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1話 女子高生追跡魔
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シフトまでは少し時間があるからと、店長にも許可をもらい、雨宮は千秋と店の裏手で話をしていた。
「ここでバイトしてたんだな」
「はい。なんていうか……世間って狭いですね」
「わかる……だから、あんまり変なことするなよ。あとで結構尾を引くから」
実体験だろうかとも思ったが、奢ってもらったコーラと一緒にコメントを飲み込んでおいた。
「しばらく会ってなかったけど、元気してるか?」
「それなりには」
雨宮は、家族を失った強盗事件の時に担当していた刑事で、保護期間が終わった後も、時々様子を見に来てくれていた。
曰く、千秋の祖父が、何かあった時のためにと、連絡先を交換していたらしい。
「最後に会ったのは、爺さんの通夜の時か」
「そうですね」
「婆さんは元気か?」
「半年前に亡くなりました」
「…………マジか」
祖母にも、何かあったら頼れと、雨宮の連絡先は受け取っていたし、本人からもそう言われていたが、結局、雨宮に祖母の通夜のメールを送ることはしなかった。
「じゃあ、今一人か」
「そうですね」
「じゃあ、何かあった時に困るだろ。連絡先やるから、いざとなったら連絡しな」
名刺の裏に、おそらく個人のものと思われる電話番号も記載して渡してくる雨宮に、日野が少しだけ困ったように眉を下げる。
「それ、最近はセクハラになるらしいですよ」
「え゛……あ゛ー……いや、でも渡しとくよ。頼れる大人がいないと大変だしな」
「ありがとうございます」
数年に一度とはいえ、昔から会っているからか、雨宮の言葉に他意がないことは、千秋もよくわかっている。
下心があるとしたら、もう執念に近いものだろう。
「え、先輩が?」
ようやく本題に移れば、千秋から出てくる情報も、先程までと特に大きな変わりはなかった。
昨日、連絡もなくバイトを休んだこと。普段は、ちゃんと連絡をしてくる人だったこと。
大学で彼氏ができたこと。
旅行に行くために、お金を貯めたいと積極的にシフトに入っていたこと。
よくある大学生といった印象だった。
「トラブルとかは?」
「聞いてないです。というか、彼氏の件も、正直、時々ついでに出てくるって感じで、あまりプライベートのことは話してなかった気がします」
「そうか……わかった。ありがとな」
千秋もあまり遅くならないように帰宅するよう伝え、雨宮たちと別れれば、日野も不思議そうに雨宮に問いかける。
知り合いの様子ではあったが、連絡先を知らなかったり、どうにも一般的な知り合いとは違うように見えた。
「あぁ……ほら、10年くらい前に、埼玉で連続強盗事件があっただろ。結構大きいニュースになった」
当時、日野はまだ警察に入っていなかったが、そのニュースは覚えている。
とはいえ、連日ニュースになっていたおかげで、耳にしたことはある程度だ。
最終的に、犯人が捕まったという報道があった覚えはないが、大抵の興味のないニュースというものは、いつの間にか新しいニュースに更新されて、結末を知らないことも多い。
「あの被害者なんだよ。親も殺されて、犯人も捕まらず、海外逃亡。さっきの話じゃ、育ててくれてた祖父母も死んで、独り。少しは同情するだろ」
「確かに、そうですね」
仕事柄、そういった子供を見聞きしたことがないわけではないし、同情しなくなるほど、見慣れているわけではない。
だが、個人の番号を教えてまで、関わりたいと思えるほど、他人に興味が持てないのも事実。
「……ところで、アレって結構アウト?」
今更になって、表情を強張らせて心配する雨宮に、日野は少し視線を巡らせながら、笑顔を作って答えた。
「事前情報なしだと、完全にアウトです」
「ここでバイトしてたんだな」
「はい。なんていうか……世間って狭いですね」
「わかる……だから、あんまり変なことするなよ。あとで結構尾を引くから」
実体験だろうかとも思ったが、奢ってもらったコーラと一緒にコメントを飲み込んでおいた。
「しばらく会ってなかったけど、元気してるか?」
「それなりには」
雨宮は、家族を失った強盗事件の時に担当していた刑事で、保護期間が終わった後も、時々様子を見に来てくれていた。
曰く、千秋の祖父が、何かあった時のためにと、連絡先を交換していたらしい。
「最後に会ったのは、爺さんの通夜の時か」
「そうですね」
「婆さんは元気か?」
「半年前に亡くなりました」
「…………マジか」
祖母にも、何かあったら頼れと、雨宮の連絡先は受け取っていたし、本人からもそう言われていたが、結局、雨宮に祖母の通夜のメールを送ることはしなかった。
「じゃあ、今一人か」
「そうですね」
「じゃあ、何かあった時に困るだろ。連絡先やるから、いざとなったら連絡しな」
名刺の裏に、おそらく個人のものと思われる電話番号も記載して渡してくる雨宮に、日野が少しだけ困ったように眉を下げる。
「それ、最近はセクハラになるらしいですよ」
「え゛……あ゛ー……いや、でも渡しとくよ。頼れる大人がいないと大変だしな」
「ありがとうございます」
数年に一度とはいえ、昔から会っているからか、雨宮の言葉に他意がないことは、千秋もよくわかっている。
下心があるとしたら、もう執念に近いものだろう。
「え、先輩が?」
ようやく本題に移れば、千秋から出てくる情報も、先程までと特に大きな変わりはなかった。
昨日、連絡もなくバイトを休んだこと。普段は、ちゃんと連絡をしてくる人だったこと。
大学で彼氏ができたこと。
旅行に行くために、お金を貯めたいと積極的にシフトに入っていたこと。
よくある大学生といった印象だった。
「トラブルとかは?」
「聞いてないです。というか、彼氏の件も、正直、時々ついでに出てくるって感じで、あまりプライベートのことは話してなかった気がします」
「そうか……わかった。ありがとな」
千秋もあまり遅くならないように帰宅するよう伝え、雨宮たちと別れれば、日野も不思議そうに雨宮に問いかける。
知り合いの様子ではあったが、連絡先を知らなかったり、どうにも一般的な知り合いとは違うように見えた。
「あぁ……ほら、10年くらい前に、埼玉で連続強盗事件があっただろ。結構大きいニュースになった」
当時、日野はまだ警察に入っていなかったが、そのニュースは覚えている。
とはいえ、連日ニュースになっていたおかげで、耳にしたことはある程度だ。
最終的に、犯人が捕まったという報道があった覚えはないが、大抵の興味のないニュースというものは、いつの間にか新しいニュースに更新されて、結末を知らないことも多い。
「あの被害者なんだよ。親も殺されて、犯人も捕まらず、海外逃亡。さっきの話じゃ、育ててくれてた祖父母も死んで、独り。少しは同情するだろ」
「確かに、そうですね」
仕事柄、そういった子供を見聞きしたことがないわけではないし、同情しなくなるほど、見慣れているわけではない。
だが、個人の番号を教えてまで、関わりたいと思えるほど、他人に興味が持てないのも事実。
「……ところで、アレって結構アウト?」
今更になって、表情を強張らせて心配する雨宮に、日野は少し視線を巡らせながら、笑顔を作って答えた。
「事前情報なしだと、完全にアウトです」
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