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1巻
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実行委員は、生徒会メンバー五人と、実行委員の主要メンバー五人の合わせて十人を幹部メンバーとし、僕たちのような各クラスから選ばれた生徒たちを一般メンバーと呼んでいる。一般メンバーは、学園祭の設営や装飾などがメインの仕事だそうだ。
「それじゃあ、まずは生徒会長から話をしてもらおうかな」
委員長はそう言って、大講堂の前方に座る生徒に向かって、壇上に上がってくるように促した。
「あっ、グレン君」
「グレン様……っ!」
ホールに現れたのは、生徒会長であるグレンだった。隣に座るリゼも声を上げる。
リゼはグレンのほうをじいっと見つめて、ルビーのような瞳を輝かせていた。他の生徒たちも、マイクを通して聞こえる彼の美しい声に聞き惚れているような様子が見られた。
グレンの挨拶は非常に簡潔なもので、彼はさっと挨拶を終えると、すぐに壇上から降りた。
委員長が再びマイクを手に持って話し始める。
「あともう一人、みなさんに紹介したい人がいます。先日『魔法演舞』のオーディションで見事主役に選ばれた、一年生のシリル君です」
委員長は眼鏡をくいと上げて、声高々に言った。
――シリル!?
僕は不意に聞こえてきた名前に、大きく目を見開いた。
周囲を見回すと、「うそ、一年生?」「誰?」と、どよめきが起こっていた。魔法演舞の話題に、みなが前のめりになっている。
魔法演舞――それはこの魔法学園祭の一番の目玉となるイベントだった。前世で言うところのミュージカルのようなもので、選りすぐられた生徒たちがそれぞれの役に合わせて演技・歌・ダンスを披露し、さらに魔法による演出で壮大な世界観を作り上げるステージだ。
このイベントは学園祭の最終日に学園内の劇場で行われ、毎年数多くの観客が訪れる。特等席として王家や公爵家のための席も用意されているほどだ。この舞台に立つことそのものが、大きなステータスになる。
当然この魔法演舞の舞台に立ちたい生徒は多く、毎年出演者は役柄ごとに全学年合同のオーディションで選ばれていた。その中で主役の座を勝ち取ったのが一年生となれば、みんなが驚くのも無理はなかった。
名前を呼ばれたシリルは壇上に上がり、委員長の隣に並んだ。
「初めまして。一年A組のシリルと申します。主役を精一杯努めますので、みなさまどうかよろしくお願いします」
シリルが澄みきった声で挨拶をすると、先ほどまで騒いでいた生徒たちが静まり返った。
彼はクリーム色の絹糸のような髪の毛に、長い睫毛に縁どられた大きな目をしていた。白くきめ細やかな肌に、小柄ながらスタイルがよく、すらりとした身体。真夏の快晴をそのまま映し出したような水色の瞳は、吸い込まれそうなほど綺麗だった。
そう、檀上にいたのは、推しカプの受け――「シリル」だった。
――美しすぎる!
小説でいかに彼が可憐であるかは表現されていたが、どんなに綺麗な文章を並べ立てたとしても、実物の彼の美しさを表現することはできないだろう。
僕が涙腺を緩ませながら見惚れていると、横から舌打ちが聞こえてきた。ぎょっとして隣を見ると、リゼが鬼のような形相でシリルを睨みつけていた。
「名字がないって、平民ってこと? なんであんな顔だけの一年生が選ばれて、この私が落ちるのよ」
彼女は苛立ちを抑えきれない様子で唇を噛んだ。もしかして彼女も主役のオーディションを受けていたのだろうか。
唖然としながらリゼの様子を見ていると、彼女はパッとこちらを向いた。
「なによ」
「ひっ。いや、なにも……」
僕は何事もなかったふりをして、視線を外す。
「主役に選ばれたからって、あんな平民がグレン様や生徒会のメンバーの方々にすり寄らなければいいけど」
リゼはそれからも、苛々とした口調で呟いていた。
僕が周囲を見回すと、シリルに向ける視線はリゼのように険しいものが多かった。冷ややかな空気がその場に流れている。
リーベルタース魔法学園は、王国トップクラスの難関試験に合格することができれば、身分に関係なく入学できる学園だ。しかし実際には大多数の生徒が貴族であり、ほとんどが貴族同士の繋がりを求めて門を叩く。平民というだけで、この学園では白い目で見られるということは珍しくなかった。
シリルの挨拶が終わってから、委員長の進行のもと今後のスケジュールの説明や一般メンバーの役割分担などが行われ、初回の集会が終わったのは開始から二時間後のことだった。
終了が告げられてから、僕はぐっと伸びをして、軽く両手で頬を叩く。
――僕、アルト・リドリーの出番はこれからだ。
実行委員の集会が終わってから、グレンら生徒会メンバーは生徒会室へ、シリルは魔法演舞の練習をしに劇場へと足を運ぶ。グレンは生徒会の仕事が終わったあと劇場に行くのだが、そこでステージに一人残り、歌の練習をしているシリルと出会うのだ。グレンはシリルが歌い終わった瞬間、「綺麗だな」と心からの賛辞を贈り、二人は初めて会話をする。
しかしそこに、グレンのあとをつけていたアルト・リドリーが登場する。彼は虚ろな目をしてシリルに近づき、シリルを見るやいなや、「平民のくせにグレン君に近づくな」と嫉妬に震える声で罵倒をするのだ。突然悪意を向けられて、全身を硬直させてしまうシリル。しかしグレンは、まるで気高い騎士が主人を守るようにシリルの前に出て彼を庇う――
僕はこのシーンが大好きだった。
身分に関係なくシリルという人間に向き合おうとするグレンと、そんなグレンに心を動かされるシリルという、大切な出会いの場面だったからだ。
グレンは集会が終わったあと、生徒会のメンバーとともに共通棟にある生徒会室に入っていった。僕はグレンが出てくるまでの間、廊下の角に隠れて待っているしかない。
