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番外編
妹 ミリー・アンガス 5
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クリスティーヌお姉様が消えてから、いろんなことがあった。
まず、聖女。
お姉様を助けられなかったことで、聖女ではなかったと噂がひろまった。
それよりも、光につつまれて消えたお姉様のほうが聖女なんじゃないかという声まで上がりはじめた。
「こんなことなら、聖女様を養女にするんじゃなかった」
と、ぼやいているのはお父様だ。
「それよりも、クリスティーヌですよ? 一体、どこに消えてしまったの?」
と、涙をながすお母様。
そんなお母様の変わりっぷりに、あきれてしまった私。
「お姉様をかわいがってなかったのに、急にどうしたのよ」
思わず声にだして聞いてしまう。
「ミリー! なんてことを言うの? クリスティーヌも私が産んだ娘よ?!」
「でも、冷たかったわよね? お姉様に」
「それはっ…! お義母様に似てたから…。あの髪と目の色を見ると、思い出すのよ…。私に厳しかったお義母様のことを…!」
それって、つまり、私の髪と目の色がお姉様と同じだったら、私も可愛がられなかったってことよね?
私の髪と目の色がお母様と同じだから、私をかわいいと言ってただけなのね…。
「いまさら、そんなことを言ってもどうにもならんだろう! それより、聖女様のことだ。このまま評判が悪くなれば、王太子妃になれるかどうか…。なんのために養女にしたかわからん。クリスティーヌのことで悲しんでいるということで、養女を取り消してもらうか…」
と、苦々しい顔のお父様。
自分勝手なことばかり言うふたりを見ていたら、こんな人たちにかわいがられて、いい気になっていた自分は、何も考えていなかったんだなって思う。
そう思い始めたら、自分の気持ちにも気がついた。
お姉様からいろんなものを奪ったのは、本当に欲しかったわけじゃないってことを…。
私が物心ついた時、お姉様とは、食事の時くらいしか会えなかった。
王太子妃教育のため、王宮にいるか、屋敷にいるときは、いつも部屋で勉強していたから。
「なんで、おねーさまは、いっしょに、おそとへいけないの?」
お母様と出かける時、何度か聞いたことがある。
「クリスティーヌは王太子様の婚約者だから、いっぱい勉強しないといけないのよ」
お母様はそう答えて、私だけを連れてお茶会や買い物に行った。
そんな時、お茶会である姉妹に会った。
ふたりは、とっても仲が良くて、すごく、うらやましかった。
私もお姉様がいるのにって…。
妹のほうが、「お姉様にもらったの!」そう言って、かわいらしい髪留めを私に見せびらかした。
だから、思ったの。私もお姉様にもらおうって。
「おねーさま、私に、かわいい、かみどめをちょうだい!」
私は初めてお姉様の部屋を訪ねて、そう頼んだ。
驚いたような顔したお姉様。
でも、ふわっと、微笑んでくれたのよね。
そして、かわいい花柄の髪留めをくれたっけ…。
私は、ものすごくうれしくて、その髪留めをして、お茶会に行った。
あの姉妹にも散々自慢したわ…。
それから、私は、ちょくちょく、お姉様の部屋に物をもらいにいくようになった。
どんどんエスカレートしていく私に、お姉様も嫌がったり、あきれたりするようになった。
でも、私はやめなかった。
今思えば、その時だけは、お姉様が私を見てくれたから…。
後悔しても遅いけれど、そんな自分勝手な理由で、私はお姉様を苦しめてしまったのね…。
そんなことを考えている私に、お父様が言った。
「ライアン様は、クリスティーヌを救えなかった聖女様に憤っておった。…やはり、養女は取り消してもらおう。ミリーがライアン様と婚約するのに不利になるからな」
え…? 何を言っているの、お父様?
あの光景を見てもまだ、私がライアン様と婚約できると思ってるの?!
信じられないわ!
「お父様! ライアン様が、お姉様を慕っていたのは、誰が見ても明らかだったわよね? 私との婚約は無理よ」
「だが、クリスティーヌは消えた。なら、同じアンガス公爵家の娘だ。ミリーでいいだろう?」
と、当たり前のように言い放ったお父様。
これはダメだわ。話にならない…。
あのライアン様の姿を見て、お姉様のかわりに私がなれると思うなんて、どうかしている。
お姉様を抱きかかえて、号泣していたライアン様。
お姉様が消えたあと、ムルダー様につかみかかったライアン様。
その姿が、鮮明に、私の目に焼きついている。
あの時、茫然としながらも、私は、ライアン様のお姉様への思いに胸をうたれた。
うらやましいだなんて、ひとかけらも思わなったわ…。
もしも、叶うのなら、ライアン様とお姉様が一緒になれたらと願ってしまう。
そして、1年後。
ムルダー様の18回目の誕生日を祝うパーティーで、お姉様が戻ってきた。
またもや、光につつまれて…。
※沢山の方に読んでいただいて、驚いております! 本当にありがとうございます!
お気に入り登録、エールもありがとうございます! 大変、励みになります!
