天使かと思ったら魔王でした。怖すぎるので、婚約解消がんばります!

水無月あん

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心配してあげて?

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「ねえ、何、話してたの?」
と、ユーリがランディ王子をつれて、近づいてきた。

うっ…言えない。

「ランディ王子が、楽しそうだねって話してたんだよ」

嘘は言ってない…。

話をかえるため、あわてて、
「それで、どうだった? 魔力の練習?」
と、ランディ王子に聞いてみた。

ランディ王子は、
「ユーリさんに教えてもらって、すごく、水の流れが見えるようになって、…ブハッ!」
言いかけて、途中で、ふきだした。

「よく見たら、その姿、すごい笑えるよな!」
と、私を指差して笑っている。

ちょっと、人を指差してはいけません!

「なにが、そんなにおかしいの?」
私が、ムカッとしながら、たずねると、

「だって、頭の上から、すごい勢いで水が上にでっぱなしなんだぞ。笑えるだろ?! ギャハハハ」
と、王子とは思えない、品のなさで笑いだした。

そんなランディ王子に、ユーリが近づいて言った。
「ランディは、アデルがうらやましいんだね? わかった、全く同じにはできないけど、似たような感じにしてあげるよ」

そういうや否や、泉に近づき、噴き上がる泉の水に手をかざして、素早く凍らせて、氷の柱をつくり、手で折った。
そして、それを持ってきて、ランディ王子の頭のてっぺんにおき、少しの間、おさえている。

それから、そっと手を離した。

えええええ?! ランディ王子の頭の上に、ほそながーい氷の柱がたっている。

しかも、本物の氷の柱なので、皆に見える。そう、通りがかりの人たちにも…。

みんな、茫然として、ランディ王子の頭に注目してる。

ユーリは、
「噴水にはできなかったけど、似たような感じでしょ?」
と、それはそれは、美しく微笑んだ。

「いやいやいやいや、何してるの? ユーリ!」
思わず、声にだして、つっこんでしまった。

すると、ユーリは、
「アデルのことを馬鹿にするなんて、許せないからね」
と、私に向かって、甘く笑いかけてくる。

いや、そんな表情で、やってることはすごいんですが…。

「あっ、あのおにいちゃん、あたまから、なんかでてる!」
と、小さな子どもが、指差して叫んだ。
今や、皆が、恐れと好奇心のまじった目で、ランディ王子の頭に注目している。

ジリムさんが、
「おそるべき魔力を、なんとも斬新に使いましたね」
と、ぼそりとつぶやいた。

ほんとにね…。

とりあえず、私がなんとかしないとね!

「ちょっと、ユーリ! 早く、元に戻してよ!」
私が、ユーリに詰め寄っていると、

「さすが、ユーリさんだ! こんなことできるなんて、すごいっ!」
と、嬉しそうな声。

頭の上の氷の柱を、手でさわりながら、何故か喜んでいる、ランディ王子。

「ほら、本人も気に入ってるみたいだから、そのままで、いいんじゃない?」
と、ユーリが涼しい顔で言った。

そこで、ジリムさんがひとこと。
「いえ、この後、移動しますので、あれでは馬車に乗れません」

確かに。しかし、ジリムさん、なんとも冷静だわね…。

ここで、デュラン王子が、
「じゃあ、ここにランディをおいていこうか? 王宮まで歩いて帰れる距離だしね?」
と、言った。

え?! それも、ひどいんですが…。

「でも、氷の柱が長すぎて、あれじゃあ、歩きにくいんじゃない?」
と、これまた、冷静に意見を言う、イーリンさん。

いやいや、あのランディ王子の様子は、異常事態だよ?!
だれか、心配してあげて?!

ランディ王子がかわいそうになって、もう一度見ると、顔がゆるゆるになっている。

私は、ランディ王子に近づいて、おそるおそる聞いてみた。
「…ねえ、そんな変な状態なのに、なんで嬉しそうなの?」

すると、ランディ王子が、
「なんか、ユーリさんの凍えるような冷たい魔力が、俺の頭と一体化して、嬉しいんだよな」
と、にんまり笑った。

…この人、一体、なにを言ってるのかしら?
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