スキル『モデラー』で異世界プラモ無双!? プラモデル愛好家の高校生が異世界転移したら、持っていたスキルは戦闘と無関係なものたったひとつでした

大豆茶

文字の大きさ
53 / 120
【三章】技術大国プラセリア

2.実力行使

しおりを挟む
「うーん……」

 迷うところだな。これだから変に偉くなったりすると色々なしがらみがあって嫌なんだよ。
 俺が返答に困っていると、それを拒否の意味と受け取ったのだろうか、カティアの雰囲気が変わったのを感じた。

「――嫌だと言うのなら、実力行使に出ることになるかもしれねぇぜ?」

 そう言うとカティアは目を細め口角を上げた。まるで補食者が獲物を捕える時のような表情だ。
 
 瞬間、張り詰めた空気が俺たちを包み込む。
 息ができなくなるような緊張感と言ったらいいのだろうか、少しでも動けば命を失う。そんな感覚だ。

 今この場に居る誰よりも強い者が誰であるのか、それをはっきりと感じた。

「――あなた、何を考えていますの? 旦那様に何かあれば国際問題に――」
 
「承知の上だぜ」

 そう言うとカティアはいつの間にか懐から取り出した何かを床へと放り投げた。
 すると、辺り一帯に煙が立ち込め、視界を奪われる。

「うおっ、煙玉か!?」

「……そうだぜ、しかも無臭の特製品さ。おかげで鼻の良いオレはアンタの位置を特定できるってワケさ」

 背後からカティアの声!? いつの間にそんな位置へ移動したんだ!?

「わりィな」

「ぐっ……!」

 不意に後頭部へ衝撃を受け、意識が朦朧とし始めた。
 薄れ行く意識の中、俺の体はカティアに抱えあげられる。このまま連れ去られるのだろうか……。

 ――あ、獣人って言っても獣臭いわけじゃくて、普通にいい匂いだなぁ。

 そんなどうでもいいことを考えながら、俺の意識は暗闇へと落ちていくのであった。




【シルヴィア視点】




「――嫌だと言うのなら、実力行使に出ることになるかもしれねぇぜ?」

 プラセリアからの使者の方、カティア・リーヴォルフさんがそう言った瞬間、私は思わず一瞬怯んでしまいました。
 彼女から発せられたのは明確な敵意……それも幾多の戦場を潜り抜けてきた猛者を思わせるぐらいの鋭さでした。

 プレッシャーを放つことで得た一瞬の隙を突くように、カティアさんは煙玉を放ちました。

 ……この後取ったの私の行動が不適切極まりなかったことを深く反省しています。
 あろうことか私は自分の身を守ることだけに意識を削がれ、大切な人……ケイタさんの安全が二の次になってしまっていたのです。

「――はっ!? ケイタさん、ケイタさん!?」

案の定、煙が消えた後ケイタさんの姿はどこにも見当たりませんでした。

「ああ、そんな……まさか……」

 誘拐された……?

 あの時私がケイタさんのことを何よりも優先して守っていれば……自分の身の安全など気にしなければこんなことには……!

「落ち着きなさいシルヴィア。旦那様は無事ですわよ」

 いつの間にか開けられた大きな窓から遠くを眺めながら、フラムローゼさんはそう言いました。

「どうしてそんなことが言えるんですか!? ケイタさんが連れ去られて、フラムローゼさんは悔しくないのですか!?」

「……そりゃあ悔しいですわよ。彼女をここへ通したのはわたくしですからね。あの状況で動けなかったのも事実ですし」

「フラムローゼさん……」

 そう……ですね。フラムローゼさんもケイタさんを愛しているのですもの、悔しくないはずないのに、私ったら意地悪なことを言ってしまいました……。

「もし暗殺が目的ならこの場で殺していたはずですわ。彼女にはそれだけの実力がありました。……つまり、彼女の目的は話していたとおり、旦那様を自らが所属するカンパニーへと連れていくこと、という可能性が高いですわね」

「ではすぐプラセリアに向かいましょう! 今からなら間に合うはずです!」

「落ち着きなさいと言いましたでしょう。わたくしたちが騒ぎ立ててこの件を公にすれば本当に国際問題に発展しかねませんわ」
 
 そんな……ケイタさんは見知らぬ土地に一人できっと心細いはずです。
 ですがフラムローゼさんの言うことはもっともです。事は私たち二人だけかつ秘密裏に進める必要がありますね。

「わかりました……それではまずはここ暫くは留守にしても大丈夫なぐらいの仕事を片付けるとしましょう」

 まずは私たちが自由に動ける時間が必要ですからね。
 領地の仕事を前倒しで片付け、最低でも一月ぐらいは何もないようにしないとです。

「フフ……それでこそシルヴィア。さあ……わたくしたちを虚仮にしたこと、存分に後悔させて差し上げましょうか」

 この時、私とフラムローゼさんの気持ちが、共通の敵を得たことで出会ってから初めて一つになりました。
 
「「フフ……」」

 待っていてくださいケイタさん。必ず私たちが迎えにいきますので、辛いでしょうが耐えてくださいね……!
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

転生したら鎧だった〜リビングアーマーになったけど弱すぎるので、ダンジョンをさまよってパーツを集め最強を目指します

三門鉄狼
ファンタジー
目覚めると、リビングアーマーだった。 身体は鎧、中身はなし。しかもレベルは1で超弱い。 そんな状態でダンジョンに迷い込んでしまったから、なんとか生き残らないと! これは、いつか英雄になるかもしれない、さまよう鎧の冒険譚。 ※小説家になろう、カクヨム、待ラノ、ノベルアップ+、NOVEL DAYS、ラノベストリート、アルファポリス、ノベリズムで掲載しています。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

処理中です...