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第二章 とある少年の物語
娼年メイドは暗殺者
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「あっ……」
獣人のヴォルグは、その様子を見て呆気に取られていた。
確かに、自分だってこの商会の会長を殺すことは考えてはいた。だが、まさか、こんなにもあっさりと、その怨敵がこの世から退場するなんて、思ってもいなかったのだ。
そうしている間にも、吹き出す血の勢いはだいぶ弱まり、人間だった肉の塊は徐々に熱を失い始める。
「まったく。外の連中は何をやっているんだ? 部外者を侵入させるなんて、クソが……」
少年メイドは乱れて顔に掛かった髪をかき上げながら、口悪く不満を漏らした。
小声とはいえ、昼間とは全然違う口調の少年メイド。
あまりの豹変ぶりに、昼間の少年と同一人物なのか疑わしく思えてくる。
「お前……本当にミトなのか?」
「……そんなやり取りをするほど、私たちは特別親しい仲ではなかったはずですが?」
受け答えの際に、ミトの口調が丁寧語に戻った。しかし、それは心に壁のあるが故の敬語だ。
少年メイドは目に見えて分かるほど邪険な態度で、辛辣な言葉をヴォルグに言い放つ。
「今さら貴方にできることなど、何もありません。さっさとお帰りください。それとも、出口まで案内が必要でしょうか?」
「なんで、お前がこんなことを……」
少年メイドは蔑むような、あるいは呆れるような冷たい視線で獣人ヴォルグを見つめた。
「私が暗殺者だからに決まっているでしょう? そんなことも察しがつかないのですか? その頭に、ちゃんと脳みそは言ってますか?」
「ば、バカにするな!」
「貴方がもう少し慎重な性格なら……リンスさん、でしたっけ? 明日にはその恋人と一緒に、故郷へ帰ることもできたでしょうに」
「ハアッ!?」
ヴォルグは驚きの声を上げた。
「簡単に説明いたしますと、今夜レジスタンス組織がこの商会を襲い、奴隷たちをみんな開放する予定だったのです」
「な!?」
そんなの、聞いてない。
言ってくれれば協力したのに――レイノルズ商会襲撃のチャンスに乗り遅れたヴォルグは、そのことを惜しく思った。
「な、なら昼間に! そう言ってくれればよかったじゃねえか!?」
「貴方が信用できる保証が、どこにありましたか? 例えば、私たちを売って恋人だけ確実に取り戻す……そう考えないという保証が、どこにありましたか?」
「俺は! そんなことはしない!」
「だから、それが信用できないと……言うだけ時間の無駄ですね」
そしてミトは眉間を押さえる。単細胞なヴォルグとの会話に嫌気が差しているようだった。
「第一、貴方からしても、私が貴方のことを報告している可能性だってあったでしょうに……」
「ハッ、それはねえな。こう見えて、他人を嗅ぐ鼻には自信があるんだ!」
それは『人を見る目には自信がある』の獣人版だろうか? 妙に自信満々なヴォルグに、ミトは再び深いため息を吐いた。
「とにかく、貴方は今からでも外に出てください。あとは私たちが――」
ちょうどそのタイミングで、カーンカーンと警鐘が鳴る。
ミトはジトッと懐疑的な目でヴォルグを睨んだ。
「……まさか、ここに来るまでに、誰かから目撃されていませんよね?」
「いや、何人かは仕方なかった。でも大丈夫だ。ちゃんと処理したぜ?」
就寝中の従業員たちが騒ぎ出す。戦える者はすでに武器を取り、侵入者を探し始めているだろう。
「……ちゃんと?」
「ああ、ちゃんとふん縛って……」
「あーハイハイ。もう結構です。要するに、貴方のせいで騒ぎになったわけですね――オレの苦労を、台無しにしやがって!!」
少年メイドはフリルのカチューシャを床に叩きつけながら叫んだ。
「ああもう! お前はさっさと行け! あとはオレ達がなんとかするから!」
「いや、ミト。俺も協力させてもらうぜ? 誰かが戦っているのに、俺だけ待つなんて、できねえや」
我儘を言うヴォルグに、イライラした様子のミト。だが、口論する時間さえも、今は惜しい。
「クソッ! じゃあ、死なないように付いて来い。とりあえず、仲間と合流する!」
「おう、そう来なくっちゃな! 了解だ!」
「言っとくが、お前がピンチになっても、俺は助けないからな!」
わざわざ警告してくれる少年メイド。
ミトのその言葉に、ヴォルグはフッと笑った。
「なんだよ?」
「やっぱお前、良い奴だな。俺の鼻に狂いはなかったぜ……改めて、よろしくな、相棒!」
「勝手に相棒扱いするんじゃねえ!」