手持ち無沙汰になった僕は、その場で片膝をつき、これからの流れをノートに書き出し始めた。これから大事な演技が控えていると思うと心拍数が上がる。なんとか落ち着かせるためにも、ノートに書いたアルトのセリフをぶつぶつと呟いていた。
この前の告白だって上手くできたのだから、今回だってやり遂げられるだろう。そう自分を鼓舞しながら待機すること、約一時間。
キィ、と重厚な扉が開く音がした。僕は急いでノートとペンを制服の裏ポケットに入れて、ちらりと様子を見る。
グレンが生徒会室から出てきた。彼に続いて出てくる人間はいない。他の生徒会メンバーは生徒会室に残って事務仕事をしているのだろう。
小説の展開の通り、彼はこれから下見へ向かうはずだ。僕は彼に気づかれないように後をつけていった。
グレンは共通棟を出て、劇場のほうへ向かっていく。劇場は教室棟や共通棟などの校舎が立ち並ぶ場所のさらに奥、裏門側に設置されている。しばらく歩いたところで、グレンが石造りの劇場の中に入っていった。
それから細長い通路が続き、三つに道がわかれていた。おそらく真ん中の通路がステージに、左右の通路が観客席に続いているのだろう。グレンは迷うことなくまっすぐ進み、奥の扉を押して中に入る。
グレンが入っていったのを確認してから、扉に近づいてほんの少しだけ開けると、透き通った歌声が耳に届いた。
劇場の中を覗くと、ステージの中央に立つシリルと、その姿を見るグレンの後ろ姿が見えた。シリルはグレンが見ていることに気づく様子はなく、瞼を閉じて歌い続けている。きっと劇中での主人公の心情を表現しているのだろう、情感たっぷりに歌い上げる姿は、こちらの心に直接語りかけるような優しさが感じられた。
シリルは一曲歌い終えると、ゆっくりと目を開けた。パチパチと一人分の拍手の音が鳴り響く。もちろん、僕ではない。拍手をしていたのはグレンだった。
「綺麗だな」
グレンはそう言って、シリルに近づいていく。シンプルな一言だったが、僕が普段グレンから向けられている冷たい声色とは違い、包み込むように穏やかな声色をしていた。きっとシリルの歌声に心を動かされたのだろう。シリルはようやくグレンが見ていたことに気がついたのか、びくりと肩を震わせた。
「生徒会長のグレン先輩、ですか!? どうしてここに?」
「劇場を事前にチェックしておきたくてな。他のメンバーはいないのか?」
「はい。みんなは既に帰っていて」
二人は向かい合って言葉を交わす。彼らの横顔は夕日に照らされ、一枚の絵画のような美しさを纏っていた。
僕はグレンとシリルが、ついに会話をしたことに感極まっていた。
――眼福だ。これが僕の推しカプ……!
並んでいると、二人の身長差が映える。美形同士は、なんて目の保養になるんだろう!
「一年生で主役の座を勝ち取ったと聞いて、どんな人物なのかと思っていたら、納得の実力で安心したよ」
「ありがとうございます……! 僕、数年前に学園祭で見た魔法演舞が忘れられなくて。この舞台に立つのが夢だったんです。それで猛勉強して、この学園に入学したくらいで」
「そうなのか? 夢を叶えるなんてすごいな。歌やダンスは元々習っていたのか?」
「いえ、習っていたわけではないんですけど、母が踊り子なので、幼いころから真似していたんです。僕がこの学園の舞台を見たのも、母が連れてきてくれたのがきっかけでした」
二人は見つめ合いながら、楽しそうに話を続けていた。
シリルの美しい歌声を実際に聞くことができたうえに、念願の推しカプのツーショットを見ることができた。僕の心拍数は一気に跳ね上がり、思わず声を上げてしまいそうになるのをぐっと堪えた。
アルト・リドリーに転生してよかった。
転生してから初めて、心からそう思うことができた。アルトを完璧に演じるんだと決意しなければ、こんなに尊い二人を間近で見ることは叶わなかっただろう。
「シリル。これからも魔法演舞の件で打ち合わせをすることがあるだろうから、よろしく頼む」
「は、はい。グレン先輩……!」
――あとは自分の仕事を果たすだけだ。
僕は二人の会話を聞きながら、ぐっと力を込めて扉を押した。
「グレン君?」
扉がギィ、と音を立て、僕が虚ろな声を発した瞬間に、グレンとシリルがぎょっと目を剥いた。
「アルト? お前、こんなところまでなにしに来たんだ」
困惑したグレンの言葉は耳に入っていないかのように、僕はよろよろとシリルのもとに歩み寄る。
「えっと、あなたは?」
シリルは長い睫毛を瞬かせて、困惑した表情を見せながら問いかけた。
僕は小説のセリフを思い出しながら、ゆっくりと口を開く。
「ねえ。なんでグレン君と二人っきりで話してるの?」
僕はシリルの質問を無視して、名乗らないまま冷たく言い放った。さすがに僕からの敵意を感じ取ったのだろうか、シリルの眉がぴくりと動く。僕はグレンのほうをちらりと見てから、再度セリフを発した。
「いくら主役になれたからって、グレン君と、気軽に話したりしないほうがいいよ?」
セリフは散々練習した成果もあり、間違えずに発することができた。けれどいかんせん緊張とシリルの可愛らしさにドキドキしてしまって、目が泳ぎ、声がつっかえてしまった。
シリルはただ黙って、僕をじっと見つめている。
「魔法演舞のことだって……み、みんな言ってるからさあ。平民のくせに、場違いだって」
あらためて言葉にすると、本当にひどいことを言っている自覚はあった。だけどここで口を閉ざすわけにはいかない。僕は罪悪感で震えそうになる声をなんとか抑え、畳みかけるように話を続ける。
「だからさあ、これ以上言われたくないなら、立場をわきまえて――」
「おい、やめろ」
そのとき、グレンの声がぴしゃりと響いた。グレンはシリルに近づくと、彼を守るように正面に立ち、僕を睨みつけた。
