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第4章:王子とオタクの境界線、突破中。
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吉沢の視線の先を追うと、ガチャのコーナーがある。
「ああ、ガチャガチャか。何、やりたいのあんの?」
「後ろのポスターは、部長の推しだよな?」
「そう。でもあれ狙うのは無謀すぎ」
今最も勢いのある異能バトル物のアニメ。そのキャラクターの中でも一番人気のやつだ。ガチャの前には大勢が並んでいるし、トレードの募集もほぼそのキャラに絞ったものばかり。自引き以外で手に入れる方法は無さそうだ。
「やる前から諦めるのはイヤだ」
「……はいはい、分かったよ」
呆れながらも、俺は列の最後尾に吉沢と並ぶ。
一緒にいることが増えて、俺もすっかり付き人ポジションが板についちまったなって思う。
滞りなく列は進み、ついに俺たちの番がくる。
俺は吉沢を目当てのガチャの前に座らせて、背後から壁になる。
「いいか。ガチャは沼だ。1回やって出なかったら諦めろ」
「軍資金ならあるが?」
さも当然みたいな顔で財布を出す吉沢に、俺はもう一度言い聞かせるように言う。
「ダメだ。今ここで貢ぐ奴はカモです」
吉沢は、むぅと不満げに唇を尖らせる。
あー、これは納得してないって顔だな。
「お前はなんでもホイホイ金出し過ぎ。小遣い使ってるうちはダメです」
俺だってよっぽど欲しいモンがある時は短期のバイトで金を作ってるんだ。親の金でオタ活するのはよくない。親のクレカでソシャゲガチャ回すようなもんだ。
「確かに……言われてみればそうだな」
「よし、気合入れて回せ」
真剣な顔で頷いた吉沢は、500円玉を入れて、慎重にハンドルを回した。
ガチャガチャガチャ――カシャン。
出て来たカプセルの色で、俺は外れを確信する。
狙いのキャラのイメージカラーは赤。これは誰の色でもないホワイト。
しかし吉沢は緊張の面持ちで、丁寧にカプセルのテープを外し、中身を取り出した。
「……誰これ?」
出て来たキャラに思わず俺は呟く。
「わからないのか? ちゃんと主人公パーティーの控えメンバーにいるだろ」
「あ、あー……いた、か?」
吉沢が知っているのだから、一応それなりに出番はあるのだろうが、俺の記憶からは完全に消え失せている。間違いなく、交換レートで言えば最低クラス。誰も欲しがらないやつだ。
「どうする? 俺の一回分、お前が回すか?」
「いや、それではズルをしたことになってしまう」
別に俺が決めた勝手なルールなんだから、破ったところで何もねぇのに、ほんと律義な奴。
「後はダメ元で交換に出してみるかだが……そいつ低レートだろうしな」
期待値ゼロで辺りを見回した、その時。
「あの、そのキャラ……もし良かったら、私のこの子と交換してもらえませんか?」
部長の推しキャラを手にした、ゆるふわパーマのお姉さんが、俺を素通りして吉沢に声をかけてきた。
「え、マジで?」
俺が固まってる間に、吉沢は「はい、是非」とにこやかに応じている。
「よかった~! その子、私の推しなんです。どうしてか、なかなか交換に来てくれなくって」
それは最初から皆交換諦めてるからですよ、なんて。
吉沢から嬉しそうに推しを受け取っているお姉さんに言えるわけもない。
彼女は、大事にそれをスリーブに入れて、友達の待つ場所へと戻っていった。
「お前……まさか顔で交換ゆるされたんじゃねえだろうな」
「そんな訳あるか。お前も見ただろ? あの子はお前が“低レート”って言ったキャラが本当に好きなんだ」
「……まあ、それはそうだな」
誰がどのキャラを好きになるかなんて、人の数だけ分かれてんだし、周りからどう見られようが推しは推し。自分にとっちゃ、推しだけが唯一の最高レートだ。
「俺は結構あのキャラ好きだぞ。目立ちはしないが、毎回主役を助けていい仕事をしている。体格が大きい分、戦闘では映えるしな」
「マジで覚えてないんだが……そいつ空気すぎだろ」
思わず口にすると、吉沢は一瞬驚いた顔をして、それから目を細めてイタズラっぽく笑った。
「ああ、なるほど。お前みたいだな」
「ハァ!?」
確かに普段の俺は、空気のモブで間違いないが。
何故だ。吉沢に言われると、ちょっと悔しい気もする。
「いや、でも待て。それって――」
俺のことも結構好きって認識にならねぇ?
