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14話
模倣する影
しおりを挟む──足音。
砕けた地面に粉塵が舞う中、異形たちの群れがうごめいていた。
咆哮もなく、ただ静かに、無数の目がアヤトを見据えている。その中央──まるで波が割れるように、異形たちが左右へと散った。
重く、乾いた足音が、ゆっくりと地を打つ。現れたのは──異形。しかし、それは他とまるで異なる存在だった。
黒と銀の外殻を纏い、全身は人型。異様なほど整った四肢。肩幅、重心、立ち姿……そのすべてが、アヤトの“幻装”に酷似していた。
異形たちはまるでこの個体に“道を譲る”かのように静まり、動きを止める。
アヤトはわずかに目を細めた。
「……気色悪い真似しやがって」
異形は反応するように、口らしき部位をぬるりと開いた。濁った声が漏れる。
「ツヨイ……オマエ……クエバ……モット……ツヨク……ナレル」
その言葉の端には、確かな“知性”と“欲望”が滲んでいた。
(……喋る、だと?)
アヤトは直感する。こいつは、ただの異形ではない。
自分を“模している”。幻装の形だけではない。構え、立ち振る舞い、その戦気──すべてがアヤトを真似ていた。
そして、この模倣体を中心に、異形の群れがまるで兵士のように整列している。
──群れの中枢は、こいつだ。
周囲の異形たちがざわめきを取り戻す。肉の擦れる音、甲殻の軋みが空気を震わせた。
模倣体がゆっくりと右腕を掲げる。その動きに呼応するように、異形たちが一斉に吠えた。獣の咆哮ではない。どこか機械的で、だが確かに殺意に満ちた“命令の声”。
それだけで、群れ全体がじわじわと前へにじり寄ってくる。
「……やっぱ、こいつが“指揮”してるってわけかよ」
アヤトは苦笑しつつ、幻をまとった両手を開く。肩を落とし、重心を下げる。模倣体の気配は不気味なまでに静かで──だが、本能が告げていた。
戦えば、ただでは済まない。
しかも周囲にはまだ異形の大群がいる。
──だが。
「上等だ。まとめてやってやろうじゃねぇか」
言葉と同時に、アヤトの幻装が淡く輝きを増す。肩から腕、脚から胸元へと幻の筋が浮かび、力が集束していく。
先に動いたのは模倣体だった。
足元を叩き割る踏み込み。鋭く突き出された外殻の腕は、まるで幻装を模したような形状をしていた。反応速度も、重さも、破壊力も──常軌を逸している。
アヤトは一歩退き、滑るように攻撃をいなす。その刹那、左右と背後から異形の群れが殺到した。
正面には“自分のような敵”、四方には無数の異形。
──状況は最悪だ。
だが。
「だからこそ、燃えるんだよな」
アヤトは地を踏み割り、大きく跳んだ。
狙いはただひとつ──
己を真似た異形に、“本物”の違いを叩き込むために。
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