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2章 アルバイト開始
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「淑女に言わせてしまい申し訳ない。貴女がそう言ってくれるのなら、是非お願いしよう」
言葉と言い方は申し訳なさそうだが、表情は全くそう思っていないようだ。
「アン、貴女はこの人の言っていることを解っていない」
確かに殿下の好きな花の種類は知らない。
王族だから、勝手な偏見で薔薇が好きそうだと思っていた。そこは、反省しなくては。
「あの殿下は、どのような花が好きなのですか?私、勝手に殿下は薔薇が好きだと思っていました」
「ハハハハ、薔薇よりは控え目に咲いている花が好きだな。特にユーゴ、お前はそちらの傾向が強いよな」
「うるさいですよ。私が何の花を愛でようと、貴方には関係のない話です」
花が好きだということを、いままで一緒にいて聞いたことはなかった。
確かに、ハミルトン家の庭園は素敵だから、その影響なのかもしれない。
好きな人の知らない一面を誰かから聞くと胸に痛みが走る。
「ユーゴも花が好きだったのね。知らなかったは。何の花が好きなの?今度は、ハンカチに縫う刺繍は、ユーゴの好きな花にするわ」
明るく努めようとしてみるが、顔は強張っていないな心配になる。
けれど、ユーゴが喜んでくれるなら、花の刺繍を極めてくらいに頑張らなくてはと、意気込んでみれば、先程より深い溜息が吐かれた。
「僕は別に花など…」
独り言のような、呟きだったけれど、「花など」の言葉に引っ掛りを覚える。
なら、何故花を愛でると言っているのだろう。
「そう言えば、ユーゴのために沢山刺繍をしたの。渡す機会がなかったから、渡せなかったのだけれど、何時なら渡せる?」
「明日なら、空いている」
明日もユーゴに会えるかもしれないと思ったら頬が緩む。
「おい、二人だけしかいない空間ではないことを忘れるな」
「あっ、大変申し訳ありません」
ユーゴを見つめていたら、殿下の姿が消えたように見えたためか、存在を忘れかけていた。
まじまじとふたりを見てみるが、一瞬なら兄弟と言われてもいいほどに似通った容姿をしている。
クリス様には申し訳ないけど、ユーゴとジェード殿下の方が兄弟っぽい。
「私の顔に見惚れたか」
「えっ」
何を言われたのかと思ってしまう。
突然、消えたと思っていた人に声をかけられ、他のことを考えてしまった私自身が悪いのだけれど。
「あなたに、見惚れるわけはありませんよ」
「どうだかな」
視界を遮るようにユーゴが目の前に立つ。
「アンジュ嬢も、幼い頃にお前の顔目当てで声をかけたのではないか」
「うっ、そそれは」
動揺しすぎて、顔で声をかけました。と、自分から申告しているみたいになってしまう。
ユーゴや殿下の表情が見えないために、声色で判断しなくてはいけない。
限られた人たちとの交流しかしてこなかったためか、人の表情が見えないことに不安しかない。
「そうだとしても、あの頃に話しかけてくれる令嬢は彼女だけでしたから」
「そうか。それで、彼女に婚約を申し込んだわけか」
きっと、ユーゴは気付いていたのかもしれない。
こんな、可愛くもない私が話しかけたのは、彼の顔が好みだったということに。
色々なことが、重なりすぎて顔が熱くなってきた。
この場から逃げ消えたいと思うほどには。
「あの殿下。私、飾る花を探して参りますね」
「わざわざ、探さなくて構わない。アンジュ嬢、あなたを我が執務室にご招待します。是非、私にエスコートさせてください」
甘い言葉を殿下から囁かれるのは何回目だろう。気にしてはいけないと思いながらも、慣れていないために固まって動けなくなってしまう。
ユーゴを押し退けて、手を伸ばそうとする殿下の腕を叩き落とすユーゴに目を見開いてしまう。
言葉と言い方は申し訳なさそうだが、表情は全くそう思っていないようだ。
「アン、貴女はこの人の言っていることを解っていない」
確かに殿下の好きな花の種類は知らない。
王族だから、勝手な偏見で薔薇が好きそうだと思っていた。そこは、反省しなくては。
「あの殿下は、どのような花が好きなのですか?私、勝手に殿下は薔薇が好きだと思っていました」
「ハハハハ、薔薇よりは控え目に咲いている花が好きだな。特にユーゴ、お前はそちらの傾向が強いよな」
「うるさいですよ。私が何の花を愛でようと、貴方には関係のない話です」
花が好きだということを、いままで一緒にいて聞いたことはなかった。
確かに、ハミルトン家の庭園は素敵だから、その影響なのかもしれない。
好きな人の知らない一面を誰かから聞くと胸に痛みが走る。
「ユーゴも花が好きだったのね。知らなかったは。何の花が好きなの?今度は、ハンカチに縫う刺繍は、ユーゴの好きな花にするわ」
明るく努めようとしてみるが、顔は強張っていないな心配になる。
けれど、ユーゴが喜んでくれるなら、花の刺繍を極めてくらいに頑張らなくてはと、意気込んでみれば、先程より深い溜息が吐かれた。
「僕は別に花など…」
独り言のような、呟きだったけれど、「花など」の言葉に引っ掛りを覚える。
なら、何故花を愛でると言っているのだろう。
「そう言えば、ユーゴのために沢山刺繍をしたの。渡す機会がなかったから、渡せなかったのだけれど、何時なら渡せる?」
「明日なら、空いている」
明日もユーゴに会えるかもしれないと思ったら頬が緩む。
「おい、二人だけしかいない空間ではないことを忘れるな」
「あっ、大変申し訳ありません」
ユーゴを見つめていたら、殿下の姿が消えたように見えたためか、存在を忘れかけていた。
まじまじとふたりを見てみるが、一瞬なら兄弟と言われてもいいほどに似通った容姿をしている。
クリス様には申し訳ないけど、ユーゴとジェード殿下の方が兄弟っぽい。
「私の顔に見惚れたか」
「えっ」
何を言われたのかと思ってしまう。
突然、消えたと思っていた人に声をかけられ、他のことを考えてしまった私自身が悪いのだけれど。
「あなたに、見惚れるわけはありませんよ」
「どうだかな」
視界を遮るようにユーゴが目の前に立つ。
「アンジュ嬢も、幼い頃にお前の顔目当てで声をかけたのではないか」
「うっ、そそれは」
動揺しすぎて、顔で声をかけました。と、自分から申告しているみたいになってしまう。
ユーゴや殿下の表情が見えないために、声色で判断しなくてはいけない。
限られた人たちとの交流しかしてこなかったためか、人の表情が見えないことに不安しかない。
「そうだとしても、あの頃に話しかけてくれる令嬢は彼女だけでしたから」
「そうか。それで、彼女に婚約を申し込んだわけか」
きっと、ユーゴは気付いていたのかもしれない。
こんな、可愛くもない私が話しかけたのは、彼の顔が好みだったということに。
色々なことが、重なりすぎて顔が熱くなってきた。
この場から逃げ消えたいと思うほどには。
「あの殿下。私、飾る花を探して参りますね」
「わざわざ、探さなくて構わない。アンジュ嬢、あなたを我が執務室にご招待します。是非、私にエスコートさせてください」
甘い言葉を殿下から囁かれるのは何回目だろう。気にしてはいけないと思いながらも、慣れていないために固まって動けなくなってしまう。
ユーゴを押し退けて、手を伸ばそうとする殿下の腕を叩き落とすユーゴに目を見開いてしまう。
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