なんて、訊けるはずもなく、俺は言葉を飲み込んだ。
一体吉沢の中で、今の俺がどのレートにいるのかはわかんねえけど。
せめて部長たちよりは上であってくれ、と願うのだった。
「ああ、ガチャガチャか。何、やりたいのあんの?」
「後ろのポスターは、部長の推しだよな?」
「そう。でもあれ狙うのは無謀すぎ」
今最も勢いのある異能バトル物のアニメ。そのキャラクターの中でも一番人気のやつだ。ガチャの前には大勢が並んでいるし、トレードの募集もほぼそのキャラに絞ったものばかり。自引き以外で手に入れる方法は無さそうだ。
「やる前から諦めるのはイヤだ」
「……はいはい、分かったよ」
呆れながらも、俺は列の最後尾に吉沢と並ぶ。
一緒にいることが増えて、俺もすっかり付き人ポジションが板についちまったなって思う。
滞りなく列は進み、ついに俺たちの番がくる。
俺は吉沢を目当てのガチャの前に座らせて、背後から壁になる。
「いいか。ガチャは沼だ。1回やって出なかったら諦めろ」
「軍資金ならあるが?」
さも当然みたいな顔で財布を出す吉沢に、俺はもう一度言い聞かせるように言う。
「ダメだ。今ここで貢ぐ奴はカモです」
吉沢は、むぅと不満げに唇を尖らせる。
あー、これは納得してないって顔だな。
「お前はなんでもホイホイ金出し過ぎ。小遣い使ってるうちはダメです」
俺だってよっぽど欲しいモンがある時は短期のバイトで金を作ってるんだ。親の金でオタ活するのはよくない。親のクレカでソシャゲガチャ回すようなもんだ。
「確かに……言われてみればそうだな」
「よし、気合入れて回せ」
真剣な顔で頷いた吉沢は、500円玉を入れて、慎重にハンドルを回した。
ガチャガチャガチャ――カシャン。
出て来たカプセルの色で、俺は外れを確信する。
狙いのキャラのイメージカラーは赤。これは誰の色でもないホワイト。
しかし吉沢は緊張の面持ちで、丁寧にカプセルのテープを外し、中身を取り出した。
「……誰これ?」
出て来たキャラに思わず俺は呟く。
「わからないのか? ちゃんと主人公パーティーの控えメンバーにいるだろ」
「あ、あー……いた、か?」
吉沢が知っているのだから、一応それなりに出番はあるのだろうが、俺の記憶からは完全に消え失せている。間違いなく、交換レートで言えば最低クラス。誰も欲しがらないやつだ。
「どうする? 俺の一回分、お前が回すか?」
「いや、それではズルをしたことになってしまう」
別に俺が決めた勝手なルールなんだから、破ったところで何もねぇのに、ほんと律義な奴。
「後はダメ元で交換に出してみるかだが……そいつ低レートだろうしな」
期待値ゼロで辺りを見回した、その時。
「あの、そのキャラ……もし良かったら、私のこの子と交換してもらえませんか?」
部長の推しキャラを手にした、ゆるふわパーマのお姉さんが、俺を素通りして吉沢に声をかけてきた。
「え、マジで?」
俺が固まってる間に、吉沢は「はい、是非」とにこやかに応じている。
「よかった~! その子、私の推しなんです。どうしてか、なかなか交換に来てくれなくって」
それは最初から皆交換諦めてるからですよ、なんて。
吉沢から嬉しそうに推しを受け取っているお姉さんに言えるわけもない。
彼女は、大事にそれをスリーブに入れて、友達の待つ場所へと戻っていった。
「お前……まさか顔で交換ゆるされたんじゃねえだろうな」
「そんな訳あるか。お前も見ただろ? あの子はお前が“低レート”って言ったキャラが本当に好きなんだ」
「……まあ、それはそうだな」
誰がどのキャラを好きになるかなんて、人の数だけ分かれてんだし、周りからどう見られようが推しは推し。自分にとっちゃ、推しだけが唯一の最高レートだ。
「俺は結構あのキャラ好きだぞ。目立ちはしないが、毎回主役を助けていい仕事をしている。体格が大きい分、戦闘では映えるしな」
「マジで覚えてないんだが……そいつ空気すぎだろ」
思わず口にすると、吉沢は一瞬驚いた顔をして、それから目を細めてイタズラっぽく笑った。
「ああ、なるほど。お前みたいだな」
「ハァ!?」
確かに普段の俺は、空気のモブで間違いないが。
何故だ。吉沢に言われると、ちょっと悔しい気もする。
「いや、でも待て。それって――」
俺のことも結構好きって認識にならねぇ?
なんて、訊けるはずもなく、俺は言葉を飲み込んだ。
一体吉沢の中で、今の俺がどのレートにいるのかはわかんねえけど。
せめて部長たちよりは上であってくれ、と願うのだった。
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