18 / 120
【一章】異世界でプラモデル
17.最底辺
しおりを挟む
「――な、なんということでしょう!? ヴァイシルト陣営の魔動人形は一般等級、しかもその中でも最も決闘に向かないとされている最底辺レベルの人形です!」
静まり返っていた会場が一転、とたんにブーイングの嵐が巻き起こる。
「何考えてんだ! 俺たちはそんなもんを見にきたんじゃねぇんだよ!」
「ガハハハッ! なんだあのちんちくりんは! この闘技場に長年通ってるが、あんなのは初めて見たぞい!」
「英雄の家系だかなんだか知らねぇけど、客を馬鹿にしてるのか!」
「最悪だぜ、俺はわざわざ遠いところから長い時間かけてここまできたんだぞ! ふざけんな! 金返せ!」
指をさし笑う者、怒りに任せ叫ぶ者、観客は多種多様な反応を見せる。
しかし大多数の観客はブーブーという非難の声と共に、俺に向かってゴミを投げつけている。
魔動人形に当たったとしてもなんてことはないのだが、その代わりに俺の豆腐メンタルに多大なダメージが入る。
うう……そんなこと言われてもこの機体しかなかったんだから仕方ないだろう。
「み、皆様! 会場へとゴミを投げるのはおやめください! か、係員の人! 早く障壁の展開をお願いしまぁす!」
実況の人の願いが通じたのか、数秒と経たずに客席と戦闘スペースが透明の壁によって隔てられる。
投げられたゴミは壁に反射し、俺には届かず客席へと落ちていった。
この障壁で戦闘の余波から観客を守るのだろう。物理的には守られているが、音は遮らないらしく、いまだにブーイングが俺の耳に届いていた。
「くっ……今は戦いに集中しろ俺。本気でやらなきゃダメなんだ!」
なんとか自分を奮い立たせてメンタルを立て直す。そしてふと正面のモニターを見ると、ザッコブの搭乗機が余裕そうな雰囲気で佇んでいた。
ずんぐりとした俺の機体に比べ、非常にスラッとしたボディ。銀色の装甲が日の光を反射してギラついている。
手持ちの武装は右手にライフルっぽいものに、左手にシールド。まあオーソドックスな感じだな。あまりゴテゴテしていなくて非常にシンプルながらも洗練されたデザインだ。
あの機体もぜひ作ってみたい。
「……ん? よく見るとやけに突起部分が多いような……それに左右非対称だぞ」
ザッコブの機体がゆっくりと闘技場の真ん中近くまで歩いてきていた。近付くにつれより鮮明に機体が見えたのだが、その姿にどこか違和感を覚える。
「ヴァイシルト陣営の人形も前へお願いしまぁす!」
――おっと、開始位置はあの辺りなのか。よし、まだ決闘が始まったわけではなさそうだし、まずは慣れるためにもゆっくりと移動してみるか。
俺は意思伝達装置に手をかざし、『歩け』と命じる。
すると、俺の機体はその重い足を動かし、ドスンドスンと前へと進み始めた。
歩くたびに砂塵が舞い、大地が揺れる。見た目からして超重量級なのはわかってはいたが、実際に巨大化状態で歩くと、中にいながらもその重厚感が伝わってくる。やっぱロボットはこうでなくちゃな!
ある程度操作にも慣れたころ、俺は定位置へと着いた。相手との距離は……100メートルぐらいか? 以外に近く感じるな。距離感を掴むのも苦労しそうだぞ。
「よく来たな。どうやら魔動人形に乗れるだけの魔力は持っていたようだが、歩かせることですらぎこちないぞ。恥を晒す前に棄権したらどうだ?」
目の前の機体からザッコブの声が聞こえる。拡声機能っぽいのも付いてるみたいだな。俺も言い返してやろう。
「うるさいぞザッコブ! 戦ってみないと結果はわからないだろう!」
「は……ハハハッ! まだ自分の置かれた状況がわかっていないようだなぁ! ポクのシルバライザーは銀等級、対するお前は『木偶の坊』! 結果は最初からわかりきってるんだよ!」
木偶の坊……? 俺の機体の名前か?
