~LOVE GAME~

佐倉ミズキ

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GAME2

同一人物…?~1~

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ーーあれは、いまから10年前のこと。
今より少し前の季節で、小学校入学してすぐの頃だった。
私はこの街に引っ越して来たばかり。
幼稚園からの友達は当然いなくて……。
引っ込み思案な性格だったから友達も出来ず、初めはいつもひとりぼっちだった。
遊ぶ相手がいなかったので、家に帰るといつも近くの公園でひとりで遊んでいた。 

そんなある日。
その公園で友達が出来た。それが……。 

“たっくん”

同じ小学校だった。
たっくんはいつもニコニコしていて、とても優しかった。

“かえでちゃん”

どこか甘えるような、可愛らしく優しく私の名前を呼んではニッコリ微笑む。
男の子はガサツで怖かったから、穏やかなたっくんは私にとって特別な男の子だった。
毎日のように、一緒に公園で遊んだ。
私は優しい優しいたっくんが、大好きだった。
いつも気遣ってくれて、怒るなんてことは決してない。

だから……。

だから私はつい、たっくんを怒らせてみようとして意地悪してしまった。

出会ってから数日後。
公園の道路際の大きな木。
そこで二人で木登りをしていた。 
でも小柄だったたっくんは登れなくて……。
私はそれを知ってて、先にどんどんと登っていった。

『待ってよ、かえでちゃん!』

たっくんの呼ぶ声。

『待ってよ!』

必死に着いてきたたっくんが、やっと木の真ん中まで登った時。
私は意地悪して、ふざけて木を揺らしたんだ。
そうしたら……。

たっくんは足を滑らせて、道路側に落ちた。
そして、ちょうどやってきた車に轢かれたのだ。

キキキー、ドカン!!!

勢いよく引かれて、血がたくさん出ていて、ピクリとも動かなくなったたっくん。
車から降りたおじさんが、慌てて救急車を呼んで、そのまま運ばれていった。
それを、呆然と木の上から見ていた。
それからは私もショックで記憶が曖昧でほとんど覚えていない。

ただ…。

私は親からもうたっくんには会えないと言われた。
遠いところへ行ってしまったのだと。
幼い心に、それはもう二度と会えなくて永遠の別れなのだと理解した。
両親はなにも言わないけど、きっとたっくんは死んでしまったのだろうと……。
そして、私はそのショックから当時の記憶がほとんどなかった。
そして、今。
龍輝君の言葉で、一気に思い出したのだ。

まさか……。
そのたっくんが生きていたなんて……。
生きていてくれて嬉しい。
本当に嬉しい。

「生きていて良かった……」
「……」

私の呟きに龍輝君が反応することはなかった。
でも……。

『傷のことばらされたくなかったら俺の言うこと聞けよ?』

だなんて……。


完璧、脅しだ。
龍輝君の言うことってなに?
まさか、いじめに会うとか?
確かにそんな目にあっても、何も言えないくらいのことはした。
でも……、正直怖かった。
だからといって、私は加害者なんだから龍輝君には逆らえない立場だ……。

「言うことを聞くって、どんなこと……?」

怯えながらそういうと、龍輝君はため息をついて「考えとく」と部屋を出ていった。



ーーーー

龍輝君が生きていたのは嬉しいけど……。
私の知っている龍輝君はあんなんじゃなかった。
はぁ~……。
自分のしたことの後悔と、これから何が起こるかわからない不安とが入り交じった重いため息をつく。

「何、ため息? 幸せが逃げるよ~」

親友のちなが机に伏せっている私の顔を覗きこんだ。

「楓、昨日、春岡くんのとこ行ってから様子が変だよ?」
「そうかな……?」

変にもなるよね。
私も戸惑っているんだから。

「大丈夫? 何かあったの?」

いつもと様子が違う私を心配して、顔を覗き込むちな。

優しいな、ちなは。
でも……、さすがにこれはちなにも言いにくい。

「……ううん、大丈夫。何でもないから」
「ならいいけど……」

本当はいろいろ聞きたそうな表情のちな。
でも無理に聞きだそうとはしない。

……ごめんね。ちな。

私が再び小さくため息をつくと、フッと横に人の気配がした。
顔を上げると、そこには貴島君が立っていた。

「あれ~? どうしたの? 貴島君」

私の問いかけに、貴島君は困ったように微笑んだ。

「どうしたも何も……。今日の昼休みは委員の小会議があるんだけど?」

小会議……、そんなのあったっけ?

私がポカンとしていると貴島君は苦笑した。
その笑顔に顔が赤くなる。
そうだ、思い出した。この前の会議終わりに言われていたっんだった。 
すっかり忘れていた。恥ずかしい~!
私は赤い顔がばれないように急いで席を立った。

「ご、ごめんね! すぐ行くね!」
「うん」

貴島君はまだ苦笑していた。
恥ずかしい! バカな子って思われたよね!
(そりゃあ学年2位の貴島君にくらべたら私なんて大バカだけど…)
貴島君をチラリと見ると優しく微笑んで、準備する私を見ていた。
なぜだかとても照れてしまった。

急いで二人で会議室に向かい、扉をガラリと開けると既にみんな揃っていた。
一斉にみんながこちらを向いて注目される。

「おっせーぞ。1‐G」

担当の先生に注意され、私達はペコペコ謝りながら席に着いた。
顔を上げると、こちらをジッと見ていた龍輝君と目が合ってしまった。

「っ……」

昨日のこともあり、私の心臓はドキンと跳ね上がった。
龍輝君は机に肘を立てていて、口元に手を当てている。
私をジッと見た後、小さく笑ったようだった。

「バーカ」

口パクでそう言われたのがわかった。
私は恥ずかしさから顔が赤くなるのを感じて、俯いて龍輝君の視線から目を反らした。

「怒られちゃったね」

下を向いていると、隣に座る貴島君が小さい声で私に囁いた。
顔をあげると、ちょっと悪戯っ子のように笑っている。

「あ……。そうだね」

その笑顔にホッとして、私も釣られてクスリと笑った。

会議は小とつくぐらいだから、15分程度で終わった。
昼休みが終わるまでまだ10分以上ある。

「早く終わって良かった」
「そうだね。まだゆっくり出来るね」

私は貴島君にそう言いながら席を立とうとするとフワッと机に影が下りた。
顔を上げると、そこには……。

「龍輝……君」

優しく微笑む龍輝君がいた。






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