「平民だからなんなんだ? 貴族だから偉いのか? いいかげんにしろ」
「グレン君。だって」
「平民だろうと関係ない、シリルは実力で選ばれたんだ」
その瞬間、シリルは大きく目を見開いた。
「それに、俺が話す相手は俺自身が決める」
グレンの力強い言葉が、ステージ上に響いた。シリルは「グレン先輩」と呟き、自分を守ってくれたグレンに視線を向ける。僕はグレンに直接対峙して言われているというのに、どこか映画でも見ているような気持ちで立ち尽くしていた。
呆然としてしまったが、はっと我に返り「グレン君、そんなあ」と、さも傷ついた……という演技をした。僕は全く涙が出ていない目元をごしごしと擦り、足早にその場を去っていく。
ステージの扉を開ける瞬間、後ろから「グレン先輩、庇ってくれてありがとうございます。でも」というシリルの声が聞こえた。
バタン、と扉が閉まる。
僕は扉に背中を預けると、はあと息を吐いた。
――なんとか上手くいった。
「平民だろうと関係ない」と言いきったグレンに、シリルはきっと好感を抱いたことだろう。シリルにひどいことを言ってしまったという罪悪感は拭えないが、彼らの出会いを演出するという役目は果たすことができた。僕はほっと胸を撫でおろして、劇場を後にした。
***
『今年の魔法演舞の主役は、一年A組クラスのシリル君に決定!』
翌日。掲示板に掲載された校内新聞が、生徒たちの話題をさらっていった。昼休み、中央噴水の広場にある掲示板には、多くの生徒たちが詰めかけていた。僕も後ろからその集団に近づき、なんとか紙面を覗き込む。
「平民が主役なんだって」
「しかも一年生って」
周囲の生徒たちは、思ったことを隠す気もなく話していた。
細かい字で書かれた紙面をじっくり読んでいくと、平民が主役になるのは初めてであることや、生徒たちの様々な意見が紹介されていた。中には平民が主役になることでこの学園の品位が落とされるというような声もあり、お世辞にもポジティブなことが書かれているとは言い難かった。貴族の反感を煽るような内容ばかりで、思わず顔を顰める。
僕はため息を零して掲示板から遠ざかる。すると、見知ったクリーム色の髪の生徒を見つけてしまった。
「シリル……」
シリルは掲示板に人が群がっているのを、遠くからじっと見つめていた。遠目からなので彼の表情はよく見えないが、人目を気にせず掲示板の前で主役がどうのこうの、と話をしている生徒たちの声は聞こえているだろう。一人ぽつんと立っている彼の姿は寂しげで、胸が張り裂けそうになった。
シリルはしばらく生徒たちを眺めたあと、俯きながらその場を去っていった。
シリルの背中を見ながら、僕は適当に空いていたベンチに座った。購買で買ってきたパンを食べて昼食を済ませようとしたが、口に運ぶ前にぴたりと手が止まる。
「やっぱり、僕って最低なこと言ってたよね?」
頭の中で、昨日の劇場での出来事を反芻する。僕はアルト・リドリーとしてシリルにひどい言葉を浴びせたわけだが、そのときの自分の言動が忘れられなかった。いくら推しカプをくっつけるためだとはいえ、あからさまに悪意のある言葉を投げつけて謝りもしないなんて、人としてどうなんだ……。本当は今すぐにでも土下座して謝りたいくらいだ。
しかし、僕は首を横に振って、余計な考えを振り払った。
シリルは強い主人公だ。彼は周囲からの侮辱的な発言や妨害に負けずに、持ち前の明るさで人々から愛されるようになり、学園祭で主役として成功をおさめる。シリルは自分を対等に扱ってくれたグレンに惹かれていき、グレンもまた彼のひたむきな姿勢に好意を抱くというのが大まかな展開だ。
僕は二人が結ばれるまで、ただ役に徹すればいい。そう考え直して、無理やりパンを口に放り込んだ。
それから教室に戻ると、グレンは既に席に着いていた。
「あ、グレン君。次の授業って、魔法薬学の初回だったよね」
僕はグレンに話しかけるも、彼は僕を一瞥して手元の参考書に視線を戻した。
「薬学って自分じゃなかなかできないから、授業受けられるのを楽しみにしてたんだ。まだ参考書が届いてないみたいで、よかったら一緒に見せてもらえないかなー、なんて……」
そこはかとなく、全身から話しかけるなオーラが漂っている。
「ね、ねえ。無視しないでよお……」
グレンは黙ったままだ。
僕がシリルに蔑むような言葉を投げかけてから、グレンは僕の挨拶や問いかけに一切反応しなくなった。前までは面倒くさそうに相槌くらいは打ってくれていたのだが、もはやそれもない。
まあ、それもそうか。
ここまで冷たい態度を取られるのは単純に悲しいが、これも当て馬としての役割を果たせている証拠なのだと自分に言い聞かせた。
主役の発表から数日が経っても、シリルのことを悪く言う人間は後を絶たなかった。教室や廊下でも、シリルの話題がちらほらと聞こえてくる。
小説の中では、『嫉妬ややっかみを一身に受けたシリルは、陰口だけではなく、悪意のある人間たちから幾度となく怪我を負わされそうになった。シリルとともにいた友人が彼を庇った結果、友人は怪我をしてしばらく学園に来られなくなってしまったこともある』と表現されていた。
転生してリアルな時間を生きるようになった僕としては、小説で書かれている以上に、シリルが周囲から厳しいまなざしを向けられていることを感じていた。
そんなある日の放課後、僕は一人で教室棟の三階の廊下を歩いていた。グレンは最近生徒会室にこもりっきりで、付きまとうことができない。いよいよやることがなくなり、今日は寮にさっさと帰ってしまおうと考えていた。
広々とした廊下には、生徒はほとんどいなかった。僕がそのまま中央階段に向かって歩みを進めていたとき、聞き覚えのある声が耳に届いた。
「やっぱりみなさんもそう思いますわよねー?」
「はい! リゼ様のおっしゃる通りです!」