そういや名前は聞き忘れていたな。あっちにはシルバライザーなんてカッコいい名前が付いてるのに……酷すぎん?
「おっとぉ! 舌戦はそこまでですよぉ! 試合時間になりましたので心の準備を整えてくださいね!」
……っ! ついに戦闘か。
さすがにこの段階になると観客も息をのみ、戦いが始まるその時を待っていた。
開始が近付くにつれ、俺の心臓の鼓動が大きくなる。緊張で震えてしまう体を無理矢理に抑え込む。
「――さぁ、王家も見守るこの決闘、果たして勝者となるのはどちらなのか!? 魔動決闘スタンバイ! レディ……ゴォォーッ!」
ついに戦いの幕が切って落とされた。
「よし、行くぞっ! ……って、ちょ、ま……!」
「終わりだ」
開始と同時にシルバライザーはライフルの銃口をこちらに向けた。そして間髪を入れずにその引き金を引く。
銃口からはビームのようなものが放たれるが、鈍重な俺の機体に至近距離での射撃を避ける術は無い。
結果、ビームは直撃。直撃した衝撃で俺の機体は砂煙に包まれた。
静まり返っていた会場が一転、とたんにブーイングの嵐が巻き起こる。
「何考えてんだ! 俺たちはそんなもんを見にきたんじゃねぇんだよ!」
「ガハハハッ! なんだあのちんちくりんは! この闘技場に長年通ってるが、あんなのは初めて見たぞい!」
「英雄の家系だかなんだか知らねぇけど、客を馬鹿にしてるのか!」
「最悪だぜ、俺はわざわざ遠いところから長い時間かけてここまできたんだぞ! ふざけんな! 金返せ!」
指をさし笑う者、怒りに任せ叫ぶ者、観客は多種多様な反応を見せる。
しかし大多数の観客はブーブーという非難の声と共に、俺に向かってゴミを投げつけている。
魔動人形に当たったとしてもなんてことはないのだが、その代わりに俺の豆腐メンタルに多大なダメージが入る。
うう……そんなこと言われてもこの機体しかなかったんだから仕方ないだろう。
「み、皆様! 会場へとゴミを投げるのはおやめください! か、係員の人! 早く障壁の展開をお願いしまぁす!」
実況の人の願いが通じたのか、数秒と経たずに客席と戦闘スペースが透明の壁によって隔てられる。
投げられたゴミは壁に反射し、俺には届かず客席へと落ちていった。
この障壁で戦闘の余波から観客を守るのだろう。物理的には守られているが、音は遮らないらしく、いまだにブーイングが俺の耳に届いていた。
「くっ……今は戦いに集中しろ俺。本気でやらなきゃダメなんだ!」
なんとか自分を奮い立たせてメンタルを立て直す。そしてふと正面のモニターを見ると、ザッコブの搭乗機が余裕そうな雰囲気で佇んでいた。
ずんぐりとした俺の機体に比べ、非常にスラッとしたボディ。銀色の装甲が日の光を反射してギラついている。
手持ちの武装は右手にライフルっぽいものに、左手にシールド。まあオーソドックスな感じだな。あまりゴテゴテしていなくて非常にシンプルながらも洗練されたデザインだ。
あの機体もぜひ作ってみたい。
「……ん? よく見るとやけに突起部分が多いような……それに左右非対称だぞ」
ザッコブの機体がゆっくりと闘技場の真ん中近くまで歩いてきていた。近付くにつれより鮮明に機体が見えたのだが、その姿にどこか違和感を覚える。
「ヴァイシルト陣営の人形も前へお願いしまぁす!」
――おっと、開始位置はあの辺りなのか。よし、まだ決闘が始まったわけではなさそうだし、まずは慣れるためにもゆっくりと移動してみるか。
俺は意思伝達装置に手をかざし、『歩け』と命じる。
すると、俺の機体はその重い足を動かし、ドスンドスンと前へと進み始めた。
歩くたびに砂塵が舞い、大地が揺れる。見た目からして超重量級なのはわかってはいたが、実際に巨大化状態で歩くと、中にいながらもその重厚感が伝わってくる。やっぱロボットはこうでなくちゃな!
