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第6話 もう一人の兄と人見知りな妹
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「本当に申し訳ございません」
そう言いながら、騎士風の男性は深々と頭を下げる。
「頭を上げてください」
「いえ、そういう訳には……」
俺の言葉に、騎士風の男性はそう言って頭を上げようとしない。
俺はそれを見て軽くため息をつきそうになるが、ぐっとこらえる。
彼が謝っている理由はとても簡単で、何でも第二王子が急に来れなくなったらしく、それに対して謝罪してくれているらしいのだ。
だがそんな事は正直どうでもいい。
急遽予定が入ってこれなくなる事だってあるだろう。
それが王族なら尚更だ。
俺がため息をつきそうになったのは、こうして敬われることに対して慣れていないからだ。
心の中で「またか」と思わずにいられなかったからに他ならない。
とは言えこの世界、この体で生きていくならこの対応にも慣れなければならないんだがな。
「……一つよろしいでしょうか?」
俺がそんな事を考えていると、後ろに立っているナタリーがほんの少しだけ威圧するようにそう言った。
ナタリーが凄むなんて……もしかして何かあるのか?
「はい。何でしょうか?」
「コルネリウス様は、一体どうして来られなくなったのでしょうか?」
「それは……」
「レオモンド様にはそれを知る権利があると思うのですが、貴方はどう思われますか?」
「……」
ナタリーの言葉に騎士風の男性は押し黙ってしまう。
なるほど。
これは確実に何かあるな。
「僕もどうしてなのか聞きたいです」
「レオモンド様もこうおっしゃっておいでですが、それもでもお答えになっていただけないのですか?」
「……決して、そんな事は……」
騎士風の男性はたじたじになりながらそう答える。
そして少ししてから、騎士風の男性の肩の力が抜けたのが見て取れた。
どうやら話してくれるみたいだな。
「……いつもの悪い癖が出てしまいました」
「やはりそうでしたか」
ナタリーはため息まじりにそう答える。
いつもの悪い癖? 一体何のことだ?
レオモンド少年の記憶が無いから全く分からないぞ?
俺がそんな事を疑問に思っていると、ナタリーが俺の考えをわかったのか少ししゃがみ、耳元に顔を近づけてきた。
「コルネリウス様の悪い癖というのは、その場の気分で物事を決めてしまわれるところです。しかもそれが他者との約束だったとしても、その相手には何も報告されないのでかなり困らされております。ですので恐らく、直前で面倒くさくなって何も言わずにどこかへ行かれたのでしょう。ですがそれは流石にまずいと思い、護衛の一人が独断で言いに来られたのだと思います」
ナタリーは俺の耳元で小声でそう言った。
それは……王族としてどうなんだ?
かなり不味いだろ?
いやだから悪い癖とまで言っているんだろうと思うけどな。
しかしこれはどうも仲が悪かった原因はレオモンド少年ではなく、第二王子の方にあるような気がしてきたな。
真面目でしっかりとしていた第一王子を慕い、敬意をはらっていたという事を考えれば尚更な……
「……わかりました。コルネリウス様のそれはいつもの事ですし、ある程度予想が出来ていましたので問題ありません。ですが流石にこんな状況なら、それはないと少し思っていたのですが……」
ナタリーは肯定的な事を言いながらも、近くに居る俺ですら聞き取るのがやっとの小さな声で本心を漏らす。
ナタリーはかなり王族を尊重し敬っているように思っていたが、どうやら第二王子は違うみたいだな。
それともナタリーと第二王子の間に何かあったのか?
だが今はあまり深入りしない方がいいだろう。
深入りしたところで、何かあったとしても今の俺には何も言えないだろうからな。
「本当に申し訳ございません」
「いぇ、ですが代わりと言っては何ですが、一つ頼まれていただけませんか?」
「はい! 何でしょう!?」
「次お越しになるのシャルロッテ様を呼んできていただきたいのです。恐らくお部屋でお待ちだと思いますので」
「わかりました! すぐに呼んでまいります」
騎士風の男性はそう言うと、即座に部屋を出て行った。
そして俺は、足音が遠ざかるのを見計らってナタリーの方に顔を向ける。
「ねぇナタリー、一つ聞いてもいい」
「何でしょうか?」
「どうして態々あの人に次来る人を呼んでくるように頼んだの? 今まで通り待ってればよかったんじゃない?」
「そうですね。確かにこのまま待っていても、シャルロッテ様はいらしたでしょう。ですがその場合、彼は当分ここで謝り続けていたと思います。それはレオモンド様としては少々困られるのではないかと考えましたので、私の独断で彼に贖罪の代わりとしてお願いいたしました」
「そっか。ありがとう、助かった」
「滅相もございません」
ナタリーはそう言って軽く頭を下げる。
にしても他者のそう言ったところや俺がどう感じるかはわかるのに、自分が頭を下げた時俺がどう思うかはわからないのかな?