次回で、妹ミリー編は終了です。その後は、また、別視点にかわりますが、どうぞよろしくお願いします。
まず、聖女。
お姉様を助けられなかったことで、聖女ではなかったと噂がひろまった。
それよりも、光につつまれて消えたお姉様のほうが聖女なんじゃないかという声まで上がりはじめた。
「こんなことなら、聖女様を養女にするんじゃなかった」
と、ぼやいているのはお父様だ。
「それよりも、クリスティーヌですよ? 一体、どこに消えてしまったの?」
と、涙をながすお母様。
そんなお母様の変わりっぷりに、あきれてしまった私。
「お姉様をかわいがってなかったのに、急にどうしたのよ」
思わず声にだして聞いてしまう。
「ミリー! なんてことを言うの? クリスティーヌも私が産んだ娘よ?!」
「でも、冷たかったわよね? お姉様に」
「それはっ…! お義母様に似てたから…。あの髪と目の色を見ると、思い出すのよ…。私に厳しかったお義母様のことを…!」
それって、つまり、私の髪と目の色がお姉様と同じだったら、私も可愛がられなかったってことよね?
私の髪と目の色がお母様と同じだから、私をかわいいと言ってただけなのね…。
「いまさら、そんなことを言ってもどうにもならんだろう! それより、聖女様のことだ。このまま評判が悪くなれば、王太子妃になれるかどうか…。なんのために養女にしたかわからん。クリスティーヌのことで悲しんでいるということで、養女を取り消してもらうか…」
と、苦々しい顔のお父様。
自分勝手なことばかり言うふたりを見ていたら、こんな人たちにかわいがられて、いい気になっていた自分は、何も考えていなかったんだなって思う。
そう思い始めたら、自分の気持ちにも気がついた。
お姉様からいろんなものを奪ったのは、本当に欲しかったわけじゃないってことを…。
私が物心ついた時、お姉様とは、食事の時くらいしか会えなかった。
王太子妃教育のため、王宮にいるか、屋敷にいるときは、いつも部屋で勉強していたから。
「なんで、おねーさまは、いっしょに、おそとへいけないの?」
お母様と出かける時、何度か聞いたことがある。
「クリスティーヌは王太子様の婚約者だから、いっぱい勉強しないといけないのよ」
お母様はそう答えて、私だけを連れてお茶会や買い物に行った。
そんな時、お茶会である姉妹に会った。
ふたりは、とっても仲が良くて、すごく、うらやましかった。
私もお姉様がいるのにって…。
妹のほうが、「お姉様にもらったの!」そう言って、かわいらしい髪留めを私に見せびらかした。
だから、思ったの。私もお姉様にもらおうって。
「おねーさま、私に、かわいい、かみどめをちょうだい!」
私は初めてお姉様の部屋を訪ねて、そう頼んだ。
驚いたような顔したお姉様。
でも、ふわっと、微笑んでくれたのよね。
そして、かわいい花柄の髪留めをくれたっけ…。
私は、ものすごくうれしくて、その髪留めをして、お茶会に行った。
あの姉妹にも散々自慢したわ…。
それから、私は、ちょくちょく、お姉様の部屋に物をもらいにいくようになった。
どんどんエスカレートしていく私に、お姉様も嫌がったり、あきれたりするようになった。
でも、私はやめなかった。
今思えば、その時だけは、お姉様が私を見てくれたから…。
後悔しても遅いけれど、そんな自分勝手な理由で、私はお姉様を苦しめてしまったのね…。
そんなことを考えている私に、お父様が言った。
「ライアン様は、クリスティーヌを救えなかった聖女様に憤っておった。…やはり、養女は取り消してもらおう。ミリーがライアン様と婚約するのに不利になるからな」
え…? 何を言っているの、お父様?
あの光景を見てもまだ、私がライアン様と婚約できると思ってるの?!
信じられないわ!
「お父様! ライアン様が、お姉様を慕っていたのは、誰が見ても明らかだったわよね? 私との婚約は無理よ」
「だが、クリスティーヌは消えた。なら、同じアンガス公爵家の娘だ。ミリーでいいだろう?」
と、当たり前のように言い放ったお父様。
これはダメだわ。話にならない…。
あのライアン様の姿を見て、お姉様のかわりに私がなれると思うなんて、どうかしている。
お姉様を抱きかかえて、号泣していたライアン様。
お姉様が消えたあと、ムルダー様につかみかかったライアン様。
その姿が、鮮明に、私の目に焼きついている。
あの時、茫然としながらも、私は、ライアン様のお姉様への思いに胸をうたれた。
うらやましいだなんて、ひとかけらも思わなったわ…。
もしも、叶うのなら、ライアン様とお姉様が一緒になれたらと願ってしまう。
そして、1年後。
ムルダー様の18回目の誕生日を祝うパーティーで、お姉様が戻ってきた。
またもや、光につつまれて…。
※沢山の方に読んでいただいて、驚いております! 本当にありがとうございます!
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次回で、妹ミリー編は終了です。その後は、また、別視点にかわりますが、どうぞよろしくお願いします。
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