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第1章 目覚め
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しおりを挟むクロムに鑑定を許可し、4つの武具を見てもらった。
どれも見たことの無い武具だったようで、目を輝かせてそれぞれを手に取り眺めるクロム。
「おはようございます。お早いお目覚めのようですね」
「……おはよう……ございます」
ガルムも目が覚めてベッドから起き上がった。
リリィはまだ眠いのか目を擦りながら挨拶をして来たが、ベッドから出てくるようすはない。
「ちょっと夢の中で色々あってね」
「これ! 見てください! 今まで見たこと無い武具です! 性能も尋常じゃないです! 4つとも国宝級、いえ、それ以上です!」
ガルムが興奮しているクロムに落ち着くようにと言い、頭を撫でる。
「そうだね。まだ寝ている人もいるだろうから静かにね」
そう言って、影から出てきたビャッコの頭を撫でる。
気持ち良さそうに「くるる」と鳴くビャッコが可愛い。
「マ、マモル……様、そ、その、お方、は?」
ガルムが驚愕の表情でビャッコを指差す。
「あ、……え、えっと、お供している聖霊獣のビャッコ」
「風の聖霊獣様!?」
一瞬ビクッとした後にすぐさま手を下ろし、床に膝をつけて頭を下げるガルム。
なんかブツブツ言っていて恐いんだが……。
その様子をクロムは一瞬チラッとこっちを見て、何だろうと首を傾げてから、また武具をみだした。
リリィは……寝てる。
自由だねぇ。
「マモル君! 五月蝿いよ!」
ドアを勢いよく開けて今までで一番でかい声を出すマルサさん。
耳がキーンてなりましたよ。
「す、すいませんでした。……マ、マルサさん?」
頭を下げて騒がしくしてたことを謝った俺は驚いているマルサさんに何だろうと思い後ろを見るとリリィがベッドから起き上がっていた。
「あ、……あの人、手足がなかったんじゃなかったかい?」
慌てたようすでリリィを指差すマルサさんに回復魔法を使ったんですと伝えて納得してもらった。
「なるほどねぇ。マモル君は回復魔法が使えるのかい。しかも、手足の欠損を再生できる回復魔法を……」
横を向いて考え込んでいる様子のマルサさんはこちらに聞こえないほど小さな声で呟いていて、パッと俺の方を笑顔で向き直した。
「すごいじゃないか、マモル君。さぁ、朝食の準備はできてるから食事にして、今日も稼いできな」
マルサさんの朝はかなり早いようだ。
みんなで食堂に行って同じご飯を食べる。
マルサさんには注文の時に同じ食事を出してくださいと頼んだ。
いい人だねと肩を叩かれたのはご愛嬌。
「先ずはギルドで冒険者登録だね。そのあとは適当な依頼を選んで、武具を揃えようか」
朝食を食べたあとに部屋へ戻り、新装備を身に纏う。
3人が手伝ってくれると申し出てくれたが丁重に断った。
しかし、3人の方が上手で、ズボンを履いたあとで視線を上げると、上着を広げて待ち構えるリリィがいた。
ガルムは椅子の側で脚甲と籠手を準備していて、クロムは外套を広げて待っていた。
これぐらいならいいかと思い、リリィ、クロム、ガルムの順に装備を着るのを手伝ってもらった。
ギルドは朝から盛況……というわけにはいかず、2日前の後片付けで人が少なかった。
Dランク以下の冒険者と数名のギルド職員が王都周辺の調査及びゴブリン等の死体処理をし、Cランク以上は西の森内部の調査が依頼として出されており、ほとんどの冒険者がその依頼を受けて出払っている。
というか、明日まではその依頼しか受領されないのでそれしか出来ない。
「あ、ルフルさん。彼女等の冒険者登録をお願いします」
受付はルフルさんだったので3人の冒険者登録と王都周辺の調査の依頼をお願いした。
「……可愛らしい奴隷を雇ったんですね。羨ましいことですわ」
「は、はは……」
じと目で登録用羊皮紙を渡してくるルフルさんに、苦笑いしか出来ない俺。
「まぁ、冗談は置いといて。3人は戦力になるのですか?」
「大丈夫だと思いますよ。それに戦力にならないなら、なるようにすればいいんですし」
それを聞いたルフルさんが体を抱え込むようにして震え出す。
「ま、まさか、あのデスマーチを!?」
そう言って驚愕の表情を見せるルフルさんにあてられた3人が瞳を潤ませて俺を見る。
「いや、そんなデスマーチなんてしたこと無いですから」
苦笑いで頭を掻く俺をルフルさんはまだじと目で見ていた。
「……今はまだ魔獣を狩ったり出来ませんので大丈夫ですが、ほどほどにしてくださいね」
ルフルさんから3人のギルドカードを受け取り、3人の血をカードに1滴垂らして、登録をする。
3人は俺の奴隷なので、自由に依頼を受けることが出来ないという制約がある。
この制約は奴隷達が勝手にお金儲けをしないためではなく、奴隷主から逃亡しないため(逃亡した場合に悲惨な目に遭うことが目に見えているため)、奴隷紋が見える位置(首輪のように奴隷紋は施されている)にあるため奴隷商や人拐いに連れていかれるのを防ぐための制度だ。
奴隷のギルドカードは奴隷主が持っておくこととルフルさんに言われたので、ズボンのポケットに入れる振りをして時空間収納に入れる。
ギルドにいる人にはポーターだとバレているが、余計な争いに巻き込まれないための処置としてエヴァンに教えてもらった。
「マモルさん、装備を一新したんですね。……大分強そうですよ」
外套で見辛くはなっているが手を出せばすぐにわかってしまうわな。
「ええ、ちょっと色々ありまして。これからオウグさんのところで彼らの装備を調えてから王都周辺の調査にいきますね」
未だに震えているクロムの頭を撫でて、デスマーチなんてしてないから安心してねと言って落ち着かせる。
イタズラ成功とばかりに笑っているルフルさんに頭を下げてギルドを出た。
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