ある雪の降る日に

喜市

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2話

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「…」

あーあ。嫌なとこまで思い出しちゃったな。

あれから2年経ったけど、僕の傷はまだ癒えていない。

あの日、僕は気絶した後ネピアに来た援軍に救助された。
その時のことはあまり覚えて無いけど、助けてくれた人は優しい人だった。



『おいっ!!!大丈夫かっ?!!クソッ…、救助者発見!意識無しだっ!!』

遠くの方で、ぼんやりとだが叫ぶ声が聞こえる。
もう冷たいとも感じなくなった雪の上でその声にぼうっと耳を傾けていた。

(な、に…呼ばれ、てる?)

薄らと目を開ける。
意識が冴えてきたのだろうか。ガンガンと激しい頭痛がフレイを襲った。

「…っは!、ぐっ」

体が動かない僕は、痛みに目をぎゅっときつく閉じる。上手く動かない僕の手は宙を切り、雪の上に落ちた。


と、思っていた。

「ーーっ、意識、戻ったんだな!今安全なところに連れて行くぞ!」

宙を切った僕の手をキャッチしたのは、さっきの人みたいだ。
相変わらず倒れたままの僕を手際よくなにかの布に包み、抱え上げた。

フワッと、自分の身体が 浮く感覚がして咄嗟に何かを掴む

袖だったのかよく分からなかったけど、その人は少し笑うと、グッと深く持つように抱きかかえてくれた。

「…ふはっ、ごめんごめん。大丈夫、絶対落としたりはしないから。」

僕が安心したように手を離すと、その人はまるで『よく頑張ったね』なんて言うかのように頭を撫でてくれた。

その人のその仕草と、安心する匂いに僕はまた眠りに落ちた。




その人は、今でも僕の支えになっている。
今でさえ、声は忘れてしまったけれど。ぼやっとした輪郭やあの時感じた安心感はまだ僕の中に残ってる。


あの後僕は1番近くの街に運ばれた。あの村にいた重症者や…亡くなってしまった村の人もこちらに運ばれてくるみたいだ。
僕は宿屋に連れていかれ、そこで待機となり、医療班の人に診てもらう生活が続いた。

僕は幸い凍傷と爆風で少し耳に傷が残っただけだった。

ただ、運ばれてきた中に父さんも母さんもいなかったみたいだ。
役場の人に聞いても、分からない、どうすることもできないって、


「はぁ…。こればっかりはどうしても、慣れないなぁ。」

体育座りの僕は自分の膝に顔埋める。涙が出てきそうで、グッと目を膝に押しやる。


あの後僕は役場の人から、隣国の反乱分子がネピアに奇襲を仕掛け、今両国間で緊張が高まっている。戦争が起こるかもしれない。と聞いた。


ゾッとした。僕たちの村はその標的にされたのだ。



しばらくして僕は、生き残った村の子達とその街の孤児院に引き取られ、17歳になるまでそこで過ごした。


「でも、楽しいこともあったなぁ。孤児院で過ごした2年だって、無駄じゃない。」

友達も仲良くしてくれたし。シスター達も優しく迎え入れてくれた。僕が魔法学園に通いたいと言った時はみんな本当に応援してくれていた。

「…はぁ、初めからこんなに落ち込んでちゃ、駄目だよね。よし!」

少し、仲間に勇気を貰えたような気がした。
隣の人を起こさないように、軽く自分の頬を叩き自分を鼓舞し、傍に置いていた荷物を背負った。



ガヤガヤと遠くから人の声が聞こえてくる。 
そろそろ、エルディア王国に着くみたいだ。
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