オハギとオモチ ~夏編~

水無月あん

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子グマ

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子リスとわかれたオハギ。長いワンピースをたくしあげながら、また、ずりずりと歩いていると、子グマがいた。
木にもたれて、すわりこんでいる。

オハギは、またまた、フフっと笑って言った。
「泣きそうな子、みいーつけた」

オハギを見ても、子グマは驚かない。涙がこぼれそうな目を大きくあけて、聞いてきた。

「だれ?」

「わたしは、立派な魔女よ!」
オハギは、さっきより、もっともっと、胸をはった。

「まじょ? 子ども…」

「子どもじゃなくて、魔女なの! それも、とっても立派な魔女。 目がまるくても、ほっぺたがまるくても、関係ないの!」

そう、今のオハギは、真っ黒でながーい髪の毛は、背中にたらし、真っ黒いとんがり帽子は、目がしっかり見えるように、かぶっている。
だって、じゃまなんだもの!

「りっぱなまじょ? ふーん、そう」
子グマは、興味がなさそうにつぶやいた。

「いやいや、もっと聞いてよ! 立派な魔女って、何ができるの?とかね」

「じゃあ、なにができるの?」

棒読みで聞く、子グマ。

「なんでも、できるわよ! さっきだって、子ウサギのにんじんを見つけたり、子リスの羽も見つけたんだからね!」

とたんに、子グマが立ちあがった。

「だったら、小鳥さんがいなくなったから、探してよ」
今にも泣き出しそうな顔で頼んでくる子グマ。

「小鳥? もしかして、あなたも羽を飾ってるの? 今、はやってるのかしらね?」

「ちがうよっ! ぼくが探してほしいのは、小鳥さん。ずっと、ぼくの肩にのって、歌ってくれてたの」

「え? その小鳥は、ずっと前から、あなたの肩にのってたの?」
びっくりして聞く、オハギ。

「ううん、今朝からだよ。でも、ぼくたちはもう友達なんだ!」

「友達? そうだ、友達が欲しいなら、白猫はどう? 歌は歌えないけど、飛んでいったりしないわ。めんどうくさいって、ねっころがってばかりだから。いつでも、貸し出すわ。涙をくれればね」

「そんなのいやだっ! ぼくが探してほしいのは、きれいな声で歌ってくれる小鳥さんだもん。友達のいないぼくの肩にとまって、歌ってくれたんだもん。はじめてできた友達なのに!」

「え? はじめてできた友達なの? …まあ、私もいないけど」

「だって、あんなに、きれいな声で、歌ってくれるんだよ。木にもたれて、すわって聞いてたら、気持ちよくなって、ねむっちゃった。小鳥さーんって、呼んでみたけど、見つからないんだ! きっと、ぼくが眠っちゃったから、がっかりして、どっかへ行ったのかも。友達になってくれたと思ったのに。 うおおおおおおん!」

子グマの目から、ぼとぼとと涙がこぼれおちはじめた。

オハギは、あわてて、ポケットからハンカチをだして、子グマの顔におしつける。

そして、やっと、子グマが泣きやむと、ふんわりしていたハンカチが、クッションみたいにふくらんだ。

「涙の量が多かったから、いい感じ! もう、じゅうぶんね!」

オハギは、にこにこしながら、ふくらんだハンカチを大事にかかえる。もう、ポケットには入らない。

「じゃあ、涙のお礼に探してあげる」

「え、ほんと?!」

「ほんとうよ! 立派な魔女は、うそをつかないの。みてなさい。…あ、でも、今度は自慢の鼻では無理かしら?」

オハギは、首をひねって、考えた。

「あ、そうだ。その小鳥、どんな声で歌ってたの?」

子グマは、コホンとせきばらいをして、声をだした。

「ヒュールリー、ピーララー。ピーピー、ヒュールリー」

調子っぱずれの音が続く。…これは、参考にならない。

「もういいわ」

オハギはそう答えると、今度はあたりをうろつきながら、耳をすませた。

「あの…、なにしてるの?」

「小鳥のきれいな声を探しているの。立派な魔女は、鼻ほどじゃないけれど、耳もいいの。…あ、聞こえてきた。すごーく、いい声で歌ってみるみたいだから、そうじゃないかしら」
そう言うと、オハギは、子グマの手をひっぱって、声のほうへと連れて行った。

小鳥の声が近づいてきて、子グマにも聞こえたよう。

子グマが見上げた木のてっぺんで、気持ちよさそうに歌う、美しい青い小鳥。

「いた! ぼくの友達、小鳥さんだ!」
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