すれ違いがちなヒカルくんは愛され過ぎてる

蓮恭

文字の大きさ
44 / 66

44. 一番嫌な相手に見つかったの回

しおりを挟む

 デイキャンプから帰った日、確かに疲れていたけどそれよりも三日後のキャンプの事で頭がいっぱいだった。相変わらず仕事の忙しい母さんは今日も帰るのが遅い。もう少ししたら夕食の準備をしようと考えつつも、とりあえずはリビングのソファーにダイブした。

「そうだ、ダイにキャンプが上手く出来たら報告するって約束してたんだ」

 そう思い出してダイと通話すると、やっぱり鈍い俺はとんでもない勘違いをしていたと分かった。

「はははは……っ! ヒカル、お前『キャンプ、上手く出来たよ』って俺に報告するつもりだったのかよ! やべぇ、可愛いすぎる!」
「だってさ! てっきりそうだと思ったんだよ! まさか……そんな事だなんて思わなくて……」
「やっぱりヒカルは天然だよなぁ! おもしれぇ!」

 キャンプが上手く出来たら報告して欲しいって事だと思っていたのに、ダイは俺が知らせて欲しいって事だったみたいだ。そもそも賢太郎とのアレコレを相談するだけでも気恥ずかしいのに、あり得ないほどの天然ボケだと言われて笑われたら余計にいたたまれない。

「だけどヒカル、しっかり覚悟しとけよー。賢太郎はそんなヒカルちゃんの事をとんでもなく好きみたいだからさ。アイツ、実際にそういう事になったら歯止め効かないかもよー」
「そういう事……」
「だって、俺にめちゃくちゃ聞いてきたからな。男と女のアレコレしか俺は知らないっつーのに」

 スマホの向こうから聞こえるダイの声は、完全に面白がっている。だけどそのあとダイからとりあえず男と女のアレコレを聞いて、自分がその女役をすると考えただけでちょっと怖くなった。

「経験豊富な俺の幅広い知識によれば、男同士だと必要な物も色々あるらしいからな。ちゃんと前もって準備しとけよー」

 時々笑いながらも、多分ダイは何だかんだで応援してくれてるんだろう。そんな忠告を残して通話を終えた。

「俺、どうなるんだ?」

 ダイの話からして賢太郎はきっとを望んでいるんだろう。

(そして俺達の関係で女役は俺なんだから、そういう時は俺が賢太郎に……)

「ぎゃあぁぁぁ!」

 このリビングに置いてあるクッションも、随分と俺の奇声を吸収してきた。だけどきっと今までで一番すごい声だったと思う。とりあえず三日後に遭遇するかも知れない事をスマホで詳しく調べてみようと思い立って、思いつく限りの言葉で検索を始める。

「……マジ……か」

 ソレに至るまでには思ったよりも準備が必要なようだ。いくつか物品も必要そうだし、俺自身の準備も必要みたいで。

「こ、こんな事……」

 そもそも彼女すらいた事の無かった俺は、その衝撃的な内容におののく。だが大好きな賢太郎の為だと自分を奮い立たせて、今夜から少しずつ頑張ってみることに決める。

「まだ夕食まで時間がある……。早速薬局に行こう」

 潤滑ゼリーが必要と知って、家からなるべく離れた薬局へ今から自転車を飛ばして買いに行く事にした。別に誰にも買う物を知られてる訳では無いのに、道で出会う近所のおばさんに挨拶する時にはドキドキしてしまう。親にも話せないような初めての行為に、どこか後ろめたい気持ちがあるのかも知れない。

(潤滑ゼリーなんて、どこに売ってるんだろ?)

 少し遠くの薬局に来た事と、買い慣れない商品を探す事は難しい。店舗の中をぐるぐる回ってやっと見つけた場所にはゴムもあったりして、一応調べてそれも必要なのだと知ったからカゴに入れた。さすがにそれらだけを会計する勇気は無く、他の売り場でお菓子をいくつか物色していると後ろから突然声を掛けられた。

「宗岡?」

 聞き覚えのある低く冷たい声音に、苦手意識でビクリと身体を揺らす。そしてギギギと音がしそうな程に恐々と時間をかけて振り向いたら、その相手はさも面白そうに口の端を持ち上げていた。

「相川……」
「お前、夏休みに入っても相変わらず賢太郎にまとわりついてるみたいだな」
「まとわりついてるって……」
「補欠のくせに、寂しい奴」

 本当に俺のことが嫌いなんだと分かるような嘲笑と棘のある台詞だ。あの日相川が警告した後、夏休みに入ってからも相川の家の二軒隣だという賢太郎の家に毎日行っているのを見られていたのかも知れない。

「お前みたいな奴に色目使われてヤろうって迫られたら、純情な賢太郎は断れないんだろうなぁ」

 その時相川が俺の持つカゴの中身をチラッと見た。お菓子で隠しているつもりだし、これらを買っているところまで見られいてたとは思いたくないけど、羞恥で身体全体が一気に火照った。

