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学園生活
中庭と校舎裏 イオリの探検と約束
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暗くてよくわかりませんでしたが、昇っているのでイオリは元気よく歌を歌いました。
ティノの気配を感じたので、地面までもうすぐのようです。
「おー?」
「どうやって洞窟から這い上がってきたのかしら?」
ずぼっと、イオリは地面の中から引っこ抜かれてしまいました。
「逆さ竜」の服は、アリスが強化しているので傷一つありません。
汚れも彼女が「浄化」で綺麗にしてくれます。
今日は探検日和だったので、朝食を作ったあと学園の敷地内に飛びだしました。
一星巡りの間に、学園内の探検は終わっています。
次はどこへ行こうか考えてたとき、アリスが遣って来たのです。
「それで、成果はあったの?」
「ひっひ~、ひっひ~、ずぼずぼ、ひっひ~」
首根っこをつかまれた、宙ぶらりんのイオリが「ずぼら歌」を歌い始めたので、アリスは「へんて仔」竜を地面に下ろしました。
あと、誰かが落ちたら危ないので、イオリを引き抜いた際にできた穴を方術で塞いでおきます。
「おー! おてのもの~、さらしもの~、りゅーのもの~」
「どれどれ?」
イオリは、アリスからお願いされていた「魔石」を服の中から取りだしました。
三つの「魔石」。
両手の上に乗せ、「晒し者」にされた「魔石」を見て、アリスは唸りました。
「……『へんて仔』でも地竜ということかしらね。まさか三つとも『八竜石』なんて」
「このいし~、なんか~、おいしそーなにおいがした~」
アリスはイオリの頭を撫でながら、最高級の魔石ーー「八竜石」を鑑定しました。
目的を果たすのに、十分な代物と言えるでしょう。
「聖域」の地下ーーエーレアリステシアゥナの、炎竜の塒。
アリスは新しい探検場所までイオリを案内してくれたのです。
彼女はイオリを褒めてくれるし、色々な場所に連れていってくれます。
ティノと一緒にいると、好きな人が増えてゆきます。
イオリは、それが堪らなく嬉しいのです。
やっぱりティノは凄い。
そう思った瞬間、胸の辺りがぽっかぽかになって。
今すぐティノに逢いたくなってしまいました。
「さて、何か良い『媒介』はないかしら?」
「ティ~ノ~、ティ~ノ~、ティノティノティ~ノ~」
イオリがティノを捜していると、アリスも一緒になって周辺を見回していました。
そんなとき、ジャラジャラとポケットから音がしたので、もう一つの「お宝」のことをイオリは思いだしました。
「これ~、ごろんごろんしてたから~、もってきた~」
「コレ、私の『竜の雫』じゃない。どうやって最下層まで行ったのよ? というか、最下層まで到達して、どうやってこの短時間で戻ってきたの?」
イオリが取りだした「竜玉」を見て、アリスは呆れ顔で尋ねました。
アリスが聞いてきたので、イオリは「大冒険」の話を彼女にしてあげました。
「おー! ころんで~、すべって~、おっこちた~! ひっひ~の~、たまたま~、たくさんあって~、たまたまつかんだら~、うえにうごいて~、のってきた~!」
「……ほんと、わからないわね。どうして私の『結界』に引っかからなかったのかしら? ーーまぁ、いいわ。今は時間がないから詮索はあと。さっさとやってしまいましょう」
イオリの掌から「竜の雫」を一つ摘み上げると、アリスは「八竜石」を握り潰しました。
事前に方術の準備をしておいたので、あっけなく完了。
魔力の注入は終わりました。
アリスは手短にイオリに説明します。
「属性に傾いている竜の魔力より、魔石の魔力のほうが向いているの。この『竜の雫』をティノに渡しなさい。これを持っていれば魔力操作の鍛錬に役立つから。ーー間違えずに渡すのよ」
「あ~ん」
両手の上に、「竜玉」を乗せているイオリ。
他の「竜玉」と混同しないように、イオリのポケットに特製の「竜の雫」を入れようとしたところで。
イオリのでっかいお口。
アリスの手がとまりました。
「……食べないわよね?」
「ふおー! ヒィノにわあわあ~、ヒオイにあかへお~!」
どうしたものでしょう。
「八竜石」の魔力を使った「竜玉」は、竜であるアリスから見ても貴重な代物です。
イオリに食べられ、魔力に還元されたら目も当てられません。
「ティノが関係しているのだから、大丈夫でしょう……たぶん」
色々と諦めてから、アリスはイオリのお口に「竜玉」を入れました。
