スキル『モデラー』で異世界プラモ無双!? プラモデル愛好家の高校生が異世界転移したら、持っていたスキルは戦闘と無関係なものたったひとつでした

大豆茶

文字の大きさ
10 / 120
【一章】異世界でプラモデル

9.宣戦布告

しおりを挟む
「おい! さっきから聞いてれば好き勝手言いやがって!」

 俺は胸から込み上げる怒りをぶちまけるように、ザッコブに向かって啖呵を切った。部外者だからって黙ってるわけにはいかない。

「んぁ? 何だお前は。使用人か? 使用人風情がこのポクにそんな口をきいてタダで済むと思うなよ?」

 ぐっ……対面してみると意外に圧が強いなこの男……。
 だが負けない、口喧嘩なら妹と何度もして鍛えられているからな!

魔動決闘マギアデュエルだかなんだか知らねぇが、何を勝った気になってやがる! シルヴィアにはな……この俺が付いているんだぞ! お前らなんかには負けはしないさ!」

「ケイタさん……!」

 魔動決闘とやらの内容はわからないが、まぁ要するに何らかの勝負をするのだろう。だが、ザッコブは勝負が始まる前から勝った気でいるのが気にくわない。

「ヒョヒョヒョ! 笑わせるなよ。お前がいるからなんだってんだ! もうポクの勝ちは決まってるんだよ。どんなことがあろうともねぇ!」

「う、うるせえ! 今に見てろ! バーカバーカ!」

 いかん、事情がわからなすぎて語彙力が低下してきた。

「こいつ……! 痛い目を見ないとわからないようだな。お前ら、こいつを殺さない程度にボコボコにしてやれ」

 ザッコブを警護していた屈強な男二人が割って入る。
 うわ……絶対強いじゃん。何その筋肉。

「は、はは……どうもこんにちは」

 勢いで飛び出したはいいものの、あんな強そうなお兄さんたちにインドア派の俺が敵うわけがない。
 一歩一歩近付いてくる男たちを前に、俺は後ずさりをしてしまう。

 そして、手が届くほど近くまで来た男は、その太い腕を振り上げる。
 殴られる。と思って思わず目をつぶり両手で頭部を守るが、ふわっとした風が吹いただけで、いつまで経ってもその拳は俺に届くことはなかった。

 目を少しずつ開きながら、何が起きたのかと恐る恐る状況を確認する。
 すると、俺の前には突き出された拳を受け止める腕が一つ。

「あ、あなたは……!?」

 拳の風圧だろうか、割って入った人物の目深に被っていた帽子がはらりと落ち、その素顔が明らかになった。

「クロードさん!」

 クロードさんはマッチョメンの拳を難なく受け止め、涼しい顔をしている。その力の差を感じたのか、逆にマッチョメンの顔はひきつっていた。

 やだ……クロードさんマジトゥンク……。

「お、お前は……!? ちっ、お前ら引き上げるぞ! ……お前の顔、覚えたからな! このまま無事でいられると思うなよ!」

「うっせぇ! 早く帰れバーカ!」

 ザッコブはクロードさんの顔を見るや否や、そそくさと引き上げていく。力勝負では敵わないと踏んだのだろう。
 
 その後ろ姿が見えなくなるまで見送ったあと、クロードさんはこちらへと振り向いた。

「ケイタ様、シルヴィア様。ご無事でしたか?」

「クロード……来ていたのですね。助かりました」

 俺は途中でなんとなく気付いてたけど、シルヴィアはやっぱり気付いてなかったみたいだ。
 なんにせよ、助かった……勢いで突っ掛かったのはあまりに考え無しだった。

 とはいえ、あれだけ派手に喧嘩をふっかけてしまったんだ。
 あの口振りからして誘拐の件もザッコブの仕業だろう。もう怖いからって無関係なままじゃいられない。何よりもあいつムカつくからギャフンと言わせてやりたい。こうなったら徹底抗戦だ。

「シルヴィア、クロードさん。昨日聞けなかった話、きちんと聞かせて欲しいんだ。俺に出来ることがあれば手伝わせて欲しい。シルヴィアの笑顔を奪うような奴に、吠え面をかかせてやりたくなった」

「ケイタさん……」

「ケイタ様……わかりました。正直私は貴方の事をカマセーヌ家の間者なのではと疑っておりましたが、先の様子を見る限り、私の予想は外れていたようです。今は出来る限りの人手が欲しい。シルヴィア様、この者に協力して頂くのもよろしいかと」

「そうですね……ケイタさん、本当によろしいんですか? 昨日会ったばかりの私たちのために……もしかしたら死んでしまう可能性だってあるんですよ?」

 ……えっ、死ぬの?
 いやいや、俺が手伝わせてって言ったのはあくまで裏方の仕事でってことなんだけど……。
 まあ……誘拐をするような連中だ。危険は付き物なんだろう。
 それに、どっちにしろザッコブに目をつけられたんだ。シルヴィアに協力して勝つ以外には俺が助かる道は無いだろう。

「わかってる。でも俺は、シルヴィアとこの街のことが好きになったんだ。出来る限りのことがしたい」
 
「す、好きにっ!? は、はい……では私からもお願い致します。まずはお父様とお母様にもお話ししましょう。クロード、馬車をお願いします」

「かしこまりました」

 何故か頬を少し赤らめるシルヴィアだったが、すぐにきを取り直して馬車の手配をする。
 これから俺はシルヴィアの両親の所へ戻り、事情を聞くことになるのだろう。
 
 もはや引き返せないところまで来ていたが、後悔はない。

 こうして俺は、再びヴァイシルト家の館へと赴くこととなった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

転生したら鎧だった〜リビングアーマーになったけど弱すぎるので、ダンジョンをさまよってパーツを集め最強を目指します

三門鉄狼
ファンタジー
目覚めると、リビングアーマーだった。 身体は鎧、中身はなし。しかもレベルは1で超弱い。 そんな状態でダンジョンに迷い込んでしまったから、なんとか生き残らないと! これは、いつか英雄になるかもしれない、さまよう鎧の冒険譚。 ※小説家になろう、カクヨム、待ラノ、ノベルアップ+、NOVEL DAYS、ラノベストリート、アルファポリス、ノベリズムで掲載しています。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)

荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」 俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」 ハーデス 「では……」 俺 「だが断る!」 ハーデス 「むっ、今何と?」 俺 「断ると言ったんだ」 ハーデス 「なぜだ?」 俺 「……俺のレベルだ」 ハーデス 「……は?」 俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」 ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」 俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」 ハーデス 「……正気……なのか?」 俺 「もちろん」 異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。 たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

処理中です...