アストラ金貨物語

友永ゆう

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第六章

帰還

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  翌日も開拓地でのモンスター狩りは続いた。
この日はわざとラウルは怪我をしてみた。勿論酷い怪我はしないように・・・。
ナディーリアの治療師としての腕前を見てみたいと思ったのだ。
ラウルの怪我を見て彼女は「大したことないわ!がんばって」と送り出した。

(確かに大した怪我じゃないんだけどな・・・)
ラウルは思わず苦笑した。

ベルを使って魔物をかき集めて一掃するというのを試してみたが、星3黄金級の冒険者であるラウルにまともにダメージを与えることができる魔物はこの辺りにはおらず、一番歯ごたえのあったヒュドラでさえ火龍斬の前には雑魚同然だった。

「ラウル、あなたって強いのね。全然私の出番が無いわ」
ナディーリアは驚いて目を丸くしている。

「なに、今だけさ。ナディーリアが必要になるときは必ずこの先であるよ」

ナディーリアはここ2~3日でだいぶ緊張が解れてきたようだった。だが、この通り仲間がダメージを負わないので、治療師という仕事は開店休業状態だった。そのため弓を使った遠距離攻撃係となって戦ってもらってる。

(確かに弓はそれほど上手くはないな。近くの相手に7~8割の命中率ってヤバいんじゃないのか・・・。ルパルナは百発百中で矢も勢いが良かった気がする。まあ、本職じゃないし多くを求めるのはやめとこう)

「つーかーれーたー-」

「ベル、ご苦労様。お昼にしようか。お前の好きなパンとチーズで」

「私が好きなのは甘いものっ果物でもいいわ」

「そういえば、あっちの岩陰に野イチゴがあったわよ。取ってくるね」
ナディーリアが駆けていく。

「ナディーリア優しいのね~。優しい子は好きよ」

少ししてナディーリアがこっちに向かって駆けてくる。その後ろから大量の魔物が追いかけてきていた。

「たっ助けてー--!」

「やれやれ、自分の怪我を治した方が修行になるんじゃないのか?」

「痛いのはイヤーーー!!」



一人増えたため、3日でここを切り上げようと言うことになった。
その間に多くの魔物を退治して、最終日には魔物はあまり見かけなくなった。

「んーいないわねぇ。もっと範囲を広げて調べてみる?」
ベルはきょろきょろとしながらラうウルの肩にとまった。

「いや、俺たちで殲滅という依頼じゃない。今後も冒険者を送り込んで退治を繰り返す感じのものなんだろう。だからここまででいい。十分な収穫はあったしな」
ラウルはナディーリアを見る。

「なぁに?」

「この依頼でナディーリアに出会えたことが収穫だった」

「ふふっ」
耳の先を少し赤くして嬉しそうに微笑んだ。

「では、街に帰るとしよう」

「やっと甘いものいっぱい食べれるっ」

ラウル一行は多くの魔物を狩り、アンセルムスの街に戻ったのだった。

ラウルは街に戻るとナディーリアに財布を預け、ベルと何か甘いものでも食べてくるといいと告げて、自らはギルドに向かった。甘いものは嫌いではないが、今はそんな気分ではなかった。甘いものを食べると、ルパルナの事を想い出して寂しくなるだろうと思ったからだ。ラウルは溜息をつくとギルドに向かった。
ギルドで報告すると報酬をもらった。金貨30枚、かなりの高額報酬だった。

「まだ何度か討伐隊を入れる必要があると思うが、無暗に屯していたのは粗方片付けておいたよ」

「ありがとうございます。ラウル様!ところで、治療師の件なのですけど・・・」

「ああ、そっちは見つかったんだ。もしかして見つかったとか?」

「いえ、残念ですが・・・申し訳ありません」

「いいんだよ。このあと王都に向かう予定だから、そこで他の仲間も拾えるかもしれない」

「王都に行かれるんですね。では、仲間募集の張り紙はこのままでいいでしょうか」

「ああ、頼むよ。それじゃ」

ラウルがギルドを出ると、出入り口の階段の端っこでナディーリアとベルが何かを頬ばっていた。

「ほはえり!」

「んーんー」

「食べてるときは無視してていいよ」

「ラウル、はい!お財布」

「ああ、それはナディーリアが持ってて自由に使って構わない。ただ、俺の手持で足りなかったら頼るから、使い過ぎには気を付けてくれ」

「うん、わかった。ありがとう!」

「今日はこのまま宿に泊まって、明日王都に向かおう」

「はーい」

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