いや、もしかするとわかっていてわざとやっているっていう可能性もなくはないが……流石に、な。
しかし今の事でナタリーの印象が少し変わったな。
なんと言うか、最初は王族を盲目的に崇拝しているのかと思っていたが、第二王子の事を見るにそうではないようだ。
まぁ~、盲目的に崇拝されるよりは実力で尊敬される方が俺としてはやりがいを感じるからいいがな。
さて、次会うのが今会える最後の王族か。
とは言えまだ第一王子としか会ってないから、次来る王族に会えたとしてもまだ二人にしか会ってないんだがな。
俺はそう思いながら、椅子に腰かけ肩の力を抜く。
コンコン
「シャルロッテ様をお連れいたしました。入ってもよろしいでしょうか?」
部屋で待つ事数分。
扉をノックする音の後に、そんな声が扉の外から聞こえてきた。
それを見てナタリーが俺の顔色をうかがってきたので、俺は軽く頷き、大丈夫だという意思表示をする。
「はい、構いません。どうぞお入りください」
「失礼いたします」
そう言った後扉が開き中に入ってきたのは、メイド服を着た若い女性と、その女性の後ろに隠れるようにしながらこちらの様子を窺っている、とても幼い少女の二人だった。
恐らく後ろに隠れている少女が第一王女なのだろう。
だが、俺よりも幼いような気がするのは気のせいか?
「シャルロッテ様、レオモンド様にご挨拶をしてください」
「……」
「シャルロッテ様!」
そう言われた少女は、無言で女性の後ろに完全に隠れてしまう。
だが少ししたら、またこちらの様子を窺うように顔をのぞかせる。
これは……かなりの人見知りなんじゃないか?
「僕はそのままでも大丈夫ですよ、特に気にしませんので」
「ですが……」
「レオモンド様ご本人がこう言われているのです。何の問題もないと思いますよ?」
「……お二人がそこまで仰ってくださるのなら、お言葉に甘えさせていただきます」
メイド服の女性はそう言って、軽く頭を下げる。
少女もそれを真似るように、隠れながら頭だけ軽く下げた。
俺はそれを見て、笑みがこぼれる。
子供らしくてかわいいな。
俺も体は3歳ではあるが、中身は大人だからな。
あぁいった子供らしい反応は、俺は流石に恥ずかしくてできない。
「……おにいさま、もう、だいじょうぶなんですか?」
「うん。もう大丈夫だよ」
「なら、こんどいっしょに、あそんでくれますか?」
「いいよ、遊ぼうか!」
俺がそう言うと、少女は嬉しそうに笑った。
だがその表情を見られたのが恥ずかしかったのか、また女性の後ろに完全に隠れてしまった。
王族ではあるが、何も子供らしいことは悪い事じゃないからな。
子供の内はこれでも十分に問題ないだろう。
そう言いながら、騎士風の男性は深々と頭を下げる。
「頭を上げてください」
「いえ、そういう訳には……」
俺の言葉に、騎士風の男性はそう言って頭を上げようとしない。
俺はそれを見て軽くため息をつきそうになるが、ぐっとこらえる。
彼が謝っている理由はとても簡単で、何でも第二王子が急に来れなくなったらしく、それに対して謝罪してくれているらしいのだ。
だがそんな事は正直どうでもいい。
急遽予定が入ってこれなくなる事だってあるだろう。
それが王族なら尚更だ。
俺がため息をつきそうになったのは、こうして敬われることに対して慣れていないからだ。
心の中で「またか」と思わずにいられなかったからに他ならない。
とは言えこの世界、この体で生きていくならこの対応にも慣れなければならないんだがな。
「……一つよろしいでしょうか?」
俺がそんな事を考えていると、後ろに立っているナタリーがほんの少しだけ威圧するようにそう言った。
ナタリーが凄むなんて……もしかして何かあるのか?
「はい。何でしょうか?」
「コルネリウス様は、一体どうして来られなくなったのでしょうか?」
「それは……」
「レオモンド様にはそれを知る権利があると思うのですが、貴方はどう思われますか?」
「……」
ナタリーの言葉に騎士風の男性は押し黙ってしまう。
なるほど。
これは確実に何かあるな。
「僕もどうしてなのか聞きたいです」
「レオモンド様もこうおっしゃっておいでですが、それもでもお答えになっていただけないのですか?」
「……決して、そんな事は……」
騎士風の男性はたじたじになりながらそう答える。
そして少ししてから、騎士風の男性の肩の力が抜けたのが見て取れた。
どうやら話してくれるみたいだな。
「……いつもの悪い癖が出てしまいました」
「やはりそうでしたか」
ナタリーはため息まじりにそう答える。
いつもの悪い癖? 一体何のことだ?
レオモンド少年の記憶が無いから全く分からないぞ?
俺がそんな事を疑問に思っていると、ナタリーが俺の考えをわかったのか少ししゃがみ、耳元に顔を近づけてきた。
「コルネリウス様の悪い癖というのは、その場の気分で物事を決めてしまわれるところです。しかもそれが他者との約束だったとしても、その相手には何も報告されないのでかなり困らされております。ですので恐らく、直前で面倒くさくなって何も言わずにどこかへ行かれたのでしょう。ですがそれは流石にまずいと思い、護衛の一人が独断で言いに来られたのだと思います」
ナタリーは俺の耳元で小声でそう言った。
それは……王族としてどうなんだ?
