95 / 158
精霊たち
しおりを挟む
この微妙な空気の中、ユーリが、私に近づいて、
「精霊であろうが、なんであろうが、ぼくからアデルを引き離すものには容赦しないよ。覚えといて」
そう言って、うっとりするような美しい笑みを浮かべて、私の頬をさらりとなでた。
ぎゃあっ、やめて!
ちょっと、皆の前で、なんてことするの!
あー、また、顔が熱くなってきた! せっかくおさまってたのに…。
あわてて、熱くなった顔を手のひらであおぐ。
恥ずかしいと思いつつ、まわりを見てみると、ジリムさんは、興味を失ってるのか、全く関係ないところを見ているし、デュラン王子は、ユーリをにらんでる。そして、ランディ王子は、私をにらんでる…。
一層、混沌としてきたね…。
そんななか、イーリンさんが、
「あ、泉の精霊たちが、アデルちゃんを取り囲んで、ぐるぐるまわってる。すごく、喜んでるみたいだよ!
しかも、泉のほうにひっぱってるよ!」
と、興奮気味に言った。
「え、なんだろ?」
と、思ったら、自然と泉の方へ足が動いた。
泉をのぞきこむ。
イーリンさんが、精霊たちの状況を実況してくれる。
「みんなで、アデルちゃんの手をもって、泉にひっぱってる。…多分、水に手をつけて欲しいんじゃないかな?」
「えっと? 泉に手を入れていいの?」
と、思わず聞くと、
「大丈夫ですよ。一応、水は検査してますが、飲めるレベルの水質です。手を入れても、大丈夫ですよ」
と、ジリムさんが言った。
なら、やってみよう!
泉はぐるりと低い柵がされている。
柵ごしに、手をのばしてみる。背が低いから、うーん、ぎりぎり、届くかな?
すると、ふいっと体が持ち上がった。
えー?!
ウエストをおさえられて、子どものように持ち上げられている状態だ。
「ほら、これで届くでしょ? 落ちないでね」
と、ユーリの声。
恥ずかしくて、思わず手足を動かすと、
「動くと、がっしり、ぴったり、抱きしめるけど、それでもいい?!」
と、ユーリが言う。
いや、それは、やめて! …大人しくしてます。
が、ユーリって、細いのに鍛えてるから、力があるよね?
よく食べるので、背は低くても、しっかり身がつまっている私を軽々もちあげてるんですけど?
ということで、泉に手が届いた!
水の冷たさが、気持ちいい!
でも、…あれ?!
手のひらから、水がすーっと入っていくような感じ…。
なんだろう? この不思議な感覚…。
「あ、降ろしていいよ、ユーリ」
と、私が言うと、ゆっくりと、ユーリが地面に降ろしてくれた。
「ユーリ、ありがとう」
と、お礼を言うと、
「もっと、だっこしてたかったな」
と、色気あふれる笑みを浮かべた。
だっこ、って…。私はペットじゃありませんよ?!
イーリンさんが、待ちきれない様子で、私に聞いた。
「アデルちゃん、手を水につけてみて、どうだった?」
「うーん、なんか水が、どんどん、手から入ってくるような感じなんだよね。吸収していくというか…。ほら、見て。水がすいこまれるから、手がぬれてない。
一体、どういうことかしら? イーリンさん、精霊たち、なんか、伝えてきてる?」
と、今度は、私が、イーリンさんに聞いてみた。
イーリンさんは、
「アデルちゃんのまわりの精霊たちが、飛び跳ねたり、踊ったりして、すごく喜んでる感じに見える。
でも、なんで、泉に手をつけさせたのかは、わからないわね…」
と、私の手を見て、うーんとうなった。
「ちょっと、ぼくに見せて」
と、デュラン王子。
私はうなずき、水につけた私の手を、デュラン王子の方へのばした。
そのとたん、その手が、さっと、にぎられた。
え? あ、ユーリだ。
ユーリが、デュラン王子の方へのばした私の手を、がっしりとにぎり、自分の方へ持っていってる。
そして、私にむかって、
「ぼく、触らせないでって、言ったよね? また、消毒するよ?!」
と、美しい青い瞳でじっと私を見据えながら、手をぎゅーっとにぎりこまれた。
あ、しまった! 精霊のほうに気がいって、ユーリとの約束、すっかり忘れてたわ…。
デュラン王子が、
「どんだけ、余裕がないの? 独占欲が強すぎて、うとまれるよ?」
と、不満げにユーリに言う。
「独占欲があって、あたりまえだよね。婚約者なんだから。赤の他人は黙ってて」
と、冷たい視線をデュラン王子に投げかけるユーリ。
またもや、殺伐としてきたんだけど。
今日は楽しい観光ですよ! やめて!
と、そこで、
「あっ!」
と、大声をだしたのが、ランディ王子。
急にどうしたの?!
と、思ったら、
「げげげ、なんか、見える! アデルから、なんか、見えるっ!」
と、私を指さして、わめきだした。
「精霊であろうが、なんであろうが、ぼくからアデルを引き離すものには容赦しないよ。覚えといて」
そう言って、うっとりするような美しい笑みを浮かべて、私の頬をさらりとなでた。
ぎゃあっ、やめて!