あむっと口を閉じてから、イオリはアリスに聞きました。
「ひっひ~は~、おいそぎ~、おさぼり~、おのぼり~?」
「二つ目は違うわよ。『八創家』に経過報告に行くから、今日は抜き打ちの試験にしたの。だから、西に『おのぼり』してくるわ。遅れるとまた、あいつらグチグチ言ってくるから、もう行くわね」
口早に言うと、アリスは「飛翔」ですっ飛んでゆきました。
同時に。
地面に下りる音がしました。
「学園長が出発したようだ。『会議』に間に合えば良いが」
「すなお~、すなお~、おでおで、すなお~」
3階の準備室から飛び下りてきたベズを、イオリはクルクル回ってお出迎えします。
アリスは「結界」を解いていったので、会話を聞かれないようにベズは「結界」を張り直します。
「すなおー」。
「砂男」は嫌なので、ベズは「砂王」だと思うことにしています。
心の健康の為に、真偽のほどは確かめていません。
「もしや、それは学園長のーーエーレアリステシアゥナの『竜玉』?」
「ひっひ~の~、たまたま~、おいしーたまたま~」
「この『竜玉』。私がもらっても構わないだろうか?」
「おー? すなおー、ほしー? じゃー、あげる~」
イオリは、掌の上の「竜の雫」をぜんぶベズにあげました。
これまでもそうでしたが、イオリは見つけた「お宝」に執着することはないようです。
「対等に戦えるーーそう嘯いてはみたが、実際には私のほうが劣勢だ。この『竜玉』を研究すれば、差を縮めることができる。学園の教師を引き受けた理由の一つだ。二周期、学園長の傍にいれば、彼女よりも私のほうに利となる。その期間で、万に一つを、十に一つまで持っていってみせる」
「おー! すなおー、がんばりゅ~、がんばりゅ~、がんばりゅ~!」
「ーーイオリは。学園長ではなく、私を応援するのか?」
珍しく、感情を宿し、ベズが尋ねてきました。
アリスよりもつき合いが短いので、ベズがそう考えるのも当然のことです。
忘れっぽい。
イオリは自覚していませんが、実はあることを忘れてしまっていたのです。
そう、忘れてしまったことというのは。
スグリのことです。
困ったことに。
イオリは自分の力を奪ったのはアリスだと、今でも思っているのです。
アリスのことは好きですが、同時に、倒さなければいけない「敵」でもあるのです。
ベズはティノに力を貸してくれる。
それなら、イオリがベズを応援しない理由など一つもありません。
「おー! すなおー、ひっひ~を~、ぶっとばせ~!」
「私を応援するのは、同属性の地竜だからだろうか。ーーイオラングリディアに応援されるというのは微妙だが、イオリに応援されるのであれば、ありがたく受け取っておこう」
ベズはイオリの頭を優しく撫ぜました。
それから。
中庭に下りてきた本旨をイオリに伝えます。
「試験に合格しなかった者には、先ず範囲の復習からやってもらう。それを指示したあとに時間がある。イオリに時間があるのなら、竜棋をやろう」
「おー! わかった~、おやくそくそく~、おやつもさいそく~?」
「では、暇があったら来てくれ」
イオリが忘れっぽいことを知っているベズは、そう言い残し、3階まで「飛翔」で戻ってゆきました。
そんなわけで、イオリは中庭から校舎裏に移動しました。
校舎裏に移動したのは。
「お宝」を埋める為です。
校舎裏に5本ある大きな樹の、真ん中の樹の下に「お宝」を隠しています。
校舎の角を曲がったところで。
イオリは気がつきました。
「『おたから』~、ないない~、バイバイ~、からから~」
隠すべき「お宝」を持っていないのです。
お口の中の「お宝」は、ティノに渡す物なので埋めるわけにはいきません。
大好きなティノに関係することなので、口の中で「竜玉」をコロコロさせながらイオリはがんばって思いだしました。
「あっ、イオリちゃん!」
「おー? フィー?」
イオリの姿を見たフィフェスが走ってくるので、イオリも駆けだしました。
それを見た彼女は、更に加速します。
「ぱや?」
「ふ~、間に合いました」
イオリが転ぶ前に、フィフェスは抱き留めることに成功しました。
フィフェスはティノと似た匂いがするので、イオリは彼女の胸に顔を擦りつけます。
「ごめんなさい、イオリちゃん。今日のお昼休みは一緒に遊ぼうと約束したのに、試験があったの。それで、高つ音から『中央』に、班ででかけることになっているの」
「おー? わかった~、みんなでおたのしみ~、フィーもおよろこび~」
「イオリちゃん!?」
