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第2話 選択とオリジナル
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「ですがそれ程の代物を、ただの人間が扱うにはある程度のリスクが必要です。代償無くして超常の力を得る事は叶いません」
彼女の言葉は最もだろう。
無条件で強大な力を得られるほど、世の中は甘くない。
それは理解できる。
ただ……人間ではなく、ただの人間だと言った事が引っかかる。
まるで、普通じゃない人間が居るみたいな言い回し。
それにその人間なら、何のリスクもなく扱えるかのようにとらえる事が出来てしまう表現。
もし仮に普通じゃない人間が居るとしても、それは俺じゃない。
転生という事が特殊であり、特別な存在であるとするならば、俺はそのただの人間じゃない事になるが、恐らくそうではないだろう。
もちろん彼女が言っていた要望が、俺をただの人間ではない存在へと昇華してくれるという可能性はある。
しかしそれは俺の希望的観測でしかない。
なら俺は最悪の状況を想定するべきだろう。
俺もそのリスクとやらを背負うだろう可能性を……
俺はそう考え、女性に向ける視線をより真剣なものへと変える。
「その武具と契約する為のリスクとは、具体的にどういったものになるんですか?」
「正確には、契約する際にはリスクは伴いません。契約に成功したその瞬間から、契約者に対してリスクが発生します。具体的には、軽いもで肉体の制御が効かなくなったり、重いものでは死に至ります。とは言えそれは、契約武具自体に精神が飲まれたときにおこるものです」
精神が飲まれる?
その契約武具とやらが特殊だろう事は想像できる。
だが言葉から推察するに、剣であったり鎧であったりする事に違いはないはずだ。
それに精神が飲まれるとは一体どういう事だ?
俺がそんな事を疑問に思っていると、彼女はそれに気づいたかのように微笑みかけてくる。
「武具と言っても貴方が考えているような、無機質なものじゃありません。契約武具にはそれぞれ意思が存在しており、武具自体が契約者を見極めるのです。自身を扱うに相応しい人間かどうか」
「それは……生きているという事ですか?」
「いいえ、それは違います。確かに意思はありますが、それは自身を使うに相応しいかを判断するだけです。それ以上の事もそれ以下の事も出来ません。……ですが、相応しくないと判断すれば話は変わってきます。相応しくないと判断した瞬間から、契約武具は契約者の精神である魂を乗っ取ろうとし、成功すればその世界で生を受けます。それが言わば、先程説明したリスクの根幹です」
おいおい……
その契約武具とやらと契約すると、死ぬまで常に体を乗っ取られるリスクと隣り合わせって事か?
確かに絶大な力があるにこしたことは無い。
だが常に体を乗っ取られるリスクと天秤にかけてまで欲しいかと聞かれれば、正直答えに困ってしまう。
「それ程心配する必要はありませんよ。精神を乗っ取られると言っても、そう簡単には相応しくないと判断する事はありませんから。それにそうなり得る可能性がある場合、そもそも契約自体成功しません」
どうやらかなり表情に出ているらしく、彼女は優しくそう言ってくれた。
だが俺は彼女の言葉でより不安が増す。
簡単にはという事は、絶対ではないという事。
それは決して安心できるものではなく、常に自身が自身でなくなる可能性に恐怖しなければならないという事。
そこまでの事をしなければ生きていけないような世界という事か……
俺はそんな事を思い、軽くため息をついてしまう。
だがこのまま訳も分からず死ぬよりは、そんな世界であろうと転生する方が断然ましだろうな。
「大丈夫ですか?」
「はい、大丈夫です」
俺は自分に言い聞かせるかのように、決意を込めてそう言った。
「では話の続き、と言うか最初の質問である私が聞く貴方の要望について話させていただきたいと思います。予想は出来ていると思いますが、私が聞く要望とは契約武具に関する事です」
やっとその話か。
