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31話
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着替え…よし、歯ブラシ…よし!
指差し確認で一つ一つ荷物を確認していく。必須の持ち物も入れれば準備は万端だ。
旅行の持ち物準備は初めてで、意外と要らないものまで入れちゃうんだよなぁ。
トランクに泊まりの荷物を入れ、肩からかけたバッグにはコイン袋と学生証を入れた。
制服を着ずに、今日はハルラスと買いに行ったシャツに袖を通す。
1度姿見でチェックした。ケープを胸元で結び、少し気恥ずかしくなってきたハーフパンツの裾を引っ張る。
跳ねた後ろ髪を手ぐしで撫でながら荷物を手に持った。
内心緊張もあったが、それよりも楽しみな気持ちでいっぱいだ。
玄関で靴紐きつく結び、ドアノブに手を掛けた。
カチャンッ
砂岩で造られた壁で囲まれた廊下は朝の空気で冷んやりとしている。
僕は弾む気持ちでスキップをしながらその廊下を抜けていった。
僕は魔法陣を踏んで下階に降り、ロビーへ向かう。
ガヤガヤ…
今日はいつにも無いほどロビーには人がごった返していた。
この人だかりは待ち合わせだろうか?人々の合間を縫って外に出る。
玄関から1歩外に出てみれば、ふんわりと暖かい空気を包んだ風が肌をくすぐるように吹いている。
今朝はシヴァン先輩と待ち合わせをしている。
場所は寮前のベンチだ。
遠目から見えたそこにまだ先輩はいなかった。
取り敢えず、そのベンチに座って先輩を待つことにする。
今日の旅行はどこに行くんだろうか?
予め必要な物は教えられるが、行先までは伝えられていない。これは全学年共通らしい。
「ただ心配なのは…」
僕には一つだけ不安の種があった。
俯いた僕の目線の先には足元にあるトランクに向いている。
今日詰めた荷物で必須になっているものにコートが入っている。
靴も今日はクラシックブーツを履いてきた。
多分だけど、今日は雪の降る地方はたまた寒い地方に行くんだと思う。
そんな考えが頭をよぎり、先日起こしてしまったブラックアウトの件を思い出した。
あの日は随分とシヴァン先輩に迷惑をかけてしまった。次の日にお礼はしたけれど、もしこの前みたいになってしまったら…。
これが僕の最大の悩みだった。
入学からもう既に3ヶ月、随分と溶け込んだこの街に故郷へのトラウマを思い出さずに済んでいたが…1度起こってしまった以上再発しないという訳では無い。
こういう不安な時、以前ならあの雪山で僕を助けてくれた名の知れぬあの人を思い浮かべるのだが…最近はどうしてもシヴァン先輩が心の支えになっているように感じる。
これは成長なのだろうか、何となくあの人に失礼な気もしたが、あの安心感は酷似していた。
シヴァン先輩と一緒にいる時、ふと透き通った池の底のような清々しさと、陽が入るような暖かさを感じる時がある。
思い出すように目線をあげれば、今もまた緩く流れる透き通った流水のような感覚が僕を包んでいる。
そう、こんな風に…
ん?いや、先輩から感じるオーラだよねこれ。
ガバッと後ろを振り向けば、予想通りシヴァン先輩が…なんだか変な体制でもう後ろまで来ていた。
「っうお!…なんだ気づいちゃったかー。おはようフレイ。」
先輩は抜き足でそっと近づき、僕を驚かせようとしていたみたいだ。
僕は先輩と会った事により、さっきの悩みは頭の片隅、奥の奥へと追いやられていった。
「おはようございます!…えへへ、僕もうシヴァン先輩の事気配で分かるようになっちゃいましたよ。」
ベンチの前側までまわり、座った先輩にそう話しかける。
「気配?俺あんまりバレた事無いんだけどな。まぁでも、俺もフレイの気配分かるぞ。」
雪の結晶って感じだなー。そう言ってのほほんと笑う先輩に、つられて僕も笑顔になる。
初めて知ったな、僕にも気配ってあるんだな。
多分魔法と関係のあるであろうそれになんだか少し嬉しくなった。
ウキウキとした気持ちでいれば、先輩は口を開く。
「…今日の服、良いな。フレイっぽい。」
ふと、僕の方を見て先輩は言った。
まじまじと僕を見ながらそう言うシヴァン先輩に、思わず心の中でガッツポーズを決める。
「シヴァン先輩もかっこいいですよ!」
一見普通のシャツとズボンでも、先輩のような長身では十分よく映るみたいだ。
2人でそんな話をしていれば、先輩のミサンガがまた淡く光出した。綺麗だな…そう思いつつその先輩の腕にある一瞬の光を眺めていた。
「そろそろだな、広場に行こう。多分次は氷寮の番だから、飛行魔獣が来ていると思うぞ。」
飛行魔獣、それはいわば遠い距離を短時間で移動するための乗り物だ。魔法陣よりも安価で扱い易いのだ。
「良いですね、 僕も1回だけ乗ったことがありますよ。高くて早くて…楽しかったです!」
そう言えば、先輩はクスッと笑って立ち上がった。僕もそれに合わせて立ち上がる。
まだまだ雑談を続けながら、陽の光で浅く光を返す石畳を僕たちは歩いていった。
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着替え…よし、歯ブラシ…よし!
