天使かと思ったら魔王でした。怖すぎるので、婚約解消がんばります!

水無月あん

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状況がわからないのだけれど?

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目の前がまっしろ。ええと、みなさんはどちらに…?
自分の置かれている状況がわからない。
そして、寒すぎる!

「ねえ、ユーリ…。ここはどこかしら…? 白いものしか見えないのだけれど?」

すると、ユーリは私を横抱きにしたまま、顔をのぞきこんだ。

「どいつもこいつも、あんまり馬鹿だから、つい氷の壁を作っちゃった」
そう言って、美しい笑みを浮かべた。

表情と話す内容が全くあわない。
…そして、氷の壁って何?!

「つまり、この白いものは、みなさんとの間に、ユーリが瞬間的に作った氷の壁ということかしら?」

「うん、そうだね」
ふわっと微笑む、ユーリ。

ええええ?! いやいやいや、ちょっと待って!
それって、どういうこと?!

冷気を放つまっしろな壁を、茫然と見つめる私。
そこに奇妙なものを発見。

「…あのっ、あれはっ?!」

思わず叫んでしまう。

ユーリが私の目線を追い、軽い口調で言った。
「ぼくのバッグだね?」

「そうじゃなくて、手よ! バッグを持ったままの手が、壁からつきでてるじゃないっ?! ユーリのバッグを持っているといえば、あの手は…?!」

「あ、ほんとだ。ぼくたちの一番近くにいたから、ちょうど壁の中に入っちゃったんだね? ランディは」
クスッと笑うユーリ。

「そこ、笑うところじゃないわ! 早く、壁からださなきゃ! 死んじゃうわよ?! 早くお湯を!」
ユーリの横抱きから逃れようと、あばれながら叫ぶ私。

が、余計に、ぎゅーっと強く抱きかかえられ、全く身動きがとれなくなった。

「ちょっと、ユーリ、はなしてよっ! 早く、ランディ王子を助けださなきゃ!」

「大丈夫、落ち着いて、アデル。晩餐会の時、うるさい令嬢たちを凍らせたけれど、死んでなかったでしょ? それに、壁の向こうにはクソドラゴンが2匹いるからね。どうせ、火で溶かすと思うよ。この壁も、もって10分ってとこか…。だから、アデル、行こう。邪魔が入る前に」
ユーリは妖し気に微笑むと、私を抱えたまま、玄関のほうにむかって、すごい早足で戻りはじめた。

「ちょっと、ユーリ! どこへ行くの?!」
あわてて聞く私。

「うん、デート。ほら、俺、昨日から、ずーっと我慢してたんだよね? 生まれてこのかた、こんなに我慢したことなんてないんだよ? でも、もう、ほんと、我慢の限界。今、アデルを補充しないと、多分、この国つぶすと思う」

「え、それはダメー!!」

「なら、俺にアデルを補充させて?」
美しく微笑むユーリ。でも、目はちっとも笑ってない。

こわごわと観察してみると、膨大な魔力を放ったせいか、まぶしいほどの金色の髪は乱れ、青い瞳は冴えわたり、かなり妖しく危ない雰囲気。
道で会ったら、確実に目をあわさないわ。うん、怖いわね…。

なにより、俺って言っているものね。それって、相当、怒ってる時なのよね…。
まあ、氷の壁を一瞬にして作るくらいだものね。
そんな人、初めて見たし、初めて聞いたわ…。
さすが、わが国が誇る魔王。

私が今できることはないけれど、とりあえず、ヨーカンに念をとばす。
虹竜さんと一緒に氷の壁を溶かし、一刻も早く、ランディ王子を助けてあげて!

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