16 / 51
16話
鬼火
しおりを挟む──模倣体の読み通り、このまま“削られ続ければ”終わる。
アヤトは理解していた。だが、それでも止まる気はなかった。
(こっちは、“本物”の力だ)
再び群れの中へ斬り込む。迫る爪と牙をさばきながら、肩越しに気配を探る。模倣体の動きが──また、消えた。
背後から仕留めに来るつもりだ。
ならば──こちらも、切り札を使うしかない。
「……ったく、使うつもりなかったんだけどな」
右腕を低く構え、アヤトは微かに笑う。
幻装の内側。血脈の奥が、じわりと熱を帯びる。
──育ての親から受け継いだ、鬼の力。
アヤトは鬼ではない。だがその身には、確かに鬼由来の“業火”が刻まれていた。
(姉貴みてぇには、上手く扱えねぇが……)
右掌に灯ったのは、幻ではない現実の熱──朱の鬼火。
うねる炎が暴れ、熱をまとう。
「──喰らえ、“鬼火”」
解き放たれた瞬間、爆風が地を抉った。
怒りを叩きつけるような熱波。爆裂する鬼火が爆風とともに広がり、周囲の異形を片っ端から焼き払い、弾き飛ばす。
肩口から放たれた炎は、拡散しながらも一点を狙っていた。──模倣体。
咄嗟に腕で身を庇ったが、遅い。
炸裂する火撃が、外殻を焼き裂き──その身体を吹き飛ばす。
「グ……ア……アァア……!」
咆哮。あれほど冷静だった模倣体が、初めて悲鳴を上げた。
黒煙が立ち込め、アヤトは片膝をつく。
(……クソ……持ってかれるな、やっぱ……)
これは幻の力ではない。扱い慣れていない“異質な力”だ。反動は大きく、膝に震えが走る。
だが、それでも──形勢は明らかに傾いた。
模倣体は明確に“怯んだ”。
「……どうした、“模写”野郎。追いつけねぇか?」
ゆっくりと立ち上がる。アヤトの周囲には、焦げた異形の残骸が散っていた。
模倣体は構え直す。だが、さっきまでの余裕はない。
──次で、決める。
アヤトの視線が、黒煙の向こう──戦場の中心へと定まった。
崩れた外殻。潰れた複眼。焼け爛れた肉。模倣体は、見るも無惨な姿をさらしていた。
それでも──まだ、生きている。
アヤトが踏み込もうとした、その刹那。
模倣体が地を蹴った。
「──逃げる気かよ」
追おうとする足が、止まる。鬼火の反動。幻装の消耗。今、無理をすれば倒れるのは自分だ。
模倣体は、地を這うようにして逃げる。その速度は、なおも驚異的だった。
黒煙に紛れ、影が建物の裏へと消え──姿を失う。
アヤトは歯噛みしながら、拳を握りしめた。
「……ちっ。仕留め損ねたか」
だが、勝ちは勝ちだ。異形の群れは殲滅。指揮官も致命傷。次に出くわす時には、二度と逃がしはしない。
「……あれほど執拗に、仕掛けてきたくせによ」
崩れた壁にもたれ、アヤトは腰を下ろす。
眼前には、焼き尽くされた異形たち。風に舞うのは、焦げた灰と血の臭い。
──勝利。しかし、完勝ではない。
(次は……確実に、仕留める)
静かに目を閉じ、煙に霞む空を見上げた。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
チート魔力を持ったせいで世界を束ねる管理者に目を付けられたが、巻き込まれたくないので金稼ぎします
桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。
交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。
そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。
その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。
だが、それが不幸の始まりだった。
世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。
彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。
さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。
金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。
面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。
本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。
※小説家になろう・カクヨムでも更新中
※表紙:あニキさん
※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ
※月、水、金、更新予定!
蒼き樹海の案内人
蒼月よる
ファンタジー
辺境の森で育った少年ユーリには、不思議な目がある。魔素の流れが光の粒として見えるのだ。
蒼の樹海——人を喰らう巨大な森に足を踏み入れた彼は、遺跡屋の青年カイと出会い、冒険者として歩み始める。樹海の奥に眠る遺跡、港街の裏に潜む陰謀、灰に覆われた滅びの国、そして首都に隠された世界の秘密。
仲間と共に世界を巡るうちに、ユーリは気づいていく。この世界の「魔法」も「神」も、すべてが何かの残骸なのではないか——と。
冒険・バトル・素材経済・食文化を軸に、ファンタジーの裏に潜むSF的真実へと辿り着く、全4巻の冒険ファンタジー。
この作品は以下の箇所にAI(Claude Code)を利用しています。
・世界観・設定の管理補助
・プロット段階の壁打ち
・作者による執筆後の校正
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
壊獄の浄祓師
はといるか
ファンタジー
人の悪面から生まれ落ちた穢れしモノ「穢者」
それらに対抗する力、浄力を操り穢者を排除すべく戦う「浄祓師」。
普通の高校生活を送っていた坂宮幽斗はとある事件によって浄穢の戦いに巻き込まれてしまう。
守るべきものの為に幽斗は浄祓師として戦いに身を投じていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる