竜の庵の聖語使い

風結

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聖休と陰謀

空と塒  竜とお泊まり

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「おー? マジュマジュしゅっぱつ~、ふっかつ~、ふんぱつ~?」
「マルはね、元の塒を、領域を確認しに行ったんだ。それで、自分が顕在だということをアピールして、人を近づけないようにするんだって」
「おー? マジュマジュなしなし~、ティノはきけんがあぶない~?」
「うっ……。そういうわけで、アリスさん。マルが守ってくれないので、絶対に『発火』しないでくださいね」
「好い匂いがするまで焼くわよ」

 ティノに対する返事として、アリスは炎の息吹を吐きました。
 それから、空を確認します。
 好い加減、やめないといけない。
 そうとわかっていても、空を見上げるのが癖になってしまいました。

 それだけ、矜持が傷つけられた出来事でした。
 何せ、戦う以前に、相手にもされなかったのですから。
 アリスの、竜としての魂が未だにくすぶっているのも仕方がないことです。

「アリスさん。さっきから空を気にしているようですけど、何かあったんですか?」

 高つ音から出発し、もう夜の時間帯。
 さすがにティノも気づいたようです。

「こちらは晴れているけれど、イオラングリディア僻地はずっと雨みたいね」
「アリスさんが誤魔化すなんて、珍しいですね。そんなに嫌なことがあったんですか?」
「……まったくティノは。妙なところで鋭いわね。ーーエルラが学園に忍び込んだときのこと、覚えていて?」
「それはもちろん。でも、細かいところまでは覚えていませんけど」
「それで十分よ。ティノが言ったように、あの日は嫌なことがあってね、鬱憤を晴らす為に、そこら辺で竜が飛んでいないか捜しに行ったのよ」
「それ、どこの邪竜ですか。完全に八つ当たりじゃないですか」

 確かに、ティノの言う通りです。
 でも、それが許されるのがアリスという炎竜。
 アリスは大陸マースで理不尽な暴力を振るい、その「」を認められています。

 竜にとって「戦い」とは忌避すべきものではないのです。
 炎竜という暴虐。
 その最たる存在ーー「最強の三竜」の一角。

 そう、スグリと行動するようになる前、アリスは結構「イケイケ」でした。
 ときどき戦いの血が疼くのも仕方がないことなのです。
 それがイオラングリディアに嫌われる理由だったのかもしれない。
 最近、アリスはそんなことを思うようになりました。

「捜していたらね、居たのよ。上空に、風竜が」
「もしかして、アリスさんが敗けたんですか? ええ……、そんな凶悪な竜がーー極悪竜が居るんですか?」
「辛辣に燃やすわよ」
「ぱーおー」

 ティノはアリスのことを、炎竜のことをまだわかっていないようです。
 なぜ、ティノはこんなにも馴れ馴れしいのか。
 一度、真剣に考えてみる必要があるかもしれない。
 表情豊かなティノを見ながら、アリスは考えました。
 それと、イオリは夜なのに、「日向ぼっこ」状態に突入したようです。

「追跡したわ、最高速で。そして、射程圏内に入ったところで、風竜は加速したの」
「攻撃を躱したんですか?」
「違うわよ。攻撃もできなかったのよ。あり得ない、と言いたいくらいの、加速だったわ。風竜が加速したその瞬間、すでに私より速かったのよ」
「ん? え~と、よくわからないんですけど、風竜ってそんなに速いんですか?」
「違うわ、アレは別格。アレは、ラカールラカよ。大陸リグレッテシェルナの『最強の三竜』の一角で、音の速さを超えた、唯一の竜。しかもアレ、音の二倍の速さで飛んでいたわ」
「……それって。全力で、邪竜なアリスさんから逃げたってことじゃないですか?」

 その考えはありませんでした。
 ラカールラカにあしらわれた。
 ずっとそう思っていましたが、アリスの力を感じ取ったラカールラカが、争いを避けたと考えることもできます。

 アリスの玩具ーーそのはずが。
 本当に、妹にしてあげても良いかもしれない。
 アリスは魂がぽっかぽかになったので、一緒に口も軽やかになりました。

「実はね、ラカールラカに追いつく手段はあったのよ」
「え? そうなんですか? それって、アリスさんが竜の中で一番速いってことですか?」
「『竜』ということなら違うわ。『竜』という巨大なモノを飛ばすには、風竜が最適。私でも他属性の壁を破ることはできない。でもね、『人化』した状態なら可能性があるのよ」
「あ、それってもしかして、アリスさんを砲弾として飛ばすってことですか?」
「そ。正解。爆発の威力というのは、それはもう凄まじいのよ。たぶん、追いつくことならできるでしょうね」
「んー? じゃあ、何でそれをやらなかったんですか?」

 当然の疑問。
 そしてそこが、ティノの限界でもあります。
 限界、という意味では、竜も同様。
 どれほど強大な存在だとしても、その力には限界があるのです。

「一つには、それを試したことがないから。竜は、肉体がどれだけ傷つこうが、それだけでは死なない。この『砲弾』は、竜の魔力体をも傷つける可能性があるのよ。だから、私だけでは駄目。スグリに手伝ってもらえたなら、次は試してみても良いかもしれない」
「ところで、話は変わりますけど、僕もスグリに会いに行く必要があったんですか? もちろん、スグリには会いたいけど、『発火』が怖いし、マルと一緒に行って、先に『庵』で待っている……」
「って、そんなの駄目に決まっているじゃない! 私にスグリと、一竜で会えって言うの!?」
「えっと、アリスさんは、スグリとどうなりたいんですか? ほら、僕はイオリが大好きなので、ぎゅーぎゅーですよ」

 ティノはアリスに見せつけるように、イオリをぎゅうぎゅうしました。
 「発火」しそうになったアリスでしたが、ティノの言葉が魂と魔力に突き刺さり、不完全燃焼。
 ティノはわかっていない。
 アリスは三日三晩をかけてでも教えてやりたい気分でしたが、そんな恥ずかしいこと、できるはずもありません。

 「分化」して「女性体」になる前。
 スグリに心を動かされている自分を、アリスは誇りに思っていました。
 そして、そんな自分を冷静に見ていられました。
 それが、どうしたことでしょう。
 「分化」した途端に、すべてが跳ね返ってきたのです。

 こんなことなら「分化」しなければ良かった。
 そんなことを考えたこともありました。
 でも、「分化」が自身の肯定であると気づいてからは、胸の内に確かな想いが宿りました。

「ん、と? スグリの洞窟に到着しましたか?」
「ぱーすー」
「あら、暗くて見えないでしょうに、どうしてわかったの?」
「えっと、何となくですけど、スグリの魔力を感じました」
「そう。魔力操作の、鍛錬の成果がでているようね」

 アリスが褒めると、素直に喜ぶティノ。
 アリスは。
 あえて言葉を濁しました。

 スグリの魔力を感じ取る。
 そんなことは本来、人間には不可能だからです。
 アリスの周囲には、彼女の魔力が漂っています。
 それだけでなく、「結界」も張ってあります。

 これを抜けて魔力を感じ取ったとなると。
 明らかに別の要因があると見て良いでしょう。

 普通の人間であるティノ。
 そんなティノは、普通でない者たちと係わってきました。

 ランティノールにイオリ(イオラングリディア)。
 マルにアリスにスグリ、それからベズも。
 通常の人間なら、千度生まれ変わろうとも叶わない、奇跡的な出逢い。
 それゆえに、候補を一つに絞ることができません。

 無いとは思いますが、他竜の干渉も視野に入れておかなければいけません。
 これはいつものことですが。
 アリスという竜が動くだけで、様々な余計なものがついてきます。

 と、冷静に考えられたのもここまで。
 ティノの言葉を奇貨として緊張を誤魔化そうと試みましたが、さしたる効果はありませんでした。
 動揺から、着地に失敗しないように、いつもより慎重に降下。

「うわっ、真っ暗。暗竜だから、そういう場所を選んでいるのかな?」
「おー。でもでも~、イオリにはティノがいるばしょがぱっちり~」

 「感知」と竜眼。
 暗くても周囲の状況が確認できるので、一人と一竜ははしゃいでいます。
 裏腹に、アリスはその場に崩れ落ちたい気分でした。
 でも、アリスは学園長で、今は引率者であり保護者でもあります。

 どんな方術をぶっ放そうか。
 そんなことを考えることで、心を落ち着かせました。

 残念でありながら、少し嬉しい。
 そんな複雑な気持ち。
 痛くもあり辛くもあり、そして仄かに温かい。

「どうやら、スグリは留守のようね」
「え? そうなんですか? んー、でも、スグリって魔力操作が得意なんですよね。僕たちが気づけないだけなんじゃないですか?」
「馬鹿ね。スグリなら、私たちが遣って来たら出迎えにくるし、何より、自身の魔力を隠したりなどしないわ」

 アリスは、自分から可能性を潰し、スグリが居ないという事実を受け容れます。
 溜め息を吐きたいのを我慢していると、ティノとイオリが不思議なことを始めました。

「じゅんび~、じゅんび~、おてつだい~、ティ~ノといっしょに~、おてつだい~」

 ティノとイオリは、周囲を歩き回りながら、楽し気に枝を拾っています。
 ティノと居られる機会が減っていたので、イオリの「お手つき」歌も絶好調。
 夕食の準備でしょうか。
 今は、心穏やかに見ていられる気分ではなかったので、ティノに尋ねました。

「ティノ。何をしているの?」
「何って、寝床の準備です。スグリの塒に勝手に入るのはよくないので、洞窟の前に寝床を作ります。枝、葉っぱ、その上に布を敷いたら出来上がりです。今日は雨は降らないでしょうから、星のかけ布団です」

 周囲にはスグリの魔力が溢れているので、虫は寄ってきません。
 それも悪くない。
 そう思ったアリスでしたが、今すぐ不貞寝したかったので、面倒を省くことにしました。