「このままいけば、あの平民を主役から引きずり下ろすことができるのでは!?」
僕がぱっと顔を上げると、数メートル先に三人組の女子がいた。真ん中にいるのは、長く艶のある赤髪とすらっとしたスタイルの生徒――リゼだった。
リゼは背中を窓に預けるようにして立って腕を組み、他の二人は彼女を囲んで媚びるような口調で話をしていた。
「この前もね、私が新聞部に掛け合って、シリルが主役であることを反対するような記事を載せてもらったの。だって王家や公爵家の方々もご覧になられるのに、主役が平民じゃがっかりされるでしょう?」
「さすがリゼ様です! あの記事、校内でも話題になっていましたよね」
僕は目を見開いて、その場でぴたりと立ち止まった。彼女たちは僕が見ていることに気づく様子はなく、話を続けていた。
「それにしてもリゼ様。今日はどうされたんですか? こんな時間まで、廊下で待っていようなんて」
「ああ。それはね、ちょうどこのタイミングで、シリルが下を通りかかるからよ」
リゼは得意げに言って身体の向きを変え、大きな窓をゆっくりと開けた。暖かい風が吹き込み、リゼの長い髪を揺らす。彼女は唇の端を持ち上げた。
「どういうことですか?」
「ふふ。一年生は時間割が少し違っていて、今日は三年生よりも遅くまで授業があったの。だからそろそろ、シリルが魔法演舞の練習に向かうためにこのあたりを通るはずよ」
リゼの周りを取り囲んでいた二人が、窓の下を覗き込んだ。僕も反射的に近くの窓から校舎の外を見る。下には教室棟から劇場へ向かう道があり、石畳の歩道に沿うように大きな樹木が植えられている。
ちょうどそのとき、二人の男子がこちらへ向かってくるのが見えた。オレンジ色の髪の毛で背の高い男子と、小柄でスタイルのいい男子が和やかに会話をしている。よく見ると、小柄な生徒はシリルだった。
一体なにをするつもりなんだ。僕は嫌な予感がして、リゼを横目で見る。
彼女はなにやら窓のほうに手を翳して、ぶつぶつと呪文を唱えていた。すると彼女の手のひらが、淡いグリーンの光に包まれていく。
「リゼ様? 一体なにを?」
「さすがに怪我でもすれば、本人が辞退を申し出るでしょう?」
リゼはそう言いながら、手を翳し続ける。すると窓の外から、ミシミシ、という音が聞こえてきた。
シリルの歩く道の先には、ちょうど頭上を覆うほど大きい樹木があった。その幹が、彼女の魔法によって倒されそうになっていた。なにも知らないシリルと隣の友人は、どんどんこちらに近づいてくる。
まさか、怪我をさせるつもりなのか……!?
「や、やめてください!」
気づけば、僕は叫んでいた。一瞬こちらを見て怯んだリゼに近づいて、彼女の手を掴む。
「なっ、なにするのよ!?」
手のひらに纏っていたグリーンの光は、僕が腕を掴んだことによって消えていった。
僕はその瞬間、やってしまったと思った。アルト・リドリーはこんなことをしないだろう。けれどさすがに、目の前で人が怪我を負わされそうになるのを、見て見ぬふりはできなかった。
僕はゆっくりと口を開いた。
「今、わざと木を倒そうとしてましたよね。下に、人がいるのに」
僕がたどたどしいながらも糾弾すると、リゼは乱暴に手を振り払って舌打ちをした。取り巻きの女子たちも「なんなのコイツ」と呟いて、訝しげな表情を浮かべている。
「アルト・リドリーさんじゃない。下に人がいたなんて知らなかったわ。私ったら苛々していて、ついなんとなく魔法を使ってしまったの」
リゼは白を切った。
「本当ですか? さっきは、シリルを狙ってたような発言をしてましたけど」
「あらぁ、聞いてたの? というかあなた、一体どうしたのよ。あなただって、シリルが最近グレン様や生徒会の方々と話す機会が多くなったこと、知ってるでしょう?」
「え……」
「あんな平民がグレン様と話をしているのを見るの、嫌じゃないの? 怪我でもさせないと、あの子調子に乗ってどんどん取り入ろうとするわよ」
リゼの言葉に息が詰まる。小説の中であれだけ応援していた主人公を愚弄するような言葉に、ふつふつと怒りが湧いてきた。
「……っ、僕は、わざわざ怪我をさせてまで、辞めさせたいとは思いません。それにあなたのは、ただの嫉妬じゃないですか?」
「はあ?」
「シリルが主役になったのは、公平なオーディションで決まったことで、彼にはちゃんと実力があります。それにシリルが幹部メンバーといるのは、打ち合わせがあるんだから、仕方ないんじゃないかと……」
リゼは図星を突かれたのか、顔を真っ赤にして僕を睨みつけた。
「な、なんなのよあんた!」
リゼは激昂して声を荒らげた。僕は身体をびくりと震わせ、平手打ちでも飛んでくるのではないかと身構えた。
しかし、数秒経ってもなにも起きない。僕が恐る恐る目を開けると、リゼが嘲るように笑った。
「あんた、本当に伯爵家の長男なの? 怯えきって馬鹿みたい」
リゼはあまりに弱々しい僕の様子に呆れ果てたのか、白けたような目を向けた。
「まあ、今日のところはいいわ。でも、この私に楯突いたこと、よく覚えておきなさい」
リゼは吐き捨てるように言って踵を返した。取り巻きの二人は彼女を追いかけていく。
僕は彼女たちの後ろ姿を見送って、深いため息を吐いた。
――怖かった……!
今思い返すと、なぜ自分が彼女に言い返せたのかわからないくらいだった。あんなに睨まれることも、罵倒されることも初めてだった。まだ手が震えている。
ぞわぞわとした気持ちが落ち着いたころに、窓の外を覗き込んだ。当然、シリルたちはいない。なんとか危険を回避できたのだと思い、ほっと胸を撫でおろす。
「あの、先輩」
そのとき、美しく瑞々しい声が響いた。ぱっと振り向くと、そこにはシリルが立っていた。
「し、シリル!?」
思ってもみなかった人物の登場に、声が裏返ってしまった。
さっきまで下にいたよね? どうして三階に……?
