2 / 44
第1章 目覚め
2
しおりを挟む「おら! 出ていきな!」
「げほっ……」
兵士に放り投げられた俺は盛大に地面を転がる。
くそっ、なんだってんだ!?
門の前に横たわり内心で毒ずくも周りの人の疑心の目に晒されて居たたまれなくなった俺は、慌てて立ち上がり門を背に歩き出す。
異世界に呼ばれ、散々な目に遭っているが、俺は期待していた。
魔王を倒すための勇者や賢者が居るなら、冒険者ギルドなるものがあるのではと思い立った俺は街並みを眺めながら歩を進める。
「……あった」
お目当てだった冒険者ギルド。
2階建ての騒がしい建物には盾をバックに交差する剣が描かれた看板が掲げられていた。
俺は手元にあるプレートを見て、ため息をこぼす。
荷物持ちといえば、戦利品や食料、日用品を持ち歩く職業。
魔物との戦闘に向かないためにPTの補助役を担う者。
冒険者になろうとしてもはじかれるかもしれない……。
「よぅ、ニィチャン。どうしたんだ?」
考え込んでた俺の背中を派手に叩く男。
いたい、いたい。 なんだってんだ、こいつは……。
背中の痛さを堪えて、男を睨む。
小綺麗な制服を着た男はガハガハと笑っていた。
「……冒険者に、なろうと、思いまして」
尻すぼみに小さくなる俺の声。
なんとも情けない。
「そうか。なら、登録からだな。中に入りな」
男に促され扉を開き中に入る。
はぁ、なんだってんだ、こいつは。
建物の中は食堂と受付が左右に別れた作りになっていた。
男が受付のカウンターの中に入り手招きする。
「こっちこい。俺が受け付けてやるよ」
男に羊皮紙と羽ペンを渡された俺は内容を確認して必要事項を書いていく。
名前に年齢、職業……。
見たこと無い文字だったが、自然と読めるしスラスラと書ける。
「これでいいですか?」
「おう。……やっぱりポーターか」
「やっぱり?」
「いや、気にするな。……ただなぁ、冒険者は死んでも自己責任だぞ、いいのか?」
男が真剣な顔で聞いてくるが、冒険者以外の選択が思い浮かばない俺は頷く。
「……そうか。なら、登録するぞ。……俺はギルドマスターのエヴァンだ。マモルが死なないようにサポートしてやるよ」
「ッ……。ありがとう、ございます。そして、よろしくお願いします」
目頭が熱くなるのを堪え、感謝を述べる。
「……ちょっと付いてこい」
エヴァンが席を立ち、2階へ上がっていくのに付いていく。
案内された部屋は書類が積まれた机と対面に座るように設置されたソファーとテーブルが設置されていた。
エヴァンが書類に目を通しながらソファーに座るように促してきたので素直に座る。
「……マモルが召喚された場に俺も居たんだ」
衝撃が走る。
エヴァンはあの場に居て、俺が異世界人だということを知っている。
「……なぜ、登録を、許可……したのですか?」
王国の庇護を外れた俺を受け入れても良いことはないだろうと思った俺の声が震える。
「はは、気にするな。マモルにはこの道しかないと思ったのだろ?」
俺はエヴァンの目を見て頷く。
「なら、サポートしてやる。ポーターだろうが死なないように手配する。勝手に呼んでおきながら要らないから捨てるなんて、酷すぎるだろ」
苦笑いしているエヴァンに好感が持てた俺は転職について話すことにした。
固有スキル、転職。
職業LvをMAXにすることで職を変えることのできるスキル。
適正条件を満たせれば他の職業を選択できる。
適正条件は該当スキルの所持で、俺は他の職業になることができる。
「……すげぇな。職業は神様が与えてくれる道だから変更なんて出来ないんだぜ。……簡単な依頼をこなしつつ訓練すれば、スキルを取得できるか」
エヴァンが訓練をしてくれると言う。
エヴァンは元Aランク冒険者だったそうで、王国を襲った竜の討伐中に負った傷が原因で引退したそうだ。
竜自体はSランク冒険者が討伐したのだが、エヴァンの活躍により被害を最小限に食い止めた事が認められてギルドマスターの地位を得たそうだ。
ありがたい話なので申し出を受け入れる。
「とりあえず、宿屋は『眠れる獅子亭』を紹介するぞ。あとは、これだな」
テーブルに置かれた宿屋への紹介状とジャラッと音のした小さな革袋。
「その中にはこの世界で使われている貨幣が入ってる。マモルにやるよ」
革袋の中には銀で出来た貨幣1枚と鉄で出来た貨幣5枚が入っていた。
「貰えないですよ」
「稼げるようになったら返してくれたら良いさ」
お金がないと武器や防具が買えないだろと諭され、必ず返すと誓い、借りることにした。
0
あなたにおすすめの小説
冷遇された聖女の結末
菜花
恋愛
異世界を救う聖女だと冷遇された毛利ラナ。けれど魔力慣らしの旅に出た途端に豹変する同行者達。彼らは同行者の一人のセレスティアを称えラナを貶める。知り合いもいない世界で心がすり減っていくラナ。彼女の迎える結末は――。
本編にプラスしていくつかのifルートがある長編。
カクヨムにも同じ作品を投稿しています。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
道化たちの末路
希臘楽園
ファンタジー
母亡き後、継承権もない父と愛人母娘が公爵家を狙い始めた。でも私には王太子という切り札がいる。半年間、道化たちが踊るのを、私たちは静かに楽しんで見ていた。AIに書かせてみた第3弾。今回も3000文字程度のお気楽な作品です。
【完結】精霊に選ばれなかった私は…
まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。
しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。
選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。
選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。
貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…?
☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる