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【三章】技術大国プラセリア
3.首都メイクス
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「んぁ……!?」
ガタンと、大きな揺れに俺は目を覚ました。
「ここは……?」
目を開くと知らない場所だった。
横になっていたからか、俺はガタガタとした揺れをより繊細に感じていた。この揺れは覚えがある、多分馬車の中で間違いないだろう。
「よぉ、やっとお目覚めかい?」
俺が寝ていた場所の対面、そこにはカティアの姿があった。
……そうだ、思い出したぞ。煙の中俺は気を失って……え、これって拉致ですかね。
「わりィな、実力行使させてもらったぜ。……にしてもちょっと寝過ぎじゃねぇか?」
あ、やっぱそういう感じですか。
寝過ぎって……外はまだ明るいしまだ半日も経ってないんじゃないか?
「丸一日寝てたんだよ。……まぁおかげさまでオレとしては手がかからなくて楽だったけどよ」
「丸一日!? どうりで頭がすっきりしてると思ったよ」
首トンで一日気を失ってるとか俺の体貧弱過ぎない?
「あー、まあその……体は大丈夫かよ? そんなに力入れたつもりはなかったんだが、こんな長い時間まるで死んじまったみてぇにピクリともしねぇからさすがに心配したぞ……」
その言葉に俺は体を起こして席を立ち、ストレッチなどの軽い運動をしてみるも、どこにも異常はなさそうだった。
「うん、問題なさそうかな」
「――そうかよ。それにしてもアンタ、自分の置かれている状況理解してんのか?」
「……え? 拐われたんじゃないの?」
「わかっててそんな呑気にしてんのかよ……」
カティアはあっけらかんとした俺の態度に、呆れたように肩をすくめた。
まあ正直驚いていると言えば驚いていると言わざるを得ない。けど、なんとなく危機的な状況って感じはしないんだよな。
「……あ、ほら俺の体を心配してくれたし……カティアって優しいから安心しちゃったのかも?」
「――バッ、バカヤロウ! 誰が優しいって!? オレの仕事はアンタを無事送り届けることだ、それだけだから勘違いすんなよな!」
「顔赤くしちゃって、結構可愛い――ぶべっ!」
その先の台詞は、カティアにアイアンクローされたことによって中断された。
まったく、誉められて恥ずかしがるなんてやっぱ可愛いいててててててて!
「それ以上言うと握りつぶすぞ」
「痛い痛い、もうやってるって! なんも言ってないのにぃぃぃっ! やめて、ギブギブ!」
「――なんか良からぬことを考えている気がしたんでな」
野生的直感!?
「わかったわかった、もう頭の中でも考えないから!」
「――フン、やっぱ変なこと考えてやがったじゃねぇか」
仕方なく、といった感じで手を離すカティア。
いてて……見た目は普通の女の人なのに、めっちゃ力強いな……獣人ってみんなそうなのか?
「……ほら、外を見な。そろそろだ」
俺が痛みのあまり顔をさすっていると、カティアが外を見るように促してきたので、言われるがままに馬車の窓から外を覗き込んだ。
「おお……!」
そこには思わず驚嘆の声が漏れてしまうほどの光景が広がっていた。
遠くに見えるのは大きな建物が集合した都市。遠目からでもわかるほどに、その都市にはあちこちに煙突があった。
大小様々な煙突から漏れなく立ち込める煙、この距離からでも僅かに香る鉄の臭い。
パッと見ただけでもアークライト王国とは文明レベルが違うことがわかる。少なくとも産業においては数世代先を行ってそうだ。
「あれがプラセリアの首都、『メイクス』だ。……さて、そろそろ国境だ。こっからは乗り換えてくぜ」
未だ興奮冷めやらぬなか、カティアがなにやら気になることを言ったのだった。
「乗り換える……?」
「あァ……馬車なんかより断然速ェ、オレのお気に入りさ」
カティアはどこか妖艶さを感じさせる笑みで、自慢気に俺にそう言った。
ガタンと、大きな揺れに俺は目を覚ました。
「ここは……?」
目を開くと知らない場所だった。
横になっていたからか、俺はガタガタとした揺れをより繊細に感じていた。この揺れは覚えがある、多分馬車の中で間違いないだろう。
「よぉ、やっとお目覚めかい?」
俺が寝ていた場所の対面、そこにはカティアの姿があった。
……そうだ、思い出したぞ。煙の中俺は気を失って……え、これって拉致ですかね。
「わりィな、実力行使させてもらったぜ。……にしてもちょっと寝過ぎじゃねぇか?」
あ、やっぱそういう感じですか。
寝過ぎって……外はまだ明るいしまだ半日も経ってないんじゃないか?
