悪役令嬢? いえ、私、先回り令嬢です!

水無月あん

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またまた鐘がなる

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もうすぐ、夕食の時間。

なんと、今日は、マリアンヌとアイリーン、お父様と私の4人が揃って夕食をとることになっている。

あのふたりに会うのは倒れて以来、2度目。
つまり、前世の記憶を思い出してからは初めてということ。

リッキーのマンガの登場人物を間近で見ると思うと、ちょっとドキドキしてくるよね!

とりあえず、今日のところはふたりの様子がリッキーのマンガどおりなのか、それとも違うところがあるのか、違うとしたらどこなのか、色々と細かいところまで観察して、しっかり頭にいれとかないと。

食事より観察!
ミッション成功のため、今後の作戦をちゃんとたてないといけないからね。

その時だ。ドアをノックする音がした。

「シャノンお嬢様、お夕食の準備が整いました」

マーシャの声。

「今、行く」
と、答えたとたん、頭の中に、ゴーンと重たい鐘がなった。

一気に映像が流れこんでくる。
椅子に座って、映像の激しい波がおさまるまで待った。

なんと、流れてきた映像は、今から始まる食事の場面。
リッキーのマンガに、その場面も描かれてあったんだと驚いてしまう。

あのマンガ、まだ全部は思い出せてなかったんだ……。

アイリーンの過去のように、自分から集中して記憶につながった時や、ひとつを思い出すと、芋づる式に映像が流れてくる時とはちがって、鐘がなったあと、勝手に映像がどんどん流れこんでくる感じ。

そう、前世の自分を思い出したあの時みたいに。

もしかして、大事なことを思い出す前に鐘がなるんだろうか……。
うーん、よくわからないけど、そうだったら便利な鐘だね?
 
とにかく、今見た映像を整理してみると、4人そろっての初めての食事という短いエピソードだった。
ただ、短くても重要というか、大事な場面だったと思う。

というのも、マリアンヌとシャノンの関係が決定づけられる場面といっても過言ではないから。

その夕食会で、シャノンがドレスにつけていた赤い花のブローチをマリアンヌが欲しがったんだよね。

でも、それはシャノンの一番のお気に入りのブローチ。
絶対にあげたくないけれど、自分の気持ちをはっきり言えないシャノン。

結局、マリアンヌに押し負ける形で、泣きそうになりながらも、その赤い花のブローチを渡してしまったという場面。

そう、マリアンヌがシャノンの物を欲しがり、奪えたという最初の成功体験がこの食事の時なのだ。

しかも、マリアンヌにとったら、本当に欲しい物でもなんでもなかったんだよね。
だって、流れてきた映像では、食事の後、無残にも捨てられている赤い花のブローチの絵が描かれてあったし……。

うん、ひどい。
ダメダメだ。

こうなったら、マリアンヌが人の物を奪わないようにという大前提に加えて、物を大事にするというミッションも付け加えておこう。
前世の私は、バイト代やおこづかいなどマンガ本にすべてをつぎこむために、その他の物は涙ぐましいほどに節約してたんだよね。

必要な物が壊れたらなおす。なおらなくても使う。
捨てるという選択肢はない! という勢いで生きていた。

だから、あんなきれいなブローチを捨てるだなんて、見逃すわけにはいかない!

でも、ん……? なーんか、ひっかかるな……。
そう思った次の瞬間、頭の中に声が響いてきた。



(ねえ、リッキー。マリアンヌが悪役令嬢になる最初の一歩になる場面が欲しいんだよねー。そうだ、初めての食事のときにでも、シャノンの大事なものを奪うってどうかな?)

(えー? 食事の時にいきなり? なんか変じゃない?)

(全然、変じゃないよ、リッキー。あ、そうだ、ブローチとかいいかも。それも、食事のあとに、マリアンヌはすぐに捨てるの)

(ちょっと、のんちゃん。捨てるくらいだったら奪わなくていいんじゃない?)

(それが違うんだよ、リッキー。マリアンヌにとったら奪うまでが目的達成みたいな感じにしたいんだよね。だから、ゴミ箱の中に捨てられたブローチの絵をいれる。うん、いいんじゃない? あ、それだと、赤い花のブローチがいいかも。目をひくし。それに、マリアンヌの瞳の色と通じるから、なんだか匂わせてるみたいじゃない?)

(えっと、匂わせ……? 何言ってんの、のんちゃん……)

(もちろんマリアンヌが見事な悪役令嬢になる匂わせだよー! つまり、ゴミ箱に捨てられた赤いブローチがこれから始まるマリアンヌの悪役令嬢としての人生を暗示してるんだよ!)

(のんちゃん、興奮してるとこ悪いけど、その暗示、ほんとにいるかな……?)

(いるに決まってるよ! 我ながらいいこと思いついたと思う!)



腹立たしいほど自信満々な声が私の頭の中に響いた。

はあああ……またか! 
また、前世の私のせいか!? 

この口が余計なことをぺらぺらぺらぺら……! 

あー、なにがいいこと思いついた、だ!
前世の自分にどなりつけたくなる。

ここは前世の自分の責任をとって、きっちり先回りして、最初の一歩をふみつぶしておかないと!

私は気合いを入れるため、ほっぺたを両手で軽くパンッと叩いて、鏡を見る。

え? えええっ……!? 
いつの間にっ!? 

今、私の胸に輝いているのは、まさに赤い花のブローチじゃない!?
いやいやいや、でも、全くつけた記憶ないよね? 

なんで、なんで? 怪奇現象? こわいっ!

と、その時、はっとした。

もしかして、これが、ストーリーに沿っていこうとするという、まさかの強制力!? 

そう思ったら、腑に落ちた。
同時に、なんだか、めらめらと闘志がわいてきた。

私はリッキーのストーリーをほぼ書き直したと言ってもいいくらいに口はだしている。
今はまだ思い出していないストーリーもあるけれど、前世の私の魂は先の展開をしりつくしているからね。

つまり、私ってば、この世界の想像主のひとりとも言えるんじゃない!?
そう、強制力なんかに負ける気はさらさらないのだ、……フフフフ! 

ということで、私はひきだしをひっくり返して、強制力にあらがうための準備を始めた。

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