事故チューしたら、学園王子にロックオンされました

いとい乃衣

文字の大きさ
17 / 37
第4章:王子とオタクの境界線、突破中。

6

しおりを挟む

「何? 注文変えるか?」
「そうじゃなくて……俺が選んだモノだけでいいのか?」

 吉沢からすれば、とんでもない機会を譲ってもらった気分なのかもしれない。
 でも俺は、この作品に特別思い入れがあるわけじゃないし、コラボカフェだって何度も経験してる。
 強いて言えば、このカフェで特別なのは、吉沢がいるってことくらいだ。

「いいよ。お前を連れて来たかっただけだし」
「そっ、そうか……」
 あれ? 今俺なんか恥ずいこと言った?
 小さく「ありがとう」って返してきた吉沢の視線も泳いでる。
 しばしの沈黙。ちょっと気まずい。
 二人きりって、意外と話題が続かねぇ。
 最近は先輩たちも一緒だったし、いざキスの件を抜きにしたら、コイツと何を話せばいいのかさっぱり分からん。

「グッズとか見て来るか? 俺、席見とくし」
 注文が来るまで時間がかかりそうだから、気まずさ回避で提案してみた。
 だが吉沢は少し考えてから、きっぱりと首を振った。

「いや、いい」
「なんでだよ。限定品もあるぞ」
「それはそうだが……せっかく一緒に来たんだし」
「ぐっ……」

 別行動を嫌がるなんて、こいつも案外可愛いとこあるじゃねえか。
 慣れない場所で心細いだけかもしれねぇけど、それでも。
 普段あれだけ偉そうな奴に、こんなふうに縋られると、胸の奥がなんかくすぐったい。

 というか、自分で言うのもなんだが、コイツは本当に気にしてないんだろうか。
 俺みたいなのと一緒につるんでること自体をさ。
 学校の連中はまいたとはいえ、吉沢が目を引く存在なのは変わらない。
 こんな場所でだって、パネルやポスターを撮ってるフリして、カメラを向けてるやつもいる。だから俺は、それとなく壁になってるんだが……いつどこで変な噂を流されるかなんて分からない。

 確かに、吉沢の王子像をぶっ壊してやろうって思ったのは俺だ。
 けど、それにしたってコイツは自分のことに無頓着すぎる。
 いや、逆か。
 吉沢は自分自身が“変わらない”から、周りの視線なんて気にしないんだ。

「お前、こういうとこでブレねぇの、すげぇよ」

 俺なんか元々大した評判もねぇくせに、未だに人目ばっか気にしてる。
 俺が何か好きでいることが、誰かの迷惑になるか? なるわけねぇだろ。
 俺がオタクだろうが、誰も気にしちゃいねぇよ。
 だったら、余計なこと考えずに、俺もお前と一緒の今を楽しめばいいんじゃねぇのかな。

「なにがすごいんだ?」
「お、来たぞ!」
 吉沢に問い詰められる前に、注文した料理とドリンクが届く。
 キャラのことはよく分かってねぇけど、いちいち得意げに知識を披露する吉沢の、コロコロ変わる表情は見てて飽きない。味見っつって同じ皿を突っつき合ったり、ドリンクを交換したり――それだけで十分楽しかった。
 ランダムで出たコースターを、周りの客と交換するまできっちりカフェを堪能する。

 ビルの他の階も回ってたら、だいぶ時間食っちまったらしい。
 外に出ると、真っ暗な空の下で店の照明がギラギラと光っていた。

「今から勉強会は無理だな」
「……そう、だな」

 そのまま駅に向かって歩き始めると、吉沢の足取りがやけに重い。
 さっきまでのテンションはどこへやら。今は肩が落ちてる。
 そのしょんぼりした背中見てたら、考えるより先に口が動いた。

「あー……明日休みだしさ。なんなら泊ってくか?」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

僕たち、結婚することになりました

リリーブルー
BL
俺は、なぜか知らないが、会社の後輩(♂)と結婚することになった! 後輩はモテモテな25歳。 俺は37歳。 笑えるBL。ラブコメディ💛 fujossyの結婚テーマコンテスト応募作です。

地味メガネだと思ってた同僚が、眼鏡を外したら国宝級でした~無愛想な美人と、チャラ営業のすれ違い恋愛

中岡 始
BL
誰にも気づかれたくない。 誰の心にも触れたくない。 無表情と無関心を盾に、オフィスの隅で静かに生きる天王寺悠(てんのうじ・ゆう)。 その存在に、誰も興味を持たなかった――彼を除いて。 明るく人懐こい営業マン・梅田隼人(うめだ・はやと)は、 偶然見た「眼鏡を外した天王寺」の姿に、衝撃を受ける。 無機質な顔の奥に隠れていたのは、 誰よりも美しく、誰よりも脆い、ひとりの青年だった。 気づいてしまったから、もう目を逸らせない。 知りたくなったから、もう引き返せない。 すれ違いと無関心、 優しさと孤独、 微かな笑顔と、隠された心。 これは、 触れれば壊れそうな彼に、 それでも手を伸ばしてしまった、 不器用な男たちの恋のはなし。

俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード

中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。 目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。 しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。 転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。 だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。 そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。 弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。 そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。 颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。 「お前といると、楽だ」 次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。 「お前、俺から逃げるな」 颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。 転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。 これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。 続編『元社畜の俺、大学生になってまたモテすぎてるけど、今度は恋人がいるので無理です』 かつてブラック企業で心を擦り減らし、過労死した元社畜の男・藤堂悠真は、 転生した高校時代を経て、無事に大学生になった―― 恋人である藤崎颯斗と共に。 だが、大学という“自由すぎる”世界は、ふたりの関係を少しずつ揺らがせていく。 「付き合ってるけど、誰にも言っていない」 その選択が、予想以上のすれ違いを生んでいった。 モテ地獄の再来、空気を読み続ける日々、 そして自分で自分を苦しめていた“頑張る癖”。 甘えたくても甘えられない―― そんな悠真の隣で、颯斗はずっと静かに手を差し伸べ続ける。 過去に縛られていた悠真が、未来を見つめ直すまでの じれ甘・再構築・すれ違いと回復のキャンパス・ラブストーリー。 今度こそ、言葉にする。 「好きだよ」って、ちゃんと。

陰キャな俺、人気者の幼馴染に溺愛されてます。

陽七 葵
BL
 主人公である佐倉 晴翔(さくら はると)は、顔がコンプレックスで、何をやらせてもダメダメな高校二年生。前髪で顔を隠し、目立たず平穏な高校ライフを望んでいる。  しかし、そんな晴翔の平穏な生活を脅かすのはこの男。幼馴染の葉山 蓮(はやま れん)。  蓮は、イケメンな上に人当たりも良く、勉強、スポーツ何でも出来る学校一の人気者。蓮と一緒にいれば、自ずと目立つ。  だから、晴翔は学校では極力蓮に近付きたくないのだが、避けているはずの蓮が晴翔にベッタリ構ってくる。  そして、ひょんなことから『恋人のフリ』を始める二人。  そこから物語は始まるのだが——。  実はこの二人、最初から両想いだったのにそれを拗らせまくり。蓮に新たな恋敵も現れ、蓮の執着心は過剰なモノへと変わっていく。  素直になれない主人公と人気者な幼馴染の恋の物語。どうぞお楽しみ下さい♪

兄貴同士でキスしたら、何か問題でも?

perari
BL
挑戦として、イヤホンをつけたまま、相手の口の動きだけで会話を理解し、電話に答える――そんな遊びをしていた時のことだ。 その最中、俺の親友である理光が、なぜか俺の彼女に電話をかけた。 彼は俺のすぐそばに身を寄せ、薄い唇をわずかに結び、ひと言つぶやいた。 ……その瞬間、俺の頭は真っ白になった。 口の動きで読み取った言葉は、間違いなくこうだった。 ――「光希、俺はお前が好きだ。」 次の瞬間、電話の向こう側で彼女の怒りが炸裂したのだ。

路地裏の王子様と秘密のカフェ ―10年ぶりに再会した親友はトップアイドルでした―

たら昆布
BL
大学生の千秋がバイト帰りの路地裏で助けたのは、今をときめくアイドル『GALAXY』のセンター、レオだった。 以来、レオは変装して千秋の働くカフェへ毎日通い詰めるようになる。 ​「千秋に会うと疲れなんて全部消えちゃうんだ」 トップアイドルとは思えないほど素直に懐いてくるレオに、千秋は戸惑いながらも多忙な彼を支えたいと願うようになる。 ​しかし、千秋はまだ知らない。 レオが10年前に「また絶対会おう」と約束して別れた泣き虫な親友の玲央本人だということに。

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

振られた腹いせに別の男と付き合ったらそいつに本気になってしまった話

雨宮里玖
BL
「好きな人が出来たから別れたい」と恋人の翔に突然言われてしまった諒平。  諒平は別れたくないと引き止めようとするが翔は諒平に最初で最後のキスをした後、去ってしまった。  実は翔には諒平に隠している事実があり——。 諒平(20)攻め。大学生。 翔(20) 受け。大学生。 慶介(21)翔と同じサークルの友人。

処理中です...