ぽかんとする僕をよそにシリルは微笑んだ。
「先輩、さっき僕を助けてくれましたよね」
「えっ!? な、なに言って」
「下にいたとき、『やめてください』っていうアルト先輩の声が聞こえたんです。三階の窓を見たら、リゼ先輩が魔法を使おうとしているのが見えました。それで気になって、急いで上がってきたんです」
シリルは落ち着いた様子で淡々と話をしていた。僕は小説にない出来事に動揺して、完全に固まってしまう。
「それじゃあ、まずは生徒会長から話をしてもらおうかな」
委員長はそう言って、大講堂の前方に座る生徒に向かって、壇上に上がってくるように促した。
「あっ、グレン君」
「グレン様……っ!」
ホールに現れたのは、生徒会長であるグレンだった。隣に座るリゼも声を上げる。
リゼはグレンのほうをじいっと見つめて、ルビーのような瞳を輝かせていた。他の生徒たちも、マイクを通して聞こえる彼の美しい声に聞き惚れているような様子が見られた。
グレンの挨拶は非常に簡潔なもので、彼はさっと挨拶を終えると、すぐに壇上から降りた。
委員長が再びマイクを手に持って話し始める。
「あともう一人、みなさんに紹介したい人がいます。先日『魔法演舞』のオーディションで見事主役に選ばれた、一年生のシリル君です」
委員長は眼鏡をくいと上げて、声高々に言った。
――シリル!?
僕は不意に聞こえてきた名前に、大きく目を見開いた。
周囲を見回すと、「うそ、一年生?」「誰?」と、どよめきが起こっていた。魔法演舞の話題に、みなが前のめりになっている。
魔法演舞――それはこの魔法学園祭の一番の目玉となるイベントだった。前世で言うところのミュージカルのようなもので、選りすぐられた生徒たちがそれぞれの役に合わせて演技・歌・ダンスを披露し、さらに魔法による演出で壮大な世界観を作り上げるステージだ。
このイベントは学園祭の最終日に学園内の劇場で行われ、毎年数多くの観客が訪れる。特等席として王家や公爵家のための席も用意されているほどだ。この舞台に立つことそのものが、大きなステータスになる。
当然この魔法演舞の舞台に立ちたい生徒は多く、毎年出演者は役柄ごとに全学年合同のオーディションで選ばれていた。その中で主役の座を勝ち取ったのが一年生となれば、みんなが驚くのも無理はなかった。
名前を呼ばれたシリルは壇上に上がり、委員長の隣に並んだ。
「初めまして。一年A組のシリルと申します。主役を精一杯努めますので、みなさまどうかよろしくお願いします」
シリルが澄みきった声で挨拶をすると、先ほどまで騒いでいた生徒たちが静まり返った。
彼はクリーム色の絹糸のような髪の毛に、長い睫毛に縁どられた大きな目をしていた。白くきめ細やかな肌に、小柄ながらスタイルがよく、すらりとした身体。真夏の快晴をそのまま映し出したような水色の瞳は、吸い込まれそうなほど綺麗だった。
そう、檀上にいたのは、推しカプの受け――「シリル」だった。
――美しすぎる!
小説でいかに彼が可憐であるかは表現されていたが、どんなに綺麗な文章を並べ立てたとしても、実物の彼の美しさを表現することはできないだろう。
僕が涙腺を緩ませながら見惚れていると、横から舌打ちが聞こえてきた。ぎょっとして隣を見ると、リゼが鬼のような形相でシリルを睨みつけていた。
「名字がないって、平民ってこと? なんであんな顔だけの一年生が選ばれて、この私が落ちるのよ」
彼女は苛立ちを抑えきれない様子で唇を噛んだ。もしかして彼女も主役のオーディションを受けていたのだろうか。
唖然としながらリゼの様子を見ていると、彼女はパッとこちらを向いた。
「なによ」
「ひっ。いや、なにも……」
僕は何事もなかったふりをして、視線を外す。
「主役に選ばれたからって、あんな平民がグレン様や生徒会のメンバーの方々にすり寄らなければいいけど」
リゼはそれからも、苛々とした口調で呟いていた。
僕が周囲を見回すと、シリルに向ける視線はリゼのように険しいものが多かった。冷ややかな空気がその場に流れている。
リーベルタース魔法学園は、王国トップクラスの難関試験に合格することができれば、身分に関係なく入学できる学園だ。しかし実際には大多数の生徒が貴族であり、ほとんどが貴族同士の繋がりを求めて門を叩く。平民というだけで、この学園では白い目で見られるということは珍しくなかった。
シリルの挨拶が終わってから、委員長の進行のもと今後のスケジュールの説明や一般メンバーの役割分担などが行われ、初回の集会が終わったのは開始から二時間後のことだった。
終了が告げられてから、僕はぐっと伸びをして、軽く両手で頬を叩く。
――僕、アルト・リドリーの出番はこれからだ。
実行委員の集会が終わってから、グレンら生徒会メンバーは生徒会室へ、シリルは魔法演舞の練習をしに劇場へと足を運ぶ。グレンは生徒会の仕事が終わったあと劇場に行くのだが、そこでステージに一人残り、歌の練習をしているシリルと出会うのだ。グレンはシリルが歌い終わった瞬間、「綺麗だな」と心からの賛辞を贈り、二人は初めて会話をする。
しかしそこに、グレンのあとをつけていたアルト・リドリーが登場する。彼は虚ろな目をしてシリルに近づき、シリルを見るやいなや、「平民のくせにグレン君に近づくな」と嫉妬に震える声で罵倒をするのだ。突然悪意を向けられて、全身を硬直させてしまうシリル。しかしグレンは、まるで気高い騎士が主人を守るようにシリルの前に出て彼を庇う――
僕はこのシーンが大好きだった。
身分に関係なくシリルという人間に向き合おうとするグレンと、そんなグレンに心を動かされるシリルという、大切な出会いの場面だったからだ。
グレンは集会が終わったあと、生徒会のメンバーとともに共通棟にある生徒会室に入っていった。僕はグレンが出てくるまでの間、廊下の角に隠れて待っているしかない。
手持ち無沙汰になった僕は、その場で片膝をつき、これからの流れをノートに書き出し始めた。これから大事な演技が控えていると思うと心拍数が上がる。なんとか落ち着かせるためにも、ノートに書いたアルトのセリフをぶつぶつと呟いていた。