ちょっと、皆の前で、なんてことするの!
あー、また、顔が熱くなってきた! せっかくおさまってたのに…。
あわてて、熱くなった顔を手のひらであおぐ。
恥ずかしいと思いつつ、まわりを見てみると、ジリムさんは、興味を失ってるのか、全く関係ないところを見ているし、デュラン王子は、ユーリをにらんでる。そして、ランディ王子は、私をにらんでる…。
一層、混沌としてきたね…。
そんななか、イーリンさんが、
「あ、泉の精霊たちが、アデルちゃんを取り囲んで、ぐるぐるまわってる。すごく、喜んでるみたいだよ!
しかも、泉のほうにひっぱってるよ!」
と、興奮気味に言った。
「え、なんだろ?」
と、思ったら、自然と泉の方へ足が動いた。
泉をのぞきこむ。
イーリンさんが、精霊たちの状況を実況してくれる。
「みんなで、アデルちゃんの手をもって、泉にひっぱってる。…多分、水に手をつけて欲しいんじゃないかな?」
「えっと? 泉に手を入れていいの?」
と、思わず聞くと、
「大丈夫ですよ。一応、水は検査してますが、飲めるレベルの水質です。手を入れても、大丈夫ですよ」
と、ジリムさんが言った。
なら、やってみよう!
泉はぐるりと低い柵がされている。
柵ごしに、手をのばしてみる。背が低いから、うーん、ぎりぎり、届くかな?
すると、ふいっと体が持ち上がった。
えー?!
ウエストをおさえられて、子どものように持ち上げられている状態だ。
「ほら、これで届くでしょ? 落ちないでね」
と、ユーリの声。
恥ずかしくて、思わず手足を動かすと、
「動くと、がっしり、ぴったり、抱きしめるけど、それでもいい?!」
と、ユーリが言う。
いや、それは、やめて! …大人しくしてます。
が、ユーリって、細いのに鍛えてるから、力があるよね?
よく食べるので、背は低くても、しっかり身がつまっている私を軽々もちあげてるんですけど?
ということで、泉に手が届いた!
水の冷たさが、気持ちいい!
でも、…あれ?!
手のひらから、水がすーっと入っていくような感じ…。
なんだろう? この不思議な感覚…。
「あ、降ろしていいよ、ユーリ」
と、私が言うと、ゆっくりと、ユーリが地面に降ろしてくれた。
「ユーリ、ありがとう」
と、お礼を言うと、
「もっと、だっこしてたかったな」
と、色気あふれる笑みを浮かべた。
だっこ、って…。私はペットじゃありませんよ?!
イーリンさんが、待ちきれない様子で、私に聞いた。
「アデルちゃん、手を水につけてみて、どうだった?」
「うーん、なんか水が、どんどん、手から入ってくるような感じなんだよね。吸収していくというか…。ほら、見て。水がすいこまれるから、手がぬれてない。
一体、どういうことかしら? イーリンさん、精霊たち、なんか、伝えてきてる?」
と、今度は、私が、イーリンさんに聞いてみた。
イーリンさんは、
「アデルちゃんのまわりの精霊たちが、飛び跳ねたり、踊ったりして、すごく喜んでる感じに見える。
でも、なんで、泉に手をつけさせたのかは、わからないわね…」
と、私の手を見て、うーんとうなった。
「ちょっと、ぼくに見せて」
と、デュラン王子。
私はうなずき、水につけた私の手を、デュラン王子の方へのばした。
そのとたん、その手が、さっと、にぎられた。
え? あ、ユーリだ。
ユーリが、デュラン王子の方へのばした私の手を、がっしりとにぎり、自分の方へ持っていってる。
そして、私にむかって、
「ぼく、触らせないでって、言ったよね? また、消毒するよ?!」
と、美しい青い瞳でじっと私を見据えながら、手をぎゅーっとにぎりこまれた。
あ、しまった! 精霊のほうに気がいって、ユーリとの約束、すっかり忘れてたわ…。
デュラン王子が、
「どんだけ、余裕がないの? 独占欲が強すぎて、うとまれるよ?」
と、不満げにユーリに言う。
「独占欲があって、あたりまえだよね。婚約者なんだから。赤の他人は黙ってて」
と、冷たい視線をデュラン王子に投げかけるユーリ。
またもや、殺伐としてきたんだけど。
今日は楽しい観光ですよ! やめて!
と、そこで、
「あっ!」
と、大声をだしたのが、ランディ王子。
急にどうしたの?!
と、思ったら、
「げげげ、なんか、見える! アデルから、なんか、見えるっ!」
と、私を指さして、わめきだした。
17
あなたにおすすめの小説
この世界に転生したらいろんな人に溺愛されちゃいました!
キムチ鍋
恋愛
前世は不慮の事故で死んだ(主人公)公爵令嬢ニコ・オリヴィアは最近前世の記憶を思い出す。
だが彼女は人生を楽しむことができなっかたので今世は幸せな人生を送ることを決意する。
「前世は不慮の事故で死んだのだから今世は楽しんで幸せな人生を送るぞ!」
そこからいろいろな人に愛されていく。
作者のキムチ鍋です!
