神器とオリジナルを手に入れた転生王子は、最強への道を歩み始める

黄昏時

文字の大きさ
6 / 17

第6話 もう一人の兄と人見知りな妹

しおりを挟む
「本当に申し訳ございません」

 そう言いながら、騎士風の男性は深々と頭を下げる。

「頭を上げてください」
「いえ、そういう訳には……」

 俺の言葉に、騎士風の男性はそう言って頭を上げようとしない。
 俺はそれを見て軽くため息をつきそうになるが、ぐっとこらえる。
 彼が謝っている理由はとても簡単で、何でも第二王子が急に来れなくなったらしく、それに対して謝罪してくれているらしいのだ。

 だがそんな事は正直どうでもいい。
 急遽予定が入ってこれなくなる事だってあるだろう。
 それが王族なら尚更だ。

 俺がため息をつきそうになったのは、こうして敬われることに対して慣れていないからだ。
 心の中で「またか」と思わずにいられなかったからに他ならない。
 とは言えこの世界、この体で生きていくならこの対応にも慣れなければならないんだがな。

「……一つよろしいでしょうか?」

 俺がそんな事を考えていると、後ろに立っているナタリーがほんの少しだけ威圧するようにそう言った。
 ナタリーが凄むなんて……もしかして何かあるのか?

「はい。何でしょうか?」
「コルネリウス様は、一体どうして来られなくなったのでしょうか?」
「それは……」
「レオモンド様にはそれを知る権利があると思うのですが、貴方はどう思われますか?」
「……」

 ナタリーの言葉に騎士風の男性は押し黙ってしまう。
 なるほど。
 これは確実に何かあるな。

「僕もどうしてなのか聞きたいです」
「レオモンド様もこうおっしゃっておいでですが、それもでもお答えになっていただけないのですか?」
「……決して、そんな事は……」

 騎士風の男性はたじたじになりながらそう答える。
 そして少ししてから、騎士風の男性の肩の力が抜けたのが見て取れた。
 どうやら話してくれるみたいだな。

「……いつもの悪い癖が出てしまいました」
「やはりそうでしたか」

 ナタリーはため息まじりにそう答える。
 いつもの悪い癖? 一体何のことだ?
 レオモンド少年の記憶が無いから全く分からないぞ?
 俺がそんな事を疑問に思っていると、ナタリーが俺の考えをわかったのか少ししゃがみ、耳元に顔を近づけてきた。

「コルネリウス様の悪い癖というのは、その場の気分で物事を決めてしまわれるところです。しかもそれが他者との約束だったとしても、その相手には何も報告されないのでかなり困らされております。ですので恐らく、直前で面倒くさくなって何も言わずにどこかへ行かれたのでしょう。ですがそれは流石にまずいと思い、護衛の一人が独断で言いに来られたのだと思います」

 ナタリーは俺の耳元で小声でそう言った。
 それは……王族としてどうなんだ?
 かなり不味いだろ?
 いやだから悪い癖とまで言っているんだろうと思うけどな。

 しかしこれはどうも仲が悪かった原因はレオモンド少年ではなく、第二王子の方にあるような気がしてきたな。
 真面目でしっかりとしていた第一王子を慕い、敬意をはらっていたという事を考えれば尚更な……

「……わかりました。コルネリウス様のそれはいつもの事ですし、ある程度予想が出来ていましたので問題ありません。ですが流石にこんな状況なら、それはないと少し思っていたのですが……」

 ナタリーは肯定的な事を言いながらも、近くに居る俺ですら聞き取るのがやっとの小さな声で本心を漏らす。
 ナタリーはかなり王族を尊重し敬っているように思っていたが、どうやら第二王子は違うみたいだな。

 それともナタリーと第二王子の間に何かあったのか?
 だが今はあまり深入りしない方がいいだろう。
 深入りしたところで、何かあったとしても今の俺には何も言えないだろうからな。

「本当に申し訳ございません」
「いぇ、ですが代わりと言っては何ですが、一つ頼まれていただけませんか?」
「はい! 何でしょう!?」
「次お越しになるのシャルロッテ様を呼んできていただきたいのです。恐らくお部屋でお待ちだと思いますので」
「わかりました! すぐに呼んでまいります」