「ほら、熱の絨毯を作ってあげるから、その上に敷きなさい。それなりに涼しいとはいえ、気温の変化はあるから、『結界』を張ってあげるわよ」

 ティノが何かを言う前に、とっとと方術を行使します。
 特に寝床に拘りはないのか、ティノはアリスが指示した場所に、荷物から取りだした大きな布を敷きました。

「これ、熱の絨毯なんですか? 別に暖かくないし、風の絨毯という風情ですけど」
「ああ、ソレはわかりにくいかもしれないわね。ソレは『火種』を、『現象』を利用しているのよ」
「……布、燃えませんよね」
「服だけ燃やすわよ」
「ごめんなさい。真っ裸は嫌なので、燃やすのなら髪の毛にしてください」
「おー! ごろ~ん、ごろろ~ん、ごろんろ~ん!」

 口では不安を垂れ流しながら、行動はまったく逆。
 アリスのことを微塵も疑っていないのか、イオリを抱えて布に飛び込むと、一緒に遊び始めました。

「髪の毛なら燃やしても良いの?」
「え? それは、服を燃やされるくらいなら、髪の毛のほうがいいです。髪の毛ならまた生えてきますし、ーーあ、でも毛根まで焼くのは勘弁してください。帽子を被るのは面倒なので……って、入ってこないでください」
「おー! ひっひ~も~、いっしょにごろんで~、ごろろんご~ん!」
「は? 熱の絨毯も『結界』も私がやったのよ。それに、絶世の美女が横で『ごろん』してきたのよ。そんな嫌そうな顔してないで、もっと恥ずかしがったらどう?」

 嫌そうな顔、というより、迷惑そうな顔、といったところでしょうか。
 三人がちょうど横になれる大きさ。
 ティノはアリスに背を向け、イオリを抱えると、くるりと回転。

 これでイオリが真ん中になって、万事解決。
 イオリが喜んでいたので。
 アリスはこの件を、寛大な心で不問に付すことにしました。

「ほんと、ティノは相手の性別では心が乱れないのよね。心が乱れるのは、性別ではなく、そのときの状況。私やソニア、メイリーンがくっついても、それだけでは平常そのものなのよね」
「いえ、そんなことはありません。男にくっつかれるのは、というか、好きじゃない男にくっつかれるのは、もの凄く嫌です」
「ぱーおー」

 面倒なことにしかならないので、アリスはそこに言及するのは控えました。
 竜と竜(一応)と人。
 簡素な寝床で星を見上げています。

 そんなくすぐったいような空気に包まれ、アリスが眠りの世界に旅立とうとしたところで。
 ティノが忽せにできないことを言ってきました。

「それじゃあ、明日の朝に『庵』に出発しましょう」
「何を言っているのかしら? その内、スグリが帰ってくるかもしれないのよ? 一巡りはここで待機よ」

 当然です。
 本来なら、二巡りをスグリの塒の前で過ごしても良いのに、半分も譲歩しているのです。
 明日の朝などと、世界が炎で包まれたとしてもあり得ないことです。

「わかりました。スグリに告げ口をします」
「仕方がないわね。スグリの用事がすぐに終わる可能性は低いから、聞いてあげないこともないわよ」

 世界が炎に包まれても、アリスはあまり気にしないので、ティノのお願いを聞いてあげることにしました。
 それに、急ぐ必要はありません。
 もう、四星巡り。
 あと、六星巡り経てば、スグリは学園に遣って来るのです。

 それまでに。
 スグリと普通に話せるように、想いを温めておかなければいけません。

「ちょっと圧迫感があるかもしれないけれど、『結界』を小さくするわよ」
「魔力の節約ですか?」
「それは、逆。竜は大きな力をふるうのに適した生き物。細かな操作をするほうが魔力を使うのよ。態々そんなことをする理由は、『結界』を縮めて、私の魔力濃度を上げる為」
「そのほうが、アリスさんにとって、眠るのにいい環境ってことですか?」
「違うわよ。いいえ、違わないけれど、違うわ。私の魔力、というより、竜の魔力が正解。竜の魔力は毒になるけれど、少量なら人種に良い効果をもたらすの。だから、私の濃縮魔力を吸っていれば、魔力操作がし易くなるーーって、何で嫌そうな顔をしているのよ」

 今度は本当に、ティノは嫌そうな顔をしていました。
 でも、ティノのことだから、おかしなことを考えているのかもしれません。
 ここは心を聖竜にし、「発火」せずにティノの言葉を待ちました。

「いえ、だって、それって僕の体の中の、イオリの魔力を追いだして、アリスさんの魔力で埋めるってことですよね? それは嫌です」

 そこまで言えるのは、いっその事、晴天の天竜です。
 意地悪な竜。
 そうであるのなら、アリスがすべきことは決まっています。

「なら決まりね。これから二巡り、泣こうが喚こうが、マースグリナダの名に誓って、ティノに魔力を強制注入してやるわ」
「くっ……、イオリっ、助けて!」
「ぱーだー」

 少しでもイオリの魔力を取り込もうと、ティノはイオリに密着。
 何となくですが。
 アリスもイオリに密着。

 そんなこんなで、竜もたけなわ
 アリスは自分が笑っていることも知らずに、眠りに就いたのでした。
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