「丸一日寝てたんだよ。……まぁおかげさまでオレとしては手がかからなくて楽だったけどよ」
「丸一日!? どうりで頭がすっきりしてると思ったよ」
首トンで一日気を失ってるとか俺の体貧弱過ぎない?
「あー、まあその……体は大丈夫かよ? そんなに力入れたつもりはなかったんだが、こんな長い時間まるで死んじまったみてぇにピクリともしねぇからさすがに心配したぞ……」
その言葉に俺は体を起こして席を立ち、ストレッチなどの軽い運動をしてみるも、どこにも異常はなさそうだった。
「うん、問題なさそうかな」
「――そうかよ。それにしてもアンタ、自分の置かれている状況理解してんのか?」
「……え? 拐われたんじゃないの?」
「わかっててそんな呑気にしてんのかよ……」
カティアはあっけらかんとした俺の態度に、呆れたように肩をすくめた。
まあ正直驚いていると言えば驚いていると言わざるを得ない。けど、なんとなく危機的な状況って感じはしないんだよな。
「……あ、ほら俺の体を心配してくれたし……カティアって優しいから安心しちゃったのかも?」
「――バッ、バカヤロウ! 誰が優しいって!? オレの仕事はアンタを無事送り届けることだ、それだけだから勘違いすんなよな!」
「顔赤くしちゃって、結構可愛い――ぶべっ!」
その先の台詞は、カティアにアイアンクローされたことによって中断された。
まったく、誉められて恥ずかしがるなんてやっぱ可愛いいててててててて!
「それ以上言うと握りつぶすぞ」
「痛い痛い、もうやってるって! なんも言ってないのにぃぃぃっ! やめて、ギブギブ!」
「――なんか良からぬことを考えている気がしたんでな」
野生的直感!?
「わかったわかった、もう頭の中でも考えないから!」
「――フン、やっぱ変なこと考えてやがったじゃねぇか」
仕方なく、といった感じで手を離すカティア。
いてて……見た目は普通の女の人なのに、めっちゃ力強いな……獣人ってみんなそうなのか?
「……ほら、外を見な。そろそろだ」
俺が痛みのあまり顔をさすっていると、カティアが外を見るように促してきたので、言われるがままに馬車の窓から外を覗き込んだ。
「おお……!」
そこには思わず驚嘆の声が漏れてしまうほどの光景が広がっていた。
遠くに見えるのは大きな建物が集合した都市。遠目からでもわかるほどに、その都市にはあちこちに煙突があった。
大小様々な煙突から漏れなく立ち込める煙、この距離からでも僅かに香る鉄の臭い。
パッと見ただけでもアークライト王国とは文明レベルが違うことがわかる。少なくとも産業においては数世代先を行ってそうだ。
「あれがプラセリアの首都、『メイクス』だ。……さて、そろそろ国境だ。こっからは乗り換えてくぜ」
未だ興奮冷めやらぬなか、カティアがなにやら気になることを言ったのだった。
「乗り換える……?」
「あァ……馬車なんかより断然速ェ、オレのお気に入りさ」
カティアはどこか妖艶さを感じさせる笑みで、自慢気に俺にそう言った。
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