フィフェスと約束していたことを思いだしたイオリは。
ティノの気配を感じ取ったので、それ以外のことがすっ飛んでしまいました。
イオリに核心を衝かれたフィフェスは、誤魔化すようにイオリをぎゅっと抱き締めますが。
校舎の角から頭が三つ生えていたので、混乱した彼女はイオリを抱き上げ、逃走を図りました。
「む。トロそうな外見の割に、意外に速い。炎竜メイリーン、頭を使わない、その単純明快な攻撃力でフィフェスを捕縛」
「はぁ~。氷竜ソニア、頭しか使わない、その単純明快な運動音痴で、ティノの邪魔をしておいて」
炎竜にも氷竜にも失礼なことを言い合った二人は、同時に行動に移りました。
ソニアはティノにくっつき、一石二竜。
フィフェスをティノが捕縛すると問題があるので、メイリーンは自分で彼女を追いました。
「にげお~、にげお~、くわれる、にげお~」
「こらっ、イオリ! 騙されちゃ駄目よ! 食べようとしてるのは、フィフェスのほうよ! 美味しそうなイオリは、ぱっくんって食べられちゃうのよ!」
「そっ、そのようなことはしません!」
振り返って、律儀に言い返したフィフェスは。
まんまとメイリーンの単純な作戦にはまってしまい、早々に追いつかれてしまいます。
そして、メイリーンは追いつくだけで何もしませんでした。
メイリーンは、走っている人間に手をだすことの危険性を知っています。
そういうわけで、フィフェスが自分から速度を緩めるのを待ちます。
「その、私は子供の頃から活動的というか、体を動かすのは好きでした。メイリーンほどではなくても、『か弱い』と見られないくらいの体型になりたかったです」
とまったフィフェスは、イオリを盾に、三人の少女(?)と対峙します。
自分で言った通り、体は鍛えているようで、息を乱すことなくフィフェスは言い訳を始めました。
「か弱い」発言に、激しく同意するティノ。
本来なら即座にイオリを取り戻すところですが。
話が終わるまでは、イオリを預けておくことにしました。
「ん。次はイオリの『誘拐未遂事件』の釈明」
「うっ……」
「ゆーかい~、ゆかいに~、ききかいかい~」
炎竜と氷竜に睨まれては、フィフェスもお手上げです。
それに、「聖人形」の保護者まで現れては、邪竜でも諦めるでしょう。
フィフェスは、相手が同性(?)なので、この機会に彼女たちに相談しようと心の内を吐露しました。
「以前に言ったように、私は男性恐怖症のようなところがあります。ですが、『八創家』の者として、それで良いはずがありません。そこで先ず、『聖人形』であり、男の子でも女の子でもないイオリちゃんと触れ合い、慣れていこうと思いました。その次は、……ティノさんと会話し、ゆくゆくは、男性と普通に喋れるようになりたいと思っています」
「ん。それは了解。でも、それだけではない」
「うっ……」
相談する。
そうフィフェスは決めていましたが、どこまで打ち明けるかは決めていませんでした。
ルッシェルが警戒していたように、ソニアは侮れない相手のようです。
未だ迷っていたフィフェスに、男の自分が口だしするのは不味いと、これまで黙っていたティノが話しかけました。
「イオリに慣れたら、僕と会話する。それで克服できるのかもしれないのなら協力するよ。あと、僕は『お・と・こ』だから、クロウとの間も取り持ってあげる」
「うぇ…、ぶぇっ!?」
「とりとり~、もちもち~、いっしょに、はぐはぐ~」
むずかしい話になったので、イオリは歌い始めました。
校舎の屋上から見守っていたマルは。
出遅れたので、そのまま昼寝を続行しました。
「ん。ティノは容赦がない。急所を直撃」
「さすがに酷いって、ティノ。少しは言葉を濁さないと」
直撃弾を食らわせたので、メイリーンとソニアが諫めますが。
残念ながら、ティノには伝わらなかったようで、更にフィフェスを追い込んでしまいます。
「え? クロウとは幼い頃に何度か会ったことがあって、それで苛められていたから、クロウのことを恨んでいるんじゃないの? クロウもそのときのことは悔いているみたいだから、必要ならクロウに言い聞かせてあげるよ」
「おいこめ~、ぶっこめ~、こめこめ、つっこめ~」
もうどうにもならなくなって、フィフェスは沈黙しました。
さすがティノです。
今回も問題を解決してしまいました。
嬉しくなったイオリは。
脱力したフィフェスの腕から抜けでて、元気よく躍り始めました。
入園式でフィフェスが睨んでいたのは、クロウではなく、彼の隣にいた美少女(?)。
十周期ぶりの再会に、水竜を差し向けてしまったティノは。
