(完結)いつのまにか懐かれました。懐かれたからには私が守ります。

水無月あん

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何が欲しい?

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笑うのをやめた王太子様。真顔で側近の方に言った。

「このモーラの甥、王宮へ欲しいんだけど?」

「確かに、いたら便利そうですね……。モーラさんの親戚というのも信用できるし。とりあえず、その改良した魔石の映像を確認したいな」

側近の方の目がルドを捕らえる。
やたらとぎらついていて、怖い……。
ルドが不安そうに、私の方へと近寄った。

王太子様がルドに聞いてきた。

「その魔石、どうやったら見られるの?」

「記録魔石用の幕に映して見るのが一番いいです。でも、白くて平らなものになら、映せると思います。ただ、材質によって魔石との相性もあるので、画質は変わると思いますが……」

「へえ、それはすごいね。なら、ここの壁はどう?」

そう言って、広間のまっしろな壁を指差す。

「大丈夫だと思います……」

「じゃあ、今から、そこの壁に映してくれる?」

えっ、壁に? しかも、今から? それはいくらなんでも、まずいのでは?

さっき、王太子様は、指紋をとるのは目立つって言ってたけれど、こんなところに映像を映せば、指紋どころじゃないよね!?

「お待ちください、王太子様! どうせ、嘘なんだから、見るだけ無駄です!」

ロザンヌが焦ったように叫んだ。

ルドの能力を信じていないみたいだけれど、万が一を考えたのかも……。
まあ、騎士団長様のお城で、辺境騎士団を馬鹿にした発言が映し出されるのは、考えるだけでも恐ろしいもんね。

「無駄かどうか、やってみないとわからないよね? そこで、黙って見てて。あ、そうだ。君とはもっと話したいから、最後まで逃げないでね?」

そう言って、微笑む王太子様。

またもや、鳥肌がたった。
ロザンヌ、自業自得とはいえ、気の毒に……。


そして、広間の壁に魔石が記録した映像が映し出された。

結果として、大混乱になった。

ルドの魔石の性能はすばらしくて、壁に映し出しても、映像も音声もはっきりしていた。
壁の前は、あっという間に、人だかりができた。

ルドのポケットに、ペンみたいに、さしていた状態から記録していたのに、私を中心として広範囲が映っている。
本当にすごいものを作るね、ルドは!

そして、問題の場面。
立ち去ろうとした私の背後で、ロザンヌがダリアに飲み物をかけ、自ら悲鳴をあげたところも、ばっちりと映っていた。
これ以上ないほどの証拠だよね。

でも、問題だったのは、そこよりも、辺境騎士団を馬鹿にしたロザンヌの発言の数々。
そう、ここには、辺境騎士団の家族の方も大勢いる。

ロザンヌの発言に怒号がとんでいた。
王都に嫁ぐのなら、早く嫁いだほうがいいと思う……。

ロザンヌは、私を悔し涙にぬれた目でにらみつけている。

そんなロザンヌに、王太子様は上機嫌で言った。

「きっちり、白黒ついたね。で、君に、ひとつ言っておきたいことがある。君が馬鹿にしていた平民にもうすぐなれるから、がんばってね」

ロザンヌが目をむいた。

「は? なんで、そんな? ちょっと嘘をついただけで、私はたいしたことしてないわ!」

すると、王太子様はフフっと笑った。

「うーん、それとは関係ないんだ。君の父、バレリー伯爵のせいだよ。ぼくが、注目してるって言ったでしょ。急に羽振りがよくなったのは、隣国の貴族と組んで、色々、後ろ暗い商売をして儲けていたからだ」

「嘘!」

「本当だよ。今回は、辺境まで、その証拠を持って母上に説明にきたわけ。そうしたら、その令嬢が騒ぎをおこしてるから、びっくりしたよ。さすが親子だよね」

ぐったりとしたロザンヌに、それはそれは、にこやかに微笑みかける王太子様。
なんだか、悪魔のよう……。

結局、ロザンヌはバレリー伯爵とともに、別室へと連れ去られていった。

王太子様目当てで集まっていたご令嬢たちが、おびえたように王太子様を見ている。

「下心のある令嬢たちが寄ってこなくなったね? フフ」
と、満足そうな王太子様。

「なるほど、首をつっこんだのは、これが狙いだったのか。令嬢たちに群がられるのが、それほど嫌か?」

側近の方が、あきれたように言う。

「違うよ。ルイスのために掃除しただけ。ぼくに下心満載で近寄って来る令嬢は、ルイスには、もっと近寄る可能性があるからね。牽制みたいな? 母上のパーティーに来るのは面倒だったけど、たまには、こっちにも顔をだしたほうがいいね。脳筋母上は、目に見える悪事にしか気づけないし……。色々、早めにきれいにしておかないと、後々、ルイスに迷惑がかかったら大変だからね」

「はあー、なんだその理由? あいかわらず、気持ちわるいな」

側近の方が顔をしかめた。

が、ちょっと待って! 
今、騎士団長様のこと脳筋って言った?! 王太子様といえど、ムッとしてしまう。

「そうだ、マチルダ・ターナー騎士。王宮の騎士団にこない? 君、絶対、ルイスになびかなそうだから、ルイスの護衛としても使えるし」

「いえ、お断りいたします! 私は騎士団長様に憧れて、騎士になりましたから!」

怒っている私は、大きい声で即答した。

「生きる天使ルイスのそばじゃなくて、脳筋母上のそばを選ぶなんて、趣味が悪いね? まあ、気が変わったら言って……。それと、ルド・シュバイツ君。君、王宮の文官にならない?」

「いえ、ぼくもお断りいたします。ぼくは、マチルダ様の最高の従者を目指していますから」

「でも、マチルダ・ターナー騎士は、騎士団に入団するよね? もう従者はいらないんじゃない? 君、無職になるよ?」

「いえ、ぼくは、ずっとマチルダ様の従者です。マチルダ様が騎士団で働いている時間は、ぼくは、シュバイツ商会で働き、マチルダ様がお休みの時に従者としてお支えします」

「ふーん。でもね、ルド君……」

そこまで言って、王太子様がルドの腕をつかみ、自分のほうへとひきよせた。

ルドが恐怖のあまり体を硬直させている。
あわてて、ルドをかばうように、王太子様との間に体を入れた。

王太子様は、間に入った私を無視して、ルドにむけて意味ありげに言った。

「ルド君。欲しいものを、そばで見つめるだけでいいの? 王宮の文官としてがんばれば、欲しいものが手に入りやすいんじゃない? 貴族との身分差をごちゃごちゃ言う輩もいるしね。文官として実績をあげることは、君の持つ重要なカードの一つになる。ぼくなら、安心して手にいれられるように、まずは、まわりを固める。もちろん、使えるものはなんでも使ってね」

ルドが、はっとしたように息をのんだ。

王太子様は、フフっと笑った。

「気が変わったら、モーラに連絡して。待ってるからね!」

ルドは、王太子様の言葉に考え込むように、だまりこんだ。
ルドは何が欲しいだろう……。


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