるよ、ルド……。
この方、外側と心は、全く別物って感じだよね。

が、鈍感すぎる女、ロザンヌ。
恐れ多くも、完全に王太子様をロックオンしている。

まがいものの小動物の皮をしっかりとかぶりなおし、上目遣いで王太子様を見上げた。

「わたくし、バレリー伯爵の娘、ロザンヌと申します」

かよわそうな雰囲気を醸し出そうとしているが、目がぎらついている。

「ああ、バレリー伯爵のご令嬢か。バレリー伯爵は、近頃、事業が成功しているとか。ぼくも注目してるんだよね」
と、王太子様が微笑みながら言った。

「まあ、ありがとうございます!」

ロザンヌは頬を紅潮させているけれど、王太子様からもれだす気に私は鳥肌がたった。

おそらく、王太子様が言う「注目」は、絶対、良い意味じゃないと思う。
ニュアンス的には「監視」に近いんじゃないだろうか……。

ちょっと、やめときなさい! 
ロザンヌの手におえる方じゃないから!

と、心の中で助言する。

が、残念ながら、ロザンヌに私の気持ちは通じない。

目をうるませ、両手を胸の前でくみ、王太子様を見あげるロザンヌ。

同時に、側近の方の眉間に深いしわがよった。そして、なにかをつぶやいた。
声は聞こえなかったけれど、口の動きを読んでみた。

「また、フィリップの犠牲者がでるのか。王妃様のもとで、面倒な騒ぎはやめてくれ」

フィリップって、王太子様のお名前よね……。
そう言えば、側近の方は、王太子様と幼馴染と聞いたことがある。

お名前で呼ぶなんて、よほど親しいのだろうけれど、醸し出す疲労感がすごい……。

「では、まず、君の話から聞いてみようか? バレリー伯爵令嬢」
と、王太子様が楽しそうにロザンヌに声をかけた。


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