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【一章】異世界でプラモデル
5.誰だこいつ
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シルヴィアらを捕らえていたのはとある大きな野盗の一派だったらしい。
今は奴らが使っていた馬車を頂戴し、ヴァイシルト家に向かっている途中だ。
ちなみに野党は縛り上げて馬車の隅っこに拘留している。後々もろもろを吐かせるのだろう。
同乗者としてはちょっと恐ろしいのだが、まああれだけガチガチに拘束されていたら問題ないだろう。
道中シルヴィアから色々な話を聞いた。
メチャ強老紳士の名前はクロードさんといって、ヴァイシルト家に仕える執事だそうだ。
今は馬車の御者をしているため、御者台にいる。
この世界の名前はスマホのメッセージにもあったように、アルスガルドという名前らしい。
今向かっているヴァイシルト家は、アルスガルドにおける三大国の一つ、アークライト王国に属する家柄であり、かつて国家間での戦争があった時代では王家の盾として勇名を轟かせていたようだ。
「――へぇ、そうなんだ。ありがとうシルヴィア。俺何もわからなくてさ、色々教えてくれて助かるよ」
「いえ、私もケイタさんとお話するの楽しいですし構いませんよ」
しばらく一対一で話し込んでいたおかげで、シルヴィアと話すのもだいぶ慣れてきた。
歳も近いし普通に話して構わないとシルヴィア言われたので、俺は普段の喋り方で話すようになった。この方が気楽で俺としては助かる。
シルヴィアにも俺に対して畏まらなくていいと伝えたのだが、丁寧口調が彼女の素らしい。変わったところは『ケイタ様』から『ケイタさん』に変わったぐらいだ。
そんなこんなで半日ほど馬車を走らせていると、ようやく人が住んでいる地域へとたどり着いた。
「おー! ここが街かぁ。ってあれ? どこ行くんだ?」
ちらっと外を覗くと、街が見えてきたにも関わらず馬車は街とは別方向に向かっていた。このまま街に入るものだと思っていた俺は、思わず声に出してしまう。
「我がヴァイシルト家はあの丘の頂上にあります。ここから30分ほどでしょうか。街へは入りませんが、気になるようでしたら後日ご案内しますよ?」
「あ、そうなんだ。ぜひ見学したいなあ。そしたらその時は案内よろしくね、シルヴィア」
「私ですか? ……ええ、是非ご一緒しましょうね」
そんな会話を続けていると、シルヴィアの言うとおり30分ほどで大きな館へとたどり着いた。
いやあ、広いわでかいわで腰を抜かすかと思った。こんな豪邸を一個人が持っているなんて考えられない。
門構えからしてその豪華さが伺える。門番もちゃんといるし、予想はしてたけどシルヴィアの家って結構な名家なんじゃなかろうか。
「そこの馬車、止まれ! 何用であるか!」
門に近付くと門番に呼び止められた。まあ知らん馬車が近付いてきたら止めるわな。
「あなたは!? クロード様! と、言うことは……!」
「はい、お嬢様はご無事です。門を開けてもらってよろしいですかな?」
「もちろんです! さすがクロード様。ご無事の帰還、嬉しく思います!」
クロードさんの顔を確認した門番の人が慌てて門を開ける。クロードさんは執事って聞いてたけど、様付けで呼ばれるってことは結構な立場の人なのかな?
そのまま馬車は敷地内へと進んでいく、そして館の前へと馬車を止めると、情報が伝わっていたのだろう。家人と思わしき人たちが勢揃いで待ち構えていた。
「シルヴィア様、よくぞご無事で!」
「おかえりなさいませお嬢様!」
「お待ちしておりました!」
シルヴィアが馬車を降りると、それぞれシルヴィアの帰還を喜ぶ声が上がるなか、俺は馬車の中で固まっていた。
「いや、こんなハッピーな空気の中でのこのこと俺が出ていったら、『誰だこいつ』的な雰囲気になるだろ……」
馬車を降りるわけにもいかず、座り込んで床板の木目を数えていると、シルヴィアから声がかかった。
「ケイタさーん! どうされたのですか? 皆さんにご紹介しますので降りてきてくださいよー」
呼ばれてしまったからには出ていくしかあるまい。俺は覚悟を決めて馬車を降りた。
「はは……どもども」
へこへこしながら現れた俺を見て、案の定『誰だこいつ』的な表情を浮かべる家人たち。うう……わかってた、わかってたさ。
「こちらケイタ・サガミさん。私たちを救ってくれた勇敢なお方です」
シルヴィアがそう説明すると、 場の雰囲気が一気に盛り上がる。
「おお! そうなのですね!」
「感謝致します!」
「変わったお召し物……もしかしたらどこかの有名なお方なのかもしれないわね!」
ただの部屋着のジャージです。すみません。
そんな中、勢いよく館の扉が開かれて夫婦と思われる男女が現れた。
家人たちはその姿を見るや否やピッと姿勢を正し、頭を下げた。その反応から夫婦はこの家の主、つまりシルヴィアの両親だと推測できる。
「シルヴィア! おお……無事でなによりだ!」
「心配したのですよ? 昨晩は一睡もできませんでしたわ」
「お父様、お母様! 只今戻りました!」
再会を喜び抱き合う3人。うんうん、よかったねぇ。
