異界育ちの幻使い

yasunari311

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13話

落下する刃

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 アヤトは宙を跳んでいた。

 幻を纏った身体が空を裂き、地面を砕く勢いで飛び上がった直後──視界に広がった“群れ”の只中。その中心にいる、知性を帯びた異形の姿を、すでに見据えている。

 狙いは、定まっている。

 空中で身体を捻り、姿勢を沈める。両足に幻を凝縮し、宙に“幻の壁”を編む。見えざる足場を次々と生み出し、そのすべてを──蹴った。

 重力と、加速と、殺意。

 空を断ち、光を裂き、アヤトの影が一閃のように地表へ降り注ぐ。

 地上で、異形の複眼がわずかに揺れた。

 だが──もう遅い。

「……喰らえ」

 全速の一撃。幻を帯びた拳が、一直線に異形の頭部を撃ち抜いた。

 轟音。

 爆発にも似た衝撃が広がり、着弾点を中心に地面が大きく陥没する。無数の亀裂が四方に走り、土煙が視界を覆った。

 硬質な殻ごと粉砕された異形は、頭部が跡形もなく潰れ、胴体はひしゃげて仰向けに倒れていた。複眼は砕け、手足は痙攣すらしていない。完全なる“死”だった。

 アヤトは砕けたアスファルトの中心で、静かに息をつく。

 幻が肩口に淡く揺れ、揺らめく光が彼の姿を曖昧に包む。

「……終わり、か?」

 その刹那──周囲の異形たちが、動いた。

 呻くように咽喉を鳴らし、背を伸ばし、あらゆる方向からアヤトを“見る”。その視線に、怒りはない。恐怖もない。ただ──待っている。

 何かを、誰かを。

 指令を。

 アヤトは拳を下ろしながら、崩れた異形の残骸を一瞥する。

「……まだ、上がいるってか」

 肩を落とし、次の殺気に備えて体勢を低くする。

 倒れたのは、群れの核かと思われた存在。だが異形たちは止まらない。むしろ、その動きは整い始めていた。まるで新たな“核”が命令を引き継いだかのように。

(完全な統率……それも、複数の指揮系統?)

 静かな焦りが、アヤトの思考を冷やす。

 目の前の脅威は潰した。だが、戦いは──終わっていない。
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