異界育ちの幻使い

yasunari311

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4話

沈む街に立つ者

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瓦礫を踏みしめ、アヤトは息を吐いた。

 幻で強化された拳。幾度となく振るわれ、いくつもの異形を打ち砕いてきたその手は、すでに血と肉片にまみれていた。

 ──が、まだ終わらない。

 

 ずるり、ずるり。
 ガシャン。ギチ、ギチギチ……。

 駅のホーム下から。崩れた改札の向こうから。
 そして、壊れかけた電車の車内から──

 異形たちは、“音”に惹かれて、また集まりつつあった。

「……っは、マジかよ……」

 ざっと見ただけで、五十体はくだらない。
 視線の端には、すでに数の暴力と呼べる“壁”ができつつある。

 影のように這い寄るもの。屋根から降ってくるもの。
 這い、ずれ、ねじれながら。
 まるで“地面ごと”動いているかのように、連中は街に満ちていく。

 

 幻装は、すでに全展開状態。

 肩・腕・脚──
 そして胴と兜までも覆う、淡く光を纏った“幻の鎧”。

 アヤトは幻の爪を使わない。ただ拳を握る。
 物理で、叩き潰す。それだけだ。

 

「──終わりまで、付き合ってやるよ」

 

 目の前に飛びかかってきた異形を、反射的に肘で迎撃。
 そのまま回転し、後ろから来た二体の首を同時に蹴り砕く。

 幻が脈動するたび、筋肉が焼けつくように悲鳴をあげた。

 

 ──疲労は確かにある。
 だが、倒れない。

 

 アヤトの眼差しは、むしろ冴えていた。
 幻装が割れかけても、構わない。
 殴り続ければ、終わる。それだけだ。

 

 前へ。

 さらに前へ──

 

 両腕を十字に広げ、突撃してくる異形の一群に身をさらす。

 幻で強化された体幹が、刃のように敵陣を裂いた。
 そのまま頭突きで一体を砕き、背負い投げで別の個体をアスファルトに埋め込む。

 

 叫びはあげない。ただ、静かに殺す。
 怒りはすでに言葉にならず、拳に変わっていた。

 

 駅のロータリーは、すでに“戦場”だった。
 死体の山。潰れた肉。砕けた骨。
 なのに、数は減らない。

「数で押すしか脳がねぇなら──俺は、それ以上を見せてやる」

 

 幻装が一瞬、明滅する。
 アヤトは呼吸を整えることすら忘れ、ただ前を睨んだ。

 

 そして──

 

 突っ込んでくる三体の異形を、
 右拳、左拳、回し蹴り。三連撃で粉砕。

 

 次に跳んできた四体を、
 肩から突っ込んで弾き、空中で肘打ちと膝蹴りを組み合わせ、地面に落とす。

 

 地響きのように、異形たちが吠える。
 空気が震えた。

 ビルの壁にびっしりと張りついた影が、一斉にアヤトへ向けて落ちてくる。

 まるで“雨”のようだった。

 

「──やれるもんなら、やってみな」

 

 幻装が限界に達しても。
 幻の重さに膝が震えても。
 アヤトは止まらない。

 ──ここで、止まるわけにはいかない。

 

 肉と骨と、幻の鎧。

 その全てを武器にして、アヤトは“終わらない地獄”に拳を叩き込む。

 

 異形の肉が破れ、骨が砕け、叫びが消える。

 だがその先には、まだ。

 

 まだ、来る──!

 

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