ある雪の降る日に

喜市

文字の大きさ
1 / 31

1話

しおりを挟む
ガラガラガラ…

ざっと20人ほどが乗っている乗合馬車が、エルディア王国に向かっていた。
新年を迎えた今日、四季のあるエルディア王国の周辺地域でもちらほらと新雪が空から舞っていた。


砂利道の多い道に差し掛かり、車体が少し音を立て揺れる。

ガタッ!

「ーーっ!いてて、ん…もう朝か。」

揺れた拍子に後ろの壁に頭を打った僕はゆっくりと目を覚ます。
頭を擦りながら、ぼんやりと馬車の後ろの開いたところから外を見る。

遠くの山では冠雪しているところもみられ、少し懐かしく思えた。少しの肌寒さと寝起きのせいでぼうっとした頭で、僕は生まれ育った村に思いを馳せる。

「僕は…」


僕、フレイ・ベレットーニはこのエルディア王国からずうっと東の獣人の国、ネピアという国の国境沿いの村で産まれた獣人だ。

ちなみに種族はネコ科で、マンチカンとメインクーンの雑種だ。アンバー色の目と黒色の毛並みは父さん譲り、小型体型なのと性格は母さん譲りだ。

僕も父さんみたいに大きかったらなぁ。

まぁ獣人の国と言っても、もうそれは昔の話で、今は世界の人口の約半分は獣人だ。
身体的特徴も、耳やしっぽ、特性や能力が残っているくらいで、見た目は人種と何ら変わりは無い。他種族だって同じだ。

僕の生まれた村は標高の高い山々に囲まれており、湖や樹林などの資源が豊富で、隣国との堺にも高い山脈があるため、一言で言ってしまえば平和ボケした村だった。

その土地の伯爵だって、跡継ぎがおらず婿養子をこれから取ろうとしているようなおじいちゃん伯爵だったし、傭兵団だって村のおじちゃん達で結成されているような感じだ。

でも僕はその生活が大好きだった。
学校が終われば友達と一緒に湖で魚をとったり、畑にいる兄ちゃん達にイタズラしたりして遊んでいた。






16歳の冬。
僕は村を囲んでいる山の麓に来ていた。特に意味なんて無い、いっつもそんな感じでどこかにでかけているのだ。

「はぁ…さっ、寒いぃ、、」

防寒対策だってばっちりしてきたはずなのに。
やっぱり冬は寒いなぁ。早く帰ろう。

フードに積もった雪を払うと、雪の上に自分の足跡が付いた道を振り返る。

「意外とここから遠いんだよなぁ。…あっそうだ、丘にでも寄っていこう。ついでに川で魚を捕ってったら母さん喜ぶかも…」

また少し村からは離れるけれど、丘は村がいちばん綺麗に見渡せる場所だ。

少し斜面になっている山道を歩く。たいした距離では無いけど、冬のキリッとした空気を前に、息が少し上がる。

鼻先が冷たく感じ、赤くなってきた。

「…はっ、はっ。見えた、丘だ。」

誰も来ていないんだろう。丘には降り積もった雪が空との境界線を感じさせないほど真っ白に、真っ直ぐ広がっていた。

「はぁ、着いた。久しぶりだなぁここ、いつ見ても綺麗だよな。」

村でも見て帰ろうか。そんなことを考えながら先の方まで歩いていく。





「ーーーーーーえ?」

目を見張った。
なんで?どうして?よく分からなかった。
村が、燃えている。

「…なっ、なん」


ドオォォォォォン!!!!!

突然、爆撃の音が鳴り響き、間髪入れず爆風がフレイを襲う。状況が理解出来ぬまま、フレイはその衝撃を真正面で受けてしまった。

「うわぁぁぁっ!」

ビリビリビリッと空気が揺れるような感覚がし、体が宙に浮いたような感覚がした。

「っうあ゛、っうう゛」

幸い雪の上に着地したフレイはゴロゴロと転がる。

「はぁっ、はぁっ、はっ…」

肺が、痛い。強く打ったかも。やばい、視界が、ぐるぐるする。

痛い、痛いよ、助けて、誰か!
父さん!母さん!死んじゃってたらどうしよう…

「…お゛ぇ」

気持ち悪くなった僕はそのまま吐いて、気絶してしまった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

鬼神と恐れられる呪われた銀狼当主の元へ生贄として送られた僕、前世知識と癒やしの力で旦那様と郷を救ったら、めちゃくちゃ過保護に溺愛されています

水凪しおん
BL
東の山々に抱かれた獣人たちの国、彩峰の郷。最強と謳われる銀狼一族の若き当主・涯狼(ガイロウ)は、古き呪いにより発情の度に理性を失う宿命を背負い、「鬼神」と恐れられ孤独の中に生きていた。 一方、都で没落した家の息子・陽向(ヒナタ)は、借金の形として涯狼の元へ「花嫁」として差し出される。死を覚悟して郷を訪れた陽向を待っていたのは、噂とはかけ離れた、不器用で優しい一匹の狼だった。 前世の知識と、植物の力を引き出す不思議な才能を持つ陽向。彼が作る温かな料理と癒やしの香りは、涯狼の頑なな心を少しずつ溶かしていく。しかし、二人の穏やかな日々は、古き慣習に囚われた者たちの思惑によって引き裂かれようとしていた。 これは、孤独な狼と心優しき花嫁が、運命を乗り越え、愛の力で奇跡を起こす、温かくも切ない和風ファンタジー・ラブストーリー。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

病み墜ちした騎士を救う方法

無月陸兎
BL
目が覚めたら、友人が作ったゲームの“ハズレ神子”になっていた。 死亡フラグを回避しようと動くも、思うようにいかず、最終的には原作ルートから離脱。 死んだことにして田舎でのんびりスローライフを送っていた俺のもとに、ある噂が届く。 どうやら、かつてのバディだった騎士の様子が、どうもおかしいとか……? ※欠損表現有。本編が始まるのは実質中盤頃です

【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件

白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。 最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。 いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう

水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」 辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。 ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。 「お前のその特異な力を、帝国のために使え」 強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。 しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。 運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。 偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!

処理中です...