指差し確認で一つ一つ荷物を確認していく。必須の持ち物も入れれば準備は万端だ。
旅行の持ち物準備は初めてで、意外と要らないものまで入れちゃうんだよなぁ。
トランクに泊まりの荷物を入れ、肩からかけたバッグにはコイン袋と学生証を入れた。
制服を着ずに、今日はハルラスと買いに行ったシャツに袖を通す。
1度姿見でチェックした。ケープを胸元で結び、少し気恥ずかしくなってきたハーフパンツの裾を引っ張る。
跳ねた後ろ髪を手ぐしで撫でながら荷物を手に持った。
内心緊張もあったが、それよりも楽しみな気持ちでいっぱいだ。
玄関で靴紐きつく結び、ドアノブに手を掛けた。
カチャンッ
砂岩で造られた壁で囲まれた廊下は朝の空気で冷んやりとしている。
僕は弾む気持ちでスキップをしながらその廊下を抜けていった。
僕は魔法陣を踏んで下階に降り、ロビーへ向かう。
ガヤガヤ…
今日はいつにも無いほどロビーには人がごった返していた。
この人だかりは待ち合わせだろうか?人々の合間を縫って外に出る。
玄関から1歩外に出てみれば、ふんわりと暖かい空気を包んだ風が肌をくすぐるように吹いている。
今朝はシヴァン先輩と待ち合わせをしている。
場所は寮前のベンチだ。
遠目から見えたそこにまだ先輩はいなかった。
取り敢えず、そのベンチに座って先輩を待つことにする。
今日の旅行はどこに行くんだろうか?
予め必要な物は教えられるが、行先までは伝えられていない。これは全学年共通らしい。
「ただ心配なのは…」
僕には一つだけ不安の種があった。
俯いた僕の目線の先には足元にあるトランクに向いている。
今日詰めた荷物で必須になっているものにコートが入っている。
靴も今日はクラシックブーツを履いてきた。
多分だけど、今日は雪の降る地方はたまた寒い地方に行くんだと思う。
そんな考えが頭をよぎり、先日起こしてしまったブラックアウトの件を思い出した。
あの日は随分とシヴァン先輩に迷惑をかけてしまった。次の日にお礼はしたけれど、もしこの前みたいになってしまったら…。
これが僕の最大の悩みだった。
入学からもう既に3ヶ月、随分と溶け込んだこの街に故郷へのトラウマを思い出さずに済んでいたが…1度起こってしまった以上再発しないという訳では無い。
こういう不安な時、以前ならあの雪山で僕を助けてくれた名の知れぬあの人を思い浮かべるのだが…最近はどうしてもシヴァン先輩が心の支えになっているように感じる。
これは成長なのだろうか、何となくあの人に失礼な気もしたが、あの安心感は酷似していた。
シヴァン先輩と一緒にいる時、ふと透き通った池の底のような清々しさと、陽が入るような暖かさを感じる時がある。
思い出すように目線をあげれば、今もまた緩く流れる透き通った流水のような感覚が僕を包んでいる。
そう、こんな風に…
ん?いや、先輩から感じるオーラだよねこれ。
ガバッと後ろを振り向けば、予想通りシヴァン先輩が…なんだか変な体制でもう後ろまで来ていた。
「っうお!…なんだ気づいちゃったかー。おはようフレイ。」
先輩は抜き足でそっと近づき、僕を驚かせようとしていたみたいだ。
僕は先輩と会った事により、さっきの悩みは頭の片隅、奥の奥へと追いやられていった。
「おはようございます!…えへへ、僕もうシヴァン先輩の事気配で分かるようになっちゃいましたよ。」
ベンチの前側までまわり、座った先輩にそう話しかける。
「気配?俺あんまりバレた事無いんだけどな。まぁでも、俺もフレイの気配分かるぞ。」
雪の結晶って感じだなー。そう言ってのほほんと笑う先輩に、つられて僕も笑顔になる。
初めて知ったな、僕にも気配ってあるんだな。
多分魔法と関係のあるであろうそれになんだか少し嬉しくなった。
ウキウキとした気持ちでいれば、先輩は口を開く。
「…今日の服、良いな。フレイっぽい。」
ふと、僕の方を見て先輩は言った。
まじまじと僕を見ながらそう言うシヴァン先輩に、思わず心の中でガッツポーズを決める。
「シヴァン先輩もかっこいいですよ!」
一見普通のシャツとズボンでも、先輩のような長身では十分よく映るみたいだ。
2人でそんな話をしていれば、先輩のミサンガがまた淡く光出した。綺麗だな…そう思いつつその先輩の腕にある一瞬の光を眺めていた。
「そろそろだな、広場に行こう。多分次は氷寮の番だから、飛行魔獣が来ていると思うぞ。」
飛行魔獣、それはいわば遠い距離を短時間で移動するための乗り物だ。魔法陣よりも安価で扱い易いのだ。
「良いですね、 僕も1回だけ乗ったことがありますよ。高くて早くて…楽しかったです!」
そう言えば、先輩はクスッと笑って立ち上がった。僕もそれに合わせて立ち上がる。
まだまだ雑談を続けながら、陽の光で浅く光を返す石畳を僕たちは歩いていった。
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