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12話 潜入
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S08によって、勢いよく殴り飛ばされた扉とG45。
聴覚を強化していないS08でなくても、遠くに聞こえた扉が叩きつけられた音とG45の怒鳴り声に、ご満悦とばかりのT19の後ろで、O12はありえない物を見るように前方を見ていた。
「先にやる内容は言え」
「マジでできると思ってなかったしぃ? ゴリラ遺伝子でも入ってんの?」
「俺に入ってるなら、お前にも入ってるだろ」
「初期型と一緒にしないでくんない? ねぇ? O」
「え、うん」
同意を得られたと、T19はS08へ文句を口にしながら、扉が無くなった研究所の中に入ると、廊下に座り込む怯えた顔の研究員がいた。
「あ、ちょうどいいとこに、かわいそーなお姉さん、みっけ」
「ヒッ……」
まるで何も起きていなかったかのような無垢な笑顔で、T19は研究員の前に屈んだ。
その頃、正面玄関から繋がる、一番奥の廊下まで辿り着いたG45は、ひとしきりS08とT19への恨み言を吐き終えると、視界に見えた重厚な扉を見上げた。
似たような扉を、以前にも見たことがある。
決して近づいてはいけないと言われていた扉で、そこから出ていく人を追いかけて行こうとした奴らは、みんな殺された。
自分たちと同じような奴らを閉じ込めておく施設。
つまり、P03が攫われて、閉じ込められるなら、この先だ。
考えが至れば、行動は速かった。
前回と同じように、その扉を力任せに、こじ開ける。
「ウラァァァアアァァアァアッッ!!!!」
正面玄関よりもずっと重い扉を、両手でこじ開ければ、扉の前に倒れている楸がいた。
「楸!?」
「じ、ぃ……?」
G45はすぐに楸をその場から引きずり出すと、楸を壁際に寝かせ、楸を守るように一緒に飛んできた扉を壁に立てかけ、自分は扉の向こうへ戻ってしまった。
毒ガスが撒かれているであろう区画へ向かおうとするG45を、止めようと声を上げるようにも、絞りも出せない声。
「――――」
動けない体に、楸は手を伸ばすのも諦め、目を閉じれば、自分の身を隠していたはずの扉が退かされる音と差し込む光。
瞼を震わせ、目を開けてれば、扉を退かした相手の影が目に入る。
子供のような、小さな姿。
「役立たず」
S08だった。
足を持って、引きずるように部屋に放り込まれれば、そこにはT19とO12の姿もあった。
「お、意外に生きてた」
いまだに痺れて動かない体を遠慮なく叩くT19に、楸は何も言えずに、視線だけでO12へ助けを求めれば、目があった末に、鼻で笑われた。
「役立たずはほっといて、とっととGに合流するぞ」
言い方はともかく、S08の言葉は、楸も同意できる。
置き去りにはしてほしくないが、あの毒ガスが撒かれた場所へ行ってしまったG45を助けに行かなければいけない。
「ヤダよ。お前らと違って、僕らはか弱いの」
だが、T19は否定すると、あろうことかS08だけを行かせようとし始めた。
「てか、お前らの毒耐性高すぎるんだよ。先に、ガス止めてからにしてよね」
「…………なら、早くやって、合流しろ」
それだけ言い残すと、S08は部屋を出て行った。
残されたT19は、閉じた扉を唖然と見つめていたが、
「…………ハァ!? 何言ってんの? 前とは状況違うんだから、できるわけないだろ!」
扉の向こうで、聞こえてるであろうS08に向かって叫んだ。
「何アイツ!? 言えばできると思ってんの!? バカなの!?」
「できないならしょうがないって……」
「あの脳筋バカ共に、できないって思われんの腹立つんだけど!? やってくるわ!」
S08に続き、苛立ったように部屋を出て行ったT19に、楸は視線だけO12へやった。
「Tって、案外チョロい?」
「…………後でチクっとく」
「ちょっ……!? Oちゃん。氷砂糖あげるから、見逃して」
警報が鳴りやまない研究所内で、楸は、銃を入口に向けたまま、待機するO12を見つめていた。
「前もこんな感じだったの?」
ヴェノム研究所の詳しい話は聞いていない。
だが、先程の言動から、緊急処理の経験はありそうだ。
あるとすれば、ヴェノム研究所が潰れたその瞬間だろう。
「…………知るか」
「そっかぁ」
この部屋にガスは撒かれていないのか、少しずつ呂律も回復してきている。
既に潜入も何もなくなっているが、おそらく牧野もこうなることは想像の上だろう。
ならば諦めて、G45とS08が、P03を見つけ出してくれるのを待つのが一番だ。
