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3章
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一足踏み込めば、多くの光が集まり暖かい。
その中で、優雅に長い脚を組み読書をしているユーゴを見つける。
周りにある観葉植物と、日の光が彼を照らしている姿は、とても美しい。きっと、画家がいれば絵にしたくなるほどの構図だと思う。
ぼーっとしていると、後ろから咳払いが聞こえる。ミーナが挨拶をしろと圧を掛けてきた。
「ご、ごきげんよう」
「…ごきげんよう」
おはようと言えばいいのに、ごきげんようと上擦った声で挨拶をしてしまった。
ゆっくりと本から顔を上げ、同じように挨拶をしてくれた。
パタンと本を閉じて、綺麗な笑みを浮かべながら、立ち上がり、此方に近付いてくる。
普通は、私が向かうべきなのに何故此方に来るのだろう。
「よかった。昨日は、突然倒れたから心配したよ」
昨日…ああ、揺さぶられて、気持ち悪くなってしまったことを思い出す。
久しぶりに気持ち悪くなった気がする。
昔はよく、くるくる回って気持ち悪くなることが多かったが、今回はお腹が満たされているところで揺さぶられて、胃がムカムカしてしまったのもある。
抱き締めるかのように、包み込んでくるが、頭を自身の胸に預けるように優しく押し付けられた。
いきなりのことに、身動きをとることが出来ない。
「僕も動揺してて、ごめん。でも、これからはアンといる時間が増えて嬉しいな」
その言葉を聞いて、頬に熱が集まる。
いま、顔が見られなくてよかった。きっと、ユーゴも同じことを思っているはずだ。
さらりと甘言を言葉にするが、照れない筈がない。それに、いまの彼は社交場のような紳士ではない。
互いが恥ずかしがっている(想像)ので、可笑しくなってしまう。
ふふふふふと、笑い出してしまうと、それにつられたのか彼も笑い出す。
グーッと笑い声を掻き消すように音が鳴る。
慌ててお腹を押さえるが、きゅるきゅると鳴る音が小さくなることはない。
逃げ出そうと思っても、頭はユーゴに優しく押さえ付けられている。
「やっぱり、アンといると退屈しないな。そろそろ座って、朝食にしようか」
手の感覚が離れていき、見上げるように顔を視界に入れれば、口元が緩んでいた。
そのまま肩を抱かれ席までエスコートされた。
席に着けば、直ぐに紅茶とベックエネディクトが運ばれてきた。
オランデーズソースとその周囲に散りばめられた花が色とりどりで食べるのが勿体無いと思ってしまう盛り付けがしてある。
「飾っておきたいくらい可愛い」
「きちんと、食べよう。作ってくれた料理長やこの食材を作り出してくれた人たちに対して失礼になってしまうから」
「わかってる。私たちがこうして食べられるのも、他の人たちがたくさん働いてくれているからってことくらい」
唇を尖らせながら、この食事を作ってくれた人に心から感謝をする。
「それならいいよ。昔みたいに、食べたくないって言われるのかと思った」
「わ、忘れてよ!あれは、そのチョコレートがあんなに色があるなんて知らなかっただけだから」
「わかっているよ。僕もあの時まで知らなかったからね」
昔、ラスクの上に色付はれたチョコレートで色々な模様が描かれたお菓子が出された。はじめて見たそれが食べられる物とは知らずに、自分の宝物容れに入れてしまもうとしたら、お菓子だから食べるものだと母に言われたことがあった。
本当に食べられるのかと、疑いこんなに綺麗な物が食べ物なはずがないと泣きながら主張したが、隣にいたユーゴが半分に割って渡してきたから、お菓子だということに気付いたという、何とも言えない話である。
それをいま思い出さなくてもいいのに。
「冷めないうちに戴こう」
大人しくその言葉に従いながら、口に含む。
先程の話など忘れるくらいに美味しくて、どんどん食が進んでいった。
目の前のユーゴは、すごく嬉しそうな顔をしていたから不思議だ。それにしても、冷めないうちにって、自分で言ったのに、殆んど進んでいない。