この前の告白だって上手くできたのだから、今回だってやり遂げられるだろう。そう自分を鼓舞しながら待機すること、約一時間。
キィ、と重厚な扉が開く音がした。僕は急いでノートとペンを制服の裏ポケットに入れて、ちらりと様子を見る。
グレンが生徒会室から出てきた。彼に続いて出てくる人間はいない。他の生徒会メンバーは生徒会室に残って事務仕事をしているのだろう。
小説の展開の通り、彼はこれから下見へ向かうはずだ。僕は彼に気づかれないように後をつけていった。
グレンは共通棟を出て、劇場のほうへ向かっていく。劇場は教室棟や共通棟などの校舎が立ち並ぶ場所のさらに奥、裏門側に設置されている。しばらく歩いたところで、グレンが石造りの劇場の中に入っていった。
それから細長い通路が続き、三つに道がわかれていた。おそらく真ん中の通路がステージに、左右の通路が観客席に続いているのだろう。グレンは迷うことなくまっすぐ進み、奥の扉を押して中に入る。
グレンが入っていったのを確認してから、扉に近づいてほんの少しだけ開けると、透き通った歌声が耳に届いた。
劇場の中を覗くと、ステージの中央に立つシリルと、その姿を見るグレンの後ろ姿が見えた。シリルはグレンが見ていることに気づく様子はなく、瞼を閉じて歌い続けている。きっと劇中での主人公の心情を表現しているのだろう、情感たっぷりに歌い上げる姿は、こちらの心に直接語りかけるような優しさが感じられた。
シリルは一曲歌い終えると、ゆっくりと目を開けた。パチパチと一人分の拍手の音が鳴り響く。もちろん、僕ではない。拍手をしていたのはグレンだった。
「綺麗だな」
グレンはそう言って、シリルに近づいていく。シンプルな一言だったが、僕が普段グレンから向けられている冷たい声色とは違い、包み込むように穏やかな声色をしていた。きっとシリルの歌声に心を動かされたのだろう。シリルはようやくグレンが見ていたことに気がついたのか、びくりと肩を震わせた。
「生徒会長のグレン先輩、ですか!? どうしてここに?」
「劇場を事前にチェックしておきたくてな。他のメンバーはいないのか?」
「はい。みんなは既に帰っていて」
二人は向かい合って言葉を交わす。彼らの横顔は夕日に照らされ、一枚の絵画のような美しさを纏っていた。
僕はグレンとシリルが、ついに会話をしたことに感極まっていた。
――眼福だ。これが僕の推しカプ……!
並んでいると、二人の身長差が映える。美形同士は、なんて目の保養になるんだろう!
「一年生で主役の座を勝ち取ったと聞いて、どんな人物なのかと思っていたら、納得の実力で安心したよ」
「ありがとうございます……! 僕、数年前に学園祭で見た魔法演舞が忘れられなくて。この舞台に立つのが夢だったんです。それで猛勉強して、この学園に入学したくらいで」
「そうなのか? 夢を叶えるなんてすごいな。歌やダンスは元々習っていたのか?」
「いえ、習っていたわけではないんですけど、母が踊り子なので、幼いころから真似していたんです。僕がこの学園の舞台を見たのも、母が連れてきてくれたのがきっかけでした」
二人は見つめ合いながら、楽しそうに話を続けていた。
シリルの美しい歌声を実際に聞くことができたうえに、念願の推しカプのツーショットを見ることができた。僕の心拍数は一気に跳ね上がり、思わず声を上げてしまいそうになるのをぐっと堪えた。
アルト・リドリーに転生してよかった。
転生してから初めて、心からそう思うことができた。アルトを完璧に演じるんだと決意しなければ、こんなに尊い二人を間近で見ることは叶わなかっただろう。
「シリル。これからも魔法演舞の件で打ち合わせをすることがあるだろうから、よろしく頼む」
「は、はい。グレン先輩……!」
――あとは自分の仕事を果たすだけだ。
僕は二人の会話を聞きながら、ぐっと力を込めて扉を押した。
「グレン君?」
扉がギィ、と音を立て、僕が虚ろな声を発した瞬間に、グレンとシリルがぎょっと目を剥いた。
「アルト? お前、こんなところまでなにしに来たんだ」
困惑したグレンの言葉は耳に入っていないかのように、僕はよろよろとシリルのもとに歩み寄る。
「えっと、あなたは?」
シリルは長い睫毛を瞬かせて、困惑した表情を見せながら問いかけた。
僕は小説のセリフを思い出しながら、ゆっくりと口を開く。
「ねえ。なんでグレン君と二人っきりで話してるの?」
僕はシリルの質問を無視して、名乗らないまま冷たく言い放った。さすがに僕からの敵意を感じ取ったのだろうか、シリルの眉がぴくりと動く。僕はグレンのほうをちらりと見てから、再度セリフを発した。
「いくら主役になれたからって、グレン君と、気軽に話したりしないほうがいいよ?」
セリフは散々練習した成果もあり、間違えずに発することができた。けれどいかんせん緊張とシリルの可愛らしさにドキドキしてしまって、目が泳ぎ、声がつっかえてしまった。
シリルはただ黙って、僕をじっと見つめている。
「魔法演舞のことだって……み、みんな言ってるからさあ。平民のくせに、場違いだって」
あらためて言葉にすると、本当にひどいことを言っている自覚はあった。だけどここで口を閉ざすわけにはいかない。僕は罪悪感で震えそうになる声をなんとか抑え、畳みかけるように話を続ける。
「だからさあ、これ以上言われたくないなら、立場をわきまえて――」
「おい、やめろ」
そのとき、グレンの声がぴしゃりと響いた。グレンはシリルに近づくと、彼を守るように正面に立ち、僕を睨みつけた。
「平民だからなんなんだ? 貴族だから偉いのか? いいかげんにしろ」
「グレン君。だって」
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その瞬間、シリルは大きく目を見開いた。
「それに、俺が話す相手は俺自身が決める」
