天使かと思ったら魔王でした。怖すぎるので、婚約解消がんばります!

水無月あん

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遠足?

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お疲れのジリムさんに、
「朝食は食べられましたか? まだなら、一緒に食べませんか?」
と、聞いてみた。

睡眠が不足してるなら、せめて栄養をとってください!
でも、まあ、私がごちそうになってる立場なんだけどね…。

すると、ジリムさんは、
「ありがとうございます。アデル王女様。仕事の合間に簡単に食べてきましたので、お気づかいなく」
そう言って、疲れの濃い顔で微笑みかけてくれた。

笑うと、ジリムさんも美形なんだよね。なのに、悲壮感がすごい…。
そして、鋭い目で、すでに朝食を食べ始めているデュラン王子を睨んでいる。

が、そんな視線を、ものともせずに食べているデュラン王子。
やはり、メンタルが強すぎる!

そんな微妙な空気の中だけれど、いざ食べ始めると、おなかがすいていた私は、食べる、食べる!

隣に座っているユーリが、
「アデル、よほど、おなかがすいてたんだね。かわいそうに」
と言いながら、自ら、カップに紅茶のおかわりを注いでくれたり、おかわりのパンをお皿にとってくれたり。

まるで乳母のように、かいがいしく世話を焼くユーリを、驚いたように見つめるイーリンさん。

ユーリは、ほんと、ロイドに似てきたね…。

そして、おなかいっぱい、いただいて、
「美味しかったです! 大満足です! ごちそうさまでした!」
と、心よりお礼を述べる。

イーリンさんが、フフッと笑った。

デュラン王子が、
「気に入ってくれて良かった。いい食べっぷりだったね」
と、微笑んだ。

ということで、今日の予定は何かしら?

と思ったら、ジリムさんが、
「まずは、王都の観光スポットを中心に見てまわります。そして、帰ってきてから、デュラン王子の図書室へご案内いたします。本はどれでも、何冊でも、好きなだけお持ちください。
出発は、今から30分後に予定しておりますが、よろしいでしょうか?」
と、言った。

「はい! よろしくお願いします!」
私は、わくわくして、ジリムさんに答えた。

すると、
「わたしもついて行っていいかな?」
と、イーリンさんが聞いてきた。

デュラン王子とジリムさんが、驚いた顔をしている。

が、私の気持ちは、更に舞い上がった。
とういうのも、私は女の子の友達がいない。というか、一度もいたことがない。
だって、友達は、マルクだけだったから…。
自分で言って悲しいんだけどね…。

よって、女の子の友達と、どこかへ出かけるなんて、今世では初めてだわ!

「うん、もちろん! イーリンさんが一緒なら、とっても嬉しい! 一緒に行こう!」
思わず、大きな声で言った。


ということで、30分後。
私は、お城の前にいます。目の前には、大きな馬車がとまっている。

が、ここで、さらに思わぬ人が登場した。

「ええと、もしかして、ランディ王子も行くの?」
と、私が聞くと、

「あたりまえだろ。ユーリさんが行くんだから、弟子の俺がついて行かないとな。
ということで、ユーリさんの隣は俺が座るからな。遠慮しろよ、アデル」
と、なんだかえらそうな態度で話す、ランディ王子。

まさかとは思うけれど、兄弟子の気分なのかしら? 
私は、ユーリの弟子ではありませんよ?

そして、ユーリのお隣の席は、どうぞ、どうぞ、お好きに座ってください。
私は、イーリンさんの隣に座りたいしね!

ということで、お城の前には、ぞろぞろと濃いメンバーが集まっている。

私とイーリンさんは、動きやすく、カジュアルなドレスを着ている。
そして、前髪をきったイーリンさんは、いきいきとした表情だ。
琥珀の瞳もきらきらして、かわいらしい!

そして、ユーリも、デュラン王子も、ランディ王子も、シャツにパンツみたいな、カジュアルな装いだけれど、もとが、きらきら星人なので、妙にきらびやかな集団になってしまっている。

6人でもゆったり乗れる、すごく大きな馬車が用意されていた。

「では、奥に座られる方から乗っていただきたいのですが、どのような並びで座られますか?」
と、ジリムさん。

そうか、3人対3人で、向かい合うようにすわる座席になってるものね。

が、ここは、せっかくなので、
「私は、イーリンさんの隣に座りたい!」
と、私がまず言った。

ランディ王子が、負けじと意見を言う。
「俺は、ユーリさんの隣に座る。弟子だからな」

そのユーリは、
「アデルの隣じゃないと座らないから」
と、言いきった。

…なんだ、それは?

「じゅあ、ぼくは、アディーの真ん前がいいな。顔がよく見えるからね」
と、微笑みながら言うデュラン王子。

イーリンさん以外は、私もふくめ、自分の希望を言いっぱなしだ。

ジリムさんの眉間のしわが、更に深くなる。
座る並びを考えてるのよね…。
ほんと、お世話をかけてすみません…。

そして、ジリムさんが、口を開いた。

「…皆さんの好き勝手な意見を、まとめさせていただきました。有無は言わせません。変更も聞きません。
黙って、私が言う通りに、座ってください」
と、言い放った。

「まずは、進行方向をむいた席には、奥から、次期公爵様、アデル王女様、そして、イーリン様の順で座っていただきます。そして、向かい側の席には、奥から、ランディ王子、デュラン王子、そして私が座ります。
…ランディ王子、次期公爵様の隣はとれませんので、向かい側でがまんしてください」
と、一気に言いきった。

すごいね、ジリムさん。即座に、それぞれの希望を取り入れた席を決めたものね。

ジリムさんの差配によって、事なきをえた席順で、大人しく、皆が座り、馬車は無事出発。
ゆったり座れるスペースはあるのだけれど、一人一人のキャラが濃く、きらきらしすぎて、圧がすごい…。

でも、やっぱり、わくわくしてきたわ。
なんだか、前世の遠足みたいよね!  

そして、遠足と言えば、お菓子だよね。
何か、持ってきたらよかったな。




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