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第二作戦 大隊結成
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訓練場に置かれたコンテナ。
中身は、ライフルのマガジンのようだ。
「魔力充電リモートマガジンだ」
文字通り、中に装填した弾丸に、遠くから魔力を充填できるマガジンだという。
戦闘中は、魔力を色々なことに使うため、弾丸に込める魔力を節約できるのは、画期的といえる。
無茶なことは言うが、研究部門の最高顧問へ昇り詰めるだけの実力は備えているらしい。
「拠点となる船や駐屯地から、魔力供給を受けられるということですか」
「何を言っている。何の意味もない魔力を受け取ったところで、泥団子に泥を塗り重ねる程度だろ」
「はい?」
久保だけではなく、空気が凍り付くような錯覚がした。
そんな空気など、まるで感じないのか、紀陽は抱えていたスーツケースを開くと、それを加賀谷に差し出す。
「装着したまえ」
目の前に差し出されたのは、スロートマイク。
「え、えっと……」
混乱しながらも、それを受け取り、首に着ける。
加賀谷がマイクをつけたことを確認すると、紀陽はマガジンをライフルに装填して、ボタンを押す。
「!」
直後、感じた感覚に、マイクへ手をやる加賀谷を気にせず、紀陽はライフルを一発、的に向かって撃った。
的の手前、見事に外した弾が起こした土埃が晴れると、着弾したと思われる場所には、薄い氷。
「これでこそ意味があるというものだ」
満足気に、ライフルを下すと、紀陽はどうだと言わんばかりに振り返るが、坪田を含め全員がその氷を見ては、小さく唸る。
「隊長の魔力を使うということですか……」
「その通り! 契約魔導士の魔力は、魔力そのものにも契約した精霊の属性が付与される。
それならば、使わない手はないだろう!」
確かに、契約魔導士の魔力がそのまま使えるなら、加賀谷でいえば、凍結術式分の魔力消費を避けられることに繋がる。
しかし、大きな問題がある。
「大隊の使用する砲撃ほぼ全ての魔力を、隊長一人で賄うことになりかねませんか?」
契約魔導士は、絶大な戦力だ。それを、魔力タンクのように使い、魔力切れで倒れられては、意味がない。
そんな反論に対して、紀陽は呆れたようにため息をつく。
「貴様らゾウリムシ程度の魔力と同じにするな。一般の契約魔導士であれば、この程度何の問題にもならない。特に加賀谷君の魔力は契約魔導士の中でも、トップレベルの魔力量だ。
弾に込める程度の微細の魔力など、取るに足らん!」
「本当ですか?」
坪田が加賀谷へ確認する様子に、紀陽は不満そうに坪田を睨んでいたが、加賀谷も、紀陽の言葉を肯定するように、頷いた。
「弾に込める分くらいなら、たぶん……」
実際、部隊がどれほど弾丸に、どれだけ魔力を使っているかわからないため、確証はないが。
「とはいえ、全て賄わせるのはマズい気がしますよ。長期戦になることもあるでしょうし」
「そうだな。これは、事前に用意した魔術弾にも、充填することは可能ですか?」
「問題ない。充填は0.3秒で終了する」
「では、基本的に従来通り、各自の魔術弾での砲撃、状況次第で、隊長からの魔力供給を受ける形での運用が良いかと」
坪田の言葉に、紀陽があからさまに眉を顰めるが、紀陽が口を開くより早く夏目が「現場は現場に任せる」と遮った。
実際、契約魔導士での魔力を使用しての、実験成績はない上に、以前の失敗の件もある。
上層部からの、契約魔導士への実験協力を得るのが難しくなった結果の、今回、直接、加賀谷を訪ねるという強硬手段だ。
しかし何故か、夏目が秘密裏に動こうとしていた紀陽の前に現れ、内容を確認して、一時的な許可がでただけで、これ以上、無理を通せば、もっと規制が厳しくなる。
仕方なく、紀陽も頭に浮かんだ、罵倒の言葉を飲み込むのだった。
「あぁ、そうだ。契約魔導士も集まり始めてるからな。近々、顔合わせすることになるだろうから、心の準備はしておいてね。
今度は、ユニリッドの上層部とも顔合わせることになるだろうから……あぁ、そんな心配そうな顔しない」
夏目の言葉に、いきなり不安そうな表情をする加賀谷に、久保も不思議そうに首を傾げ、楠葉だけが苦笑を漏らした。
以前の戦争では、加賀谷は10歳だったこともあり、作戦に関わる契約魔導士とは顔を合わせていたが、ユニリッドの会議などには参加したことはなく、上層部と会話したどころか、顔を合わせたこともなかった。
「ひとりで出席するわけじゃないんだから」
「そ、そうですね」
「いっそ魔術も使えない雑魚と話すつもりはないって、坪田大尉に全部任せるってのはどうです?」
「じゃあ、こっちも手を焼いてるって感じにするか」
「そんなのバレますよ!?」
冗談をいう久保に、夏目も便乗すれば、加賀谷が否定するが、少しだけありかもしれないとも思っていた。
その様子に、少し眉を下げる夏目のポケットで震える携帯。
その電話に数回受け答えをすると、夏目は小さくため息をつき、加賀谷たちに目をやる。