グレンの力強い言葉が、ステージ上に響いた。シリルは「グレン先輩」と呟き、自分を守ってくれたグレンに視線を向ける。僕はグレンに直接対峙して言われているというのに、どこか映画でも見ているような気持ちで立ち尽くしていた。
呆然としてしまったが、はっと我に返り「グレン君、そんなあ」と、さも傷ついた……という演技をした。僕は全く涙が出ていない目元をごしごしと擦り、足早にその場を去っていく。
ステージの扉を開ける瞬間、後ろから「グレン先輩、庇ってくれてありがとうございます。でも」というシリルの声が聞こえた。
バタン、と扉が閉まる。
僕は扉に背中を預けると、はあと息を吐いた。
――なんとか上手くいった。
「平民だろうと関係ない」と言いきったグレンに、シリルはきっと好感を抱いたことだろう。シリルにひどいことを言ってしまったという罪悪感は拭えないが、彼らの出会いを演出するという役目は果たすことができた。僕はほっと胸を撫でおろして、劇場を後にした。
***
『今年の魔法演舞の主役は、一年A組クラスのシリル君に決定!』
翌日。掲示板に掲載された校内新聞が、生徒たちの話題をさらっていった。昼休み、中央噴水の広場にある掲示板には、多くの生徒たちが詰めかけていた。僕も後ろからその集団に近づき、なんとか紙面を覗き込む。
「平民が主役なんだって」
「しかも一年生って」
周囲の生徒たちは、思ったことを隠す気もなく話していた。
細かい字で書かれた紙面をじっくり読んでいくと、平民が主役になるのは初めてであることや、生徒たちの様々な意見が紹介されていた。中には平民が主役になることでこの学園の品位が落とされるというような声もあり、お世辞にもポジティブなことが書かれているとは言い難かった。貴族の反感を煽るような内容ばかりで、思わず顔を顰める。
僕はため息を零して掲示板から遠ざかる。すると、見知ったクリーム色の髪の生徒を見つけてしまった。
「シリル……」
シリルは掲示板に人が群がっているのを、遠くからじっと見つめていた。遠目からなので彼の表情はよく見えないが、人目を気にせず掲示板の前で主役がどうのこうの、と話をしている生徒たちの声は聞こえているだろう。一人ぽつんと立っている彼の姿は寂しげで、胸が張り裂けそうになった。
シリルはしばらく生徒たちを眺めたあと、俯きながらその場を去っていった。
シリルの背中を見ながら、僕は適当に空いていたベンチに座った。購買で買ってきたパンを食べて昼食を済ませようとしたが、口に運ぶ前にぴたりと手が止まる。
「やっぱり、僕って最低なこと言ってたよね?」
頭の中で、昨日の劇場での出来事を反芻する。僕はアルト・リドリーとしてシリルにひどい言葉を浴びせたわけだが、そのときの自分の言動が忘れられなかった。いくら推しカプをくっつけるためだとはいえ、あからさまに悪意のある言葉を投げつけて謝りもしないなんて、人としてどうなんだ……。本当は今すぐにでも土下座して謝りたいくらいだ。
しかし、僕は首を横に振って、余計な考えを振り払った。
シリルは強い主人公だ。彼は周囲からの侮辱的な発言や妨害に負けずに、持ち前の明るさで人々から愛されるようになり、学園祭で主役として成功をおさめる。シリルは自分を対等に扱ってくれたグレンに惹かれていき、グレンもまた彼のひたむきな姿勢に好意を抱くというのが大まかな展開だ。
僕は二人が結ばれるまで、ただ役に徹すればいい。そう考え直して、無理やりパンを口に放り込んだ。
それから教室に戻ると、グレンは既に席に着いていた。
「あ、グレン君。次の授業って、魔法薬学の初回だったよね」
僕はグレンに話しかけるも、彼は僕を一瞥して手元の参考書に視線を戻した。
「薬学って自分じゃなかなかできないから、授業受けられるのを楽しみにしてたんだ。まだ参考書が届いてないみたいで、よかったら一緒に見せてもらえないかなー、なんて……」
そこはかとなく、全身から話しかけるなオーラが漂っている。
「ね、ねえ。無視しないでよお……」
グレンは黙ったままだ。
僕がシリルに蔑むような言葉を投げかけてから、グレンは僕の挨拶や問いかけに一切反応しなくなった。前までは面倒くさそうに相槌くらいは打ってくれていたのだが、もはやそれもない。
まあ、それもそうか。
ここまで冷たい態度を取られるのは単純に悲しいが、これも当て馬としての役割を果たせている証拠なのだと自分に言い聞かせた。
主役の発表から数日が経っても、シリルのことを悪く言う人間は後を絶たなかった。教室や廊下でも、シリルの話題がちらほらと聞こえてくる。
小説の中では、『嫉妬ややっかみを一身に受けたシリルは、陰口だけではなく、悪意のある人間たちから幾度となく怪我を負わされそうになった。シリルとともにいた友人が彼を庇った結果、友人は怪我をしてしばらく学園に来られなくなってしまったこともある』と表現されていた。
転生してリアルな時間を生きるようになった僕としては、小説で書かれている以上に、シリルが周囲から厳しいまなざしを向けられていることを感じていた。
そんなある日の放課後、僕は一人で教室棟の三階の廊下を歩いていた。グレンは最近生徒会室にこもりっきりで、付きまとうことができない。いよいよやることがなくなり、今日は寮にさっさと帰ってしまおうと考えていた。
広々とした廊下には、生徒はほとんどいなかった。僕がそのまま中央階段に向かって歩みを進めていたとき、聞き覚えのある声が耳に届いた。
「やっぱりみなさんもそう思いますわよねー?」
「はい! リゼ様のおっしゃる通りです!」
「このままいけば、あの平民を主役から引きずり下ろすことができるのでは!?」
僕がぱっと顔を上げると、数メートル先に三人組の女子がいた。真ん中にいるのは、長く艶のある赤髪とすらっとしたスタイルの生徒――リゼだった。
リゼは背中を窓に預けるようにして立って腕を組み、他の二人は彼女を囲んで媚びるような口調で話をしていた。
