ホライズン 〜影の魔導士〜

かげな

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魔道帝国学院 入学③ 新入生歓迎会 上

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 待つ事数分。自由時間をしおりやスタンプカードを見ることで暇を潰していると、チャイムが鳴り出した。チャイムの音を聞いて教壇で座っていたドルトフリートは立ち上がり、生徒たちにしおりとスタンプカードを持って席を立つように言った。

「チャイムが鳴ると全員に転移魔法がかけられる。後で戻って来るから荷物は置いていって良い。防犯魔法が教室にかかってるから盗まれる心配もない。
  ペアで同じスタンプカードを持ってくれ。二人で持たないと転移の対象にされずに出遅れる事になる。」

 慌てて生徒たちがカードを二人で持つのを確認してドルトフリートはロープの中から木の棒を取り出した。

「棒?」

不思議そうに頭を傾げるミゲルにエミリアンヌは笑った。

「あれは魔法杖だよ、魔法の補助をする。元は魔樹って言う木の枝で、大半はそれに加工をする時に見た目も変えたりして売るんだけど、魔樹の中でもランクの高い、精霊樹などは削ると分かりやすく力が減っちゃうから、そのまま形を変えないで使う人が多いの。
 まあ、そういう人達は形を変えないかわりに色を塗ったりするんだけど、ドルトフリート先生はそういうのを気にしないのかもね。武闘派は木のままの方がカッコいいっていう意見を持つ人も多いし。」

「魔法杖って木だったのか。頑丈だったし軽かったから魔道具だと思っていたよ。」

「それはあながち間違ってないよ。魔樹の枝素材として防腐や硬化、軽量化を付与してから使っている訳だし。」

 チャイムが鳴り終わり、ドルトフリートが詠唱し始める。

「えっ、この人数を先生一人で転移させるのか?」

「魔法杖を使っていてもかなりの技術と魔力が必要になる筈だけど...」

 ドルトフリートが魔法を使い出すと、教室の床に魔法陣が広がった。

「魔法陣?展開するのが早くないか?」

「あの杖は魔法陣の組み立てを補助する為のものなのかも。でも、」

 でも、そうしたら一体どうやって一人で全員を転移するの?
 そう口にする前に、魔法陣は一瞬眩しいほど光り、光が消えるとざわざわしていた教室は静まり返り、そこにはもう誰も居なかった。


 一瞬の浮遊感の後に、目を開けるとそこには校舎と同じくらい大きいが、装飾が余りされていない建物があった。周りを見回すと、そこにはエミリアンヌとミゲルしか居らず、近くには『研究所/総合図書館』と書かれた札が立っていた。

「研究所?」

ミゲルが目を丸くさせて呟いた。

「学院の最奥の建物だね。」

エミリアンヌも呆然と言う。こんな遠くまで、さすが魔道帝国学院。

「とりあえず、入ろっか。」

 こくりとエミリアンヌが頷くのを見てミゲルは建物へ足を進め、エミリアンヌはそれに着いて行く。
 大きな扉を押し開け中に入ると、真っ白な壁と床が目に入った。歩くとこつり、こつりと軽い足音がする。思わず足を止めたエミリアンヌは綺麗に磨かれた床を見て一体幾らするのだろうかと考える。

「どうしたの、エミリアンヌ?」

「いや、何か床が高そうだなって。」

思わず、といった風に笑うエミリアンヌにミゲルは視線を床に向けると、確かにと頷く。

「これ、アントワーゼの鉱山の鉱石だね。魔力をあまり持たないから加工するのが大変そうだ。」

 一目見て判断したミゲルにエミリアンヌは感心したように物知りだねと言う。そんな事ないよとミゲルは柔らかく微笑んだ。

「研究所と総合図書館、先にどっちに行く?」

スタンプカードを持ったミゲルが聞いた。

「図書館に行こうよ、早く見てみたい。」

「そうだね。そうしようか。」

 地図を頼りに図書館へ行くとそこには上級生が20人程居た。参加する新入生の人数が多いからこその大人数でなのだろう。
  近づくと彼らはミゲルの珍しい容姿に目を引かれていたが、一人の少年がいち早く気を取り直して進み出た。