未だに自分の影響力というものに、まったく頓着していないようです。
ティノが余計なことを言ってしまう前に、自分から言ったほうが良い。
メイリーンとソニアが仲良く目線で訴えかけると、観念の臍を固めたフィフェスは、ベルマ家の事情を語り始めました。
「直系であることに拘っていた父は、私を『後継者』に指名しました。父を恐れ、叔父たちは渋々それを受け容れました。ですが、一周期前、弟が生まれました。父は迷わず、弟を『後継者』に指名しました。ただ、私に対し、罪悪感もあったようで、将来を自身で決められるよう、学園に入園することを勧められました。それだけでなく、『八創家』であるなら、『夫は好きに決めて良い』とも言われました」
「ん。昔は仲が良かった。今はダナ家とベルマ家は反目し合っている。選択肢が増えた。でも、嬉しい反面、押さえつけてきた感情を上手く制御できずにいる」
皆まで言うな。
そう言いたくなるくらい、恋愛方面に聡いソニアは暴露してしまいます。
ティノは、彼女たちの話をいまいち理解していないようです。
どう収めたものか悩んでいたメイリーンは。
そこで、はたと気づきました。
「そうよ! ティノ! ガチンコ! イオリを見っけたんだから、今すぐ勝負!!」
「おー! がちんこ~、ちんちん~、がっちんち~ん!」
慌てたフィフェスがイオリのお口を塞ぎますが手遅れでした。
受け流した三人と、反応してしまったフィフェス。
彼女が真っ赤になっているのを尻目に、ソニアはメイリーンを精神的に打ち負かしました。
「ん。もう時間。残念、無念、断念、絶念。準備をして『聖礼殿』の前に集合」
「ふひっ!? 大丈夫よっ、すぐ終わらせるから! 一発! 一発だけやらせて!!」
メイリーンは、邪竜を退治すべく構えますが。
「イオリ優先」。
ティノは、イオリを捜していた目的を達成することに注力していたので、彼女のことなど眼中にありませんでした。
「イオリ。これから『聖域』の中央に、班の皆ででかけるんだ。イオリも一緒に行こう」
「おー! ちゅーおーには~、ひっひ~とたくさん~、おでかけのかけかけ~。りゅーもりで~、たべまくった~」
「……え?」
イオリの言葉を聞いた瞬間。
ティノは絶望しました。
何ということでしょう。
イオリの「初めて」が、知らず知らずのうちに奪われていたのです。
ティノは楽しみにしていました。
イオリと初めてのおでかけで、ウキウキでした。
暴食竜エーレアリステシアゥナ。
ティノの内側ランキングで、また一つ、アリスの順位が下がってしまいました。
「ん。イオリの料理に『聖域』の料理の要素が加わった。学園長がイオリを連れ回したからと推測。あと、『イオリ玉』を『新イオリ玉』か『進化版イオリ玉』にすべく、様々な料理を食べさせたと憶測」
「おー? イオリはこれから~、すなおーとりゅーぎする~」
イオリの何気ない一言で、ティノは撃沈しました。
同じく撃沈されていたフィフェスは、これを機に復活しました。
「『すなおー』ですか?」
「……『すなおー』というのは、たぶん、ベズ先生のことだと思う……」
「む。暗号? わからない。考える時間を希望」
「はいはい、ほら、時間がないんでしょ? さっさと行くわよ。フィフェスも身嗜み、整える時間が必要でしょ」
逆撃したメイリーンは、荷物よろしくソニアを運んでゆきました。
慌ててフィフェスも二人のあとを追ってゆきます。
口の中でころり。
甘い魔力を味わったイオリは、お願いされていたことを思いだしました。
「ティ~ノ~、おてて~、だして~」
「え? あ、うん」
素直にティノが手をだしたので、イオリは特製の「竜玉」をぷっと吐きだしました。
玉の中で、舞うように色彩が躍る、鮮烈な宝石。
見たこともない、高価そうな宝石を見て、ティノはあたふたしながらイオリに尋ねます。
「って、これっ、どうしたの!?」
「さっき~、すなおーとあった~。そのまえに~、まりょくそーさのたんれんに~、やくだつからって~、ティノにわたせっていわれた~」
「ベズ先生が……」
ティノの内側ランキングで、ベズの好感度が上がりました。
マルもうかうかしていられません。
下手をすると、順位が変わってしまいます。
そんな危機的な状況にマルは。
どこ寝る風竜と、お昼寝中でした。
「ティ~ノ~、ティ~ノ~、ティノティノティ~ノ~」
ティノの勘違いなど歯牙にもかけず、イオリはティノ胸に飛び込みます。
大好きなティノ。
幸せ満杯になったイオリは、ティノの胸に顔を擦りつけます。
