スキル『モデラー』で異世界プラモ無双!? プラモデル愛好家の高校生が異世界転移したら、持っていたスキルは戦闘と無関係なものたったひとつでした

大豆茶

文字の大きさ
111 / 120
【三章】技術大国プラセリア

60.びっくり箱

しおりを挟む
 リンの想像するものは、常識にとらわれないものが多い。実戦向きなものは少ないが、そのぶん奇抜であり、予想が難しく、かつ見た目からじゃ判断できない。
 ガオウとて初見の、かつ意外な攻撃はそう簡単に対処できないだろう。

 そんなびっくり箱のような戦法はリンにしかできない。頭の固そうなガオウ相手なら尚更有効なんじゃなかろうか。
 しかし、操縦するのはリン本人じゃない。リンが作ったものの使い方がわからなければ意味がない。俺だって事前の説明がなければ使いこなせる自信はないしな。

 ――そう、ただひとり。なんの説明もなく、リンの考えを理解できそうな人物がひとり。何年もすぐそばで、リンの想像するものを見てきた家族なら。

「カティア、リンになんか作らせてみる! 使いこなせよ!」

「――へっ! 任せときなっ!」

 カティアは自信満々にそう答えた。迷いのない背中が頼もしく見える。

 グレイウルフは回避のために魔力を消費し続けたので、正直残量は心許ない。しかし相手もあれだけの攻撃を続けていたんだ、相応に魔力は減っているはず。攻撃の手を止めたのだって、そのためだろう。

 ならば厳しい状況なのはお互い様ってとこだ。少しでも冷静さを欠かせるために、今は回復に努めるよりも攻めるべきだ。ピンチはチャンス……ってやつだな。

「いっくよー!」

 リンの手が俺の手に重なる。イマジナリークラフターを使うときはリンがいないと起動しなかったが、今回は逆だ。
 俺のスマホが媒介となって発動している機能なので、多分俺にしか使えない。だが、こうやって手を重ねることで、イマジナリークラフターがそうであったように、俺を介してリンのイメージがスマホに伝わるだろう。

 その推論は正しかった。グレイウルフが敵に向かって動き出した次の瞬間には、その手に謎の物体が出現していた。

 あれは四角い……板か?
 そこそこの厚みのある板状の物体を手に、こいつをどうするのかとワクワクしていたのだが、カティアはそれを使って攻撃するのでもなく、投げるでもなく、座布団のごとくただ

「うえっ!? カ、カティア!? いらないからって捨てるのはちょっと……!」

 てっきりブーメランとか手裏剣みたいに使うのかと思っていたが、どうやら違ったらしい。しかし使えないからってすぐ捨てるのはどうかと思うよ、カティアさん。

んだよ。 リン、次はアレを頼む!」

「はーい!」

 いいの!?
 いやいや、よくないでしょ。ほら見ろ、エクスドミネーターがなんか心なしか不思議そうな顔してるだろ。金属だから表情変わるわけないけど!
 いやアニメではそういうロボもいたけども!

 ……などと、味方の俺がここまで心を乱されてるんだ。敵であるガオウのほうが、多分不可解な思いをしてるんじゃないだろうか。
 
「えーと、こうしてこうやって……こう!」

 俺の困惑をよそに、戦闘は続いている。
 次に出現したのは、なんか見覚えがあるものだった。あっ……これはあれだ。前に俺がコンペティションで使ったやつ。それが両肩へと装着されている。

 形状は箱形のミサイルポッドそのまんま。でも中身はミサイルじゃない。そう、あれは……。

「「つぶねばでーる君!!」」

 偶然にも俺とリンの声が重なった。
 そう、あれは言ってみれば一回限りのトリモチ弾入りショットガンだ。

 グレイウルフは、敵機の手前で思いきり地面を蹴り、スラスターを巧みに操って高く跳躍をした。
 そのままムーンサルトじみた動きをしながら敵の頭上を飛び越え、跳躍が頂点に達した瞬間につぶねばでーる君を放つ。