「この前もね、私が新聞部に掛け合って、シリルが主役であることを反対するような記事を載せてもらったの。だって王家や公爵家の方々もご覧になられるのに、主役が平民じゃがっかりされるでしょう?」
「さすがリゼ様です! あの記事、校内でも話題になっていましたよね」
僕は目を見開いて、その場でぴたりと立ち止まった。彼女たちは僕が見ていることに気づく様子はなく、話を続けていた。
「それにしてもリゼ様。今日はどうされたんですか? こんな時間まで、廊下で待っていようなんて」
「ああ。それはね、ちょうどこのタイミングで、シリルが下を通りかかるからよ」
リゼは得意げに言って身体の向きを変え、大きな窓をゆっくりと開けた。暖かい風が吹き込み、リゼの長い髪を揺らす。彼女は唇の端を持ち上げた。
「どういうことですか?」
「ふふ。一年生は時間割が少し違っていて、今日は三年生よりも遅くまで授業があったの。だからそろそろ、シリルが魔法演舞の練習に向かうためにこのあたりを通るはずよ」
リゼの周りを取り囲んでいた二人が、窓の下を覗き込んだ。僕も反射的に近くの窓から校舎の外を見る。下には教室棟から劇場へ向かう道があり、石畳の歩道に沿うように大きな樹木が植えられている。
ちょうどそのとき、二人の男子がこちらへ向かってくるのが見えた。オレンジ色の髪の毛で背の高い男子と、小柄でスタイルのいい男子が和やかに会話をしている。よく見ると、小柄な生徒はシリルだった。
一体なにをするつもりなんだ。僕は嫌な予感がして、リゼを横目で見る。
彼女はなにやら窓のほうに手を翳して、ぶつぶつと呪文を唱えていた。すると彼女の手のひらが、淡いグリーンの光に包まれていく。
「リゼ様? 一体なにを?」
「さすがに怪我でもすれば、本人が辞退を申し出るでしょう?」
リゼはそう言いながら、手を翳し続ける。すると窓の外から、ミシミシ、という音が聞こえてきた。
シリルの歩く道の先には、ちょうど頭上を覆うほど大きい樹木があった。その幹が、彼女の魔法によって倒されそうになっていた。なにも知らないシリルと隣の友人は、どんどんこちらに近づいてくる。
まさか、怪我をさせるつもりなのか……!?
「や、やめてください!」
気づけば、僕は叫んでいた。一瞬こちらを見て怯んだリゼに近づいて、彼女の手を掴む。
「なっ、なにするのよ!?」
手のひらに纏っていたグリーンの光は、僕が腕を掴んだことによって消えていった。
僕はその瞬間、やってしまったと思った。アルト・リドリーはこんなことをしないだろう。けれどさすがに、目の前で人が怪我を負わされそうになるのを、見て見ぬふりはできなかった。
僕はゆっくりと口を開いた。
「今、わざと木を倒そうとしてましたよね。下に、人がいるのに」
僕がたどたどしいながらも糾弾すると、リゼは乱暴に手を振り払って舌打ちをした。取り巻きの女子たちも「なんなのコイツ」と呟いて、訝しげな表情を浮かべている。
「アルト・リドリーさんじゃない。下に人がいたなんて知らなかったわ。私ったら苛々していて、ついなんとなく魔法を使ってしまったの」
リゼは白を切った。
「本当ですか? さっきは、シリルを狙ってたような発言をしてましたけど」
「あらぁ、聞いてたの? というかあなた、一体どうしたのよ。あなただって、シリルが最近グレン様や生徒会の方々と話す機会が多くなったこと、知ってるでしょう?」
「え……」
「あんな平民がグレン様と話をしているのを見るの、嫌じゃないの? 怪我でもさせないと、あの子調子に乗ってどんどん取り入ろうとするわよ」
リゼの言葉に息が詰まる。小説の中であれだけ応援していた主人公を愚弄するような言葉に、ふつふつと怒りが湧いてきた。
「……っ、僕は、わざわざ怪我をさせてまで、辞めさせたいとは思いません。それにあなたのは、ただの嫉妬じゃないですか?」
「はあ?」
「シリルが主役になったのは、公平なオーディションで決まったことで、彼にはちゃんと実力があります。それにシリルが幹部メンバーといるのは、打ち合わせがあるんだから、仕方ないんじゃないかと……」
リゼは図星を突かれたのか、顔を真っ赤にして僕を睨みつけた。
「な、なんなのよあんた!」
リゼは激昂して声を荒らげた。僕は身体をびくりと震わせ、平手打ちでも飛んでくるのではないかと身構えた。
しかし、数秒経ってもなにも起きない。僕が恐る恐る目を開けると、リゼが嘲るように笑った。
「あんた、本当に伯爵家の長男なの? 怯えきって馬鹿みたい」
リゼはあまりに弱々しい僕の様子に呆れ果てたのか、白けたような目を向けた。
「まあ、今日のところはいいわ。でも、この私に楯突いたこと、よく覚えておきなさい」
リゼは吐き捨てるように言って踵を返した。取り巻きの二人は彼女を追いかけていく。
僕は彼女たちの後ろ姿を見送って、深いため息を吐いた。
――怖かった……!
今思い返すと、なぜ自分が彼女に言い返せたのかわからないくらいだった。あんなに睨まれることも、罵倒されることも初めてだった。まだ手が震えている。
ぞわぞわとした気持ちが落ち着いたころに、窓の外を覗き込んだ。当然、シリルたちはいない。なんとか危険を回避できたのだと思い、ほっと胸を撫でおろす。
「あの、先輩」
そのとき、美しく瑞々しい声が響いた。ぱっと振り向くと、そこにはシリルが立っていた。
「し、シリル!?」
思ってもみなかった人物の登場に、声が裏返ってしまった。
さっきまで下にいたよね? どうして三階に……?
ぽかんとする僕をよそにシリルは微笑んだ。
「先輩、さっき僕を助けてくれましたよね」
「えっ!? な、なに言って」
「下にいたとき、『やめてください』っていうアルト先輩の声が聞こえたんです。三階の窓を見たら、リゼ先輩が魔法を使おうとしているのが見えました。それで気になって、急いで上がってきたんです」
シリルは落ち着いた様子で淡々と話をしていた。僕は小説にない出来事に動揺して、完全に固まってしまう。
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