12 / 51
12話
蠢くものの罠
しおりを挟むそれは──遠くで破裂音のような何かが響いたのが、始まりだった。
空気が揺れた。乾いた風に混じって、ひどく不快な振動が鼓膜を叩く。耳ではなく、身体の奥に刺さるような異常な気配。
「……誘ってやがるな」
アヤトは地面を蹴った。爆音とともに路面がひび割れ、粉塵が舞う。幻をまとった身体は一気に加速し、音を引き裂きながら前方へ跳ぶ。
ひと跳びでビルを越え、軌道を描くことなく、地面へと落ちる──というより、撃ち抜く。地表が衝撃で砕け、アスファルトが爆ぜる。
続く破裂音。──今度は一つではない。複数の鼓動のような音が連続し、街全体が“呼吸している”かのように感じられた。
(こっちを誘ってる……隠れてる気配じゃねえ。あからさまに“見つけさせよう”としてやがる)
完全な罠だった。だがアヤトは止まらなかった。わずかでも生存者が囚われている可能性があるなら、見過ごすわけにはいかなかった。
音の中心へ近づくにつれ、街の様子が変わっていく。崩れた建物、割れた窓、色褪せた看板──そのすべてが朽ち果てていく中、中央部だけが不自然に“静か”だった。
異形が群れていた。
道路、建物の屋上、窓枠の影──数十、あるいはそれ以上。腐敗と硬質が入り混じった異形たちが、まるで静止した映像のように動かず、ただ“待っている”。
そして、その中心に──いた。
ひときわ異質な存在。
殻に覆われた胴体は滑らかに脈動し、そこから生える四肢は人間のようでありながら、関節が逆向きに折れ曲がっていた。掌の先には爪とも刃ともつかぬ突起。全身がまるで“兵器”のように設計されているかのようだった。
首にあたる部分はなく、胴から直接伸びた頭部の左右に、複眼のような眼がぬるりと動く。その眼が、アヤトを捉えた。
(……あれが核か)
異形に統率があるなど、本来あり得ない。だが、あの存在を中心に、異形たちはまるで兵士のように配置されていた。
その視線に、確かな“意志”があった。呼び寄せ、罠にかけ、迎え撃つ──そんな、明確な悪意。
同時に、周囲の異形たちがゆっくりと動き始める。軋むように身を起こし、咽喉の奥で異様な音を鳴らす。どこか──“喜んでいる”ようにも見えた。
「……わかりやすくて助かるぜ」
アヤトはひと息つき、姿勢を低く構えた。幻がその身体を包み直し、気配を鋭く絞り込む。
狙うはただひとつ。
この群れの“核”──あの異形の存在だけだ。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
チート魔力を持ったせいで世界を束ねる管理者に目を付けられたが、巻き込まれたくないので金稼ぎします
桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。
交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。
そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。
その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。
だが、それが不幸の始まりだった。
世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。
彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。
さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。
金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。
面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。
本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。
※小説家になろう・カクヨムでも更新中
※表紙:あニキさん
※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ
※月、水、金、更新予定!
蒼き樹海の案内人
蒼月よる
ファンタジー
辺境の森で育った少年ユーリには、不思議な目がある。魔素の流れが光の粒として見えるのだ。
蒼の樹海——人を喰らう巨大な森に足を踏み入れた彼は、遺跡屋の青年カイと出会い、冒険者として歩み始める。樹海の奥に眠る遺跡、港街の裏に潜む陰謀、灰に覆われた滅びの国、そして首都に隠された世界の秘密。
仲間と共に世界を巡るうちに、ユーリは気づいていく。この世界の「魔法」も「神」も、すべてが何かの残骸なのではないか——と。
冒険・バトル・素材経済・食文化を軸に、ファンタジーの裏に潜むSF的真実へと辿り着く、全4巻の冒険ファンタジー。
この作品は以下の箇所にAI(Claude Code)を利用しています。
・世界観・設定の管理補助
・プロット段階の壁打ち
・作者による執筆後の校正
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
壊獄の浄祓師
はといるか
ファンタジー
人の悪面から生まれ落ちた穢れしモノ「穢者」
それらに対抗する力、浄力を操り穢者を排除すべく戦う「浄祓師」。
普通の高校生活を送っていた坂宮幽斗はとある事件によって浄穢の戦いに巻き込まれてしまう。
守るべきものの為に幽斗は浄祓師として戦いに身を投じていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる