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2.一緒の部屋だけは勘弁です

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翌週。
私はマークスラット家で、私のために用意された部屋で肩を落とした。
結局何度も、お父様に婚約破棄をお願いしたけど叶わなかったわ。
当り前よね。
私、ライラ・フォーデン家の爵位は子爵。
公爵家のマークスラット家に婚約破棄など申し入れることすら不可能だ。
だから直接アルベルト様に直談判しに行ったのに、結果がこうして一緒に住むことになるなんて……。

「アルベルト様にはもっとお似合いの方がいらっしゃるはずなのに……、どうして私なんでしょう……」

こんなに身分が違うのにどうして婚約なんてと思ったけれど、実は親同士が大学時代の同級生という間柄で友人関係にあった。たまたま再会し、子供同士の年が近いということで話が進んだと聞いた。
親が決めた結婚なんて本人の意思はまるで無視よね。

「どうだ、広い部屋だろう」

窓の外を眺めていると、アルノルト様が部屋の入口に立って声をかけてきた。

「えぇ」

部屋は申し分ない。
私の実家の部屋よりも広く、備え付けの家具も高級品。
ドレスやアクセサリーなどもいくつか用意されており、不自由はしない様子だった。

「俺と同じ部屋がよかったか?」
「いいえ」
「さすがに籍を入れるまでは部屋は分けておこうと思ってな」

勝手に残念がっているアルノルト様は、私の髪をそっと撫でた。
栗色の柔らかい髪はアルノルト様の手をスルっとすり抜ける。

「柔らかい髪だな。お前は小さくて、きっとなにもかもが柔らかいんだろうな。壊れてしまいそうだ」

そう言いながら優しく撫でてくるその大きな手に顔が赤くなってしまう。
柔らかいだなんて……。
そんな風に男の人に言われたことも、触れられたこともなかった。
あぁ、ライラ。何をドキドキしているの。ほだされてはだめよ。

「アルベルト様。婚約についてもう一度考え直していただけませんか」
「無理だ」

振り向いて伝えるが、にべもなく断られて唇をかむ。

「俺らの婚約を決めた両親が安心しきって、王都へ移った。この領土は今後、俺が任されることになる。そんな時に、婚約破棄などできない」
「しかし……」
「大丈夫だ、心配ないから」

そう言って部屋を出ていくアルベルト様の背中を睨みつけた。
何が大丈夫、よ。
他に大勢、愛人がいる旦那様なんて私は嫌なの。
結婚相手には、私だけを愛してほしいのよ。
これから先、前途多難だわ。
私はそのままベッドに倒れこんだ。





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