JOB CHANGE

サクタマ

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第1章 目覚め

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「ホーンラビットじゃない反応があるな」

レーダーに正体不明の敵が現れた。

名前の表記が『?』となっているので、鑑定を使えば今後は表記されるのだろう。

マップには黒い靄がかかった物体が表示されている。

単独のようなので気配を殺して近づく事にした。



木の影から正体不明の敵を確認する。

幸いなことに相手はまだこちらに気づいていないようで、地面に落ちている木の実を食べていた。


ブレードディア。

温厚な魔獣のため人を襲うことはないが、繁殖期には他種族への攻撃性が増す。

剣のように鋭い角に注意。


襲ってこないなら狩る必要はないかな。

パキッ!

他に行こうと後退したときに木の枝を踏んでしまった。

ブレードディアに視線を戻すと、奴と目が合う。

前足を地面に叩きつけて、威嚇体制のように頭を下げ角を前面に向けるブレードディア。

不味いと思い、剣を抜くとブレードディアが突っ込んできた。

「まさかの繁殖期!?」

ブレードディアの体当たりを横っ飛びで避け、すぐさま剣を構える。

左足が少し痛むので、少し引っ掻けたみたいだ。

剣を閉まって、槍を取り出す。

ブレードディアの2回目の体当たりを冷静に避け、槍を振るうも軽々跳躍して避けられる。

中々やるでないの。

3回目の体当たりは避けずに突きを繰り出し、角の合間を狙う。

グサッ……

突きの体勢のままだと角の餌食になってしまうため、槍を支えにブレードディアを飛び越すように跳躍する。

「グッ! い、いてぇ……」

左足の痛みを堪えて振り返る。

ブレードディアは倒れており、全く動こうとしない。

深く刺さった槍のお陰で倒せたようだ。

ブレードディアに触れて収納空間に収めると、目の前にウィンドウが現れた。

荷物持ちポーターのLvが5になったため、収納空間に解体と時間停止機能が増えたそうだ。

ホーンラビット6体とブレードディア1体を解体し時間停止しておく。

緊張が解けたのか腹の虫が鳴ったので王都に戻ることにした。

左足の痛みが気になっていたので確認すると、グリーブの切れ目の外側のふくらはぎから血が出ていた。

感染症になっては困るので、傷口に生活魔法の清潔を使い、汗を拭くための布を巻いた。




王都に無事戻った俺はギルドに向かう。

ルフルさんの受付に行き、ホーンラビットとブレードディアを納入する。

「ブレードディアを狩ったのですか!?」

驚かれたので状況を説明した。

「……そうでしたか。繁殖期のブレードディアは凶暴ですが、メスの肉は程よく脂身があって美味しいのですよ。角は剣の素材として使えるので、オウグさんの武器屋に持っていってください」

角の大きさから俺が狩ったのはメスのブレードディアだったようだ。

今回の納入でホーンラビットの依頼で60Gと素材を1体15Gの買い取りで90G、ブレードディアは素材の買い取りで80Gの計230Gの儲けだった。

所持金は440Gとなった。

今のところギルドが面倒を見てくれているので、所持金を使っていない。

「……あ、そうだ。ルフルさん、回復魔法の使える人いませんか?」

「怪我を負ったのですか? ギルド居つきの治癒術士が……、今は居ないようなので、割高にはなりますがユースティリア教の協会で治癒が受けれますよ」

王都の地図で協会の位置を確認した俺は、ルフルさんにお礼を述べてギルドを後にする。




昼食は協会までの道のりにある屋台で串肉を買い、腹を満たす。

ギルド内の食堂で食べれば良かったのだが、協会に行くのに急いてしまい、腹が減っていたことを忘れていた。

クセと脂身の少ない謎肉は歯応えがあって食いごたえがあった。

ユースティリア教の協会は十字架に張り付けられた人がいる協会に似ていた。

まぁ、十字架に張り付けられた人は居ないようだが。

敷地を隔てる鉄柵は3m程あり、この協会だけ別の領地だといっているようだ。

玄関先で掃除をしていたシスターに話を聞き、お布施として鉄貨を1枚渡す。

協会では現金での支払いとなることをルフルさんから聞いていた俺は、鉄貨を10枚手持ちにしていた。

中に入り、受付で治癒を施す手続きをする。

擦り傷を癒すヒールと毒や火傷等の身体異常を癒すキュアが鉄貨5枚、骨折を癒すハイヒールと混乱や魅了等の精神異常を癒すハイキュアが銀貨1枚、欠損部位を再生するパーフェクトヒールと身体と精神に異常をきたす呪いなどを打ち消すデスペルが金貨1枚だ。

大人1人が1ヶ月(30日)生活するのに金貨1枚かかるこの世界ではなかなか高額だ。

その代わりといってはなんだが、治癒の効果は良く、対応も親切で丁寧なんだそうだ。

俺はちょっとした実験も兼ねて傷を治してもらうので、笑顔で擦り傷を癒すヒールの代金鉄貨5枚を渡す。

長椅子に座って待っているように促されたので、最後尾の席につき、建物内を物色する。

優しく微笑んでいるように見える女性が象られたくすんだステンドグラスが飾られている。

両手を祈るように組んだ女性の巨大な石膏。

たぶんあの女性が女神ユースティリアなのだろう。


「傷を癒すヒールをご所望とお聞きしました。傷はどちらにありますか?」

隣に座った若い司祭が本を片手に話しかけてきた。

「あ、はい。……左足のふくらはぎです」

裾をあげて傷口を司祭に見せると、彼は本を開き傷口に右手を当てる。

「主よ、我の願いを叶えたまえ。この者の傷を癒したまえ、ヒール」

本が淡く光り、右手に光が収束して傷を癒す。

なるほど、これが回復魔法か……。

司祭に礼を述べ、傷口を確認してから外へ出て宿を目指す。

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