彼女の言う通り、ある程度予想は出来ていた。
何せ転生する世界についての説明というよりも、契約武具についての説明だったからな。
まぁ俺が契約武具について色々質問したせいでも勿論あるだろうがな。
「貴方は転生した先での契約の儀によって、契約武具と契約できない可能性があります。理由としては契約は精神に対して行われるものですが、今回は肉体と精神が異なる為です」
「それはつまり、転生の影響という事ですか?」
「はい。そう考えてもらって問題ありません。ですので今ここで、契約武具との契約を行います。そして私が聞くのは、その際に契約できる武具に関しての要望です」
なるほど。
要望を聞くとは言っているが、要は救済処置のようなものだな。
恐らくこの話が出なければ、俺には何らかの契約武具とやらが見繕われていたのだろう。
それを俺が選べるか、彼女が選んだかの違いという訳か。
さてどうするか……
正直基準がわからないから、どういったものにすればいいか全くわからない。
「……その要望は何でも大丈夫なんですか?」
「はい。ですが勿論、出来る事と出来ない事は存在します。ですので要望をうかがってから、もしできないものであった場合別の案を出していただきます」
何回でもチャレンジできるのは助かるな。
正直無理だった場合彼女が選ぶとかだったら、あまり迂闊な事は言えないからな。
とは言えどうするか……
彼女は何でもいいと言ったが、流石に突拍子もない事は無理だろう事は想像できる。
だが、確認作業は重要だろう。
「……どんなことがあろうと絶対に精神が乗っ取られることがなく、無限に成長・進化する武具をお願いします」
「わかりました。武具による精神支配が無く、武具自体が成長し進化していくというものでよろしいですね?」
「はい、それでお願いします」
「では今から作成しますので、少々お待ちください」
彼女はそう言うと目を瞑り、腕を伸ばし手を体の正面で合わせる。
その合わせた手を、肩幅ぐらいまでゆっくりと横に離していく。
すると丁度離れた手と手の中間に、突如白い球体が現れた。
そして彼女はまるでその球体に何らかの力を込めるかのように、両手が震えるほど力を込めている。
マジか……
まさか行けるとは思わなかった。
だって要はこれ、契約武具とやらのリスクが無くなり、無限に強くなっていく武器って事だろ?
いや、勿論武具って言ってるから武器であるとは限らないけどさ。
けど絶対無理だと思うだろう、普通。
俺としては願ってもない事だから、断るなんて選択肢は勿論ないけどさ。
本当に許可して大丈夫なのか? とは思ってしまうよな。やっぱり。
そう思っていると、先程まで彼女の両手の中間にあった球体の形が徐々に細く長く変わり始めた。
色も白かったものが徐々に変わり、薄い茶色へと変わっている。
そして彼女がゆっくりと目を開けた時には、既に形が整い、それが何なのか認識できるようになっていた。
だがそれは武具と呼んでいいのか?
いや、正直武具の定義に詳しい訳じゃないから何とも言えないが、それは違うんじゃないか?
だってそれって、木刀だろ?
「どうぞ。貴方がこれを手に取ることによって、この武具は完成します」
俺は一瞬躊躇いながらも、彼女の言葉に従うように木刀の持ち手を右手で掴む。
すると木刀は俺の右手に吸い込まれるように縮んだかと思うと、本当に右手に吸い込まれたかのようにその場から消えてしまった。
え!?
何がどうなってるんだ?
「先程の木刀をイメージしながら、オリジナルと言ってみてください。そうすればまたその場に現れますから」
俺の疑問を察したかのように、彼女は優しくそう語りかけてくる。
俺は少し戸惑いながらも、彼女の言う通りに動く事にした。
「……オリジナル」
俺がそう言葉を発すると同時に、まるで先程の逆再生化のように、右手から木刀が現れた。
何がどうなってるんだ!?
「契約武具は基本的に契約者の精神に宿り、収納されます。出すときは契約した武具をイメージしながら、武具の名を言えば例えどんな状況どんな場所であろうと出てくれます。しまうときは戻れと念じるだけで大丈夫です」
何だそれ?