「イオリ優先」のティノは。
しばらくイオリから離れることができず、遅刻してしまったことを班の皆から咎められてしまうのでした。
ティノの気配を感じたので、地面までもうすぐのようです。
「おー?」
「どうやって洞窟から這い上がってきたのかしら?」
ずぼっと、イオリは地面の中から引っこ抜かれてしまいました。
「逆さ竜」の服は、アリスが強化しているので傷一つありません。
汚れも彼女が「浄化」で綺麗にしてくれます。
今日は探検日和だったので、朝食を作ったあと学園の敷地内に飛びだしました。
一星巡りの間に、学園内の探検は終わっています。
次はどこへ行こうか考えてたとき、アリスが遣って来たのです。
「それで、成果はあったの?」
「ひっひ~、ひっひ~、ずぼずぼ、ひっひ~」
首根っこをつかまれた、宙ぶらりんのイオリが「ずぼら歌」を歌い始めたので、アリスは「へんて仔」竜を地面に下ろしました。
あと、誰かが落ちたら危ないので、イオリを引き抜いた際にできた穴を方術で塞いでおきます。
「おー! おてのもの~、さらしもの~、りゅーのもの~」
「どれどれ?」
イオリは、アリスからお願いされていた「魔石」を服の中から取りだしました。
三つの「魔石」。
両手の上に乗せ、「晒し者」にされた「魔石」を見て、アリスは唸りました。
「……『へんて仔』でも地竜ということかしらね。まさか三つとも『八竜石』なんて」
「このいし~、なんか~、おいしそーなにおいがした~」
アリスはイオリの頭を撫でながら、最高級の魔石ーー「八竜石」を鑑定しました。
目的を果たすのに、十分な代物と言えるでしょう。
「聖域」の地下ーーエーレアリステシアゥナの、炎竜の塒。
アリスは新しい探検場所までイオリを案内してくれたのです。
彼女はイオリを褒めてくれるし、色々な場所に連れていってくれます。
ティノと一緒にいると、好きな人が増えてゆきます。
イオリは、それが堪らなく嬉しいのです。
やっぱりティノは凄い。
そう思った瞬間、胸の辺りがぽっかぽかになって。
今すぐティノに逢いたくなってしまいました。
「さて、何か良い『媒介』はないかしら?」
「ティ~ノ~、ティ~ノ~、ティノティノティ~ノ~」
イオリがティノを捜していると、アリスも一緒になって周辺を見回していました。
そんなとき、ジャラジャラとポケットから音がしたので、もう一つの「お宝」のことをイオリは思いだしました。
「これ~、ごろんごろんしてたから~、もってきた~」
「コレ、私の『竜の雫』じゃない。どうやって最下層まで行ったのよ? というか、最下層まで到達して、どうやってこの短時間で戻ってきたの?」
イオリが取りだした「竜玉」を見て、アリスは呆れ顔で尋ねました。
アリスが聞いてきたので、イオリは「大冒険」の話を彼女にしてあげました。
「おー! ころんで~、すべって~、おっこちた~! ひっひ~の~、たまたま~、たくさんあって~、たまたまつかんだら~、うえにうごいて~、のってきた~!」
「……ほんと、わからないわね。どうして私の『結界』に引っかからなかったのかしら? ーーまぁ、いいわ。今は時間がないから詮索はあと。さっさとやってしまいましょう」
イオリの掌から「竜の雫」を一つ摘み上げると、アリスは「八竜石」を握り潰しました。
事前に方術の準備をしておいたので、あっけなく完了。
魔力の注入は終わりました。
アリスは手短にイオリに説明します。
「属性に傾いている竜の魔力より、魔石の魔力のほうが向いているの。この『竜の雫』をティノに渡しなさい。これを持っていれば魔力操作の鍛錬に役立つから。ーー間違えずに渡すのよ」
「あ~ん」
両手の上に、「竜玉」を乗せているイオリ。
他の「竜玉」と混同しないように、イオリのポケットに特製の「竜の雫」を入れようとしたところで。
イオリのでっかいお口。
アリスの手がとまりました。
「……食べないわよね?」
「ふおー! ヒィノにわあわあ~、ヒオイにあかへお~!」
どうしたものでしょう。
「八竜石」の魔力を使った「竜玉」は、竜であるアリスから見ても貴重な代物です。
イオリに食べられ、魔力に還元されたら目も当てられません。
「ティノが関係しているのだから、大丈夫でしょう……たぶん」
色々と諦めてから、アリスはイオリのお口に「竜玉」を入れました。
あむっと口を閉じてから、イオリはアリスに聞きました。
「ひっひ~は~、おいそぎ~、おさぼり~、おのぼり~?」