 騎士風の男性はそう言うと、即座に部屋を出て行った。
 そして俺は、足音が遠ざかるのを見計らってナタリーの方に顔を向ける。

「ねぇナタリー、一つ聞いてもいい」
「何でしょうか?」
「どうして態々あの人に次来る人を呼んでくるように頼んだの? 今まで通り待ってればよかったんじゃない?」
「そうですね。確かにこのまま待っていても、シャルロッテ様はいらしたでしょう。ですがその場合、彼は当分ここで謝り続けていたと思います。それはレオモンド様としては少々困られるのではないかと考えましたので、私の独断で彼に贖罪の代わりとしてお願いいたしました」
「そっか。ありがとう、助かった」
「滅相もございません」

 ナタリーはそう言って軽く頭を下げる。
 にしても他者のそう言ったところや俺がどう感じるかはわかるのに、自分が頭を下げた時俺がどう思うかはわからないのかな?

 いや、もしかするとわかっていてわざとやっているっていう可能性もなくはないが……流石に、な。
 しかし今の事でナタリーの印象が少し変わったな。

 なんと言うか、最初は王族を盲目的に崇拝しているのかと思っていたが、第二王子の事を見るにそうではないようだ。
 まぁ~、盲目的に崇拝されるよりは実力で尊敬される方が俺としてはやりがいを感じるからいいがな。

 さて、次会うのが今会える最後の王族か。
 とは言えまだ第一王子としか会ってないから、次来る王族に会えたとしてもまだ二人にしか会ってないんだがな。
 俺はそう思いながら、椅子に腰かけ肩の力を抜く。



 コンコン

「シャルロッテ様をお連れいたしました。入ってもよろしいでしょうか?」

 部屋で待つ事数分。
 扉をノックする音の後に、そんな声が扉の外から聞こえてきた。
 それを見てナタリーが俺の顔色をうかがってきたので、俺は軽く頷き、大丈夫だという意思表示をする。

「はい、構いません。どうぞお入りください」
「失礼いたします」

 そう言った後扉が開き中に入ってきたのは、メイド服を着た若い女性と、その女性の後ろに隠れるようにしながらこちらの様子を窺っている、とても幼い少女の二人だった。

 恐らく後ろに隠れている少女が第一王女なのだろう。
 だが、俺よりも幼いような気がするのは気のせいか?

「シャルロッテ様、レオモンド様にご挨拶をしてください」
「……」
「シャルロッテ様!」

 そう言われた少女は、無言で女性の後ろに完全に隠れてしまう。
 だが少ししたら、またこちらの様子を窺うように顔をのぞかせる。
 これは……かなりの人見知りなんじゃないか?

「僕はそのままでも大丈夫ですよ、特に気にしませんので」
「ですが……」
「レオモンド様ご本人がこう言われているのです。何の問題もないと思いますよ?」
「……お二人がそこまで仰ってくださるのなら、お言葉に甘えさせていただきます」

 メイド服の女性はそう言って、軽く頭を下げる。
 少女もそれを真似るように、隠れながら頭だけ軽く下げた。
 俺はそれを見て、笑みがこぼれる。

 子供らしくてかわいいな。
 俺も体は3歳ではあるが、中身は大人だからな。
 あぁいった子供らしい反応は、俺は流石に恥ずかしくてできない。

「……おにいさま、もう、だいじょうぶなんですか?」
「うん。もう大丈夫だよ」
「なら、こんどいっしょに、あそんでくれますか?」
「いいよ、遊ぼうか!」

 俺がそう言うと、少女は嬉しそうに笑った。
 だがその表情を見られたのが恥ずかしかったのか、また女性の後ろに完全に隠れてしまった。
 
 王族ではあるが、何も子供らしいことは悪い事じゃないからな。
 子供の内はこれでも十分に問題ないだろう。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

異世界転生した時に心を失くした私は貧民生まれです

ぐるぐる
ファンタジー
前世日本人の私は剣と魔法の世界に転生した。 転生した時に感情を欠落したのか、生まれた時から心が全く動かない。 前世の記憶を頼りに善悪等を判断。 貧民街の狭くて汚くて臭い家……家とはいえないほったて小屋に、生まれた時から住んでいる。 2人の兄と、私と、弟と母。 母親はいつも心ここにあらず、父親は所在不明。 ある日母親が死んで父親のへそくりを発見したことで、兄弟4人引っ越しを決意する。 前世の記憶と知識、魔法を駆使して少しずつでも確実にお金を貯めていく。

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

処理中です...