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13話
落下する刃
しおりを挟むアヤトは宙を跳んでいた。
幻を纏った身体が空を裂き、地面を砕く勢いで飛び上がった直後──視界に広がった“群れ”の只中。その中心にいる、知性を帯びた異形の姿を、すでに見据えている。
狙いは、定まっている。
空中で身体を捻り、姿勢を沈める。両足に幻を凝縮し、宙に“幻の壁”を編む。見えざる足場を次々と生み出し、そのすべてを──蹴った。
重力と、加速と、殺意。
空を断ち、光を裂き、アヤトの影が一閃のように地表へ降り注ぐ。
地上で、異形の複眼がわずかに揺れた。
だが──もう遅い。
「……喰らえ」
全速の一撃。幻を帯びた拳が、一直線に異形の頭部を撃ち抜いた。
轟音。
爆発にも似た衝撃が広がり、着弾点を中心に地面が大きく陥没する。無数の亀裂が四方に走り、土煙が視界を覆った。
硬質な殻ごと粉砕された異形は、頭部が跡形もなく潰れ、胴体はひしゃげて仰向けに倒れていた。複眼は砕け、手足は痙攣すらしていない。完全なる“死”だった。
アヤトは砕けたアスファルトの中心で、静かに息をつく。
幻が肩口に淡く揺れ、揺らめく光が彼の姿を曖昧に包む。
「……終わり、か?」
その刹那──周囲の異形たちが、動いた。
呻くように咽喉を鳴らし、背を伸ばし、あらゆる方向からアヤトを“見る”。その視線に、怒りはない。恐怖もない。ただ──待っている。
何かを、誰かを。
指令を。
アヤトは拳を下ろしながら、崩れた異形の残骸を一瞥する。
「……まだ、上がいるってか」
肩を落とし、次の殺気に備えて体勢を低くする。
倒れたのは、群れの核かと思われた存在。だが異形たちは止まらない。むしろ、その動きは整い始めていた。まるで新たな“核”が命令を引き継いだかのように。
(完全な統率……それも、複数の指揮系統?)
静かな焦りが、アヤトの思考を冷やす。
目の前の脅威は潰した。だが、戦いは──終わっていない。
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