「ようこそ、総合図書館へ。僕は3年生のアダム・フリングルス。
 ここでは僕が指定した本を二人で六冊探して貰うよ。二人で一緒に探しても良いし、手分けして探しても良い。はい、これがリスト。ついでに図書館の簡易地図もあげるね。」

 リストと地図は二枚ずつ渡されたがどちらも同じものが書かれていた。二人で手分けしても良いように二枚渡されたのだろう。

「どうする?手分けする?」

 受け取ったエミリアンヌがミゲルに聞いた。そうだね、とミゲルは答えたので、エミリアンヌは上の三冊をミゲルに任せて他の三冊を探しに行った。
 三冊は『剣術 入門』、『王宮の作法』、『服の作り方』といった風に学科に関係のない本も混ざっている。因みにミゲルは『錬金術 失敗例』、『靴の選び方』、『ダンジョンの仕組み』の三冊である。
 『剣術 入門』は武術エリアにあり、すぐ見つかったので、エミリアンヌは他の二冊を探し出した。

「王宮の作法...普通学科かな?『王宮』は魔導帝国?いや、他の王宮も含まれているかもしれないから皇室かな、『作法』は教養。礼儀作法のコーナーがあるはずだからそこかな。」

 そう考え礼儀作法のコーナーにたどり着いたエミリアンヌだが、そのコーナーには実に沢山の本があった。

「エイヴァの民族への作法、皇国の作法 貴族編、古代帝国のマナー、って古代帝国はもう滅んでるんじゃ?」

 さすが魔道帝国学院、とエミリアンヌは色んな意味で感心する。あまり需要のなさそうなものも揃っている。勿論これらを研究している人もいるのだろうからこの感想は心に秘めておく事にする。

「こう見ると王宮の作法って大雑把すぎるなぁ、あった。」

 魔導帝国のコーナーにあった。これはつまり王宮イコール魔導帝国は当たり前だったりするのだろうかと心の中で愚痴る。

「あとは服の作り方、これは技術科だよね。もしくは流行のコーナー?」

 技術科のコーナーを地図で探し、エミリアンヌはそこへ足を運んだ。


「あっ、ミゲル。」

 技術科のコーナーにはミゲルがいた。既に本を三冊持っている。

「ミゲルはもう全部見つけたの?」

「ああ。あとエミリアンヌのもここにあるかなって探してたところ。布関係の本はここにあるみたい。」

「そうなんだ。じゃあここで探せば良いんだね、ありがとう。」

「まだ見つけた訳じゃないんだけどね、っとあった。」

 話しているとミゲルは目当ての本を見つけてしまった。少し移動して本を取りに行く。

「これで揃ったね。行こうか。」

そう言って先ほどのアダムが居た受付へ向かった。
 

「もう見つけたんだ、早いね。1、2、3...うん。全部あってる。」 

 じゃあスタンプカードを出して、と言われてミゲルはカードをアダムに手渡す。
 カードを受け取ったアダムはポケットから小さな紙を取り出し、枠の上にのせた。ぶつぶつと何かを唱えると、紙は光り、消えたかと思うと、枠の中には本の絵が収まっていた。流石魔導帝国学院、スタンプにも魔法が使われている。

「この学院には図書館がいくつもあるから、司書の仕事を減らすためにいくつもの魔法が使われているんだ。例えば、今持ってきてもらった本。これには一冊ずつ魔法陣が刻まれている。」

 持っていた本の一つである『ダンジョンの仕組み』をミゲルに手渡すと、アダムはミゲルに受付に設置してある箱に本を入れるように言った。何のためにと疑問を浮かべるミゲルをアダムは「まあ、騙されたと思って入れてみて。」と言って急かす。
 本を箱に入れると、アダムは箱に魔力を通すように言った。

「なっ、本が消えた!?」

「これらの本にはそれぞれ自動で元の場所に戻る魔法陣が刻まれていて、この箱に入れて魔力を通す事が発動条件になっているんだ。」

 微笑んだアダムは驚いた?と訪ね、ミゲルは心臓が飛び出るかと思ったと胸を押さえ、エミリアンヌはそれを見ていてなんだか面白くなってコロコロと笑った。
 何はともあれ、エミリアンヌとミゲルは一つ目のスタンプを手に入れた。
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