「二つ目は違うわよ。『八創家』に経過報告に行くから、今日は抜き打ちの試験にしたの。だから、西に『おのぼり』してくるわ。遅れるとまた、あいつらグチグチ言ってくるから、もう行くわね」
口早に言うと、アリスは「飛翔」ですっ飛んでゆきました。
同時に。
地面に下りる音がしました。
「学園長が出発したようだ。『会議』に間に合えば良いが」
「すなお~、すなお~、おでおで、すなお~」
3階の準備室から飛び下りてきたベズを、イオリはクルクル回ってお出迎えします。
アリスは「結界」を解いていったので、会話を聞かれないようにベズは「結界」を張り直します。
「すなおー」。
「砂男」は嫌なので、ベズは「砂王」だと思うことにしています。
心の健康の為に、真偽のほどは確かめていません。
「もしや、それは学園長のーーエーレアリステシアゥナの『竜玉』?」
「ひっひ~の~、たまたま~、おいしーたまたま~」
「この『竜玉』。私がもらっても構わないだろうか?」
「おー? すなおー、ほしー? じゃー、あげる~」
イオリは、掌の上の「竜の雫」をぜんぶベズにあげました。
これまでもそうでしたが、イオリは見つけた「お宝」に執着することはないようです。
「対等に戦えるーーそう嘯いてはみたが、実際には私のほうが劣勢だ。この『竜玉』を研究すれば、差を縮めることができる。学園の教師を引き受けた理由の一つだ。二周期、学園長の傍にいれば、彼女よりも私のほうに利となる。その期間で、万に一つを、十に一つまで持っていってみせる」
「おー! すなおー、がんばりゅ~、がんばりゅ~、がんばりゅ~!」
「ーーイオリは。学園長ではなく、私を応援するのか?」
珍しく、感情を宿し、ベズが尋ねてきました。
アリスよりもつき合いが短いので、ベズがそう考えるのも当然のことです。
忘れっぽい。
イオリは自覚していませんが、実はあることを忘れてしまっていたのです。
そう、忘れてしまったことというのは。
スグリのことです。
困ったことに。
イオリは自分の力を奪ったのはアリスだと、今でも思っているのです。
アリスのことは好きですが、同時に、倒さなければいけない「敵」でもあるのです。
ベズはティノに力を貸してくれる。
それなら、イオリがベズを応援しない理由など一つもありません。
「おー! すなおー、ひっひ~を~、ぶっとばせ~!」
「私を応援するのは、同属性の地竜だからだろうか。ーーイオラングリディアに応援されるというのは微妙だが、イオリに応援されるのであれば、ありがたく受け取っておこう」
ベズはイオリの頭を優しく撫ぜました。
それから。
中庭に下りてきた本旨をイオリに伝えます。
「試験に合格しなかった者には、先ず範囲の復習からやってもらう。それを指示したあとに時間がある。イオリに時間があるのなら、竜棋をやろう」
「おー! わかった~、おやくそくそく~、おやつもさいそく~?」
「では、暇があったら来てくれ」
イオリが忘れっぽいことを知っているベズは、そう言い残し、3階まで「飛翔」で戻ってゆきました。
そんなわけで、イオリは中庭から校舎裏に移動しました。
校舎裏に移動したのは。
「お宝」を埋める為です。
校舎裏に5本ある大きな樹の、真ん中の樹の下に「お宝」を隠しています。
校舎の角を曲がったところで。
イオリは気がつきました。
「『おたから』~、ないない~、バイバイ~、からから~」
隠すべき「お宝」を持っていないのです。
お口の中の「お宝」は、ティノに渡す物なので埋めるわけにはいきません。
大好きなティノに関係することなので、口の中で「竜玉」をコロコロさせながらイオリはがんばって思いだしました。
「あっ、イオリちゃん!」
「おー? フィー?」
イオリの姿を見たフィフェスが走ってくるので、イオリも駆けだしました。
それを見た彼女は、更に加速します。
「ぱや?」
「ふ~、間に合いました」
イオリが転ぶ前に、フィフェスは抱き留めることに成功しました。
フィフェスはティノと似た匂いがするので、イオリは彼女の胸に顔を擦りつけます。
「ごめんなさい、イオリちゃん。今日のお昼休みは一緒に遊ぼうと約束したのに、試験があったの。それで、高つ音から『中央』に、班ででかけることになっているの」
「おー? わかった~、みんなでおたのしみ~、フィーもおよろこび~」
「イオリちゃん!?」
フィフェスと約束していたことを思いだしたイオリは。
ティノの気配を感じ取ったので、それ以外のことがすっ飛んでしまいました。
イオリに核心を衝かれたフィフェスは、誤魔化すようにイオリをぎゅっと抱き締めますが。