「…………ヤッベェ。寝そう。置いてかないでね」
O12の冷たい視線が、楸に突き刺さった。
聴覚を強化していないS08でなくても、遠くに聞こえた扉が叩きつけられた音とG45の怒鳴り声に、ご満悦とばかりのT19の後ろで、O12はありえない物を見るように前方を見ていた。
「先にやる内容は言え」
「マジでできると思ってなかったしぃ? ゴリラ遺伝子でも入ってんの?」
「俺に入ってるなら、お前にも入ってるだろ」
「初期型と一緒にしないでくんない? ねぇ? O」
「え、うん」
同意を得られたと、T19はS08へ文句を口にしながら、扉が無くなった研究所の中に入ると、廊下に座り込む怯えた顔の研究員がいた。
「あ、ちょうどいいとこに、かわいそーなお姉さん、みっけ」
「ヒッ……」
まるで何も起きていなかったかのような無垢な笑顔で、T19は研究員の前に屈んだ。
その頃、正面玄関から繋がる、一番奥の廊下まで辿り着いたG45は、ひとしきりS08とT19への恨み言を吐き終えると、視界に見えた重厚な扉を見上げた。
似たような扉を、以前にも見たことがある。
決して近づいてはいけないと言われていた扉で、そこから出ていく人を追いかけて行こうとした奴らは、みんな殺された。
自分たちと同じような奴らを閉じ込めておく施設。
つまり、P03が攫われて、閉じ込められるなら、この先だ。
考えが至れば、行動は速かった。
前回と同じように、その扉を力任せに、こじ開ける。
「ウラァァァアアァァアァアッッ!!!!」
正面玄関よりもずっと重い扉を、両手でこじ開ければ、扉の前に倒れている楸がいた。
「楸!?」
「じ、ぃ……?」
G45はすぐに楸をその場から引きずり出すと、楸を壁際に寝かせ、楸を守るように一緒に飛んできた扉を壁に立てかけ、自分は扉の向こうへ戻ってしまった。
毒ガスが撒かれているであろう区画へ向かおうとするG45を、止めようと声を上げるようにも、絞りも出せない声。
「――――」
動けない体に、楸は手を伸ばすのも諦め、目を閉じれば、自分の身を隠していたはずの扉が退かされる音と差し込む光。
瞼を震わせ、目を開けてれば、扉を退かした相手の影が目に入る。
子供のような、小さな姿。
「役立たず」
S08だった。
足を持って、引きずるように部屋に放り込まれれば、そこにはT19とO12の姿もあった。
「お、意外に生きてた」
いまだに痺れて動かない体を遠慮なく叩くT19に、楸は何も言えずに、視線だけでO12へ助けを求めれば、目があった末に、鼻で笑われた。
「役立たずはほっといて、とっととGに合流するぞ」
言い方はともかく、S08の言葉は、楸も同意できる。
置き去りにはしてほしくないが、あの毒ガスが撒かれた場所へ行ってしまったG45を助けに行かなければいけない。
「ヤダよ。お前らと違って、僕らはか弱いの」
だが、T19は否定すると、あろうことかS08だけを行かせようとし始めた。
「てか、お前らの毒耐性高すぎるんだよ。先に、ガス止めてからにしてよね」
「…………なら、早くやって、合流しろ」
それだけ言い残すと、S08は部屋を出て行った。
残されたT19は、閉じた扉を唖然と見つめていたが、
「…………ハァ!? 何言ってんの? 前とは状況違うんだから、できるわけないだろ!」
扉の向こうで、聞こえてるであろうS08に向かって叫んだ。
「何アイツ!? 言えばできると思ってんの!? バカなの!?」
「できないならしょうがないって……」
「あの脳筋バカ共に、できないって思われんの腹立つんだけど!? やってくるわ!」
S08に続き、苛立ったように部屋を出て行ったT19に、楸は視線だけO12へやった。
「Tって、案外チョロい?」
「…………後でチクっとく」
「ちょっ……!? Oちゃん。氷砂糖あげるから、見逃して」
警報が鳴りやまない研究所内で、楸は、銃を入口に向けたまま、待機するO12を見つめていた。
「前もこんな感じだったの?」
ヴェノム研究所の詳しい話は聞いていない。
だが、先程の言動から、緊急処理の経験はありそうだ。
あるとすれば、ヴェノム研究所が潰れたその瞬間だろう。
「…………知るか」
「そっかぁ」
この部屋にガスは撒かれていないのか、少しずつ呂律も回復してきている。
既に潜入も何もなくなっているが、おそらく牧野もこうなることは想像の上だろう。
ならば諦めて、G45とS08が、P03を見つけ出してくれるのを待つのが一番だ。
「…………ヤッベェ。寝そう。置いてかないでね」
O12の冷たい視線が、楸に突き刺さった。
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