(完結)いつのまにか懐かれました。懐かれたからには私が守ります。

水無月あん

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同じ匂い

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「バレリー伯爵令嬢は楽しい令嬢だね」
と、意味ありげに言う王太子様。

「まあ、私といると楽しいだなんて……」

ロザンヌが頬に両手をあてて、ぎらぎらした目でつぶやいた。

すごい。脳内で都合よく変換されている。

その時、
「お嬢! 大丈夫か?!」
と、あせった声がした。ロイスだ。

ロイスは私を守るように隣に立つ。

「あ、満点で合格した首席合格者君だよね」

王太子様が嬉しそうにロイスに声をかけた。

ロイスは王太子様に頭をさげた。

「ロイス・ブリューノと申します」

君かあ。ルイスと一字違いだ。いい名前だね。うらやましいなあ」

「え……?」

驚いた顔をするロイス。いや、私も驚いてるけど……。

「ぼくには、ルイスって言う、控えめに言っても天使みたいな弟がいるんだけどね」

いや、知っています。
すごい美貌のルイス殿下のことは、国中の人が知っていますよ……。

「ぼくもルイスに似た名前が良かったんだよね。ウルスも響きが似てるからずるいとは思ってたんだけど、ロイスのほうが全然いいよねえ。『イス』は一緒だし。ルイスとロイス。うん、いかにも兄弟っぽい。その名前、譲ってほしいくらいだよ」
と、一気に語った王太子様。

さっきまでの黒い笑顔とは違って、本当に楽しそう。
ルイス殿下思いでほほえましいはずなのに、なんだか、言ってることが怖い……。

「おい、やめろ……」

側近の方が心底嫌そうに言った。

が、全く気にすることのない王太子様。ロイスに向かって微笑んだ。

「名前だけで、ロイス君には親近感がわくよ。でも、まあ、ロイス君のことは知っていたんだけどね。ターナー副騎士団長が見出し、手塩にかけて育てた期待の大型新人」

王太子様までご存じだなんて、ロイスってすごいね!
ロイスがほめられ、自分事のように誇らしくなり、にやけてしまう私。

「で、君が、そのターナー副騎士団長の令嬢で、母上が目をかけ、稽古をつけていたマチルダ・ターナーさんだよね」
と、いきなり私にふってきた。

あ、いけないっ! 私、まだ、王太子様にちゃんとご挨拶してなかったわ!

「マチルダ・ターナーです! よろしくお願いいたします!」

つい、訓練時のような大きな声がでてしまった私。

「なるほど……。母上が気に入るはずだね。その感じ、同じ匂いがする」

え? 匂いって、なんの? 

反射的に、自分の腕を匂ってみる。
私と騎士団長様と同じって騎士服だけだから、騎士服の匂いのことを言っているのかな……?

とたんに、王太子様が笑い出した。
そして、後ろにひかえる側近の方にふりかえる。

「ねえ、ウルス。この子、おもしろいから、王宮の騎士団にひきぬいていい?」

「ダメです。王妃様が期待されている騎士ですから、勝手なことはやめてください。まあ、王妃様に直接お願いされるなら私は何も言いませんが」

「それは嫌」

王太子様は即答すると、こちらに向き直った。

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