(補欠って……何なんだよ。自分で分かってるから山岳部はもう辞めたのに、何でそこまで……)

「さっさと会計してきなよ。補欠の足枷あしかせくん」

 イケメンの力を存分に発揮した素晴らしい笑顔、だけど口調は完全にあざけるようで、思わず早足でその場から逃げ出した。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

学校一のイケメンとひとつ屋根の下

おもちDX
BL
高校二年生の瑞は、母親の再婚で連れ子の同級生と家族になるらしい。顔合わせの時、そこにいたのはボソボソと喋る陰気な男の子。しかしよくよく名前を聞いてみれば、学校一のイケメンと名高い逢坂だった! 学校との激しいギャップに驚きつつも距離を縮めようとする瑞だが、逢坂からの印象は最悪なようで……? キラキライケメンなのに家ではジメジメ!?なギャップ男子 × 地味グループ所属の能天気な男の子 立場の全く違う二人が家族となり、やがて特別な感情が芽生えるラブストーリー。 全年齢

地味メガネだと思ってた同僚が、眼鏡を外したら国宝級でした~無愛想な美人と、チャラ営業のすれ違い恋愛

中岡 始
BL
誰にも気づかれたくない。 誰の心にも触れたくない。 無表情と無関心を盾に、オフィスの隅で静かに生きる天王寺悠(てんのうじ・ゆう)。 その存在に、誰も興味を持たなかった――彼を除いて。 明るく人懐こい営業マン・梅田隼人(うめだ・はやと)は、 偶然見た「眼鏡を外した天王寺」の姿に、衝撃を受ける。 無機質な顔の奥に隠れていたのは、 誰よりも美しく、誰よりも脆い、ひとりの青年だった。 気づいてしまったから、もう目を逸らせない。 知りたくなったから、もう引き返せない。 すれ違いと無関心、 優しさと孤独、 微かな笑顔と、隠された心。 これは、 触れれば壊れそうな彼に、 それでも手を伸ばしてしまった、 不器用な男たちの恋のはなし。

隣の席のイケメンに懐かれた

しょうがやき
BL
隣の席のイケメンに懐かれた平凡男子の話

僕のために、忘れていて

ことわ子
BL
男子高校生のリュージは事故に遭い、最近の記憶を無くしてしまった。しかし、無くしたのは最近の記憶で家族や友人のことは覚えており、別段困ることは無いと思っていた。ある一点、全く記憶にない人物、黒咲アキが自分の恋人だと訪ねてくるまでは────

イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした

天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです! 元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。 持ち主は、顔面国宝の一年生。 なんで俺の写真? なんでロック画? 問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。 頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ! ☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

【完結】ハーレムラブコメの主人公が最後に選んだのは友人キャラのオレだった。

或波夏
BL
ハーレムラブコメが大好きな男子高校生、有真 瑛。 自分は、主人公の背中を押す友人キャラになって、特等席で恋模様を見たい! そんな瑛には、様々なラブコメテンプレ展開に巻き込まれている酒神 昴という友人がいる。 瑛は昴に《友人》として、自分を取り巻く恋愛事情について相談を持ちかけられる。 圧倒的主人公感を持つ昴からの提案に、『友人キャラになれるチャンス』を見出した瑛は、二つ返事で承諾するが、昴には別の思惑があって…… ̶ラ̶ブ̶コ̶メ̶の̶主̶人̶公̶×̶友̶人̶キ̶ャ̶ラ̶ 【一途な不器用オタク×ラブコメ大好き陽キャ】が織り成す勘違いすれ違いラブ 番外編、牛歩更新です🙇‍♀️ ※物語の特性上、女性キャラクターが数人出てきますが、主CPに挟まることはありません。 少しですが百合要素があります。 ☆第1回 青春BLカップ30位、応援ありがとうございました! 第13回BL大賞にエントリーさせていただいています!もし良ければ投票していただけると大変嬉しいです!

泣き虫で小柄だった幼馴染が、メンタルつよめの大型犬になっていた話。

雪 いつき
BL
 凰太朗と理央は、家が隣同士の幼馴染だった。  二つ年下で小柄で泣き虫だった理央を、凰太朗は、本当の弟のように可愛がっていた。だが凰太朗が中学に上がった頃、理央は親の都合で引っ越してしまう。  それから五年が経った頃、理央から同じ高校に入学するという連絡を受ける。変わらず可愛い姿を想像していたものの、再会した理央は、モデルのように背の高いイケメンに成長していた。 「凰ちゃんのこと大好きな俺も、他の奴らはどうでもいい俺も、どっちも本当の俺だから」  人前でそんな発言をして爽やかに笑う。  発言はともかく、今も変わらず懐いてくれて嬉しい。そのはずなのに、昔とは違う成長した理央に、だんだんとドキドキし始めて……。

処理中です...