不定期で投稿していきます‼️
19時投稿です‼️
ヤンデレ旦那さまに溺愛されてるけど思い出せない
斧名田マニマニ
恋愛
待って待って、どういうこと。
襲い掛かってきた超絶美形が、これから僕たち新婚初夜だよとかいうけれど、全く覚えてない……!
この人本当に旦那さま?
って疑ってたら、なんか病みはじめちゃった……!
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
お堅い公爵様に求婚されたら、溺愛生活が始まりました
群青みどり
恋愛
国に死ぬまで搾取される聖女になるのが嫌で実力を隠していたアイリスは、周囲から無能だと虐げられてきた。
どれだけ酷い目に遭おうが強い精神力で乗り越えてきたアイリスの安らぎの時間は、若き公爵のセピアが神殿に訪れた時だった。
そんなある日、セピアが敵と対峙した時にたまたま近くにいたアイリスは巻き込まれて怪我を負い、気絶してしまう。目が覚めると、顔に傷痕が残ってしまったということで、セピアと婚約を結ばれていた!
「どうか怪我を負わせた責任をとって君と結婚させてほしい」
こんな怪我、聖女の力ですぐ治せるけれど……本物の聖女だとバレたくない!
このまま正体バレして国に搾取される人生を送るか、他の方法を探して婚約破棄をするか。
婚約破棄に向けて悩むアイリスだったが、罪悪感から求婚してきたはずのセピアの溺愛っぷりがすごくて⁉︎
「ずっと、どうやってこの神殿から君を攫おうかと考えていた」
麗しの公爵様は、今日も聖女にしか見せない笑顔を浮かべる──
※タイトル変更しました
【改稿版】夫が男色になってしまったので、愛人を探しに行ったら溺愛が待っていました
妄夢【ピッコマノベルズ連載中】
恋愛
外観は赤髪で派手で美人なアーシュレイ。
同世代の女の子とはうまく接しられず、幼馴染のディートハルトとばかり遊んでいた。
おかげで男をたぶらかす悪女と言われてきた。しかし中身はただの魔道具オタク。
幼なじみの二人は親が決めた政略結婚。義両親からの圧力もあり、妊活をすることに。
しかしいざ夜に挑めばあの手この手で拒否する夫。そして『もう、女性を愛することは出来ない!』とベットの上で謝られる。
実家の援助をしてもらってる手前、離婚をこちらから申し込めないアーシュレイ。夫も誰かとは結婚してなきゃいけないなら、君がいいと訳の分からないことを言う。
それなら、愛人探しをすることに。そして、出会いの場の夜会にも何故か、毎回追いかけてきてつきまとってくる。いったいどういうつもりですか!?そして、男性のライバル出現!? やっぱり男色になっちゃたの!?
悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。
槙村まき
恋愛
スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。
それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。
挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。
そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……!
第二章以降は、11時と23時に更新予定です。
他サイトにも掲載しています。
よろしくお願いします。
25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!
半竜皇女〜父は竜人族の皇帝でした!?〜
侑子
恋愛
小さな村のはずれにあるボロ小屋で、母と二人、貧しく暮らすキアラ。
父がいなくても以前はそこそこ幸せに暮らしていたのだが、横暴な領主から愛人になれと迫られた美しい母がそれを拒否したため、仕事をクビになり、家も追い出されてしまったのだ。
まだ九歳だけれど、人一倍力持ちで頑丈なキアラは、体の弱い母を支えるために森で狩りや採集に励む中、不思議で可愛い魔獣に出会う。
クロと名付けてともに暮らしを良くするために奮闘するが、まるで言葉がわかるかのような行動を見せるクロには、なんだか秘密があるようだ。
その上キアラ自身にも、なにやら出生に秘密があったようで……?
※二章からは、十四歳になった皇女キアラのお話です。
王子の寝た子を起こしたら、夢見る少女では居られなくなりました!
こさか りね
恋愛
私、フェアリエル・クリーヴランドは、ひょんな事から前世を思い出した。
そして、気付いたのだ。婚約者が私の事を良く思っていないという事に・・・。
婚約者の態度は前世を思い出した私には、とても耐え難いものだった。
・・・だったら、婚約解消すれば良くない?
それに、前世の私の夢は『のんびりと田舎暮らしがしたい!』と常々思っていたのだ。
結婚しないで済むのなら、それに越したことはない。
「ウィルフォード様、覚悟する事ね!婚約やめます。って言わせてみせるわ!!」
これは、婚約解消をする為に奮闘する少女と、本当は好きなのに、好きと気付いていない王子との攻防戦だ。
そして、覚醒した王子によって、嫌でも成長しなくてはいけなくなるヒロインのコメディ要素強めな恋愛サクセスストーリーが始まる。
※序盤は恋愛要素が少なめです。王子が覚醒してからになりますので、気長にお読みいただければ嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる