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第30話 思い

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『考えてみればシャルロットも気の毒だよな。

兄上みたいな絵に描いたような理想的な王子様の婚約者候補から、

いきなり僕みたいなどんくさい王子の婚約者にさせられて。』

アーノルドはジョージアと比べて、

自分が出来がわるい王子だと分かっていた。

ジョージアは背も高くて、スラリとしていたが、

自分は背も低くて、太っていた。

ジョージアは頭もよくて剣術も得意だったが、

自分は勉強もできなくて、

すこし走れば息切れをするようなレベルだった。

ジョージアは控えめで、穏やかな性格だったが、

自分はワガママで口が悪かった。

アーノルドは正妃やジョージアの宮の侍女たちが自分のことを『白豚王子』と呼んで、

馬鹿にしていることを知っていた。

アデリアやアーノルドの宮の侍女たちは、

アーノルドが口が悪くても本当は優しいことを知っていたし、

アーノルドの出来が悪くても、

馬鹿な子ほどかわいいと言った感じで、

アーノルドの味方をしてくれた。

しかし、

アデリアやアーノルド付きの侍女たちが、

何かにつけて正妃やジョージア付きの侍女たちから、

アーノルドの容姿や出来のことで馬鹿にされては言い返せずに、

悔しそうにしているのをアーノルドは知っていた。

アーノルドは母親や侍女たちに申し訳ない気持ちになって情けなかったが、

そうは思っても急に痩せるわけでも、

出来がよくなるわけでもなく、

イライラした気持ちになるだけだった。

アーノルドはイライラした気持ちを解消するように甘いお菓子をムシャムシャ食べて、

ますます太って自己嫌悪に陥っていたのだった。
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