校舎の角から頭が三つ生えていたので、混乱した彼女はイオリを抱き上げ、逃走を図りました。
「む。トロそうな外見の割に、意外に速い。炎竜メイリーン、頭を使わない、その単純明快な攻撃力でフィフェスを捕縛」
「はぁ~。氷竜ソニア、頭しか使わない、その単純明快な運動音痴で、ティノの邪魔をしておいて」
炎竜にも氷竜にも失礼なことを言い合った二人は、同時に行動に移りました。
ソニアはティノにくっつき、一石二竜。
フィフェスをティノが捕縛すると問題があるので、メイリーンは自分で彼女を追いました。
「にげお~、にげお~、くわれる、にげお~」
「こらっ、イオリ! 騙されちゃ駄目よ! 食べようとしてるのは、フィフェスのほうよ! 美味しそうなイオリは、ぱっくんって食べられちゃうのよ!」
「そっ、そのようなことはしません!」
振り返って、律儀に言い返したフィフェスは。
まんまとメイリーンの単純な作戦にはまってしまい、早々に追いつかれてしまいます。
そして、メイリーンは追いつくだけで何もしませんでした。
メイリーンは、走っている人間に手をだすことの危険性を知っています。
そういうわけで、フィフェスが自分から速度を緩めるのを待ちます。
「その、私は子供の頃から活動的というか、体を動かすのは好きでした。メイリーンほどではなくても、『か弱い』と見られないくらいの体型になりたかったです」
とまったフィフェスは、イオリを盾に、三人の少女(?)と対峙します。
自分で言った通り、体は鍛えているようで、息を乱すことなくフィフェスは言い訳を始めました。
「か弱い」発言に、激しく同意するティノ。
本来なら即座にイオリを取り戻すところですが。
話が終わるまでは、イオリを預けておくことにしました。
「ん。次はイオリの『誘拐未遂事件』の釈明」
「うっ……」
「ゆーかい~、ゆかいに~、ききかいかい~」
炎竜と氷竜に睨まれては、フィフェスもお手上げです。
それに、「聖人形」の保護者まで現れては、邪竜でも諦めるでしょう。
フィフェスは、相手が同性(?)なので、この機会に彼女たちに相談しようと心の内を吐露しました。
「以前に言ったように、私は男性恐怖症のようなところがあります。ですが、『八創家』の者として、それで良いはずがありません。そこで先ず、『聖人形』であり、男の子でも女の子でもないイオリちゃんと触れ合い、慣れていこうと思いました。その次は、……ティノさんと会話し、ゆくゆくは、男性と普通に喋れるようになりたいと思っています」
「ん。それは了解。でも、それだけではない」
「うっ……」
相談する。
そうフィフェスは決めていましたが、どこまで打ち明けるかは決めていませんでした。
ルッシェルが警戒していたように、ソニアは侮れない相手のようです。
未だ迷っていたフィフェスに、男の自分が口だしするのは不味いと、これまで黙っていたティノが話しかけました。
「イオリに慣れたら、僕と会話する。それで克服できるのかもしれないのなら協力するよ。あと、僕は『お・と・こ』だから、クロウとの間も取り持ってあげる」
「うぇ…、ぶぇっ!?」
「とりとり~、もちもち~、いっしょに、はぐはぐ~」
むずかしい話になったので、イオリは歌い始めました。
校舎の屋上から見守っていたマルは。
出遅れたので、そのまま昼寝を続行しました。
「ん。ティノは容赦がない。急所を直撃」
「さすがに酷いって、ティノ。少しは言葉を濁さないと」
直撃弾を食らわせたので、メイリーンとソニアが諫めますが。
残念ながら、ティノには伝わらなかったようで、更にフィフェスを追い込んでしまいます。
「え? クロウとは幼い頃に何度か会ったことがあって、それで苛められていたから、クロウのことを恨んでいるんじゃないの? クロウもそのときのことは悔いているみたいだから、必要ならクロウに言い聞かせてあげるよ」
「おいこめ~、ぶっこめ~、こめこめ、つっこめ~」
もうどうにもならなくなって、フィフェスは沈黙しました。
さすがティノです。
今回も問題を解決してしまいました。
嬉しくなったイオリは。
脱力したフィフェスの腕から抜けでて、元気よく躍り始めました。
入園式でフィフェスが睨んでいたのは、クロウではなく、彼の隣にいた美少女(?)。
十周期ぶりの再会に、水竜を差し向けてしまったティノは。
未だに自分の影響力というものに、まったく頓着していないようです。
ティノが余計なことを言ってしまう前に、自分から言ったほうが良い。
メイリーンとソニアが仲良く目線で訴えかけると、観念の臍を固めたフィフェスは、ベルマ家の事情を語り始めました。