 だが、照準をミスったのか、散弾の大半は地面へと着弾する。エクスドミネーターに命中したのはほんの数発だ。

「……? なんだこれは」

 ガオウは両腕を交差させることでガードしたが、想定していたであろう衝撃がなく、呆気にとられているようだった。
 ガオウは機体に纏わりつく粘りっけのある物体を見て不思議そうにしている。

「こんなもので……こんなものでこのエクスドミネーターが止められると思うなよっ!」

 自分の機体に纏わりついたものの正体を察したのだろう。からかっているとでも思われたのか、どうやらガオウの怒りを買ってしまったようだ。
 ……まあ、これを作り出した当人は、本当にからかってるつもりなのかもしれない。俺の膝の上できゃっきゃと楽しそうにしてるし。

 しかしガオウはまだ冷静だ。トリモチ弾の効力を侮ってはいない。地面に着弾したトリモチ弾を極力踏まないように立ち回っている。
 しかし……意外と効果があって驚きだ。トリモチ弾は、当たっても動きが多少阻害される程度でしかないが……実力が拮抗している場合、そのは大きな差になりかねないってところか。
 ガオウもそれはわかっているのだろう。だから自ら罠を踏むような真似はしないんだ。

「リン!」

 阿吽の呼吸とはこのことだろう。カティアが名を呼んだだけで、グレイウルフの手に新たな武装が出現する。

「っしゃあ! 仕上げといくぜっ!」

 グレイウルフの両腕が、かなり大きめのナックルガードに覆われていた。カティアは迷わずに両腕を合わせ、ナックルガード同士を連結させる。
 ふたつ合わさると、グレイウルフの半身を隠すほどの大きさであった。それをエクスドミネーターへと突き出し、数歩助走をつけると、ヘッドスライディングのごとく前へと飛ぶ。それはさながら、ヒーローが空を飛ぶときのポーズのようだった。

 そんな姿勢をとって、なにが起こるのかと不安になっていたが、実際空を飛ぶことになるとは思ってなかった。というのも、ナックルガードには複数のバーニアが付属しており、機体を回転させつつ直進するよう、計算されて配置されているようだ。

 グレイウルフ自身のスラスターも併せ、充分な速度を得て勢いよく飛び出した機体は、ひとつの弾丸が如く直進する。
 魔動人形一体ぶんの質量だ、まともに受けようものなら、かなりのダメージを受けるだろう。いま敵はトリモチ弾の影響で行動に制約がかかっていはずだ。
 よし、これなら当たる……!

「――フン」

 タイミング、速度ともに申し分なかったが、ガオウは鼻を鳴らしながら余裕をもって、最小限の動きで回避されてしまった。

 攻撃対象を失ったグレイウルフは、しばらく直進したのちに、やがて勢いを失いはじめる。
 回転が止まり高度も保てなくなるが、なんとか体勢を持ち直し、地面を滑りながら着地する。

「あだだだだっ」

 地面を滑ったときの揺れで脳が揺さぶられ、舌を噛みそうになったが、まばたきする間に揺れは収まってくれた。

「……くっ、虚をついた攻撃だと思ったんだけど、普通に躱されちゃったな。どうする? カティア――――っ!?」

 敵の位置を確認しようと、背面カメラの映像を確認した瞬間、背筋に冷たいものが走った。
 エクスドミネーターが追走してきていたのだ。それも、こちらまであと数歩の位置まで。こっちは攻撃後の硬直ですぐには動けない、ガオウはこの技のあとは隙ができることを見抜いた上で、すぐさま追撃に走ったのだ。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。 この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。 ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。 少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。 更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。 そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。 少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。 どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。 少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。 冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。 すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く… 果たして、その可能性とは⁉ HOTランキングは、最高は2位でした。 皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°. でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

処理中です...