ひとしきり喜び合って落ち着き、周りが見えるようになったのだろう。一息ついたシルヴィアの両親と俺の目が合った。
その顔は案の定、『誰だこいつ』的な顔をしていた。
今は奴らが使っていた馬車を頂戴し、ヴァイシルト家に向かっている途中だ。
ちなみに野党は縛り上げて馬車の隅っこに拘留している。後々もろもろを吐かせるのだろう。
同乗者としてはちょっと恐ろしいのだが、まああれだけガチガチに拘束されていたら問題ないだろう。
道中シルヴィアから色々な話を聞いた。
メチャ強老紳士の名前はクロードさんといって、ヴァイシルト家に仕える執事だそうだ。
今は馬車の御者をしているため、御者台にいる。
この世界の名前はスマホのメッセージにもあったように、アルスガルドという名前らしい。
今向かっているヴァイシルト家は、アルスガルドにおける三大国の一つ、アークライト王国に属する家柄であり、かつて国家間での戦争があった時代では王家の盾として勇名を轟かせていたようだ。
「――へぇ、そうなんだ。ありがとうシルヴィア。俺何もわからなくてさ、色々教えてくれて助かるよ」
「いえ、私もケイタさんとお話するの楽しいですし構いませんよ」
しばらく一対一で話し込んでいたおかげで、シルヴィアと話すのもだいぶ慣れてきた。
歳も近いし普通に話して構わないとシルヴィア言われたので、俺は普段の喋り方で話すようになった。この方が気楽で俺としては助かる。
シルヴィアにも俺に対して畏まらなくていいと伝えたのだが、丁寧口調が彼女の素らしい。変わったところは『ケイタ様』から『ケイタさん』に変わったぐらいだ。
そんなこんなで半日ほど馬車を走らせていると、ようやく人が住んでいる地域へとたどり着いた。
「おー! ここが街かぁ。ってあれ? どこ行くんだ?」
ちらっと外を覗くと、街が見えてきたにも関わらず馬車は街とは別方向に向かっていた。このまま街に入るものだと思っていた俺は、思わず声に出してしまう。
「我がヴァイシルト家はあの丘の頂上にあります。ここから30分ほどでしょうか。街へは入りませんが、気になるようでしたら後日ご案内しますよ?」
「あ、そうなんだ。ぜひ見学したいなあ。そしたらその時は案内よろしくね、シルヴィア」
「私ですか? ……ええ、是非ご一緒しましょうね」
そんな会話を続けていると、シルヴィアの言うとおり30分ほどで大きな館へとたどり着いた。
いやあ、広いわでかいわで腰を抜かすかと思った。こんな豪邸を一個人が持っているなんて考えられない。
門構えからしてその豪華さが伺える。門番もちゃんといるし、予想はしてたけどシルヴィアの家って結構な名家なんじゃなかろうか。
「そこの馬車、止まれ! 何用であるか!」
門に近付くと門番に呼び止められた。まあ知らん馬車が近付いてきたら止めるわな。
「あなたは!? クロード様! と、言うことは……!」
「はい、お嬢様はご無事です。門を開けてもらってよろしいですかな?」
「もちろんです! さすがクロード様。ご無事の帰還、嬉しく思います!」
クロードさんの顔を確認した門番の人が慌てて門を開ける。クロードさんは執事って聞いてたけど、様付けで呼ばれるってことは結構な立場の人なのかな?
そのまま馬車は敷地内へと進んでいく、そして館の前へと馬車を止めると、情報が伝わっていたのだろう。家人と思わしき人たちが勢揃いで待ち構えていた。
「シルヴィア様、よくぞご無事で!」
「おかえりなさいませお嬢様!」
「お待ちしておりました!」
シルヴィアが馬車を降りると、それぞれシルヴィアの帰還を喜ぶ声が上がるなか、俺は馬車の中で固まっていた。
「いや、こんなハッピーな空気の中でのこのこと俺が出ていったら、『誰だこいつ』的な雰囲気になるだろ……」
馬車を降りるわけにもいかず、座り込んで床板の木目を数えていると、シルヴィアから声がかかった。
「ケイタさーん! どうされたのですか? 皆さんにご紹介しますので降りてきてくださいよー」
呼ばれてしまったからには出ていくしかあるまい。俺は覚悟を決めて馬車を降りた。
「はは……どもども」
へこへこしながら現れた俺を見て、案の定『誰だこいつ』的な表情を浮かべる家人たち。うう……わかってた、わかってたさ。
「こちらケイタ・サガミさん。私たちを救ってくれた勇敢なお方です」
シルヴィアがそう説明すると、 場の雰囲気が一気に盛り上がる。
「おお! そうなのですね!」
「感謝致します!」
「変わったお召し物……もしかしたらどこかの有名なお方なのかもしれないわね!」
ただの部屋着のジャージです。すみません。
そんな中、勢いよく館の扉が開かれて夫婦と思われる男女が現れた。
家人たちはその姿を見るや否やピッと姿勢を正し、頭を下げた。その反応から夫婦はこの家の主、つまりシルヴィアの両親だと推測できる。
「シルヴィア! おお……無事でなによりだ!」
「心配したのですよ? 昨晩は一睡もできませんでしたわ」
「お父様、お母様! 只今戻りました!」
再会を喜び抱き合う3人。うんうん、よかったねぇ。
ひとしきり喜び合って落ち着き、周りが見えるようになったのだろう。一息ついたシルヴィアの両親と俺の目が合った。
その顔は案の定、『誰だこいつ』的な顔をしていた。
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