「直系であることに拘っていた父は、私を『後継者』に指名しました。父を恐れ、叔父たちは渋々それを受け容れました。ですが、一周期前、弟が生まれました。父は迷わず、弟を『後継者』に指名しました。ただ、私に対し、罪悪感もあったようで、将来を自身で決められるよう、学園に入園することを勧められました。それだけでなく、『八創家』であるなら、『夫は好きに決めて良い』とも言われました」
「ん。昔は仲が良かった。今はダナ家とベルマ家は反目し合っている。選択肢が増えた。でも、嬉しい反面、押さえつけてきた感情を上手く制御できずにいる」
皆まで言うな。
そう言いたくなるくらい、恋愛方面に聡いソニアは暴露してしまいます。
ティノは、彼女たちの話をいまいち理解していないようです。
どう収めたものか悩んでいたメイリーンは。
そこで、はたと気づきました。
「そうよ! ティノ! ガチンコ! イオリを見っけたんだから、今すぐ勝負!!」
「おー! がちんこ~、ちんちん~、がっちんち~ん!」
慌てたフィフェスがイオリのお口を塞ぎますが手遅れでした。
受け流した三人と、反応してしまったフィフェス。
彼女が真っ赤になっているのを尻目に、ソニアはメイリーンを精神的に打ち負かしました。
「ん。もう時間。残念、無念、断念、絶念。準備をして『聖礼殿』の前に集合」
「ふひっ!? 大丈夫よっ、すぐ終わらせるから! 一発! 一発だけやらせて!!」
メイリーンは、邪竜を退治すべく構えますが。
「イオリ優先」。
ティノは、イオリを捜していた目的を達成することに注力していたので、彼女のことなど眼中にありませんでした。
「イオリ。これから『聖域』の中央に、班の皆ででかけるんだ。イオリも一緒に行こう」
「おー! ちゅーおーには~、ひっひ~とたくさん~、おでかけのかけかけ~。りゅーもりで~、たべまくった~」
「……え?」
イオリの言葉を聞いた瞬間。
ティノは絶望しました。
何ということでしょう。
イオリの「初めて」が、知らず知らずのうちに奪われていたのです。
ティノは楽しみにしていました。
イオリと初めてのおでかけで、ウキウキでした。
暴食竜エーレアリステシアゥナ。
ティノの内側ランキングで、また一つ、アリスの順位が下がってしまいました。
「ん。イオリの料理に『聖域』の料理の要素が加わった。学園長がイオリを連れ回したからと推測。あと、『イオリ玉』を『新イオリ玉』か『進化版イオリ玉』にすべく、様々な料理を食べさせたと憶測」
「おー? イオリはこれから~、すなおーとりゅーぎする~」
イオリの何気ない一言で、ティノは撃沈しました。
同じく撃沈されていたフィフェスは、これを機に復活しました。
「『すなおー』ですか?」
「……『すなおー』というのは、たぶん、ベズ先生のことだと思う……」
「む。暗号? わからない。考える時間を希望」
「はいはい、ほら、時間がないんでしょ? さっさと行くわよ。フィフェスも身嗜み、整える時間が必要でしょ」
逆撃したメイリーンは、荷物よろしくソニアを運んでゆきました。
慌ててフィフェスも二人のあとを追ってゆきます。
口の中でころり。
甘い魔力を味わったイオリは、お願いされていたことを思いだしました。
「ティ~ノ~、おてて~、だして~」
「え? あ、うん」
素直にティノが手をだしたので、イオリは特製の「竜玉」をぷっと吐きだしました。
玉の中で、舞うように色彩が躍る、鮮烈な宝石。
見たこともない、高価そうな宝石を見て、ティノはあたふたしながらイオリに尋ねます。
「って、これっ、どうしたの!?」
「さっき~、すなおーとあった~。そのまえに~、まりょくそーさのたんれんに~、やくだつからって~、ティノにわたせっていわれた~」
「ベズ先生が……」
ティノの内側ランキングで、ベズの好感度が上がりました。
マルもうかうかしていられません。
下手をすると、順位が変わってしまいます。
そんな危機的な状況にマルは。
どこ寝る風竜と、お昼寝中でした。
「ティ~ノ~、ティ~ノ~、ティノティノティ~ノ~」
ティノの勘違いなど歯牙にもかけず、イオリはティノ胸に飛び込みます。
大好きなティノ。
幸せ満杯になったイオリは、ティノの胸に顔を擦りつけます。
「イオリ優先」のティノは。
しばらくイオリから離れることができず、遅刻してしまったことを班の皆から咎められてしまうのでした。
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