その様子だけで、坪田は中隊長たちへ目をやり、頷くと、隊舎へ戻っていった。
中身は、ライフルのマガジンのようだ。
「魔力充電リモートマガジンだ」
文字通り、中に装填した弾丸に、遠くから魔力を充填できるマガジンだという。
戦闘中は、魔力を色々なことに使うため、弾丸に込める魔力を節約できるのは、画期的といえる。
無茶なことは言うが、研究部門の最高顧問へ昇り詰めるだけの実力は備えているらしい。
「拠点となる船や駐屯地から、魔力供給を受けられるということですか」
「何を言っている。何の意味もない魔力を受け取ったところで、泥団子に泥を塗り重ねる程度だろ」
「はい?」
久保だけではなく、空気が凍り付くような錯覚がした。
そんな空気など、まるで感じないのか、紀陽は抱えていたスーツケースを開くと、それを加賀谷に差し出す。
「装着したまえ」
目の前に差し出されたのは、スロートマイク。
「え、えっと……」
混乱しながらも、それを受け取り、首に着ける。
加賀谷がマイクをつけたことを確認すると、紀陽はマガジンをライフルに装填して、ボタンを押す。
「!」
直後、感じた感覚に、マイクへ手をやる加賀谷を気にせず、紀陽はライフルを一発、的に向かって撃った。
的の手前、見事に外した弾が起こした土埃が晴れると、着弾したと思われる場所には、薄い氷。
「これでこそ意味があるというものだ」
満足気に、ライフルを下すと、紀陽はどうだと言わんばかりに振り返るが、坪田を含め全員がその氷を見ては、小さく唸る。
「隊長の魔力を使うということですか……」
「その通り! 契約魔導士の魔力は、魔力そのものにも契約した精霊の属性が付与される。
それならば、使わない手はないだろう!」
確かに、契約魔導士の魔力がそのまま使えるなら、加賀谷でいえば、凍結術式分の魔力消費を避けられることに繋がる。
しかし、大きな問題がある。
「大隊の使用する砲撃ほぼ全ての魔力を、隊長一人で賄うことになりかねませんか?」
契約魔導士は、絶大な戦力だ。それを、魔力タンクのように使い、魔力切れで倒れられては、意味がない。
そんな反論に対して、紀陽は呆れたようにため息をつく。
「貴様らゾウリムシ程度の魔力と同じにするな。一般の契約魔導士であれば、この程度何の問題にもならない。特に加賀谷君の魔力は契約魔導士の中でも、トップレベルの魔力量だ。
弾に込める程度の微細の魔力など、取るに足らん!」
「本当ですか?」
坪田が加賀谷へ確認する様子に、紀陽は不満そうに坪田を睨んでいたが、加賀谷も、紀陽の言葉を肯定するように、頷いた。
「弾に込める分くらいなら、たぶん……」
実際、部隊がどれほど弾丸に、どれだけ魔力を使っているかわからないため、確証はないが。
「とはいえ、全て賄わせるのはマズい気がしますよ。長期戦になることもあるでしょうし」
「そうだな。これは、事前に用意した魔術弾にも、充填することは可能ですか?」
「問題ない。充填は0.3秒で終了する」
「では、基本的に従来通り、各自の魔術弾での砲撃、状況次第で、隊長からの魔力供給を受ける形での運用が良いかと」
坪田の言葉に、紀陽があからさまに眉を顰めるが、紀陽が口を開くより早く夏目が「現場は現場に任せる」と遮った。
実際、契約魔導士での魔力を使用しての、実験成績はない上に、以前の失敗の件もある。
上層部からの、契約魔導士への実験協力を得るのが難しくなった結果の、今回、直接、加賀谷を訪ねるという強硬手段だ。
しかし何故か、夏目が秘密裏に動こうとしていた紀陽の前に現れ、内容を確認して、一時的な許可がでただけで、これ以上、無理を通せば、もっと規制が厳しくなる。
仕方なく、紀陽も頭に浮かんだ、罵倒の言葉を飲み込むのだった。
「あぁ、そうだ。契約魔導士も集まり始めてるからな。近々、顔合わせすることになるだろうから、心の準備はしておいてね。
今度は、ユニリッドの上層部とも顔合わせることになるだろうから……あぁ、そんな心配そうな顔しない」
夏目の言葉に、いきなり不安そうな表情をする加賀谷に、久保も不思議そうに首を傾げ、楠葉だけが苦笑を漏らした。
以前の戦争では、加賀谷は10歳だったこともあり、作戦に関わる契約魔導士とは顔を合わせていたが、ユニリッドの会議などには参加したことはなく、上層部と会話したどころか、顔を合わせたこともなかった。
「ひとりで出席するわけじゃないんだから」
「そ、そうですね」
「いっそ魔術も使えない雑魚と話すつもりはないって、坪田大尉に全部任せるってのはどうです?」
「じゃあ、こっちも手を焼いてるって感じにするか」
「そんなのバレますよ!?」
冗談をいう久保に、夏目も便乗すれば、加賀谷が否定するが、少しだけありかもしれないとも思っていた。
その様子に、少し眉を下げる夏目のポケットで震える携帯。
その電話に数回受け答えをすると、夏目は小さくため息をつき、加賀谷たちに目をやる。
その様子だけで、坪田は中隊長たちへ目をやり、頷くと、隊舎へ戻っていった。
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