明らかに俺の知ってる世界の物じゃない。
さっきまでほとんど半信半疑だったが、これは本当に転生すると考えざるを得ないな。
俺がそんな事を考えていると、不意にまぶたが重くなり、体の力が抜けその場に倒れてしまった。
「流石にこれ以上ここに拘束する事は出来ません。精神だけの状態が長時間続くのはあまり好ましくないのです。名残惜しいですが、新しい世界に行ってもどうかお元気で……」
その言葉を最後に、俺の意識は完全に飛んだ。
彼女の言葉は最もだろう。
無条件で強大な力を得られるほど、世の中は甘くない。
それは理解できる。
ただ……人間ではなく、ただの人間だと言った事が引っかかる。
まるで、普通じゃない人間が居るみたいな言い回し。
それにその人間なら、何のリスクもなく扱えるかのようにとらえる事が出来てしまう表現。
もし仮に普通じゃない人間が居るとしても、それは俺じゃない。
転生という事が特殊であり、特別な存在であるとするならば、俺はそのただの人間じゃない事になるが、恐らくそうではないだろう。
もちろん彼女が言っていた要望が、俺をただの人間ではない存在へと昇華してくれるという可能性はある。
しかしそれは俺の希望的観測でしかない。
なら俺は最悪の状況を想定するべきだろう。
俺もそのリスクとやらを背負うだろう可能性を……
俺はそう考え、女性に向ける視線をより真剣なものへと変える。
「その武具と契約する為のリスクとは、具体的にどういったものになるんですか?」
「正確には、契約する際にはリスクは伴いません。契約に成功したその瞬間から、契約者に対してリスクが発生します。具体的には、軽いもで肉体の制御が効かなくなったり、重いものでは死に至ります。とは言えそれは、契約武具自体に精神が飲まれたときにおこるものです」
精神が飲まれる?
その契約武具とやらが特殊だろう事は想像できる。
だが言葉から推察するに、剣であったり鎧であったりする事に違いはないはずだ。
それに精神が飲まれるとは一体どういう事だ?
俺がそんな事を疑問に思っていると、彼女はそれに気づいたかのように微笑みかけてくる。
「武具と言っても貴方が考えているような、無機質なものじゃありません。契約武具にはそれぞれ意思が存在しており、武具自体が契約者を見極めるのです。自身を扱うに相応しい人間かどうか」
「それは……生きているという事ですか?」
「いいえ、それは違います。確かに意思はありますが、それは自身を使うに相応しいかを判断するだけです。それ以上の事もそれ以下の事も出来ません。……ですが、相応しくないと判断すれば話は変わってきます。相応しくないと判断した瞬間から、契約武具は契約者の精神である魂を乗っ取ろうとし、成功すればその世界で生を受けます。それが言わば、先程説明したリスクの根幹です」
おいおい……
その契約武具とやらと契約すると、死ぬまで常に体を乗っ取られるリスクと隣り合わせって事か?
確かに絶大な力があるにこしたことは無い。
だが常に体を乗っ取られるリスクと天秤にかけてまで欲しいかと聞かれれば、正直答えに困ってしまう。
「それ程心配する必要はありませんよ。精神を乗っ取られると言っても、そう簡単には相応しくないと判断する事はありませんから。それにそうなり得る可能性がある場合、そもそも契約自体成功しません」
どうやらかなり表情に出ているらしく、彼女は優しくそう言ってくれた。
だが俺は彼女の言葉でより不安が増す。
簡単にはという事は、絶対ではないという事。
それは決して安心できるものではなく、常に自身が自身でなくなる可能性に恐怖しなければならないという事。
そこまでの事をしなければ生きていけないような世界という事か……
俺はそんな事を思い、軽くため息をついてしまう。
だがこのまま訳も分からず死ぬよりは、そんな世界であろうと転生する方が断然ましだろうな。
「大丈夫ですか?」
「はい、大丈夫です」
俺は自分に言い聞かせるかのように、決意を込めてそう言った。
「では話の続き、と言うか最初の質問である私が聞く貴方の要望について話させていただきたいと思います。予想は出来ていると思いますが、私が聞く要望とは契約武具に関する事です」
やっとその話か。
彼女の言う通り、ある程度予想は出来ていた。
何せ転生する世界についての説明というよりも、契約武具についての説明だったからな。
