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第4章:王子とオタクの境界線、突破中。
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しおりを挟む「何? 注文変えるか?」
「そうじゃなくて……俺が選んだモノだけでいいのか?」
吉沢からすれば、とんでもない機会を譲ってもらった気分なのかもしれない。
でも俺は、この作品に特別思い入れがあるわけじゃないし、コラボカフェだって何度も経験してる。
強いて言えば、このカフェで特別なのは、吉沢がいるってことくらいだ。
「いいよ。お前を連れて来たかっただけだし」
「そっ、そうか……」
あれ? 今俺なんか恥ずいこと言った?
小さく「ありがとう」って返してきた吉沢の視線も泳いでる。
しばしの沈黙。ちょっと気まずい。
二人きりって、意外と話題が続かねぇ。
最近は先輩たちも一緒だったし、いざキスの件を抜きにしたら、コイツと何を話せばいいのかさっぱり分からん。
「グッズとか見て来るか? 俺、席見とくし」
注文が来るまで時間がかかりそうだから、気まずさ回避で提案してみた。
だが吉沢は少し考えてから、きっぱりと首を振った。
「いや、いい」
「なんでだよ。限定品もあるぞ」
「それはそうだが……せっかく一緒に来たんだし」
「ぐっ……」
別行動を嫌がるなんて、こいつも案外可愛いとこあるじゃねえか。
慣れない場所で心細いだけかもしれねぇけど、それでも。
普段あれだけ偉そうな奴に、こんなふうに縋られると、胸の奥がなんかくすぐったい。
というか、自分で言うのもなんだが、コイツは本当に気にしてないんだろうか。
俺みたいなのと一緒につるんでること自体をさ。
学校の連中はまいたとはいえ、吉沢が目を引く存在なのは変わらない。
こんな場所でだって、パネルやポスターを撮ってるフリして、カメラを向けてるやつもいる。だから俺は、それとなく壁になってるんだが……いつどこで変な噂を流されるかなんて分からない。
確かに、吉沢の王子像をぶっ壊してやろうって思ったのは俺だ。
けど、それにしたってコイツは自分のことに無頓着すぎる。
いや、逆か。
吉沢は自分自身が“変わらない”から、周りの視線なんて気にしないんだ。
「お前、こういうとこでブレねぇの、すげぇよ」
俺なんか元々大した評判もねぇくせに、未だに人目ばっか気にしてる。
俺が何か好きでいることが、誰かの迷惑になるか? なるわけねぇだろ。
俺がオタクだろうが、誰も気にしちゃいねぇよ。
だったら、余計なこと考えずに、俺もお前と一緒の今を楽しめばいいんじゃねぇのかな。
「なにがすごいんだ?」
「お、来たぞ!」
吉沢に問い詰められる前に、注文した料理とドリンクが届く。
キャラのことはよく分かってねぇけど、いちいち得意げに知識を披露する吉沢の、コロコロ変わる表情は見てて飽きない。味見っつって同じ皿を突っつき合ったり、ドリンクを交換したり――それだけで十分楽しかった。
ランダムで出たコースターを、周りの客と交換するまできっちりカフェを堪能する。
ビルの他の階も回ってたら、だいぶ時間食っちまったらしい。
外に出ると、真っ暗な空の下で店の照明がギラギラと光っていた。
「今から勉強会は無理だな」
「……そう、だな」
そのまま駅に向かって歩き始めると、吉沢の足取りがやけに重い。
さっきまでのテンションはどこへやら。今は肩が落ちてる。
そのしょんぼりした背中見てたら、考えるより先に口が動いた。
「あー……明日休みだしさ。なんなら泊ってくか?」
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