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5話
ひと息、夜の帳にて
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倒れた異形は数えきれなかった。
駅前ロータリーのあちこちに、崩れた肉塊が転がっている。
その中心に、アヤトはひとり立っていた。
静かに、深く、息を吐く。
「──父上との修行に比べりゃ……」
苦笑まじりに、ぽつりとこぼす。
「これしき、どうということもねぇな」
肩、腕、脚、胴、兜──全身にまとっていた幻装は健在。
今すぐ再戦できるほど、威圧を保ったままだった。
だが、周囲にもう異形の影はない。
すべてを捻じ伏せ、終わらせた。
空気に、ようやく静けさが戻る。
昼だった空は、いつの間にか夜に変わっていた。
駅の看板が、かろうじて街を照らしている。
アヤトはひとつ、首を回す。
骨が鳴る。
──肉体は無傷。
幻装によって補強された肉体は、すべての攻撃に耐え、反撃し、押し切った。
それでも、疲労はあった。
幻を展開し続けた反動は、体の奥にじんわりと積もる。
骨でも筋肉でもない、“気力”が削られるような疲れ。
「……ふぅ」
アヤトは幻装を解除した。
鎧のような幻が、光とともにほどけ、夜風に溶けていく。
とたんに、全身が重くなった。
──そして、膝をついた。
片膝がアスファルトに触れ、かすかに音を立てる。
ひどく静かな夜だった。
風に混じる、血と鉄の匂い。
空には月はなく、ビルの隙間から星がひとつだけ瞬いていた。
アヤトは、それを黙って見上げていた。
何も言わず、ただ静かに、そこにいた。
膝をついても、敗北ではない。
幻装を解いても、諦めたわけではない。
──意味を考えていたら、立ち止まる。
やるべきことをやった。それだけだ。
風が吹く。瓦礫が鳴る。
どこかで、まだ“生きている”街の音がした。
アヤトはゆっくりと立ち上がる。
疲労の中でも、その姿勢に迷いはなかった。
「……まだ、終わっちゃいねぇか」
誰に向けるでもなく、ひとりごちた。
その声を、誰も聞いていない。
ただ、街が黙って彼を見送っていた。
⸻
駅前ロータリーのあちこちに、崩れた肉塊が転がっている。
その中心に、アヤトはひとり立っていた。
静かに、深く、息を吐く。
「──父上との修行に比べりゃ……」
苦笑まじりに、ぽつりとこぼす。
「これしき、どうということもねぇな」
肩、腕、脚、胴、兜──全身にまとっていた幻装は健在。
今すぐ再戦できるほど、威圧を保ったままだった。
だが、周囲にもう異形の影はない。
すべてを捻じ伏せ、終わらせた。
空気に、ようやく静けさが戻る。
昼だった空は、いつの間にか夜に変わっていた。
駅の看板が、かろうじて街を照らしている。
アヤトはひとつ、首を回す。
骨が鳴る。
──肉体は無傷。
幻装によって補強された肉体は、すべての攻撃に耐え、反撃し、押し切った。
それでも、疲労はあった。
幻を展開し続けた反動は、体の奥にじんわりと積もる。
骨でも筋肉でもない、“気力”が削られるような疲れ。
「……ふぅ」
アヤトは幻装を解除した。
鎧のような幻が、光とともにほどけ、夜風に溶けていく。
とたんに、全身が重くなった。
──そして、膝をついた。
片膝がアスファルトに触れ、かすかに音を立てる。
ひどく静かな夜だった。
風に混じる、血と鉄の匂い。
空には月はなく、ビルの隙間から星がひとつだけ瞬いていた。
アヤトは、それを黙って見上げていた。
何も言わず、ただ静かに、そこにいた。
膝をついても、敗北ではない。
幻装を解いても、諦めたわけではない。
──意味を考えていたら、立ち止まる。
やるべきことをやった。それだけだ。
風が吹く。瓦礫が鳴る。
どこかで、まだ“生きている”街の音がした。
アヤトはゆっくりと立ち上がる。
疲労の中でも、その姿勢に迷いはなかった。
「……まだ、終わっちゃいねぇか」
誰に向けるでもなく、ひとりごちた。
その声を、誰も聞いていない。
ただ、街が黙って彼を見送っていた。
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