ミトが不機嫌に言い放つと、ドアを開き、会長の死体が残る部屋を出る。
それに続いて、ヴォルグも部屋を飛び出した。
獣人のヴォルグは、その様子を見て呆気に取られていた。
確かに、自分だってこの商会の会長を殺すことは考えてはいた。だが、まさか、こんなにもあっさりと、その怨敵がこの世から退場するなんて、思ってもいなかったのだ。
そうしている間にも、吹き出す血の勢いはだいぶ弱まり、人間だった肉の塊は徐々に熱を失い始める。
「まったく。外の連中は何をやっているんだ? 部外者を侵入させるなんて、クソが……」
少年メイドは乱れて顔に掛かった髪をかき上げながら、口悪く不満を漏らした。
小声とはいえ、昼間とは全然違う口調の少年メイド。
あまりの豹変ぶりに、昼間の少年と同一人物なのか疑わしく思えてくる。
「お前……本当にミトなのか?」
「……そんなやり取りをするほど、私たちは特別親しい仲ではなかったはずですが?」
受け答えの際に、ミトの口調が丁寧語に戻った。しかし、それは心に壁のあるが故の敬語だ。
少年メイドは目に見えて分かるほど邪険な態度で、辛辣な言葉をヴォルグに言い放つ。
「今さら貴方にできることなど、何もありません。さっさとお帰りください。それとも、出口まで案内が必要でしょうか?」
「なんで、お前がこんなことを……」
少年メイドは蔑むような、あるいは呆れるような冷たい視線で獣人ヴォルグを見つめた。
「私が暗殺者だからに決まっているでしょう? そんなことも察しがつかないのですか? その頭に、ちゃんと脳みそは言ってますか?」
「ば、バカにするな!」
「貴方がもう少し慎重な性格なら……リンスさん、でしたっけ? 明日にはその恋人と一緒に、故郷へ帰ることもできたでしょうに」
「ハアッ!?」
ヴォルグは驚きの声を上げた。
「簡単に説明いたしますと、今夜レジスタンス組織がこの商会を襲い、奴隷たちをみんな開放する予定だったのです」
「な!?」
そんなの、聞いてない。
言ってくれれば協力したのに――レイノルズ商会襲撃のチャンスに乗り遅れたヴォルグは、そのことを惜しく思った。
「な、なら昼間に! そう言ってくれればよかったじゃねえか!?」
「貴方が信用できる保証が、どこにありましたか? 例えば、私たちを売って恋人だけ確実に取り戻す……そう考えないという保証が、どこにありましたか?」
「俺は! そんなことはしない!」
「だから、それが信用できないと……言うだけ時間の無駄ですね」
そしてミトは眉間を押さえる。単細胞なヴォルグとの会話に嫌気が差しているようだった。
「第一、貴方からしても、私が貴方のことを報告している可能性だってあったでしょうに……」
「ハッ、それはねえな。こう見えて、他人を嗅ぐ鼻には自信があるんだ!」
それは『人を見る目には自信がある』の獣人版だろうか? 妙に自信満々なヴォルグに、ミトは再び深いため息を吐いた。
「とにかく、貴方は今からでも外に出てください。あとは私たちが――」
ちょうどそのタイミングで、カーンカーンと警鐘が鳴る。
ミトはジトッと懐疑的な目でヴォルグを睨んだ。
「……まさか、ここに来るまでに、誰かから目撃されていませんよね?」
「いや、何人かは仕方なかった。でも大丈夫だ。ちゃんと処理したぜ?」
就寝中の従業員たちが騒ぎ出す。戦える者はすでに武器を取り、侵入者を探し始めているだろう。
「……ちゃんと?」
「ああ、ちゃんとふん縛って……」
「あーハイハイ。もう結構です。要するに、貴方のせいで騒ぎになったわけですね――オレの苦労を、台無しにしやがって!!」
少年メイドはフリルのカチューシャを床に叩きつけながら叫んだ。
「ああもう! お前はさっさと行け! あとはオレ達がなんとかするから!」
「いや、ミト。俺も協力させてもらうぜ? 誰かが戦っているのに、俺だけ待つなんて、できねえや」
我儘を言うヴォルグに、イライラした様子のミト。だが、口論する時間さえも、今は惜しい。
「クソッ! じゃあ、死なないように付いて来い。とりあえず、仲間と合流する!」
「おう、そう来なくっちゃな! 了解だ!」
「言っとくが、お前がピンチになっても、俺は助けないからな!」
わざわざ警告してくれる少年メイド。
ミトのその言葉に、ヴォルグはフッと笑った。
「なんだよ?」
「やっぱお前、良い奴だな。俺の鼻に狂いはなかったぜ……改めて、よろしくな、相棒!」
「勝手に相棒扱いするんじゃねえ!」
ミトが不機嫌に言い放つと、ドアを開き、会長の死体が残る部屋を出る。
それに続いて、ヴォルグも部屋を飛び出した。
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