9 / 44
第1章 目覚め
9
しおりを挟む「ホーンラビットじゃない反応があるな」
レーダーに正体不明の敵が現れた。
名前の表記が『?』となっているので、鑑定を使えば今後は表記されるのだろう。
マップには黒い靄がかかった物体が表示されている。
単独のようなので気配を殺して近づく事にした。
木の影から正体不明の敵を確認する。
幸いなことに相手はまだこちらに気づいていないようで、地面に落ちている木の実を食べていた。
ブレードディア。
温厚な魔獣のため人を襲うことはないが、繁殖期には他種族への攻撃性が増す。
剣のように鋭い角に注意。
襲ってこないなら狩る必要はないかな。
パキッ!
他に行こうと後退したときに木の枝を踏んでしまった。
ブレードディアに視線を戻すと、奴と目が合う。
前足を地面に叩きつけて、威嚇体制のように頭を下げ角を前面に向けるブレードディア。
不味いと思い、剣を抜くとブレードディアが突っ込んできた。
「まさかの繁殖期!?」
ブレードディアの体当たりを横っ飛びで避け、すぐさま剣を構える。
左足が少し痛むので、少し引っ掻けたみたいだ。
剣を閉まって、槍を取り出す。
ブレードディアの2回目の体当たりを冷静に避け、槍を振るうも軽々跳躍して避けられる。
中々やるでないの。
3回目の体当たりは避けずに突きを繰り出し、角の合間を狙う。
グサッ……
突きの体勢のままだと角の餌食になってしまうため、槍を支えにブレードディアを飛び越すように跳躍する。
「グッ! い、いてぇ……」
左足の痛みを堪えて振り返る。
ブレードディアは倒れており、全く動こうとしない。
深く刺さった槍のお陰で倒せたようだ。
ブレードディアに触れて収納空間に収めると、目の前にウィンドウが現れた。
荷物持ちのLvが5になったため、収納空間に解体と時間停止機能が増えたそうだ。
ホーンラビット6体とブレードディア1体を解体し時間停止しておく。
緊張が解けたのか腹の虫が鳴ったので王都に戻ることにした。
左足の痛みが気になっていたので確認すると、グリーブの切れ目の外側のふくらはぎから血が出ていた。
感染症になっては困るので、傷口に生活魔法の清潔を使い、汗を拭くための布を巻いた。
王都に無事戻った俺はギルドに向かう。
ルフルさんの受付に行き、ホーンラビットとブレードディアを納入する。
「ブレードディアを狩ったのですか!?」
驚かれたので状況を説明した。
「……そうでしたか。繁殖期のブレードディアは凶暴ですが、メスの肉は程よく脂身があって美味しいのですよ。角は剣の素材として使えるので、オウグさんの武器屋に持っていってください」
角の大きさから俺が狩ったのはメスのブレードディアだったようだ。
今回の納入でホーンラビットの依頼で60Gと素材を1体15Gの買い取りで90G、ブレードディアは素材の買い取りで80Gの計230Gの儲けだった。
所持金は440Gとなった。
今のところギルドが面倒を見てくれているので、所持金を使っていない。
「……あ、そうだ。ルフルさん、回復魔法の使える人いませんか?」
「怪我を負ったのですか? ギルド居つきの治癒術士が……、今は居ないようなので、割高にはなりますがユースティリア教の協会で治癒が受けれますよ」
王都の地図で協会の位置を確認した俺は、ルフルさんにお礼を述べてギルドを後にする。
昼食は協会までの道のりにある屋台で串肉を買い、腹を満たす。
ギルド内の食堂で食べれば良かったのだが、協会に行くのに急いてしまい、腹が減っていたことを忘れていた。
クセと脂身の少ない謎肉は歯応えがあって食いごたえがあった。
ユースティリア教の協会は十字架に張り付けられた人がいる協会に似ていた。
まぁ、十字架に張り付けられた人は居ないようだが。
敷地を隔てる鉄柵は3m程あり、この協会だけ別の領地だといっているようだ。
玄関先で掃除をしていたシスターに話を聞き、お布施として鉄貨を1枚渡す。
協会では現金での支払いとなることをルフルさんから聞いていた俺は、鉄貨を10枚手持ちにしていた。
中に入り、受付で治癒を施す手続きをする。
擦り傷を癒すヒールと毒や火傷等の身体異常を癒すキュアが鉄貨5枚、骨折を癒すハイヒールと混乱や魅了等の精神異常を癒すハイキュアが銀貨1枚、欠損部位を再生するパーフェクトヒールと身体と精神に異常をきたす呪いなどを打ち消すデスペルが金貨1枚だ。
大人1人が1ヶ月(30日)生活するのに金貨1枚かかるこの世界ではなかなか高額だ。
その代わりといってはなんだが、治癒の効果は良く、対応も親切で丁寧なんだそうだ。
俺はちょっとした実験も兼ねて傷を治してもらうので、笑顔で擦り傷を癒すヒールの代金鉄貨5枚を渡す。
長椅子に座って待っているように促されたので、最後尾の席につき、建物内を物色する。
優しく微笑んでいるように見える女性が象られたくすんだステンドグラスが飾られている。
両手を祈るように組んだ女性の巨大な石膏。
たぶんあの女性が女神ユースティリアなのだろう。
「傷を癒すヒールをご所望とお聞きしました。傷はどちらにありますか?」
隣に座った若い司祭が本を片手に話しかけてきた。
「あ、はい。……左足のふくらはぎです」
裾をあげて傷口を司祭に見せると、彼は本を開き傷口に右手を当てる。
「主よ、我の願いを叶えたまえ。この者の傷を癒したまえ、ヒール」
本が淡く光り、右手に光が収束して傷を癒す。
なるほど、これが回復魔法か……。
司祭に礼を述べ、傷口を確認してから外へ出て宿を目指す。
0
あなたにおすすめの小説
冷遇された聖女の結末
菜花
恋愛
異世界を救う聖女だと冷遇された毛利ラナ。けれど魔力慣らしの旅に出た途端に豹変する同行者達。彼らは同行者の一人のセレスティアを称えラナを貶める。知り合いもいない世界で心がすり減っていくラナ。彼女の迎える結末は――。
本編にプラスしていくつかのifルートがある長編。
カクヨムにも同じ作品を投稿しています。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
道化たちの末路
希臘楽園
ファンタジー
母亡き後、継承権もない父と愛人母娘が公爵家を狙い始めた。でも私には王太子という切り札がいる。半年間、道化たちが踊るのを、私たちは静かに楽しんで見ていた。AIに書かせてみた第3弾。今回も3000文字程度のお気楽な作品です。
【完結】精霊に選ばれなかった私は…
まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。
しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。
選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。
選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。
貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…?
☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる