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第4章:王子とオタクの境界線、突破中。
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入れ替わりの時間が来て、並んでいた俺たちは次々と店内に引き入れられた。
手にした番号札と同じ番号の席に通されると、敷いてあるランチョンマットの絵柄がまたカイルだった。番号だけじゃなく、席のキャラも合わせてあるらしい。
「すごいな。横のパネルも小物も全部カイルで揃えてあるぞ!」
興奮気味に言う吉沢に、俺は一抹の不安を覚える。
「なに、お前そいつが推しなの?」
「推しというほどではないが。まあ、かなり好きなキャラではあるな」
「ほーん?」
ガチャの時はモブでも構わんみたいな態度だったくせに、カイルは赤髪イケメンのメインキャラだ。
……こうなると、吉沢の中での俺のレートもかなり危うくなってきたな。
ほんのちょっと前についた謎の自信が、一瞬で打ち砕かれる。
「どうした? 何か言いたげな顔だな?」
「べっつにー?」
俺がカイルに不満を持っていると思ったんだろう。
吉沢は、更に追い打ちをかけて来る。
「好きでもいいだろ! カイルはカッコいいし、すごく仲間想いなんだ」
「長髪キャラってだけで無理」
「なっ……! お前はちゃんと中身を見ろ、中身を!」
不貞腐れる俺を、吉沢はジト目で睨みつける。
俺も何を躍起になってるんだか。
でも俺の中の陰キャ魂が、女にモテるヒーロー枠を無条件で嫌うように出来てるんだ。――悪いな。
「で、俺の席のコイツはなんだよ?」
話を変えようと、俺の方のテーブルを指で叩く。
丸っこいパステルピンクの身体に、短い手足がついた謎キャラ。
「マープルくんだ」
「知らねぇな」
吉沢曰く、主人公パーティーが困った時にどこからともなく現れる超強力なお助けキャラらしい。
ブサイク系のマスコット的ポジションかと思ったら、吉沢は「可愛いよな」と喜んでいたので、ほんと人の好みって分かんねえよな。
無論、美醜の感覚だってそうだ。
吉沢みたいに万人受けする見た目だって、誰かにとっては地雷かもだろ。
俺は、まあ……普通に吉沢の見た目はドストライクなんだけど。
バランスが取れ過ぎてて、人形染みた顔。無表情だと怖いくらいだが、これがコロコロと感情に乗せて変わるのだから面白い。
不機嫌な時にちょっと尖らせる唇も、面白いモノを見つけた時に輝く瞳も。
文句なしの美人が、大げさに怒ったり笑ったりしてんのがいいんだよな。
最近ふと気づいたんだが、コイツのそう言うとこ、俺の推しに似てるのかもしれん。アルルの気高くてクールなくせに、時々抜けてる感じ。
吉沢にはどことなく、その雰囲気がある。
二次元を現実に求めるほど馬鹿じゃないつもりだったが、吉沢って見れば見るほど二次元感あるんだよな。
最早お前のその存在がファンタジーだ。
「――で、中村は何にするんだ?」
やっべ、全然聞いてなかったわ。俺が吉沢の顔見てボーッとしてる間に、吉沢はメニューの候補を幾つか絞ったらしい。
「俺はお前の頼みたいモンがあれば、それでいいけど」
「本当か!? うーん……でも迷ってるんだよな」
吉沢は難しい顔で、メニューとにらめっこしている。
「どれ?」
尋ねれば2択どころか、吉沢は両手の指を使ってメニューを指した。
「コースターは欲しいからドリンクを多めに頼みたいんだが、料理も食べたい」
「時間制限あるしな。俺はドリンク3杯とメイン、デザートで4皿くらいは余裕」
「そんなに……?」
「こういうとこのって、写真よりサイズ小さいんだよ。大丈夫だって」
経験者として、アドバイスしてやる。特典目当てで頼みすぎて残すパターンも聞くし、ここは俺が管理した方が無難だろう。
「頼りにしてるぞ」
「おう、任せとけ」
吉沢の希望を聞いて、俺が注文票にチェックを入れていく。
「よし、こんくらいならいけるだろ」
書き込みを終えて店員を呼ぼうとしたら、吉沢が俺の手元をジッと見ているのに気づいた。
手にした番号札と同じ番号の席に通されると、敷いてあるランチョンマットの絵柄がまたカイルだった。番号だけじゃなく、席のキャラも合わせてあるらしい。
「すごいな。横のパネルも小物も全部カイルで揃えてあるぞ!」
興奮気味に言う吉沢に、俺は一抹の不安を覚える。
「なに、お前そいつが推しなの?」
「推しというほどではないが。まあ、かなり好きなキャラではあるな」
「ほーん?」
ガチャの時はモブでも構わんみたいな態度だったくせに、カイルは赤髪イケメンのメインキャラだ。
……こうなると、吉沢の中での俺のレートもかなり危うくなってきたな。
ほんのちょっと前についた謎の自信が、一瞬で打ち砕かれる。
「どうした? 何か言いたげな顔だな?」
「べっつにー?」
俺がカイルに不満を持っていると思ったんだろう。
吉沢は、更に追い打ちをかけて来る。
「好きでもいいだろ! カイルはカッコいいし、すごく仲間想いなんだ」
「長髪キャラってだけで無理」
「なっ……! お前はちゃんと中身を見ろ、中身を!」
不貞腐れる俺を、吉沢はジト目で睨みつける。
俺も何を躍起になってるんだか。
でも俺の中の陰キャ魂が、女にモテるヒーロー枠を無条件で嫌うように出来てるんだ。――悪いな。
「で、俺の席のコイツはなんだよ?」
話を変えようと、俺の方のテーブルを指で叩く。
丸っこいパステルピンクの身体に、短い手足がついた謎キャラ。
「マープルくんだ」
「知らねぇな」
吉沢曰く、主人公パーティーが困った時にどこからともなく現れる超強力なお助けキャラらしい。
ブサイク系のマスコット的ポジションかと思ったら、吉沢は「可愛いよな」と喜んでいたので、ほんと人の好みって分かんねえよな。
無論、美醜の感覚だってそうだ。
吉沢みたいに万人受けする見た目だって、誰かにとっては地雷かもだろ。
俺は、まあ……普通に吉沢の見た目はドストライクなんだけど。
バランスが取れ過ぎてて、人形染みた顔。無表情だと怖いくらいだが、これがコロコロと感情に乗せて変わるのだから面白い。
不機嫌な時にちょっと尖らせる唇も、面白いモノを見つけた時に輝く瞳も。
文句なしの美人が、大げさに怒ったり笑ったりしてんのがいいんだよな。
最近ふと気づいたんだが、コイツのそう言うとこ、俺の推しに似てるのかもしれん。アルルの気高くてクールなくせに、時々抜けてる感じ。
吉沢にはどことなく、その雰囲気がある。
二次元を現実に求めるほど馬鹿じゃないつもりだったが、吉沢って見れば見るほど二次元感あるんだよな。
最早お前のその存在がファンタジーだ。
「――で、中村は何にするんだ?」
やっべ、全然聞いてなかったわ。俺が吉沢の顔見てボーッとしてる間に、吉沢はメニューの候補を幾つか絞ったらしい。
「俺はお前の頼みたいモンがあれば、それでいいけど」
「本当か!? うーん……でも迷ってるんだよな」
吉沢は難しい顔で、メニューとにらめっこしている。
「どれ?」
尋ねれば2択どころか、吉沢は両手の指を使ってメニューを指した。
「コースターは欲しいからドリンクを多めに頼みたいんだが、料理も食べたい」
「時間制限あるしな。俺はドリンク3杯とメイン、デザートで4皿くらいは余裕」
「そんなに……?」
「こういうとこのって、写真よりサイズ小さいんだよ。大丈夫だって」
経験者として、アドバイスしてやる。特典目当てで頼みすぎて残すパターンも聞くし、ここは俺が管理した方が無難だろう。
「頼りにしてるぞ」
「おう、任せとけ」
吉沢の希望を聞いて、俺が注文票にチェックを入れていく。
「よし、こんくらいならいけるだろ」
書き込みを終えて店員を呼ぼうとしたら、吉沢が俺の手元をジッと見ているのに気づいた。
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