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26話
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「実は…美味しいクッキー、お土産で貰ったんです!なのでその、」
お土産を貰ったのは事実だ。この前孤児院から近況を聞く手紙と共に送られてきたのだ。
先輩と食べようと思ったが、如何せん先輩はダンジョンへ王令で出張中だった。
僕の部屋にも来ませんか?
その一言が喉奥に突っかかり、中々言えなかった。
前回、先輩がお前の部屋にも行くなんて言っていたのを鵜呑みにして、意を決したが。
自室に誘うのは、少しはしたなく見えるだろうか?
いつもなら調子良く誘っているであろう僕は、そんな葛藤に頭を悩ませる。
最近、どうも調子が狂っているようで。僕らしくない僕が居るような気もしていた。
「なんだ?一緒に食べようってお誘いかー?」
うじうじとした僕に助け舟を出すかのように、先輩はそう言ってくれた。
ハッと見上げれば、存外近くにあった先輩の顔に思わず時計の針が止まるような、周りの音が消えるくらいシヴァン先輩に目を奪われてしまった。
絡む視線に気がつけば、息苦しいくらいに鳴る心臓が僕を現実に引き戻す。
「…そうです。なので、少しだけ僕の部屋でお茶していきませんか?」
「へーぇ、ドアから凝ってるな。相当思い入れ強いんだろ。」
「…そうなんですかね?でも、僕の実家に近しい感じがします。完全に同じって訳じゃないですけどね!」
シヴァン先輩を部屋の前まで案内し、もう既に僕の手に馴染んだドアノブに手をかける。
カチャン、と子気味のいい音と共に木製の扉が開く。
「じゃあシヴァン先輩、どうぞ中に入ってください!」
「ん、ありがと。」
微笑みを零しながら、先輩は中に入っていった。
僕も続き、暖炉前のテーブルに案内する。
布を張ったソファに座ったシヴァン先輩は辺りを眺めほっと息をついていた。
「…凄いな、ログハウスか。良く似てるな。」
「似てる?」
先輩は確か、エルディア出身のような話しぶりだったから豪雪地帯のないここではあまり見ないと思っていたけど。
まぁ、でもシヴァン先輩は色んな国に行ってそうだから分かんないなぁ。
「あぁ、1度見た事があってな。その街の家と雰囲気が似ていて。こういう家も楽しいだろうな。」
棚に置いてあった、ハルラスがオススメしていた紅茶を取り出し、お湯の張ったティーポットに茶葉を入れた。
クッキー缶と一緒に先輩の元へ持っていく。
「先輩、色んなところ行ってるんですね。良いなぁ、僕も色んなところを旅行するのがちょっと夢です。」
コト、と先輩の前にカップを置き僕も向かいの席に座ろうとする。
「あれ、フレイそっち?てっきり俺の隣に座るかと思ってたのに。」
おいで。そう言って手をちょいちょいと手招きする先輩。
お言葉に甘えて(?)即隣に移動した。
クッキー缶を早速開ければ、色んな形や味のクッキーが、2,3枚ずつ入っていた。センスの良さに思わず感嘆を漏らす。
「ふはっ、こういうの好きなのか?甘いものとか、可愛いのとかさ。」
1つ貰うぞ。そう言って端にあるスノーボールを手に取り口に運んだ。
僕も一緒にジャムが中心に入ったクッキーを口に運ぶ。やっぱり想像したとおり、いやそれ以上に美味しく感じる。
「はい、お菓子とか凄い好きです!でも僕、1人より誰かとこうやって一緒に食べるのが好きで。なので今日はシヴァン先輩を誘えて良かったです。」
カモミールの香りがする紅茶は僕の心を落ち着かせていたのか。さっきよりも先輩とちゃんと喋れている気がした。
「そうか。じゃあ、またどこかに行ってきたら買ってくるから、俺と一緒に食べないか?まぁ、一緒に行くのも全然…」
最後の方は正直くぐもっていてあまり聞こえなかったけど。
先輩は今度お土産をくれるらしい!
「本当ですか!じゃあ、また紅茶用意して待ってますね!」
僕も少し調子よく、その答えに返す。
パチパチと、時折薪の水分が抜ける音と共に2人の笑い会う声が混じり合う。
エルディアの急な雨は止み、虹が東の空に掛っていた。時間はゆっくりと進んでいき、西日をキラキラと水溜まりが反射している。
部屋の中にいる2人には、しんしんと降る雪が窓から見えるだけだった。
お土産を貰ったのは事実だ。この前孤児院から近況を聞く手紙と共に送られてきたのだ。
先輩と食べようと思ったが、如何せん先輩はダンジョンへ王令で出張中だった。
僕の部屋にも来ませんか?