ユーゴの方が、食べ物への感謝がないのでは!っと、思ってしまった。
その中で、優雅に長い脚を組み読書をしているユーゴを見つける。
周りにある観葉植物と、日の光が彼を照らしている姿は、とても美しい。きっと、画家がいれば絵にしたくなるほどの構図だと思う。
ぼーっとしていると、後ろから咳払いが聞こえる。ミーナが挨拶をしろと圧を掛けてきた。
「ご、ごきげんよう」
「…ごきげんよう」
おはようと言えばいいのに、ごきげんようと上擦った声で挨拶をしてしまった。
ゆっくりと本から顔を上げ、同じように挨拶をしてくれた。
パタンと本を閉じて、綺麗な笑みを浮かべながら、立ち上がり、此方に近付いてくる。
普通は、私が向かうべきなのに何故此方に来るのだろう。
「よかった。昨日は、突然倒れたから心配したよ」
昨日…ああ、揺さぶられて、気持ち悪くなってしまったことを思い出す。
久しぶりに気持ち悪くなった気がする。
昔はよく、くるくる回って気持ち悪くなることが多かったが、今回はお腹が満たされているところで揺さぶられて、胃がムカムカしてしまったのもある。
抱き締めるかのように、包み込んでくるが、頭を自身の胸に預けるように優しく押し付けられた。
いきなりのことに、身動きをとることが出来ない。
「僕も動揺してて、ごめん。でも、これからはアンといる時間が増えて嬉しいな」
その言葉を聞いて、頬に熱が集まる。
いま、顔が見られなくてよかった。きっと、ユーゴも同じことを思っているはずだ。
さらりと甘言を言葉にするが、照れない筈がない。それに、いまの彼は社交場のような紳士ではない。
互いが恥ずかしがっている(想像)ので、可笑しくなってしまう。
ふふふふふと、笑い出してしまうと、それにつられたのか彼も笑い出す。
グーッと笑い声を掻き消すように音が鳴る。
慌ててお腹を押さえるが、きゅるきゅると鳴る音が小さくなることはない。
逃げ出そうと思っても、頭はユーゴに優しく押さえ付けられている。
「やっぱり、アンといると退屈しないな。そろそろ座って、朝食にしようか」
手の感覚が離れていき、見上げるように顔を視界に入れれば、口元が緩んでいた。
そのまま肩を抱かれ席までエスコートされた。
席に着けば、直ぐに紅茶とベックエネディクトが運ばれてきた。
オランデーズソースとその周囲に散りばめられた花が色とりどりで食べるのが勿体無いと思ってしまう盛り付けがしてある。
「飾っておきたいくらい可愛い」
「きちんと、食べよう。作ってくれた料理長やこの食材を作り出してくれた人たちに対して失礼になってしまうから」
「わかってる。私たちがこうして食べられるのも、他の人たちがたくさん働いてくれているからってことくらい」
唇を尖らせながら、この食事を作ってくれた人に心から感謝をする。
「それならいいよ。昔みたいに、食べたくないって言われるのかと思った」
「わ、忘れてよ!あれは、そのチョコレートがあんなに色があるなんて知らなかっただけだから」
「わかっているよ。僕もあの時まで知らなかったからね」
昔、ラスクの上に色付はれたチョコレートで色々な模様が描かれたお菓子が出された。はじめて見たそれが食べられる物とは知らずに、自分の宝物容れに入れてしまもうとしたら、お菓子だから食べるものだと母に言われたことがあった。
本当に食べられるのかと、疑いこんなに綺麗な物が食べ物なはずがないと泣きながら主張したが、隣にいたユーゴが半分に割って渡してきたから、お菓子だということに気付いたという、何とも言えない話である。
それをいま思い出さなくてもいいのに。
「冷めないうちに戴こう」
大人しくその言葉に従いながら、口に含む。
先程の話など忘れるくらいに美味しくて、どんどん食が進んでいった。
目の前のユーゴは、すごく嬉しそうな顔をしていたから不思議だ。それにしても、冷めないうちにって、自分で言ったのに、殆んど進んでいない。
ユーゴの方が、食べ物への感謝がないのでは!っと、思ってしまった。
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