まぁ俺が契約武具について色々質問したせいでも勿論あるだろうがな。
「貴方は転生した先での契約の儀によって、契約武具と契約できない可能性があります。理由としては契約は精神に対して行われるものですが、今回は肉体と精神が異なる為です」
「それはつまり、転生の影響という事ですか?」
「はい。そう考えてもらって問題ありません。ですので今ここで、契約武具との契約を行います。そして私が聞くのは、その際に契約できる武具に関しての要望です」
なるほど。
要望を聞くとは言っているが、要は救済処置のようなものだな。
恐らくこの話が出なければ、俺には何らかの契約武具とやらが見繕われていたのだろう。
それを俺が選べるか、彼女が選んだかの違いという訳か。
さてどうするか……
正直基準がわからないから、どういったものにすればいいか全くわからない。
「……その要望は何でも大丈夫なんですか?」
「はい。ですが勿論、出来る事と出来ない事は存在します。ですので要望をうかがってから、もしできないものであった場合別の案を出していただきます」
何回でもチャレンジできるのは助かるな。
正直無理だった場合彼女が選ぶとかだったら、あまり迂闊な事は言えないからな。
とは言えどうするか……
彼女は何でもいいと言ったが、流石に突拍子もない事は無理だろう事は想像できる。
だが、確認作業は重要だろう。
「……どんなことがあろうと絶対に精神が乗っ取られることがなく、無限に成長・進化する武具をお願いします」
「わかりました。武具による精神支配が無く、武具自体が成長し進化していくというものでよろしいですね?」
「はい、それでお願いします」
「では今から作成しますので、少々お待ちください」
彼女はそう言うと目を瞑り、腕を伸ばし手を体の正面で合わせる。
その合わせた手を、肩幅ぐらいまでゆっくりと横に離していく。
すると丁度離れた手と手の中間に、突如白い球体が現れた。
そして彼女はまるでその球体に何らかの力を込めるかのように、両手が震えるほど力を込めている。
マジか……
まさか行けるとは思わなかった。
だって要はこれ、契約武具とやらのリスクが無くなり、無限に強くなっていく武器って事だろ?
いや、勿論武具って言ってるから武器であるとは限らないけどさ。
けど絶対無理だと思うだろう、普通。
俺としては願ってもない事だから、断るなんて選択肢は勿論ないけどさ。
本当に許可して大丈夫なのか? とは思ってしまうよな。やっぱり。
そう思っていると、先程まで彼女の両手の中間にあった球体の形が徐々に細く長く変わり始めた。
色も白かったものが徐々に変わり、薄い茶色へと変わっている。
そして彼女がゆっくりと目を開けた時には、既に形が整い、それが何なのか認識できるようになっていた。
だがそれは武具と呼んでいいのか?
いや、正直武具の定義に詳しい訳じゃないから何とも言えないが、それは違うんじゃないか?
だってそれって、木刀だろ?
「どうぞ。貴方がこれを手に取ることによって、この武具は完成します」
俺は一瞬躊躇いながらも、彼女の言葉に従うように木刀の持ち手を右手で掴む。
すると木刀は俺の右手に吸い込まれるように縮んだかと思うと、本当に右手に吸い込まれたかのようにその場から消えてしまった。
え!?
何がどうなってるんだ?
「先程の木刀をイメージしながら、オリジナルと言ってみてください。そうすればまたその場に現れますから」
俺の疑問を察したかのように、彼女は優しくそう語りかけてくる。
俺は少し戸惑いながらも、彼女の言う通りに動く事にした。
「……オリジナル」
俺がそう言葉を発すると同時に、まるで先程の逆再生化のように、右手から木刀が現れた。
何がどうなってるんだ!?
「契約武具は基本的に契約者の精神に宿り、収納されます。出すときは契約した武具をイメージしながら、武具の名を言えば例えどんな状況どんな場所であろうと出てくれます。しまうときは戻れと念じるだけで大丈夫です」
何だそれ?
明らかに俺の知ってる世界の物じゃない。
さっきまでほとんど半信半疑だったが、これは本当に転生すると考えざるを得ないな。
俺がそんな事を考えていると、不意にまぶたが重くなり、体の力が抜けその場に倒れてしまった。
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