その一言が喉奥に突っかかり、中々言えなかった。
前回、先輩がお前の部屋にも行くなんて言っていたのを鵜呑みにして、意を決したが。
自室に誘うのは、少しはしたなく見えるだろうか?
いつもなら調子良く誘っているであろう僕は、そんな葛藤に頭を悩ませる。
最近、どうも調子が狂っているようで。僕らしくない僕が居るような気もしていた。
「なんだ?一緒に食べようってお誘いかー?」
うじうじとした僕に助け舟を出すかのように、先輩はそう言ってくれた。
ハッと見上げれば、存外近くにあった先輩の顔に思わず時計の針が止まるような、周りの音が消えるくらいシヴァン先輩に目を奪われてしまった。
絡む視線に気がつけば、息苦しいくらいに鳴る心臓が僕を現実に引き戻す。
「…そうです。なので、少しだけ僕の部屋でお茶していきませんか?」
「へーぇ、ドアから凝ってるな。相当思い入れ強いんだろ。」
「…そうなんですかね?でも、僕の実家に近しい感じがします。完全に同じって訳じゃないですけどね!」
シヴァン先輩を部屋の前まで案内し、もう既に僕の手に馴染んだドアノブに手をかける。
カチャン、と子気味のいい音と共に木製の扉が開く。
「じゃあシヴァン先輩、どうぞ中に入ってください!」
「ん、ありがと。」
微笑みを零しながら、先輩は中に入っていった。
僕も続き、暖炉前のテーブルに案内する。
布を張ったソファに座ったシヴァン先輩は辺りを眺めほっと息をついていた。
「…凄いな、ログハウスか。良く似てるな。」
「似てる?」
先輩は確か、エルディア出身のような話しぶりだったから豪雪地帯のないここではあまり見ないと思っていたけど。
まぁ、でもシヴァン先輩は色んな国に行ってそうだから分かんないなぁ。
「あぁ、1度見た事があってな。その街の家と雰囲気が似ていて。こういう家も楽しいだろうな。」
棚に置いてあった、ハルラスがオススメしていた紅茶を取り出し、お湯の張ったティーポットに茶葉を入れた。
クッキー缶と一緒に先輩の元へ持っていく。
「先輩、色んなところ行ってるんですね。良いなぁ、僕も色んなところを旅行するのがちょっと夢です。」
コト、と先輩の前にカップを置き僕も向かいの席に座ろうとする。
「あれ、フレイそっち?てっきり俺の隣に座るかと思ってたのに。」
おいで。そう言って手をちょいちょいと手招きする先輩。
お言葉に甘えて(?)即隣に移動した。
クッキー缶を早速開ければ、色んな形や味のクッキーが、2,3枚ずつ入っていた。センスの良さに思わず感嘆を漏らす。
「ふはっ、こういうの好きなのか?甘いものとか、可愛いのとかさ。」
1つ貰うぞ。そう言って端にあるスノーボールを手に取り口に運んだ。
僕も一緒にジャムが中心に入ったクッキーを口に運ぶ。やっぱり想像したとおり、いやそれ以上に美味しく感じる。
「はい、お菓子とか凄い好きです!でも僕、1人より誰かとこうやって一緒に食べるのが好きで。なので今日はシヴァン先輩を誘えて良かったです。」
カモミールの香りがする紅茶は僕の心を落ち着かせていたのか。さっきよりも先輩とちゃんと喋れている気がした。
「そうか。じゃあ、またどこかに行ってきたら買ってくるから、俺と一緒に食べないか?まぁ、一緒に行くのも全然…」
最後の方は正直くぐもっていてあまり聞こえなかったけど。
先輩は今度お土産をくれるらしい!
「本当ですか!じゃあ、また紅茶用意して待ってますね!」
僕も少し調子よく、その答えに返す。
パチパチと、時折薪の水分が抜ける音と共に2人の笑い会う声が混じり合う。
エルディアの急な雨は止み、虹が東の空に掛っていた。時間はゆっくりと進んでいき、西日をキラキラと水溜まりが反射している。
部屋の中にいる2人には、しんしんと降る雪が窓から見えるだけだった。
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