かなり不味いだろ?
いやだから悪い癖とまで言っているんだろうと思うけどな。
しかしこれはどうも仲が悪かった原因はレオモンド少年ではなく、第二王子の方にあるような気がしてきたな。
真面目でしっかりとしていた第一王子を慕い、敬意をはらっていたという事を考えれば尚更な……
「……わかりました。コルネリウス様のそれはいつもの事ですし、ある程度予想が出来ていましたので問題ありません。ですが流石にこんな状況なら、それはないと少し思っていたのですが……」
ナタリーは肯定的な事を言いながらも、近くに居る俺ですら聞き取るのがやっとの小さな声で本心を漏らす。
ナタリーはかなり王族を尊重し敬っているように思っていたが、どうやら第二王子は違うみたいだな。
それともナタリーと第二王子の間に何かあったのか?
だが今はあまり深入りしない方がいいだろう。
深入りしたところで、何かあったとしても今の俺には何も言えないだろうからな。
「本当に申し訳ございません」
「いぇ、ですが代わりと言っては何ですが、一つ頼まれていただけませんか?」
「はい! 何でしょう!?」
「次お越しになるのシャルロッテ様を呼んできていただきたいのです。恐らくお部屋でお待ちだと思いますので」
「わかりました! すぐに呼んでまいります」
騎士風の男性はそう言うと、即座に部屋を出て行った。
そして俺は、足音が遠ざかるのを見計らってナタリーの方に顔を向ける。
「ねぇナタリー、一つ聞いてもいい」
「何でしょうか?」
「どうして態々あの人に次来る人を呼んでくるように頼んだの? 今まで通り待ってればよかったんじゃない?」
「そうですね。確かにこのまま待っていても、シャルロッテ様はいらしたでしょう。ですがその場合、彼は当分ここで謝り続けていたと思います。それはレオモンド様としては少々困られるのではないかと考えましたので、私の独断で彼に贖罪の代わりとしてお願いいたしました」
「そっか。ありがとう、助かった」
「滅相もございません」
ナタリーはそう言って軽く頭を下げる。
にしても他者のそう言ったところや俺がどう感じるかはわかるのに、自分が頭を下げた時俺がどう思うかはわからないのかな?
いや、もしかするとわかっていてわざとやっているっていう可能性もなくはないが……流石に、な。
しかし今の事でナタリーの印象が少し変わったな。
なんと言うか、最初は王族を盲目的に崇拝しているのかと思っていたが、第二王子の事を見るにそうではないようだ。
まぁ~、盲目的に崇拝されるよりは実力で尊敬される方が俺としてはやりがいを感じるからいいがな。
さて、次会うのが今会える最後の王族か。
とは言えまだ第一王子としか会ってないから、次来る王族に会えたとしてもまだ二人にしか会ってないんだがな。
俺はそう思いながら、椅子に腰かけ肩の力を抜く。
コンコン
「シャルロッテ様をお連れいたしました。入ってもよろしいでしょうか?」
部屋で待つ事数分。
扉をノックする音の後に、そんな声が扉の外から聞こえてきた。
それを見てナタリーが俺の顔色をうかがってきたので、俺は軽く頷き、大丈夫だという意思表示をする。
「はい、構いません。どうぞお入りください」
「失礼いたします」
そう言った後扉が開き中に入ってきたのは、メイド服を着た若い女性と、その女性の後ろに隠れるようにしながらこちらの様子を窺っている、とても幼い少女の二人だった。
恐らく後ろに隠れている少女が第一王女なのだろう。
だが、俺よりも幼いような気がするのは気のせいか?
「シャルロッテ様、レオモンド様にご挨拶をしてください」
「……」
「シャルロッテ様!」
そう言われた少女は、無言で女性の後ろに完全に隠れてしまう。
だが少ししたら、またこちらの様子を窺うように顔をのぞかせる。
これは……かなりの人見知りなんじゃないか?
「僕はそのままでも大丈夫ですよ、特に気にしませんので」
「ですが……」
「レオモンド様ご本人がこう言われているのです。何の問題もないと思いますよ?」
「……お二人がそこまで仰ってくださるのなら、お言葉に甘えさせていただきます」
メイド服の女性はそう言って、軽く頭を下げる。
少女もそれを真似るように、隠れながら頭だけ軽く下げた。
俺はそれを見て、笑みがこぼれる。
子供らしくてかわいいな。
俺も体は3歳ではあるが、中身は大人だからな。
あぁいった子供らしい反応は、俺は流石に恥ずかしくてできない。
「……おにいさま、もう、だいじょうぶなんですか?」
「うん。もう大丈夫だよ」
「なら、こんどいっしょに、あそんでくれますか?」
「いいよ、遊ぼうか!」
俺がそう言うと、少女は嬉しそうに笑った。
だがその表情を見られたのが恥ずかしかったのか、また女性の後ろに完全に隠れてしまった。
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