ある程度操作にも慣れたころ、俺は定位置へと着いた。相手との距離は……100メートルぐらいか? 以外に近く感じるな。距離感を掴むのも苦労しそうだぞ。
「よく来たな。どうやら魔動人形に乗れるだけの魔力は持っていたようだが、歩かせることですらぎこちないぞ。恥を晒す前に棄権したらどうだ?」
目の前の機体からザッコブの声が聞こえる。拡声機能っぽいのも付いてるみたいだな。俺も言い返してやろう。
「うるさいぞザッコブ! 戦ってみないと結果はわからないだろう!」
「は……ハハハッ! まだ自分の置かれた状況がわかっていないようだなぁ! ポクのシルバライザーは銀等級、対するお前は『木偶の坊』! 結果は最初からわかりきってるんだよ!」
木偶の坊……? 俺の機体の名前か?
そういや名前は聞き忘れていたな。あっちにはシルバライザーなんてカッコいい名前が付いてるのに……酷すぎん?
「おっとぉ! 舌戦はそこまでですよぉ! 試合時間になりましたので心の準備を整えてくださいね!」
……っ! ついに戦闘か。
さすがにこの段階になると観客も息をのみ、戦いが始まるその時を待っていた。
開始が近付くにつれ、俺の心臓の鼓動が大きくなる。緊張で震えてしまう体を無理矢理に抑え込む。
「――さぁ、王家も見守るこの決闘、果たして勝者となるのはどちらなのか!? 魔動決闘スタンバイ! レディ……ゴォォーッ!」
ついに戦いの幕が切って落とされた。
「よし、行くぞっ! ……って、ちょ、ま……!」
「終わりだ」
開始と同時にシルバライザーはライフルの銃口をこちらに向けた。そして間髪を入れずにその引き金を引く。
銃口からはビームのようなものが放たれるが、鈍重な俺の機体に至近距離での射撃を避ける術は無い。
結果、ビームは直撃。直撃した衝撃で俺の機体は砂煙に包まれた。
4
あなたにおすすめの小説
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
転生したら鎧だった〜リビングアーマーになったけど弱すぎるので、ダンジョンをさまよってパーツを集め最強を目指します
三門鉄狼
ファンタジー
目覚めると、リビングアーマーだった。
身体は鎧、中身はなし。しかもレベルは1で超弱い。
そんな状態でダンジョンに迷い込んでしまったから、なんとか生き残らないと!
これは、いつか英雄になるかもしれない、さまよう鎧の冒険譚。
※小説家になろう、カクヨム、待ラノ、ノベルアップ+、NOVEL DAYS、ラノベストリート、アルファポリス、ノベリズムで掲載しています。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
異世界あるある 転生物語 たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?
よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する!
土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。
自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。
『あ、やべ!』
そして・・・・
【あれ?ここは何処だ?】
気が付けば真っ白な世界。
気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ?
・・・・
・・・
・・
・
【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】
こうして剛史は新た生を異世界で受けた。
そして何も思い出す事なく10歳に。
そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。
スキルによって一生が決まるからだ。
最低1、最高でも10。平均すると概ね5。
そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。
しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。
そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで
ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。
追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。
だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。
『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』
不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。
そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。
その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。
前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。
但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。
転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。
これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな?
何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが?
俺は農家の4男だぞ?
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
大和型戦艦、異世界に転移する。
焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。
※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います
町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。
【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎
アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。
この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。
ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。
少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。
更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。
そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。
少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。
どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。
少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。
冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。
すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く…
果たして、その可能性とは⁉
HOTランキングは、最高は2位でした。
皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°.
でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる