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43. 次のキャンプで、の回
しおりを挟む「悪かったって……、まだ怒ってるのか?」
「怒って……ない」
あのあと、あっという間にテントの中で仰向けに転がされた俺の上に、怒ったような顔をした賢太郎が跨った。そしてガバリと服を捲られて、胸にある古傷の近くに大量の所有印を付けられた。
(思い出しただけで叫びたくなるほど恥ずかしい)
そしてそんな事をしながらも必死に訴えてきた賢太郎の言葉で、自分の大きな思い違いを理解した。どうやら賢太郎は、俺がイケメンだと有名な相川に僅かでも好意を抱いているんじゃないかと嫉妬したらしい。そして、そんな事に嫉妬する自分自身に呆れてあんな態度だったんだとか。
「俺だって自分がこんなに心が狭かったって事に呆れてるんだって」
「だからって……、あ、あんな事……」
賢太郎に触れられる度に、我慢出来ない呻き声というか恥ずかしい声がテントの外に漏れないように必死だった。手の甲を口に押しつけて声を殺すのがどんなに大変だったか。だって、くすぐったいような変な感覚に思わず反応してしまうのだから仕方がない。
「悪い。近頃ヒカルと一緒にいると、ふとした時に触りたくなるんだよ」
(それってつまり……、もっとくっつきたいって事で……)
そういえば最近は会えばキスをする事も当然みたいに回数が増えたし、キスしながら賢太郎が身体を押しつけてくるような気がする。やたらと手をサワサワと服の中に入れたがるし、胸の傷痕なんか何故か特に触りたがる。
「……賢太郎。ホントは俺も賢太郎に触りたい時……ある」
キスしながら身体を密着していると感じる自分の下腹部の違和感、それにそんな時は賢太郎の同じところも主張しているから思わずドキッとして身体をよじってしまうけど。
「今度……、キャンプで泊まりの時……」
俺がそこまで話すと、目の前の賢太郎は「ぐっ」と短く唸ってモゾモゾと座る姿勢を変えた。俺も何だかそれ以上は口に出すことが出来なくて、視線を下げテントの床に敷かれたマットを見る。すると、賢太郎がフウッと大きく息を吐いたと思ったら先に口を開いた。
「あのさ、嫌だったらやめるから……今度泊まりでキャンプに行く日に、ヒカルにもう少したくさん触れてもいいか?」
硬い声音で告げられた言葉の意味は、さすがに鈍いと言われる俺でも分かる。今より少し先に進みたいって賢太郎の意志だ。
「うん、いいよ。俺も……どうしたらいいか分かんないけど。それまでにちょっと調べたりしてみる」
「そう、か……」
二人して顔を真っ赤にしたまま、また沈黙がおちた。胸の辺りがむず痒くて、耳まで熱いし動悸が酷い。見た感じだと、きっと賢太郎も同じ感情なのだと思ってそれは何だか嬉しくなった。
(俺だけじゃないんだ)
思わず頬がだらしなく緩むのを自覚したけど、無理に我慢するのはやめた。嬉しいものは嬉しいんだから。
「何か俺、お腹いっぱいで眠くなってきたからちょっと昼寝したい」
「あ、ああ。じゃあここで横になって……」
そう答えながらまだ頬が真っ赤になっている賢太郎を見ていると、他の誰でもない俺がそうさせているんだと嬉しくて、少し悪戯したくなった。
「賢太郎、腕枕して」
「腕枕⁉︎」
「うん、腕枕。してよ」
突然のお願いに一瞬たじろいだ様子を見せたけど、賢太郎はごろんと横になって俺より幾分か逞しい腕を横に伸ばした。
「ほら、これでいいか?」
「うん。ありがと」
心なしか身体をカチカチにしている賢太郎の腕にそおっと頭を預けた。ピタリと身体をくっつけて横を向くと賢太郎の顔がすぐ近くにあって、薄い唇を一文字にしてしっかり閉じているのが可笑しくて笑ってしまう。
「何で笑うんだ?」
「ごめん、賢太郎がえらく緊張してるみたいだから」
「ヒカルの方からそんなにくっついてきたら、そりゃあ緊張もするだろ」
「そうなんだ。俺もドキドキしてるよ」
それだけ言うと、段々と本当に眠くなってきたので目を閉じる。賢太郎はもう一度息を長く吐き出すと、腕枕をしている方の腕を曲げて大きな手を俺の頭に置いた。その優しい仕草にとても安心する。
「一時間……経ったら起こして……」
「おう、おやすみ」
賢太郎が眠れたかどうかは分からない。だけど昼寝から目が覚めた時、目の前に賢太郎の顔があるのはとても心臓に悪かった。大好きな相手の顔を間近で見れるなんて嬉しい反面、ものすごく照れてしまう。
こうして二人で初めてのデイキャンプは何とか上手くいった。次はいよいよキャンプで一泊。今日出来た火おこしとかテント張りをもう一度復習しておこう。
(そして……、今度は賢太郎との関係がもう少し進む、かも知れないと)
泊まりのキャンプは天気の兼ね合いもあり、とりあえず三日後に予定する。場所は賢太郎のよく利用していたというキャンプ場に決まった。
それまでに色々と調べたり準備しなければならないことがあると考えたら、やっぱり意識してしまって顔がカァーッと熱くなる。またいつものように一人で何かに顔を埋めて思い切り叫びたくなった。
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